稀血の令嬢は普通に生きたい 〜王子からの溺愛と執着は日常ですか?〜

ひまわり

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第2章

20.君への気持ち(ルシアside)

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今思えば、それは一目惚れだったんだろう。

生徒会室の執務を終え、窓の外に視線を向ける。ちょうど見える中庭に、ミラの姿が見えた。

(元気になって良かった。)

友人と談笑している姿を見て安堵する。
孤児院での出来事は、彼女のことを知る大きなキッカケとなった。

倒れる前の彼女の表情が、頭からは離れない。
不安、恐怖、戦慄…そんな言葉を全てかき集めたようだった。
そして、2回の表情の変化のキッカケに共通点としてあるのは『治癒の血』に関するものであること。

思えば初めて会った日から、彼女は何かを抱えているように思えた。
その引っ掛かりが解けたようにも思う。

確かめる術も無いが、きっと彼女は『治癒の血』を持つのだろう。

今の情勢が彼女にとって心地良いものではないことを思うと胸が痛む。
彼女の不安や恐れを自分が和らげたいと思うのに、表立って何かを起こすこともできないもどかしさがある。

せめて、身に迫る危険は排除できたらと思い、自分の魔力から作った魔石を渡した。
彼女に危険が及んだ時は反応し、場所が分かるようになっている。



「あらあら殿下、またミラちゃん眺めちゃって~。」

後ろには、資料の片付けから戻ったイオがいた。

「……可愛いから仕方ない。」

「もうゾッコンじゃないですか。」

「……。」

「殿下の独占欲バレバレですよ、ミラちゃんの耳。あれはどう見ても2人の仲を勘違いさせますよ。」

「嫌がってなかった。」

「ダメダメ、殿下を拒否できる人いないですから。ミラちゃんに思いを伝えたら良いじゃ無いですか。」

「…まだ、その時じゃ無い。」

「そんなこと言って…ミラちゃんが可哀想。絶対モテるのにあれじゃあ誰も狙えないですよ。」

それも目的の一つ…なんてことは、口には出さない。


彼女に気持ちを伝える、
それはどんな言葉が良いんだろう。

自分の立場を考えると、彼女と一緒にいることを望むことは、簡単な話では無い。


(ミラに、惚れている…)

愛しさを感じる、そんな言葉じゃ滑稽こっけいに思えるほど、彼女を前にすると自分の心が疼くのだ。

彼女が抱えているもの、それも全部まとめて受け止めたい。受け止めて安心させたい。
それを彼女が認めてくれたら、どんなに嬉しいだろう。

自惚れているかもしれないが、彼女も自分のことを好いていると感じている。

でも、自分の一声は、彼女の人生を縛り付けてしまう力を持っている。
それも考えて、慎重に事は進むべきだ。

「絶対に手放すつもりはないよ。」

「早く伝えるべきですよ。」

「…その通りだ。」

「そういやリネット嬢が探してましたけど。」

「執務が終わらないと伝えてくれ。」

「……了解です。」

イオが既に整えられた机を一瞥いちべつしたことには、知らないふりをした。

生徒会室からイオが出ていく音がする。

リネット嬢は公爵家のご令嬢であり、彼女が自分に好意を持っていることも知っている。婚約者であると周りに言ったりもしてるようだが、全く身に覚えはない。

立場上、『婚約者候補』であると言う事実が存在するだけである。
面倒ではあるが、何が実害がある訳でもないため普段は適当に流している。

(イオにはその態度が勘違いさせる、と怒られ
たりもしたが…)



窓の外にいる彼女がこちらを向いた。

驚いた表情の後、微笑みを向けてくれる。



(君を離すつもりは全く無いよ。)



彼女が振ってくれる手に、自分も手で返事をした。




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