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それまでザダ王国は外貨を岩塩で得ていた、それが枯渇し始めたのである。
さらに東の彼方より海水から塩を作り出す製法がヤルシュ王国に伝えられたのだ。ヤルシュ王国は大国ゆえ領土の端は海に面している。
つまりザダ王国と貿易をしなくても塩を自国で製造出来るようになってしまったのだ。
これに焦った当時のザダ王国国王マドゥスは、同じように貿易停止の危機にあった隣国ウエズ王国と、軍事大国として名を馳せていたトルトメスタン王国と手を組み、ヤルシュ王国に宣戦布告した。
勝算はあったのだろう、そうでなければ大国ヤルシュに挑むはずがない。
実際、最初は優勢だったのだ。
トルトメスタン王国とウエズ王国の手を借りて、ヤルシュ王国の領土を次々と奪っていった。
それにつれレオノーラの待遇はより悪くなっていった。
マドゥスの姪とはいえ、ヤルシュ王国の血をひいているレオノーラ、その立場は危ういものとなった。
さらにトルトメスタン王国との関係を強固にするため王族同士の婚姻が進められ、当然レオノーラとの婚約は破棄された。
居場所がなくなったレオノーラは人質として離宮に幽閉されることとなり、その生活はさらに悲惨なことになった。
侍女は付けられてもそれは見張りとして。彼女らは褒められた態度ではなかった。
食事の用意は最低限、入浴の準備もされることはなく、着替えは平民が着るような質素なものとなった。
扱いは生家と変わらないが、今度は王太子妃となったトルトメスタン王国の王女からの嫌がらせが始まった。
あれは嫌がらせで片付けてしまっていいのか…、なんせレオノーラが杖を手放せなくなってしまった原因を作ったのが彼女だからだ。
レオノーラは普段、できるだけ目立たぬよう、ひっそりとこっそりと過ごしていた。
離宮にいれば目立たないが、何故かあの日は王太子妃からの誘いがあった。
久々のドレスにヒールの高い靴、加えて慢性的な栄養失調はレオノーラが思っている以上に言うことを聞かなかった。
王宮の階段を降りているといきなり背後から衝撃を受け、そのまま階下まで真っ逆さまに落ちた。
レオノーラはどこかに捕まろうと手を伸ばしたがそれは宙を切った、受け身を取ることも出来ずになんの抵抗もなく落ちたのだ。
レオノーラの記憶は王太子妃の下卑た笑い顔で終わっている、目が覚めたらベッドに寝かされていた。
そして医者に言われた、
『歩くことは難しい』
という絶望の宣告。
レオノーラはただ王弟の娘として、王女の娘として生まれてきただけなのに、どうしてこんな目に合わなくてはならないのか、その答えを見出だせぬままただ生きていくしかなかった。
もはや『死』は救いだったのだ。
それが許されなかったのは人質としての存在価値。
そのまま3年が過ぎた頃、なんとヤルシュ王国がザダ王国の首都に侵攻したのだ。
詳しい戦況がレオノーラの耳に入るわけがなく、その日は周りが騒がしいくらいにしか思っていなかった。
突然離宮に悲鳴があがり、大人数の足音が近づいてきた。
部屋の扉が開かれ、そちらに目を向けるとよく知った紋章が旗に描かれていた。
ヤルシュ王国がレオノーラを助けに来たのだ。
さらに東の彼方より海水から塩を作り出す製法がヤルシュ王国に伝えられたのだ。ヤルシュ王国は大国ゆえ領土の端は海に面している。
つまりザダ王国と貿易をしなくても塩を自国で製造出来るようになってしまったのだ。
これに焦った当時のザダ王国国王マドゥスは、同じように貿易停止の危機にあった隣国ウエズ王国と、軍事大国として名を馳せていたトルトメスタン王国と手を組み、ヤルシュ王国に宣戦布告した。
勝算はあったのだろう、そうでなければ大国ヤルシュに挑むはずがない。
実際、最初は優勢だったのだ。
トルトメスタン王国とウエズ王国の手を借りて、ヤルシュ王国の領土を次々と奪っていった。
それにつれレオノーラの待遇はより悪くなっていった。
マドゥスの姪とはいえ、ヤルシュ王国の血をひいているレオノーラ、その立場は危ういものとなった。
さらにトルトメスタン王国との関係を強固にするため王族同士の婚姻が進められ、当然レオノーラとの婚約は破棄された。
居場所がなくなったレオノーラは人質として離宮に幽閉されることとなり、その生活はさらに悲惨なことになった。
侍女は付けられてもそれは見張りとして。彼女らは褒められた態度ではなかった。
食事の用意は最低限、入浴の準備もされることはなく、着替えは平民が着るような質素なものとなった。
扱いは生家と変わらないが、今度は王太子妃となったトルトメスタン王国の王女からの嫌がらせが始まった。
あれは嫌がらせで片付けてしまっていいのか…、なんせレオノーラが杖を手放せなくなってしまった原因を作ったのが彼女だからだ。
レオノーラは普段、できるだけ目立たぬよう、ひっそりとこっそりと過ごしていた。
離宮にいれば目立たないが、何故かあの日は王太子妃からの誘いがあった。
久々のドレスにヒールの高い靴、加えて慢性的な栄養失調はレオノーラが思っている以上に言うことを聞かなかった。
王宮の階段を降りているといきなり背後から衝撃を受け、そのまま階下まで真っ逆さまに落ちた。
レオノーラはどこかに捕まろうと手を伸ばしたがそれは宙を切った、受け身を取ることも出来ずになんの抵抗もなく落ちたのだ。
レオノーラの記憶は王太子妃の下卑た笑い顔で終わっている、目が覚めたらベッドに寝かされていた。
そして医者に言われた、
『歩くことは難しい』
という絶望の宣告。
レオノーラはただ王弟の娘として、王女の娘として生まれてきただけなのに、どうしてこんな目に合わなくてはならないのか、その答えを見出だせぬままただ生きていくしかなかった。
もはや『死』は救いだったのだ。
それが許されなかったのは人質としての存在価値。
そのまま3年が過ぎた頃、なんとヤルシュ王国がザダ王国の首都に侵攻したのだ。
詳しい戦況がレオノーラの耳に入るわけがなく、その日は周りが騒がしいくらいにしか思っていなかった。
突然離宮に悲鳴があがり、大人数の足音が近づいてきた。
部屋の扉が開かれ、そちらに目を向けるとよく知った紋章が旗に描かれていた。
ヤルシュ王国がレオノーラを助けに来たのだ。
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