トラットリア・ガット・ビアンカ~心をほんの少し上げる甘エビカツ~

佐倉伸哉

文字の大きさ
1 / 5

1. 実は、禁止されてます

しおりを挟む
 北陸は雪国、だから夏は涼しいのでは? 東京生まれの新田にった晴継はるつぐはそう思っていた。
 しかし……現実は違った。金沢はしっかり暑かった。それどころか、フェーン現象で日中の最高気温が35℃を超える事もあるくらいだ。雪国でも、夏は暑い。その現実をしっかりと突き付けられてしまった。
 8月に大学の夏休みが始まると、晴継はバイトのシフトを増やした。一人暮らしをしている身、少しでも稼げる時は稼いでおきたかった。それは9月になってからも変わらず、残暑の中も昼・夜に働いた。
 昼休み時間中、コンビニでアイスを買ってお店に帰る晴継。最近はこのアイスが仕事中のご褒美みたいになっている。店主の智美さんも、たまに「私の分も買ってきて」とお願いされる事がある。因みに、金沢はアイスの消費量日本一だ。
 アイスを溶かさないように、早く帰らないと。自然と歩くスピードが上がる晴継だが、とある光景が目に留まった。
 国道359号線からひがし茶屋街へ続く通り、観光客と思われる人達が手にしているのは、ソフトクリーム。他にも、抹茶味のアイスや金箔の乗ったソフトを手に一時の涼を味わう人も。
 しかし、そんな人達に対して、晴継はモヤモヤとした気持ちになる。
(……食べ歩きは禁止されているんだけどなぁ)
 実は知られていない事なのだが、ひがし茶屋街とそこに通じる道路ではされている。地元町会が定めた条例にはしっかりと明記されているが、アイス等の持ち歩き出来る飲食物を販売している店はそこに住んでない事をいい事に無視している。さもOKのように食べ歩きがあちこちで見られるが、実は禁止されている行為である事を観光客は知らない。
 しかし、わざわざ「それ禁止されてますよ」と注意するのも気が引けるし、楽しい気分の観光客とトラブルになるのも嫌だ。晴継は見て見ぬフリをして、お店に急いだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

処理中です...