Epitaph 〜碑文〜

たまつくり

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あれが最後に見たミリアーヌの姿だった。

ミリアーヌは本当に知らなかったのだ。

母親から贈られたアクセサリーがレオノーラから奪った物だということも、レオノーラが返して欲しいと訴えていたことも。

母親が物置だと言うからそこにレオノーラが住んでいるなど思いもしなかったのだろう。

だから憎かった、醜悪な義母ははよりも、こんな身体にした王太子妃よりも、誰よりもミリアーヌが憎かった。

許せなかった、こんな歪んだ感情を植え付けたミリアーヌが憎かった。

どうして疑わないの?!

どうして笑っていられるの?!

レオノーラの心の叫びは誰にも届かなかった。

牢内での蛮行はせめてもの復讐、最後はレオノーラが受けた痛みを少しでも味わえばいいと。

そうなればあの醜悪な義母ははへの復讐も果たすことになるから。

あの女はミリアーヌが処刑されることを知って絶望し、必死に「娘だけは!」と命乞いをした。

処刑が決して覆ることがないと理解すると、考えることを拒否したかのように動かなくなった。なんせ自分は修道院に幽閉されることになっているのだ、自分のせいで娘が処刑される、その現実から逃避したのだろう。

そしてあの王太子妃、彼女は父親が助けに来てくれると信じて疑わなかった。

しかし、目の前にその首が晒されて発狂した。

復讐するまでもなかった。

呆気ない幕切れ。

自身のどす黒い感情は全てザダ王国に置いてきたと思っていたのに、カイルを目の前にしたら忘れ物をした感覚に陥った。

まだあったじゃないか、と。

ミリアーヌ、あなたの残像も汚してあげるわ。

カイルは何を信じただろうか、あの幼馴染みのことだ、聞いたことを信じただろう。

レオノーラが住んでいた離れを物置と呼んでいた、お気に入りの黒い宝石はレオノーラから盗んだ物、全て知らなかったというのに。

これで復讐は完結した。

レオノーラ・カージリアンはいなくなった。サイナリィ・マグドロスにやっとなれた。

「思っていたよりも 引き摺っていたのは私だったのかもね」

それきり切って捨てるかのように新聞を畳み立ち上がる。

「今日も忙しくなるわね」

まだまだやることはたくさんある、過去に浸るのはもう二度とないだろう。
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