稀血の令嬢は普通に生きたい 〜王子からの溺愛と執着は日常ですか?〜

ひまわり

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第3章

33.婚約披露宴①

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少しずつですが更新していきますので引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m
◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆


ー数ヶ月後

儀式の直前、控室では王妃ーーエレナ王妃がミラに声をかけていた。

「まぁ…やっぱり、よく似合っているわ。あの子が選んだだけのことはある。」

「王妃様、ありがとうございます。」

恥ずかしさもあり、歯に噛むような笑顔になる。
それが分かったかのように、エレナ王妃はふふっと微笑む。

「デザインも生地も真剣に選んでいたわ。選び終わった後、あの子ったら、“絶対に似合う”って断言してたの。それはもう、王妃である私でも何も言えないほどの自信で。」

ミラは頬を赤らめた。
殿下から今日の日のために、と頂いたドレスは、”彼の色”そのものであった。

透き通るような彼の髪色と同じ銀糸を編みこまれたドレスは、揺れるたびに淡く煌めく。
裾や胸元には、彼の瞳を思わせる深いエメラルドの刺繍が施されていた。

それは、殿下が婚約を正式に決意した後、密かに王宮の衣装職人に依頼して作らせたものだった。
“自分の色を纏わせる”ことは、王族にとって最大の庇護と所有を意味するーー
それが公開の場で許されたということは、国王と王妃の承認を示すものでもあった。

(そんな素敵なドレスを、今日着ることができて嬉しい。)



エレナ王妃はミラの手を優しく包み込んだ。

「あなたのような子が、息子の隣に立ってくれるなら、私は安心できます。
これから大変な道が待っているでしょう。けれどーーどうか、自分を見失わないで。
私もいつでも味方です。」

「……はい。ありがとうございます。
ルシア殿下と共に歩んでいきます。」 

あれから幾度なく繰り返す決意を告げる。
王妃は静かに頷く。

「あなたはもう、私たちの家族ですもの。誇りに思いますよ。」

心からの温かい言葉に、緊張で固まった体が解れるのを感じた。 


「もうそろそろね、また後で会いましょう。」

深く一礼を返す。
美しい笑顔に見惚れながら、案内人に誘導され正殿の前まで移動した。


正殿の前にある控室の扉が、音もなく開かれる。

光が射し込む先ーー
そこにいたのは、ルシア殿下。


青色と金色で縁取られた正装、胸には家紋の刺繍と騎士団章。
正装に身を包んだその姿は、王国の誰よりも凛々しく、威厳と気品をまとっていた。

ミラと視線が合ったその瞬間、
殿下の瞳にふっと、柔らかな驚きとーー言葉にならない“息”が走ったのが分かった。

(……え?)

一瞬、世界が止まったように感じた。

殿下は、声を発さず、ただその場で立ち尽くしていた。
ミラの足音にさえ、気づいていないのではと思うほどにーー目が、自分に釘付けだったのだ。

(そんな、顔……)

初めて見る表情だった。
何かを恐れ、何かに感動し、何かを深く、深く求めているーー
そんな、痛いほどの想いがにじむ瞳。

やがて彼は、一歩だけ、ゆっくりと近づいてきた。

「……言葉が、出ない。」
それは、ささやきのような本音だった。

ミラは思わず視線を落とす。

「とても…とても素敵なドレスです。ありがとうございます。」

「……あまりに綺麗で、怖くなるほどだ。」

冗談のようで、本当の想いから出ている言葉であることをミラは瞬時に悟った。

「ミラがこのドレスを着て、私の隣にいて、今から婚約をおおやけにできるなんて……想像していた以上の幸せだよ。」

その言葉に、ミラの胸がきゅっと締めつけられた。
思えば、こんなに近くで会うのは久しぶりだ。
殿下の服装も、”私の色”を意識していることが伝わる。

(私を想ってくれる貴方を、私も想っています。)



殿下は手袋を外し、そっとミラの手に自分の素手を重ねる。

ミラの手に、王子の手がそっと重なる。

「君が、今日、俺の隣に立ってくれる。それを何よりも愛しく思う。
ーーこれからも、この手を離さないでいて。」

ミラは微笑み、頷いた。

「……ルシア殿下、ありがとうごさいます。」

ミラはその手をしっかり握り返した。
不安もあったが、それに勝る胸の高鳴りが確かにあった。
もう怯えるだけの私ではないのだ。

(少なくとも今日の私は、自信を持って殿下の隣に立とう。)


彼のエメラルドの瞳の中に映る自分が、少しだけ誇らしく思えた。





「それでは、入場になります。」


案内人から声が掛かる。

厳かな鐘の音が三度、王城の天上に鳴り響いた。


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