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それは楽観視しているわけではなく、娘には強くなって欲しい。
それこそレオノーラのように。
新しい価値観が認められつつあるザダ王国で、娘の新しい生き方を模索出来るのではないか。
新たな相手を見つけてもいい。
何か仕事を見つけてその道に進んでもいい。
帰ったらまずは娘と今後について話し合う必要があるだろう。
前に進むために、過去と決別するためにも。
「さあ、どこに行こうか…」
まだ早いが夕食を摂ろうとカイルは身なりを整えた、どんな食事でも身なりを整える、こういう習慣はなかなか抜けない。
部屋を出て階段を降り、フロントに外へ出ることを伝えようと向かうと、こちらから声をかけられるまでもなく、
「アルキス卿、手紙が届いております」
あちらから声をかけてきた。「こちらです」と渡された手紙は丁寧に封蝋がされていた。
この国でここまで仰々しくするのは誰なのかと差出人を確認すると、
「…え?」
思わず声が出てしまう、それもしかたのないことだろう。なんせ差出人はレオノーラなのだ。
カイルは部屋に戻り、逸る気持ちを抑えながら封を切る。
内容は急な手紙に対する詫びと、明日の午前中に会えないかというものだった。
妙だな?カイルの率直な感想だった。
レオノーラはこんな不躾な手紙など寄越さないだろうから。
何かあるのか?そう思うのも当然だろう。
一抹の不安を抱えながらも『諾』の返事を書くことにする、昔とった杵柄で、きちんと貴族らしく気の利いた言葉を書き連ねていく。
念のため持ってきていてよかったと思いながら封蝋を押し、それを持って再びフロントへと向かう。
「すまないがこれを今日中に届け出もらえないだろうか?」
「承知いたしました、アルキス卿」
「頼んだよ」
ドルトミルアン国では料金を上乗せすれば急ぎの手紙を優先的に配達してくれる商会が存在していた。それらの仕組みはとても興味深いもので、どうにかザダ王国でも取り入れられないか思案していた。
それにはまず識字率を向上させなければならず、戦後の混乱が落ち着いてきた今だからこそ出来るだろう。
来てよかったとカイルは思った。新しい考え方、新しい仕組み、全てが目新しく刺激を受けた。
レオノーラとも少しの不安はあるが、最後の挨拶が出来るのだから、心残りなくドルトミルアン国を去ろう。
ホテルを出て空を見上げるちょうど日が陰ってきた頃合いだった。
ドルトミルアン国の夕日を見るのもこれで最後になるかもしれない、と思いながらカイルはレストランを探しに歩き出した。
それこそレオノーラのように。
新しい価値観が認められつつあるザダ王国で、娘の新しい生き方を模索出来るのではないか。
新たな相手を見つけてもいい。
何か仕事を見つけてその道に進んでもいい。
帰ったらまずは娘と今後について話し合う必要があるだろう。
前に進むために、過去と決別するためにも。
「さあ、どこに行こうか…」
まだ早いが夕食を摂ろうとカイルは身なりを整えた、どんな食事でも身なりを整える、こういう習慣はなかなか抜けない。
部屋を出て階段を降り、フロントに外へ出ることを伝えようと向かうと、こちらから声をかけられるまでもなく、
「アルキス卿、手紙が届いております」
あちらから声をかけてきた。「こちらです」と渡された手紙は丁寧に封蝋がされていた。
この国でここまで仰々しくするのは誰なのかと差出人を確認すると、
「…え?」
思わず声が出てしまう、それもしかたのないことだろう。なんせ差出人はレオノーラなのだ。
カイルは部屋に戻り、逸る気持ちを抑えながら封を切る。
内容は急な手紙に対する詫びと、明日の午前中に会えないかというものだった。
妙だな?カイルの率直な感想だった。
レオノーラはこんな不躾な手紙など寄越さないだろうから。
何かあるのか?そう思うのも当然だろう。
一抹の不安を抱えながらも『諾』の返事を書くことにする、昔とった杵柄で、きちんと貴族らしく気の利いた言葉を書き連ねていく。
念のため持ってきていてよかったと思いながら封蝋を押し、それを持って再びフロントへと向かう。
「すまないがこれを今日中に届け出もらえないだろうか?」
「承知いたしました、アルキス卿」
「頼んだよ」
ドルトミルアン国では料金を上乗せすれば急ぎの手紙を優先的に配達してくれる商会が存在していた。それらの仕組みはとても興味深いもので、どうにかザダ王国でも取り入れられないか思案していた。
それにはまず識字率を向上させなければならず、戦後の混乱が落ち着いてきた今だからこそ出来るだろう。
来てよかったとカイルは思った。新しい考え方、新しい仕組み、全てが目新しく刺激を受けた。
レオノーラとも少しの不安はあるが、最後の挨拶が出来るのだから、心残りなくドルトミルアン国を去ろう。
ホテルを出て空を見上げるちょうど日が陰ってきた頃合いだった。
ドルトミルアン国の夕日を見るのもこれで最後になるかもしれない、と思いながらカイルはレストランを探しに歩き出した。
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