異世界で大切なモノを見つけました【完結】

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ソウ様の部屋を出ると、扉の両脇に近衛騎士が待機している



「メラトス様、お荷物は全てお部屋の中に運び入れておきました。」


ソウ様の部屋へ案内してくれた近衛騎士に声をかけれた


「ありがとうございます。もし賢者様が中から出て来られたら私の部屋へ一度来るよう伝えてください。」


「畏まりました」


僕は足早に自室となる部屋へ入り、勝手に扉を開けられないよう条件を一つだけ付けて扉を魔法でロックした



部屋はソウ様の部屋とあまり変わらない


多分未来の王子妃として配慮されたのだろう


実家の執事やメイドが揃えてくれた荷物を解きウォークインクローゼットへ直していく


「あ、日記もちゃんと入れてくれてる。流石だな。」


うちの執事やメイドはとても優秀な者が多く、言わなくても先回りして色々してくれる


たまに心が読めるのかと思うことがある程だ



それにしても…

ソウ様は突然異世界へ召喚され二度と故郷に帰れないとわかったのに取り乱す事もなく僕の話をしっかり聞いていた

普通なら怒鳴り散らしたり、今すぐ帰せと責め立てたりするだろうに、何故あんなにも取り乱すことなく僕の説明を聞けたんだろう?


空中に手をかざしソウ様のステータスを確認する


望月 爽 (18)

Lv1

種族 異世界人
職業 賢者(仮) 大学生
HP ∞
MP ∞
EXP 500/1000

スキル 変幻自在な魔法(神の加護)

家族構成
祖母 父 母 兄 姉 弟 妹


現在なし







大家族だな

大学生…兄と姉は学生か既に社会人か……
故郷に帰れたとして、自分が居たら金がかかると思っているのか?
うーん…天涯孤独とかなら故郷に未練はない可能性もあったがそうではないし

もう少し仲良くなってから聞いてみるか



あとは……国王達が報告を待っているだろう

あの様子だと名前さえ聞かずに部屋へ閉じ込めただろうし、ソウ様的には国王達は自分を勝手に召喚し、命を懸けた戦いに強制参加させる身勝手な人間といった所だろう


暫くは僕以外の人間と会わせないほうがいいのか、それともさっさと会わせてしまって今後の道筋を考えるべきか……


と言っても、きっと国王達がソウ様に会わせろと言い出すのだろうけど





コンコン


『メラトス様、国王様と第2王子様がお見えです』


ほらな、やっぱり来たか
扉前の近衛騎士の誰かが、僕が部屋へ戻った事を伝えたんだろう


ため息を一つ吐き出してから扉を開けた



侍女が3人分のお茶を用意しているのを目の端に入れながらソファーに座る


「で、賢者様の様子はどうだ?」

国王は早く話せとばかりに前のめりになる


「…賢者様は、頭の良い方でここが異世界で二度と故郷に帰れないとお知りでした。とても動揺されております。
この国の成り立ちから黒の王についてお話させて頂きました。
何故異世界から賢者を召喚するのかも。
魔法については異世界独自の解釈をお持ちで、練習しました所、魔力を感じる事とあの部屋で生活できる程度の魔法を使う事が出来るようになりました。
しかし、精神的にも肉体的にも疲労が激しく現在お休みになっておられます。」


「そうか、では治癒師を派遣しよう」


既に少しだろうが魔法が使えると知り上機嫌な国王達


「陛下、それはお辞めください。
賢者様は………突然召喚され、何の説明も無しに部屋へ監禁された事でこの世界の者に嫌悪感を抱いてしまっています。
黒の王の討伐もする気はないと。」


「何だと!?」


第2王子は怒りを顕にし立ち上がった


「殿下落ち着いてください。賢者様の仰ることは、召喚された側からすれば最もでございます。
記録によれば、どの賢者様も同じでございました。賢者様からすれば、自分から突然日常を奪っておきながらこの世界の為に命を懸け黒の王を討伐しろと言われても受け入れられない。
もし協力する事を強制すれば溝が深まり、心を閉ざされてしまうでしょう。」


「…………ではどうしろと、カインは言うのだ?」


不貞腐れた顔をする第2王子に、自分で考えろ!と心の中で思う


「まずは信頼関係を築く必要がございます。不安を取り除き、この世界に慣れていただく。
賢者様自身が、二度と故郷に帰れないのだから、これからの事を考えようと前向きになった時に、討伐のお話をするのです。
前向きになっていないのに、討伐の話をすれば強制されていると思われてしまいます。」



「…なかなか長い道程な気がするが?」


「それは仕方ありません。失礼は承知でお尋ねいたします。
お二人は【異世界人取扱説明書】をしっかりとお読みになられましたか?」


【異世界人取扱説明書】とは、歴代の異世界人について詳しい記録で、してはいけない事や逆に喜ばれた事まで書かれている

召喚の儀式をする前に必ずこの取扱説明書を読み、召喚をする決まりがある


一番初めに召喚された賢者様は、突然召喚され黒の王の討伐を命令された
魔法も使えず、監禁生活を強いられ、ついに賢者様は自殺をはかってしまった
監視までされていたので、死ぬ事は無かったが、賢者は非協力的で討伐には長い時間と多大な犠牲をはらった



その事があり作られたのが【異世界人取扱説明書】なのだ

その最初のページに書かれているのが

1.召喚後、必ず挨拶をし自己紹介をする
2.賢者に助けて貰いたくて召喚した事を伝える
3.話が長くなるので、お茶を飲みながら話そうと部屋を移動する
※信頼関係が結ばれる迄は故郷に二度と帰れない事を伝えてはならない
4.まずは信頼関係を築く

だが、この人達は全てしなかった


二人はバツが悪そうに顔を背ける


「読まれてないんですね。これ以上下手をすれば、初めの賢者の様に死を選ばれるかもしれません。」


「それは困る!!」


国王は焦ったように叫んだ



「でしたら……賢者様の事は私にお任せいただけませんか?」


「何を言っておる。カインには既に任せておるじゃろう」


「いいえ、賢者様についての権限を全て私にください。」


「どういうことだ?」


二人は首を傾げる


「賢者様に私の許可無く会ったり、贈り物をしたり、関わろうとしないで頂きたいのです。
まずは私が賢者様と信頼関係を築きます。
ですが、賢者様は既に儀式にいた貴方方に対して負の感情を持たれています。
いくら私が賢者様のお世話をしても、貴方方の命令で仕方なくお世話をしているのだと思われてしまえば信頼関係は破綻いたします。」


簡潔に言うと、お前達は憎まれて当たり前の事をしたんだから、ソウ様に近づくな
お前達が手出し口出しすれば、こっちの予定が狂うから邪魔すんなって事なのだが、理解していないようだ



「カイン、王族に対して無礼だぞ」


第2王子はムスッとした顔で僕を見る


「無礼は承知の上でございます。ですが事実です。もし私が賢者様に信頼されなくなったら、誰がその役目を担えるのですか?」


「「……………」」


国王が自分で言ったのだ


僕以外にお世話をする人がいないと


嫌われている自分達にその役目が出来るとでも思っているのか?



「………ではこうしよう。実際、賢者が我々を嫌がっているかは見ていないからな。
一度賢者様に会ってからカインに全権限を委ねるか判断しよう」



………駄目だ

理解してない

まぁ、そうだよなぁ…

国王とか第2王子って、生まれてこのかた王族として生きてきたんだもんな

自分達に歯向かう者もいないし、自分達の希望が通らない事はめったに無いんだもんな

でも王族だからこそ、他者の感情を汲み取れなければならないのに…普段は王妃様が助言してくださってるから政もうまくいっているんだな…



「…でしたら、夕食後に時間を取りましょう。今は疲れて眠られてますし賢者様は唯一、夕食を楽しみにされておりましたので。」


「それなら一緒に食べればよい。」


「お言葉ですが、もし賢者様が嫌がり食事さえ取っていただけなくなったらどうなさるおつもりですか?」


きっと王族と夕食を取れるなんて名誉なことだとか思っているんだろう


「そんな事はないだろう?」


「いいえ、賢者様は異世界人です。話によれば王政の世界ではなく、皆が平等の世界からこられたようです。
この世界の人間ではありませんし、王族と言われても賢者様からすれば価値は皆無なのです。
それを踏まえて賢者様に接してください。これは私の意見ではなく取扱説明書第17章3項に書かれております。」



例え国王でも異世界人取扱説明書に違反する事は禁止されている
あまりにも異世界人に酷い仕打ちをしたら天罰が下る

これは最初の賢者様の時に実際に起こった

自殺未遂に追いやった国王達に天罰が下ったのだ

だだ一人を除いて

賢者様をただ一人支え続けていた運命の番であった魔術師は、ずっと賢者に寄り添っていたと記されている


黒の王を討伐する事は神からの試練であり、異世界人の扱いは間違ってはいけない重要事項なのだ



「う……む、では食事の後にしよう。」


「はい、賢者様にはお伝えしておきます。」





国王達を見送りすぐまた扉にロックをかけた












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