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レプリカのキスじゃ、呪いは解けない。
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大学生たちで賑わう安い居酒屋。
その奥にある、ギリギリ二人で入られるような、小さな個室に後輩と二人きり。
……そう、二人きり。
俺は四杯目のビールを飲み干すと、ジョッキを思いっきり机に置いた。
「なんだよ!どいつも、こいつも!」
大きな声で叫ぶように言うと、大学の後輩――美森が溜息をこぼして、咎めるような目でこちらを見てくる。
「先輩、危ないです。
仕方ないでしょ、佐藤先輩も、田中先輩も、みーんな先輩より、彼女さんの方が良いんですって。」
「だぁー!なんで、俺達だけ彼女できないんだよ。
去年まで、みんな「恋人いらねぇ」って朝まで呑んでたのに!」
そう去年までは、みんな恋人がいなくて、朝まで大人数で飲んでいた。
なのに、裏切りやがって……!
なにが「彼女作るより、こうやって遊んでいる方が楽しい。」だよ。なにが「お前と朝までバカ騒ぎする方が楽しい」だよ。
最後の希望だった、佐藤と田中まで裏切りやがって……!
イライラしながら目の前にあった、からあげを口に放り込む。
「みんな、その程度だったんですよ。
俺がいるから良いじゃないですか。
俺だけは、ずっと先輩に付き合いますよ。」
美森は俺の口元へ手を伸ばし、親指でなぞるように唇を撫でて「付いてた。」と、柔らかく笑った。
思わず、その姿に見惚れてしまう。
だって顔がすごく良い!
黒く艶のある髪に、眼鏡の奥にある目はキリっと横長に伸びている。唇も薄くて、どことなく色気を感じるんだ。
性格も優しいし、見た目もカッコいいのに、なんで恋人が出来ないのか俺なりに考えてみた事がある。
――ぜぇーったい、前髪が長すぎるからだ。
前髪で顔が隠れちゃってんの勿体ないし、みんな怖いとか言ってるけど、そのせいで近寄りがたい雰囲気が出てんだと思う。
一度、前髪を切ったらモテるんじゃない?と言いかけて止めた時があった。
それは俺が美森のカッコよさを、きっと誰にも――
ハッとして、悪い考えを振り払うように、何度も口をゴシゴシ擦ると「もう付いてないですよ。」と今度は揶揄うように笑われた。
「てか、敬語使えって。」
ドキドキすんだろ。
美森はキョトンとした顔で「使ってますよ。」と言ってくる。
さっきだよ。無自覚かよ。タチ悪りぃな。
なんて心の中で悪態を吐くけれど、顔は上げられなかった。
だって俺、絶対に、いま、顔まっか。
……まぁでも、酔っぱらいだし顔は赤いか!
気を取り直して酒を飲もうと、ジョッキに口を付けたところで、空だった事に気づく。
あ、さっき飲み干したんだっけ。
「ふんふふ~ん、今度は~ハイボールにしよ~。」と鼻歌まじりにメニューを開くと、すぐに上から奪われてしまった。
「先輩、もうダメですよ。お水飲みましょう。」
いつの間に移動したのだろうか。
上を見ると、水を片手に優しい笑顔を浮かべた美森がいた。
一人分しかない狭いソファに体を寄せて、俺の背中に手を置き、もう片方の手では口元まで水を運んでくれる。
顔が良いだけじゃなくて、優しいんだ、コイツは。
皆んなが来なくなった飲み会も、いつも最後まで一緒にいてくれる。
俺が酒を飲み過ぎたら、こうやって優しく介抱してくれる。
――それに、
水を拒否するように手を退けて、美森の服をギュッと掴んだ。
顔を引き寄せて、小さな声で言う。
「美森、キス……。」
「はいはい。」
――酔っぱらってキスをねだる俺に、キスしてくれるんだ。
ガヤガヤと賑わう店内の中で、水を机に置く音がやけに響いて聞こえた。
俺の頬にやさしく手を添えると、唇を重ねてくれる。
軽く触れるだけの、
酔っぱらいに付き合わされているだけの、
何も感情が乗っていない、キス。
服を強く握りしめると、今度は美森が俺の手を止めるように掴んだ。
「皺になりますって。」
何も思っていないような態度に腹が立つ。
……腹が立つ。
かまうもんかと、服をグイグイと引っ張り、顔をもう一度引き寄せた。
「もう一回、する?」
「敬語。」
「はぁ、もう一回しますか?」
「眼鏡外して、今度はちゃんとしろ。」
唇をわざとらしく突き出して目を閉じると、眼鏡を外して美森はもう一度キスをしてくれた。
重ねるだけの、虚しいはずのキスなのに、俺の心は満たされる。
好きでもない奴に、こんなこと……、
優しくないと出来ないだろう。
なぁ本当は、酔ってキス魔になるんじゃなくて、その優しさに漬け込み、酔った勢いで好きな奴にキスをねだる男だと知ったら、
さすがの美森でも、軽蔑するかな。
その奥にある、ギリギリ二人で入られるような、小さな個室に後輩と二人きり。
……そう、二人きり。
俺は四杯目のビールを飲み干すと、ジョッキを思いっきり机に置いた。
「なんだよ!どいつも、こいつも!」
大きな声で叫ぶように言うと、大学の後輩――美森が溜息をこぼして、咎めるような目でこちらを見てくる。
「先輩、危ないです。
仕方ないでしょ、佐藤先輩も、田中先輩も、みーんな先輩より、彼女さんの方が良いんですって。」
「だぁー!なんで、俺達だけ彼女できないんだよ。
去年まで、みんな「恋人いらねぇ」って朝まで呑んでたのに!」
そう去年までは、みんな恋人がいなくて、朝まで大人数で飲んでいた。
なのに、裏切りやがって……!
なにが「彼女作るより、こうやって遊んでいる方が楽しい。」だよ。なにが「お前と朝までバカ騒ぎする方が楽しい」だよ。
最後の希望だった、佐藤と田中まで裏切りやがって……!
イライラしながら目の前にあった、からあげを口に放り込む。
「みんな、その程度だったんですよ。
俺がいるから良いじゃないですか。
俺だけは、ずっと先輩に付き合いますよ。」
美森は俺の口元へ手を伸ばし、親指でなぞるように唇を撫でて「付いてた。」と、柔らかく笑った。
思わず、その姿に見惚れてしまう。
だって顔がすごく良い!
黒く艶のある髪に、眼鏡の奥にある目はキリっと横長に伸びている。唇も薄くて、どことなく色気を感じるんだ。
性格も優しいし、見た目もカッコいいのに、なんで恋人が出来ないのか俺なりに考えてみた事がある。
――ぜぇーったい、前髪が長すぎるからだ。
前髪で顔が隠れちゃってんの勿体ないし、みんな怖いとか言ってるけど、そのせいで近寄りがたい雰囲気が出てんだと思う。
一度、前髪を切ったらモテるんじゃない?と言いかけて止めた時があった。
それは俺が美森のカッコよさを、きっと誰にも――
ハッとして、悪い考えを振り払うように、何度も口をゴシゴシ擦ると「もう付いてないですよ。」と今度は揶揄うように笑われた。
「てか、敬語使えって。」
ドキドキすんだろ。
美森はキョトンとした顔で「使ってますよ。」と言ってくる。
さっきだよ。無自覚かよ。タチ悪りぃな。
なんて心の中で悪態を吐くけれど、顔は上げられなかった。
だって俺、絶対に、いま、顔まっか。
……まぁでも、酔っぱらいだし顔は赤いか!
気を取り直して酒を飲もうと、ジョッキに口を付けたところで、空だった事に気づく。
あ、さっき飲み干したんだっけ。
「ふんふふ~ん、今度は~ハイボールにしよ~。」と鼻歌まじりにメニューを開くと、すぐに上から奪われてしまった。
「先輩、もうダメですよ。お水飲みましょう。」
いつの間に移動したのだろうか。
上を見ると、水を片手に優しい笑顔を浮かべた美森がいた。
一人分しかない狭いソファに体を寄せて、俺の背中に手を置き、もう片方の手では口元まで水を運んでくれる。
顔が良いだけじゃなくて、優しいんだ、コイツは。
皆んなが来なくなった飲み会も、いつも最後まで一緒にいてくれる。
俺が酒を飲み過ぎたら、こうやって優しく介抱してくれる。
――それに、
水を拒否するように手を退けて、美森の服をギュッと掴んだ。
顔を引き寄せて、小さな声で言う。
「美森、キス……。」
「はいはい。」
――酔っぱらってキスをねだる俺に、キスしてくれるんだ。
ガヤガヤと賑わう店内の中で、水を机に置く音がやけに響いて聞こえた。
俺の頬にやさしく手を添えると、唇を重ねてくれる。
軽く触れるだけの、
酔っぱらいに付き合わされているだけの、
何も感情が乗っていない、キス。
服を強く握りしめると、今度は美森が俺の手を止めるように掴んだ。
「皺になりますって。」
何も思っていないような態度に腹が立つ。
……腹が立つ。
かまうもんかと、服をグイグイと引っ張り、顔をもう一度引き寄せた。
「もう一回、する?」
「敬語。」
「はぁ、もう一回しますか?」
「眼鏡外して、今度はちゃんとしろ。」
唇をわざとらしく突き出して目を閉じると、眼鏡を外して美森はもう一度キスをしてくれた。
重ねるだけの、虚しいはずのキスなのに、俺の心は満たされる。
好きでもない奴に、こんなこと……、
優しくないと出来ないだろう。
なぁ本当は、酔ってキス魔になるんじゃなくて、その優しさに漬け込み、酔った勢いで好きな奴にキスをねだる男だと知ったら、
さすがの美森でも、軽蔑するかな。
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