稀血の令嬢は普通に生きたい 〜王子からの溺愛と執着は日常ですか?〜

ひまわり

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第3章

31.家族への報告

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あの日の後、殿下から正式に婚約の手続きを進めることを伝えられた。
ただでさえ自分の一存で進められる話ではないのに、王家が絡むとなると家族の理解と承諾は必至である。

ミラは家族に自分の決意と婚約についての話をする場を設けた。
普段から自分が過ごしている家なのに、緊張感がある空気が広がっている。

「お父様、お母様、そしてお兄様。お伝えしたいことがあります。」
父が静かに頷き、促す。
ミラはひとつ、深く息を吸った。

「私は、『治癒の血』を持つ者として、隣国との交渉の場に立ちたいと思っています。先日、お父様とお兄様の話しているところを聞きました。私にできる役割を、私に与えて欲しいのです。」

母の瞳が大きく見開かれる。父の表情はすぐには動かず、じっと自分を見つめていた。

「これは、私の決意です。危険なことも分かっていますし、怖さもあります。
それでも、何もせずにはいられないのです。」

父がようやく口を開いた。低く、しかし重みのある声だった。

「ミラは、ずっと優しい子だった。
…だが、いつの間にか、そんな強さも持っていたんだね。」

口元が綻び、優しい表情で語りかけるように言う。

「さすが、我が娘だ。己の道を選び、望む未来のために進みたいの願うのならば――
父として、その背を押すのが義務だな。」

愛情を感じる言葉、視線、そして表情に、思わず涙が滲んだ。
母と兄も、ぎゅっと手を握りしめながら微笑んでいた。

「…でも、無理はしてはダメよ。」
「そうだ、行くとしても殿下や僕も一緒になる。一人じゃないからね。」

順番に二人の目と視線を合わせた後、深く頷いた。

「…あと、もう一つご報告があります。ルシア殿下と婚約することになりそうです。」

ガタッ、と、母が立ち上がる。

「えっ?!婚約?!まあそんな感じはしていたけれど…いつの間に!?エレナからも聞いてないわよ。」

それもそのはず、自分から持ちかけた話なので、まだ王妃様にも届いていないのだろう。

「それは…私から殿下にお伝えしましたので…」


「「「え?」」」



今度は3人の声が見事に揃った。

「私からって、ミラ…あなたそんなに情熱的な子でした?!」

驚きすぎて母が敬語になっていた。

「はい、でも、その後に殿下も想いを伝えてくださいました。」

その時のことを思い出し、家族に話すのは照れ臭い。

「ははっ、なんだかんだ言ってやっぱり母娘は似るものだな。さすがだ、ミラ。
ほら、シオンも見習う必要があるな。」
「いいんですよ、僕はまだ。」

父が可笑しくて仕方ないようで笑い出した。
これ以上深掘りされるのは御免だと思い、自分から言葉を続ける。

「殿下は、私に想いを告げると同時に、私のことを受け入れてくれました。
そして、これから一緒に進んでいくことを約束しました。」

自分で発する言葉でさえも、心強さになった。
殿下と、そして目の前にいる家族が、いつも自分の味方でいてくれるのだ。
とても幸せなことだろう。

ミラは立ち上がり、深く一礼をした。

「聞いてくださり、ありがとうございます。お父様、お母様、お兄様、大好きです。」



その日は、王宮においても、ルシアから婚約についての話が進められていた。
ちょうど話がひと段落したところで、王家からの誓約書が届いたのであった。



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