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第一章
第4話 宇宙海賊ミーティア
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宇宙船には大きな窓が各所に設置されている。
己の背丈よりはるかに大きなガラスに虚空がうつりこんでいた。
宇宙空間にも耐え得る特殊なガラスなのだろうとはわかるが、真っ暗な宇宙にスペースデブリが浮いている。
もしも、これがこの船にぶつかったら。戦場でしなかった想像に足がすくんでしまう。
「置いてくよー?」
先導するメテオラが振り返る。
照明にてらされて細い金髪がキラキラと輝いた。
夜道の月明かりのようだった。
恐怖を飲み込んで足を先に進める。
「いま行く」
テラはメテオラのあとをついていく。
医務室や各セクションのリーダーの個室、随所にあるトイレなど案内される。
もうすぐパーティー会場の食堂だという。
「じゃあ目とじてね。呼んだら入ってきてね」
いわれるままテラは目を閉じる。
自動ドアの開く音の後、奥から入っていいよーの声がする。
まっすぐ白い自動ドアを見る。この向こうに、どんなひとがいるのだろう。
不安に思いつつも一歩踏み出す。
扉が開く。途端に拳銃のような乾いた破裂音。思わず銃を構えそうになった。
「ようこそ、宇宙海賊ミーティアへ!!」
狙撃銃に手をかけたところに紙だのテープだのが舞い降り、大勢の歓迎する声に飲まれて思わず数歩後ずさる。
きちんと人数を把握するのは難しい。
食堂には百名を超えているであろう人数が集まっている。
「びっくりさせすぎちゃったかな。ここにいるみんながミーティアだよ」
メテオラは出迎えられたことを嬉しそうに笑い、使い終わったクラッカーを入り口近くのゴミ箱に捨てる。
「クラッカー、だったのか」
テラはクラッカーすら拳銃と勘違いした己に悲しさを覚えていた。
クラッカーを鳴らすための少量の火薬すら硝煙と勘違いしてしまった己に滅入ってしまった。
それを知ってか知らずかメテオラはぐいぐいとテラの手を引っ張り、食堂のいちばん人目の集まるところへ連れていかれる。
マイクを片手にミーティアはアーアーとテストしてから口上を述べた。
「今日から我々で保護するテラ君です。詳細はご本人から言っていただきましょう。どうぞ」
テラは唐突なフリに驚くも押しつけられたマイクをどうすることもできなかった。
メテオラの期待という圧力に抵抗しきれなかったのだ。
「……テラ・ルインバース、です。軍で狙撃手をして……いました。よろしくお願いいたします」
勝手が分からず軍でのことを言ってしまったが問題なかっただろうか、と逡巡する間に割れんばかりの拍手がわき起こった。
誰もがテラを歓迎していた。軍属だったことなど気にしていないようだった。
「不安がる必要なんてないよ。みんないいひとだからね」
マイクを返す際にメテオラはウインクしてそう囁いた。
心のそこからそう信じている、知っているような口振りだった。
「それじゃあテラ君を歓迎して、かんぱーい!」
その一言をきっかけに、あとはもうお祭り騒ぎだった。
船員たちは料理をつまみながらあちこちで楽しそうに会話をしている。
その喧騒のなかテラはメテオラに案内されて彼女の横に座る。
正面にはヘリオスと知らない男性、そしてテラよりも幼い子供が美味しそうに付け合わせの小皿をちまちま食べていた。
そして料理の最高峰を知った。
まず、くちをつけたジュースがおいしい。
しばらく乾いた戦場では、最低限の水くらいしか飲んでいなかったテラには、果実を絞って炭酸で割った飲み物は宝石より価値があるように思えた。
次に食べ物が美味しい。
戦場で上等なものを望むことを忘れていた。限られた供給でかわりばえのしないメニューを、繰り返し食べていた昨日までが嘘のようだ。
見たことのない赤いタレのからんだ、おそらく鶏あたりだろうフォルムの照り焼き肉がテーブルの中央にドンと置かれている。
パリッと焼き上がったそれからは甘辛い匂いが漂っている。
如何にしてそれを食べるか考えあぐねているテラに、メテオラは遠慮しないで食べてね~~と言いながら、その肉に遠慮なくナイフを入れた。
むちむちとした白い身が肉汁と共にあふれでる。
テラは思わずあふれでる唾液を飲み込んだ。
渡されたフォークでそれをくちに運べば、じゅわっと肉の旨味と皮の甘辛いタレがくちいっぱいに広がった。
戦場で麻痺した味覚を叩き起こすような鮮烈な味だった。
あまりの美味しさに涙があふれそうになるのを抑えながら、取り分けられた分を食べ進む。
それだけでは足りずに次の部位に手をのばしてしまった。
それをメテオラにニマニマと生暖かい目で見られていることに気づいて何となく手を引っ込めた。
一旦冷静になりテーブルの他の料理を見る。
それぞれ配られた器には透明なスープが入っている。
白くて柔らかそうな団子のようなものが浮いている。
おそるおそる食べてみればもちもちとした食感で、それだけでお腹にたまりそうだ。
そしてほんの少しくちに含んだだけのスープが、とてもおいしかった。
さらりとした口当たりのスープがもちもちの団子ととても相性が良い。
スープだけ飲んでみれば、照り焼き肉の味をさっぱりさせるようなさわやかな味わいだった。
全てを洗い流してすっきりさせるような、ずっと飲んでいられるような、しつこさのないスープだ。
この世にこんな美味しいものが存在したのか、と感嘆の息を漏らす。
そのスープはテラのスープ観をまるきり変えるほど美味しかった。
「気に入ってくれた~~? うちの自慢の料理人の自慢の料理です」
メテオラはにこにこと話しかける。
となりには熊のような威圧感の大男が立っている。
軍にもこんな巨漢はそうはいなかった。
「……………………」
髭を生やした髪の短い男が、何かを言いたげにじっとテラを見つめている。
「……えっと、美味しい、です」
感想を求めているのだろうか、と思い素直に伝える。
少ない語彙で、できる限りの言葉を尽くしたかったが、結局美味しいに帰結する。
「……それはよかった」
地を揺らすような低い声で、おそらく安堵したのだろう。
ため息をついた。そしてそのまま厨房へと行ってしまった。
他に何か声をかけるべきだったろうか、と考えを巡らせたが上手く言葉が選べなかった。
こんな美味しい料理で何故不安になる必要があるのだろうか、とテラはサラダを食べながら疑問に思った。
こちらは大皿で二種類置かれていた。さっぱりした胡麻風味で具だくさんのソースとクリーミーでもったりとした具のないソースだった。
それぞれのソースの美味しさは言うまでもなく、野菜の新鮮さに驚く。
こんな栄養も豊富そうな張りのある野菜を維持できるのなら、故郷の家族も保存食には苦労しなかっただろうに、と少し罪悪感に駆られた。
「レーフ……あのだんまり料理人はね、テラが戦場帰りだから消化器官が弱ってないか心配だったんだよ。
その様子だと、特に栄養面では問題なさそうだから安心したのさ」
正面に座っているヘリオスが機嫌良さそうに氷をカラリと揺らしながらジュースを傾けている。
……もしかしたらジュースではなく、アルコールかもしれない。
それ独特の香りが漂ってくる。
「ヘリオスってばお酒飲んでる~~! 新人の前で気を抜きすぎじゃないの? ボクにメカニックの座を奪われちゃうぞ!」
「バカ言うな、そういうのは整備が上手くなってから。あんたは作るのは上手いけど直すのはヘッタクソだろう?」
スバルと呼ばれた幼い少年は、照り焼き肉を食べた唇をペロリとなめてヘリオスをからかった。
しかし彼女はちっとも相手にしていない。
「へーんだ、いずれ追いつきますー。……それよりもお前、テラだっけ。それがこの星の狙撃銃? 見せて!」
挨拶をする間もなく、幼い少年は手をのばしてくる。
渡そうか迷ったものの、ヘリオスがすぐに止めた。
「スバル、いまはご飯に集中だ、そういうことはやめるんだね。テラも相手にしなくていいよ。だいたい、挨拶だってまだなんだから」
そう言うとヘリオスはテラに向き直った。
「改めまして、だ。テラ。アタシはヘリオス。いまはミーティアでメカニック……主に機械修理だな。そんなことをしているよ」
ヘリオスにならってスバルと呼ばれた少年も胸をはる。
「ボクはスバル。この船の天才雑用係だよ」
「雑用係」
何故雑用係でこんな胸をはっているのだろう。
そもそも天才雑用係とは何だろう。
ただの雑用係ではないのだろうか。
今度はメテオラが身振り手振りをまじえて自慢するように言う。
「スバルはすごいよ、大抵のことができるからね。洗濯とか掃除とか。わたしもたくさん頼らせてもらってるよ!」
テラは内心、やはり普通の雑用係ではないのだろうか、と思った。
それを見破ったのかスバルは不満そうな顔をする。
「ふーんだ。いずれボクのすごさを思い知りますよー」
メテオラはクスクスと笑い、そういえば、と話を区切り表情を変えた。
「これからテラ君の家族を助けるわけだけど、テラ君自身はそのあとどうするの?」
「えっ?」
考えてもなかった質問に、思わずすっとんきょうな声が出てしまう。
「テラ君に頼まれたから家族は助けるよ。どっかの良さげな惑星に移住でも、同じ惑星のまま、いい国に移住でも、もちろんそれ以外でも何でもやるよ。でもさ、テラ君自身がそのあとどうしたいかはまだ聞いてなかったなって。どうする?」
メテオラの瞳を覗き込む。冗談やからかいではなく、純粋に今後を聞いている。
しかしテラには、いまどんな選択肢があるかすらわかっていなかった。
てっきりこのまま、宇宙海賊に所属するものだと思い込んでいた。
「一応ミーティアにもルールがあってね。そのうちのひとつが『自分の道は自分で選ぶ』だよ。これがいちばん大事なルールかな」
これまでにない真剣な顔でメテオラははっきり告げた。
流されるまま宇宙海賊にはさせない、という意思を持っていた。
「自分の道は、自分で」
テラはくちのなかで繰り返してみる。しかしピンと来ない。
自分の意思はしばらく手放していた気がする。
指令のまま戦場へ行き、戦場だったから人を殺すような、虚ろな兵士になっていた。
「俺は、俺の、したいこと」
テラには、家族を助けたあとの未来を思い浮かべることができなかった。
己の背丈よりはるかに大きなガラスに虚空がうつりこんでいた。
宇宙空間にも耐え得る特殊なガラスなのだろうとはわかるが、真っ暗な宇宙にスペースデブリが浮いている。
もしも、これがこの船にぶつかったら。戦場でしなかった想像に足がすくんでしまう。
「置いてくよー?」
先導するメテオラが振り返る。
照明にてらされて細い金髪がキラキラと輝いた。
夜道の月明かりのようだった。
恐怖を飲み込んで足を先に進める。
「いま行く」
テラはメテオラのあとをついていく。
医務室や各セクションのリーダーの個室、随所にあるトイレなど案内される。
もうすぐパーティー会場の食堂だという。
「じゃあ目とじてね。呼んだら入ってきてね」
いわれるままテラは目を閉じる。
自動ドアの開く音の後、奥から入っていいよーの声がする。
まっすぐ白い自動ドアを見る。この向こうに、どんなひとがいるのだろう。
不安に思いつつも一歩踏み出す。
扉が開く。途端に拳銃のような乾いた破裂音。思わず銃を構えそうになった。
「ようこそ、宇宙海賊ミーティアへ!!」
狙撃銃に手をかけたところに紙だのテープだのが舞い降り、大勢の歓迎する声に飲まれて思わず数歩後ずさる。
きちんと人数を把握するのは難しい。
食堂には百名を超えているであろう人数が集まっている。
「びっくりさせすぎちゃったかな。ここにいるみんながミーティアだよ」
メテオラは出迎えられたことを嬉しそうに笑い、使い終わったクラッカーを入り口近くのゴミ箱に捨てる。
「クラッカー、だったのか」
テラはクラッカーすら拳銃と勘違いした己に悲しさを覚えていた。
クラッカーを鳴らすための少量の火薬すら硝煙と勘違いしてしまった己に滅入ってしまった。
それを知ってか知らずかメテオラはぐいぐいとテラの手を引っ張り、食堂のいちばん人目の集まるところへ連れていかれる。
マイクを片手にミーティアはアーアーとテストしてから口上を述べた。
「今日から我々で保護するテラ君です。詳細はご本人から言っていただきましょう。どうぞ」
テラは唐突なフリに驚くも押しつけられたマイクをどうすることもできなかった。
メテオラの期待という圧力に抵抗しきれなかったのだ。
「……テラ・ルインバース、です。軍で狙撃手をして……いました。よろしくお願いいたします」
勝手が分からず軍でのことを言ってしまったが問題なかっただろうか、と逡巡する間に割れんばかりの拍手がわき起こった。
誰もがテラを歓迎していた。軍属だったことなど気にしていないようだった。
「不安がる必要なんてないよ。みんないいひとだからね」
マイクを返す際にメテオラはウインクしてそう囁いた。
心のそこからそう信じている、知っているような口振りだった。
「それじゃあテラ君を歓迎して、かんぱーい!」
その一言をきっかけに、あとはもうお祭り騒ぎだった。
船員たちは料理をつまみながらあちこちで楽しそうに会話をしている。
その喧騒のなかテラはメテオラに案内されて彼女の横に座る。
正面にはヘリオスと知らない男性、そしてテラよりも幼い子供が美味しそうに付け合わせの小皿をちまちま食べていた。
そして料理の最高峰を知った。
まず、くちをつけたジュースがおいしい。
しばらく乾いた戦場では、最低限の水くらいしか飲んでいなかったテラには、果実を絞って炭酸で割った飲み物は宝石より価値があるように思えた。
次に食べ物が美味しい。
戦場で上等なものを望むことを忘れていた。限られた供給でかわりばえのしないメニューを、繰り返し食べていた昨日までが嘘のようだ。
見たことのない赤いタレのからんだ、おそらく鶏あたりだろうフォルムの照り焼き肉がテーブルの中央にドンと置かれている。
パリッと焼き上がったそれからは甘辛い匂いが漂っている。
如何にしてそれを食べるか考えあぐねているテラに、メテオラは遠慮しないで食べてね~~と言いながら、その肉に遠慮なくナイフを入れた。
むちむちとした白い身が肉汁と共にあふれでる。
テラは思わずあふれでる唾液を飲み込んだ。
渡されたフォークでそれをくちに運べば、じゅわっと肉の旨味と皮の甘辛いタレがくちいっぱいに広がった。
戦場で麻痺した味覚を叩き起こすような鮮烈な味だった。
あまりの美味しさに涙があふれそうになるのを抑えながら、取り分けられた分を食べ進む。
それだけでは足りずに次の部位に手をのばしてしまった。
それをメテオラにニマニマと生暖かい目で見られていることに気づいて何となく手を引っ込めた。
一旦冷静になりテーブルの他の料理を見る。
それぞれ配られた器には透明なスープが入っている。
白くて柔らかそうな団子のようなものが浮いている。
おそるおそる食べてみればもちもちとした食感で、それだけでお腹にたまりそうだ。
そしてほんの少しくちに含んだだけのスープが、とてもおいしかった。
さらりとした口当たりのスープがもちもちの団子ととても相性が良い。
スープだけ飲んでみれば、照り焼き肉の味をさっぱりさせるようなさわやかな味わいだった。
全てを洗い流してすっきりさせるような、ずっと飲んでいられるような、しつこさのないスープだ。
この世にこんな美味しいものが存在したのか、と感嘆の息を漏らす。
そのスープはテラのスープ観をまるきり変えるほど美味しかった。
「気に入ってくれた~~? うちの自慢の料理人の自慢の料理です」
メテオラはにこにこと話しかける。
となりには熊のような威圧感の大男が立っている。
軍にもこんな巨漢はそうはいなかった。
「……………………」
髭を生やした髪の短い男が、何かを言いたげにじっとテラを見つめている。
「……えっと、美味しい、です」
感想を求めているのだろうか、と思い素直に伝える。
少ない語彙で、できる限りの言葉を尽くしたかったが、結局美味しいに帰結する。
「……それはよかった」
地を揺らすような低い声で、おそらく安堵したのだろう。
ため息をついた。そしてそのまま厨房へと行ってしまった。
他に何か声をかけるべきだったろうか、と考えを巡らせたが上手く言葉が選べなかった。
こんな美味しい料理で何故不安になる必要があるのだろうか、とテラはサラダを食べながら疑問に思った。
こちらは大皿で二種類置かれていた。さっぱりした胡麻風味で具だくさんのソースとクリーミーでもったりとした具のないソースだった。
それぞれのソースの美味しさは言うまでもなく、野菜の新鮮さに驚く。
こんな栄養も豊富そうな張りのある野菜を維持できるのなら、故郷の家族も保存食には苦労しなかっただろうに、と少し罪悪感に駆られた。
「レーフ……あのだんまり料理人はね、テラが戦場帰りだから消化器官が弱ってないか心配だったんだよ。
その様子だと、特に栄養面では問題なさそうだから安心したのさ」
正面に座っているヘリオスが機嫌良さそうに氷をカラリと揺らしながらジュースを傾けている。
……もしかしたらジュースではなく、アルコールかもしれない。
それ独特の香りが漂ってくる。
「ヘリオスってばお酒飲んでる~~! 新人の前で気を抜きすぎじゃないの? ボクにメカニックの座を奪われちゃうぞ!」
「バカ言うな、そういうのは整備が上手くなってから。あんたは作るのは上手いけど直すのはヘッタクソだろう?」
スバルと呼ばれた幼い少年は、照り焼き肉を食べた唇をペロリとなめてヘリオスをからかった。
しかし彼女はちっとも相手にしていない。
「へーんだ、いずれ追いつきますー。……それよりもお前、テラだっけ。それがこの星の狙撃銃? 見せて!」
挨拶をする間もなく、幼い少年は手をのばしてくる。
渡そうか迷ったものの、ヘリオスがすぐに止めた。
「スバル、いまはご飯に集中だ、そういうことはやめるんだね。テラも相手にしなくていいよ。だいたい、挨拶だってまだなんだから」
そう言うとヘリオスはテラに向き直った。
「改めまして、だ。テラ。アタシはヘリオス。いまはミーティアでメカニック……主に機械修理だな。そんなことをしているよ」
ヘリオスにならってスバルと呼ばれた少年も胸をはる。
「ボクはスバル。この船の天才雑用係だよ」
「雑用係」
何故雑用係でこんな胸をはっているのだろう。
そもそも天才雑用係とは何だろう。
ただの雑用係ではないのだろうか。
今度はメテオラが身振り手振りをまじえて自慢するように言う。
「スバルはすごいよ、大抵のことができるからね。洗濯とか掃除とか。わたしもたくさん頼らせてもらってるよ!」
テラは内心、やはり普通の雑用係ではないのだろうか、と思った。
それを見破ったのかスバルは不満そうな顔をする。
「ふーんだ。いずれボクのすごさを思い知りますよー」
メテオラはクスクスと笑い、そういえば、と話を区切り表情を変えた。
「これからテラ君の家族を助けるわけだけど、テラ君自身はそのあとどうするの?」
「えっ?」
考えてもなかった質問に、思わずすっとんきょうな声が出てしまう。
「テラ君に頼まれたから家族は助けるよ。どっかの良さげな惑星に移住でも、同じ惑星のまま、いい国に移住でも、もちろんそれ以外でも何でもやるよ。でもさ、テラ君自身がそのあとどうしたいかはまだ聞いてなかったなって。どうする?」
メテオラの瞳を覗き込む。冗談やからかいではなく、純粋に今後を聞いている。
しかしテラには、いまどんな選択肢があるかすらわかっていなかった。
てっきりこのまま、宇宙海賊に所属するものだと思い込んでいた。
「一応ミーティアにもルールがあってね。そのうちのひとつが『自分の道は自分で選ぶ』だよ。これがいちばん大事なルールかな」
これまでにない真剣な顔でメテオラははっきり告げた。
流されるまま宇宙海賊にはさせない、という意思を持っていた。
「自分の道は、自分で」
テラはくちのなかで繰り返してみる。しかしピンと来ない。
自分の意思はしばらく手放していた気がする。
指令のまま戦場へ行き、戦場だったから人を殺すような、虚ろな兵士になっていた。
「俺は、俺の、したいこと」
テラには、家族を助けたあとの未来を思い浮かべることができなかった。
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