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男は女の子が憧れる王子様そのものの風貌で、スラリとした長身で金髪に青い瞳、鼻筋は通っていて薄い唇が今は微笑みを湛えている。
対して女は黒髪に紫色の瞳、抜群のプロポーションも相まって、匂い立つような色っぽさを醸し出している。
いつの間に現れたのか?
どこから現れたのか?
疑問ばかりのイリアをよそに、ヴァイオレットは「はじめまして」と挨拶をしている。肝の座り方が違う。
「はじめまして、僕のことはダモンと呼んでくれ」
男は自らを『ダモン』と名乗った。
「私はリリアよ、よろしくね」
女は『リリア』と。
どちらも姓はないようだ。
「私はヴァイオレット、彼女はイリアです。さあ、おかけになって」
平然とヴァイオレットは二人にソファをすすめ、「紅茶かしら、それともワイン?」ともてなしまで始めてしまった。
「二人ともワインで」
「赤?白?ロゼもありましてよ」
「白をいただこう」
ヴァイオレットはワインを取りに部屋を出て行ってしまう、一人取り残されたイリアはかなり焦っていた。
─いやいや、どうしろと?─
表情には出さないようにしていたが、気づかれたようだ。
「ふふ、焦っているわね?安心して、取って食おうなんて思ってないから」
リリアは嫣然と微笑み、余裕を感じさせる。
「僕達は説明しようと思ってね、勘違いされると困るから」
説明?勘違い?イリアには理解し難い言葉が並ぶ。
「お待たせしました、さあどうぞ?」
あまり時間もたたずに戻って来たヴァイオレットが、テーブルにワインとチーズを並べる。ワインは数本持ち込んでいることから、話は長くなると踏んでいるのだろう。
「イリアもワインでよかったかしら?」
「あ、はい…」
まだ動揺が抜けないイリアをよそに、どんどん話が進んでいく。
「乾杯」
ダモンに釣られるようにイリアもグラスを掲げるが、何がどうなっているのか?
「なかなかいいワインだね?どこのかな?」
「これはマサール帝国にあるイーズンという地方で作られているワインですわ」
「マサール帝国は分かるが、イーズンという地方は聞いたことがないな」
「ミュズ山脈の周辺にある街で観光地として有名なんです。前に訪れた時に飲んだワインが美味しくて、個人的に取り寄せておりますの」
「ほお、僕達は狭い世界にいるからなかなか情報が入ってこないんだよ」
「たまには外に出ようとは思いませんの?」
「退屈したら出るかな?」
ヴァイオレットとダモンは当たり前のように会話をしているが、この状況はどうなのだろう?
「このワイン、本当においしいわ。いつもこういうの飲みたい!」
リリアはリリアで一人で勝手に盛り上がっている。
─これでいいのか?─
イリアの心の内を誰も気にかける様子もなく…、そこでふと気づいた。
─この会話、聞かれたらまずくないか?─
今更感はあるが、イリアはヴァイオレットに視線を向ける。が、ヴァイオレットにしてみれば予測できたことなのだろう。
「大丈夫よイリア。声は外に漏れないようにしているわ」
イリアに視線を向けるまでもなく、ヴァイオレットは言う。
「そう、ですか…」
イリアの懸念などヴァイオレットにはお見通しだったようだ。
「ヴァイオレット嬢は遮断魔法が使えるのかい?」
「私が扱える数少ない魔法ですわ」
「便利な魔法を使えるんだな」
「ええ、重宝しておりますの」
魔力持ちでも使える魔法は些細なものが多い、現にイリアは物を浮かせて運べる程度の魔法しか扱えない。
しかしヴァイオレットは遮断魔法と風魔法が扱えるのだ。本人は大したことないと言うが、魔力持ちでも彼女に憧れる者は多い。
それがきっかけでしばらく魔法談議が続き持ち込んだワインがなくなりそうになってきたからだろうか、おもむろにヴァイオレットが話題を変えた。
「さて、世間話はこれまでですわね。あなた方はどうして鏡から出てきたのかしら?」
対して女は黒髪に紫色の瞳、抜群のプロポーションも相まって、匂い立つような色っぽさを醸し出している。
いつの間に現れたのか?
どこから現れたのか?
疑問ばかりのイリアをよそに、ヴァイオレットは「はじめまして」と挨拶をしている。肝の座り方が違う。
「はじめまして、僕のことはダモンと呼んでくれ」
男は自らを『ダモン』と名乗った。
「私はリリアよ、よろしくね」
女は『リリア』と。
どちらも姓はないようだ。
「私はヴァイオレット、彼女はイリアです。さあ、おかけになって」
平然とヴァイオレットは二人にソファをすすめ、「紅茶かしら、それともワイン?」ともてなしまで始めてしまった。
「二人ともワインで」
「赤?白?ロゼもありましてよ」
「白をいただこう」
ヴァイオレットはワインを取りに部屋を出て行ってしまう、一人取り残されたイリアはかなり焦っていた。
─いやいや、どうしろと?─
表情には出さないようにしていたが、気づかれたようだ。
「ふふ、焦っているわね?安心して、取って食おうなんて思ってないから」
リリアは嫣然と微笑み、余裕を感じさせる。
「僕達は説明しようと思ってね、勘違いされると困るから」
説明?勘違い?イリアには理解し難い言葉が並ぶ。
「お待たせしました、さあどうぞ?」
あまり時間もたたずに戻って来たヴァイオレットが、テーブルにワインとチーズを並べる。ワインは数本持ち込んでいることから、話は長くなると踏んでいるのだろう。
「イリアもワインでよかったかしら?」
「あ、はい…」
まだ動揺が抜けないイリアをよそに、どんどん話が進んでいく。
「乾杯」
ダモンに釣られるようにイリアもグラスを掲げるが、何がどうなっているのか?
「なかなかいいワインだね?どこのかな?」
「これはマサール帝国にあるイーズンという地方で作られているワインですわ」
「マサール帝国は分かるが、イーズンという地方は聞いたことがないな」
「ミュズ山脈の周辺にある街で観光地として有名なんです。前に訪れた時に飲んだワインが美味しくて、個人的に取り寄せておりますの」
「ほお、僕達は狭い世界にいるからなかなか情報が入ってこないんだよ」
「たまには外に出ようとは思いませんの?」
「退屈したら出るかな?」
ヴァイオレットとダモンは当たり前のように会話をしているが、この状況はどうなのだろう?
「このワイン、本当においしいわ。いつもこういうの飲みたい!」
リリアはリリアで一人で勝手に盛り上がっている。
─これでいいのか?─
イリアの心の内を誰も気にかける様子もなく…、そこでふと気づいた。
─この会話、聞かれたらまずくないか?─
今更感はあるが、イリアはヴァイオレットに視線を向ける。が、ヴァイオレットにしてみれば予測できたことなのだろう。
「大丈夫よイリア。声は外に漏れないようにしているわ」
イリアに視線を向けるまでもなく、ヴァイオレットは言う。
「そう、ですか…」
イリアの懸念などヴァイオレットにはお見通しだったようだ。
「ヴァイオレット嬢は遮断魔法が使えるのかい?」
「私が扱える数少ない魔法ですわ」
「便利な魔法を使えるんだな」
「ええ、重宝しておりますの」
魔力持ちでも使える魔法は些細なものが多い、現にイリアは物を浮かせて運べる程度の魔法しか扱えない。
しかしヴァイオレットは遮断魔法と風魔法が扱えるのだ。本人は大したことないと言うが、魔力持ちでも彼女に憧れる者は多い。
それがきっかけでしばらく魔法談議が続き持ち込んだワインがなくなりそうになってきたからだろうか、おもむろにヴァイオレットが話題を変えた。
「さて、世間話はこれまでですわね。あなた方はどうして鏡から出てきたのかしら?」
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