魔力持ちがほとんどいなくなった世界で魔力持ちはどんな仕事をするのか

たまつくり

文字の大きさ
9 / 9

しおりを挟む
「ほんとにあった!」

ピンク色の髪にピンク色の瞳をした小柄な少女が、甘ったるい声を上げて鏡の前に立っていた。

「これよこれ!『どきハラ』でこれに行き着くのに本当に苦労したんだから。チートアイテムだっていう情報が出て必死に探したんだから!この鏡が何でも願い事を叶えてくれるんでしょう?サイコーだよね」

聞いたことのない単語を並べ、なぜか鏡がどんな物なのか確信していた。

「これで王子様はあたしのものよ!」

少女が望んだことは、女の子なら誰もが夢見ることだった。

『鏡よ鏡、王子様と結婚してお姫様になりたいの』

それを言ったときの少女の目はキラキラしていて、そうなれば幸せになれると信じて疑っていなかった。

実際、鏡は少女の願いに応えた。

それがとんでもない悲劇を引き起こすことになろうとも。

王子様と結婚するためには少女の異母姉を蹴落とすことになる、少女は躊躇いもなくありもしない罪をでっち上げ異母姉を断罪した。

鏡は少女の望みに応えお姫様にしたのだ。

ただし、しただけ・・・・

少女には王子様に相応しい知識も品格もなかった、しかも国王夫妻に子どもは王子様だけ、王子様は王太子になり、少女は王太子妃にならなければいけなくなった。

それに求められるものは膨大で、全てを熟すことなど不可能だった。

しかも教育係は口を揃えてこう言うのだ。

『お異母姉様は出来ましたよ』
『お異母姉様はもっと優雅でした』
『この程度のことお異母姉様ならすぐに覚えました』

それならば王太子妃に相応しくなるよう精進すればよかったのだが、少女は楽をすることを選んだ。

「鏡よ鏡、聞いたことを全て覚えられるようにして」

少女はその能力を手に入れ、周囲からもようやく認められるようになった。

それでも口さがない者はいる、優秀だった異母姉を蹴落として王太子妃となった行為が受け入れられない者もいたのだ。

だから少女は願った。

「鏡よ鏡、あたしのことを悪く言う奴はみんな殺して」

それを言ったときの少女の目はかつての夢見るキラキラしたものではなくなっていた。

充血した目はギラギラと血走り、本来なら手入れされる髪はボサボサ、肌はカサカサ。

少女は誰も近づけなくなっていた、なんせ聞いたことを全て覚えてしまうのだ。

あり得ない量の情報が少女の頭の中に残ってしまっい、もう自身に耳障りの良い声しか聞きたくなかった。

そして奇妙なことが起こり始めた。

はじめはただの突然死だと思われた、しかしバタバタと人がどんどん死んでいくのだ。しかもほとんどが貴族で年齢性別がバラバラ。

病気が流行っているのか?はたまた毒を飲まされたか?

憶測はどんどん広がり平民も噂するようになった。

「お貴族様がどんどん死んでんだってよ」
「はっ!どうせうまいもんでも食いすぎたんだろうよ」
「それが違うみたいなんだ、話してたらいきなり倒れてそのままみたいだぜ」
「じゃあ、毒でも飲まされたんだろうよ」
「だと思うだろ?それも違うみたいなんだ、その場にいた全員の持ち物をチェックしたんだけど、何も出てこなかったらしい」
「へぇ、だとしたら流行り病か?ったく、こっちにまで感染ったらどうしてくれんだよ」
「ほんとだよなぁ、国王はしっかり対策とかしてくれんのかよ?」
「無理じゃねえ?なんせ前にあった王太子妃の交代の時だってのらりくらりと抗議を躱したんだろ?事なかれ主義なんだよ」
「そうそう、前の婚約者の評判がかなり良くて、あちこちから抗議の声が上がってたのに全部聞かなかったことにしたんだよ。しかも王太子妃を交換する理由ってのが異母妹をいじめてたって、王太子妃に相応しくないって。そんなバカみてーな理由で納得するか?どうせ異母妹が罠にはめたとかそんなとこだろ?」

そんな会話をしていた2人は酔いつぶれていると勘違いされ、店の閉店まで気づかれることなく亡くなっていた。

「聞いた?例の話」
「例の話って?」
「飲み屋でいきなり死んでた2人のことよ」
「ああ、飲み過ぎでしょ?」
「それが同じようなことが次々と起こってるんだって」
「ええ!飲み過ぎで死んじゃうってこと?」
「違う違う、普通に話してたのに、いきなり倒れてそのまま死んじゃうんだって」
「なにそれ?怖くない?」
「元々はお貴族様の間で流行ってたらしいんだけど、とうとう平民にまで広がってきたみたい」
「うわぁ、怖い!」
「でしょ?だけど国王はなんにもしてくれないんだって」
「なにそれ?!」
「分かりそうなもんじゃない?だって王太子妃の事件、覚えてるでしょ?」
「あ~、あれはないわ~」
「侯爵家との繋がりがあればどっちでもよかったんだろうけどさぁ、みんな知ってるっての、異母妹いもうとの方が可愛かったんでしょ?」
「そう、可愛い方と結婚したいだけだったのよ」
「頭が空っぽの可愛いだけの王太子妃なんて、役に立たないのにねぇ」

道端でおしゃべりを楽しんでいた若い女性はそのままパッタリと倒れ、事切れた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...