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06. 一回裏
しおりを挟む『後に守ります、大阪東雲の守備を紹介します……』
場内アナウンスでポジション順に名前が読み上げられていく。その中で今日大阪東雲の先発投手・長瀬が投球練習を行う。
長瀬は一年生ながら秋の大会からエースナンバーを託された。一九〇センチを超える長身から繰り出される最速一五六キロのストレートとツーシーム、それに落差の大きいフォークを武器に奪三振を取るスタイルの本格派だ。細かい所を狙わず力で捻じ伏せるタイプと言えよう。
泉野高の切り込み隊長である樫野、続く西脇と大本が長瀬の投球を食い入るように見つめている。いや、“見ている”と言うよりかは“呆然と眺めている”と表現した方が正しいか。
何度か一四〇キロ中盤のストレートを投げるピッチャーを対戦してきた経験はあるが、一五〇キロ超の投手は初めてだった。十キロ増えるだけで次元が違っていた。体感速度ではもっと早いように映る。
長瀬のストレートはは常時一五〇キロ前後。普段練習で使用している打撃マシン(北信越予選進出のお祝いに学校から進呈されたのだが、予算の都合上他校が買い替えた際に使わなくなった中古を譲ってもらった)の上限は一四〇キロなので、ストレートの早さに目が慣れるまで一巡目は捨てたも同然か。
そして長瀬の投球練習が終わり、いよいよ泉野高の攻撃が始まる。
『一番 レフト 樫野君』
樫野はチーム一の俊足で、おまけに選球眼も良く小技も利く。内野安打も期待出来るので、切り込み隊長の役割を任されていた。
初球。長瀬の躍動感溢れる投球フォームから放たれたストレートは若干高めに浮いたが球威に押される形で樫野が空振り。球速は一四七キロ。
スコアボードに表示された球速の数値を目にした新藤が眉をしかめた。二球目もストレートだったが空振り。あっという間に追い込まれた。
三球目。外角低めへのストレート。樫野は自信を持って見送る。コースギリギリのボールだったが、果たして判定は……?
『ストライクアウト!!』
主審の腕が上がる。ストライク判定に樫野も思わず天を仰いだ。
最後のボールも球速は一四五キロ。自己ベストからおよそ十キロも遅い。その数値を見て新藤の表情が曇った。
二番の西脇、三番の大本も三球三振に仕留められ、泉野高の攻撃は呆気なく終わってしまった。九球全てストレートだったにも関わらず、一球もバットに当てられなかった。
……元々打撃面は壊滅的に弱いので、落胆はしていない。味方の援護が来るまで粘る。いつもと同じように投げ続けるのみだ。大本の三振を見届けた岡野はゆったりとベンチから出て行った。
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