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目の前に広がる風景は、一度ソウに見せて貰った部屋だった
「…どう言う事?」
ソウはキョロキョロと辺りを見回す
「ここは、やはりソウの部屋か?」
「うん、けどあの日から1年は経過してるってフェラーリが言ってただろ?ならこの部屋があるはずないんだ」
部屋があるはずない??
「それはどういう意味だ?」
「この部屋は俺が借りてた部屋だったから、家賃を払ってなければ借り続ける事なんてできないんだよ」
「つまり、誰かがソウの代わりに家賃を払っているって言う事か」
「うん。でも…誰がそんな事……」
ソウが部屋の中を確認していく
私も部屋を見ていく
あの時見せて貰った部屋の様子と照らし合わせていくと、様子が全く違っている
ソウの部屋は掃除されててとても綺麗だったが、この部屋は散らかっていて物が散乱している
つまり、ソウの代わりに家賃を払ってここに住んでいるという事になる
「……レイン、実家の方に行ってもいいかな?」
「あぁ。ソウの行きたいところについて行くよ」
私達は魂だけの状態の為壁を通り抜けたり、空中に浮いたりできるようだ
手を繋ぎソウについて行く
しばらく空中散歩をしていると、赤い屋根の大きな家が見えた
「あの赤い屋根が俺の実家だよ」
ソウが指さす赤い屋根の家は、周りに雑草が高く伸びゴミが散乱している
どう見ても人が住んでいるようには見えない
「ソウ……」
「きっと誰も住んでないね。親戚はこの近くには住んでないから…弟たちの学校に行ってみるか」
ソウはそう言って次の場所へ向かった
大きな建物が2棟建っていて、大きな訓練場があり、端に水を溜めている大きな池の様なものがある
これがソウの世界の学校か…
見る物全てが新鮮だ
これがソウが育った世界なのか…
「レイド、今から中に入るよ。ここは、何個かの組に分かれて授業を受けるんだ。弟が居ないか確認する。」
「わかった」
中に入ると質素な作りになっている
ソウより少し幼い感じの子供たちが同じ方向を見て勉強している
「……居た」
「居た?」
ソウが見つめる方を見ると、やせ細った男の子が授業を受けていた
ソウとはあまり似ていない
「大分痩せたな…自分で生活してんのかな?」
「それならソウの部屋に住んでるのは弟君の可能性もある……いや…それは無さげだな」
弟君をジッと観察して彼の置かれている状況が少し見えた
「なんで??」
「あの部屋に、ソウの勉強道具以外無かったのが1つ。もう1つは彼の荷物が他の子より多すぎる。ここは大きなカバンを2つ持って来ないと行けないような所なのか?しかし勉強道具が入ってるようには見えないな。
まるで財産を持って家を出ていく者のようだ。」
「財産……レイド俺達の力って魂だから使えないかな?」
力か……こちらの世界のものに干渉はできないだろう
「試してみたらいい。使えなければ何も起きないだろうから。」
「うん」
ソウは目を瞑り集中している
ソウはモアとカインに魔法を習ったらしく、一時期毎日ヘロヘロでカインに連れて帰って来てもらっていた
でも2人のおかげで大分魔法が使いこなせるようになった
「見つけた!」
グワッと目を開いたソウは私の腕を掴み引っ張る
「レイド、移動する!」
「わかった。行こう。」
探し物が見つかったらしいソウに腕を引かれながら次の場所へ向かった
次の場所は最初の家とは違って、宿舎のような建物だった
「…ここは?」
珍しく厳しい顔をしているソウに聞いてみる
「俺の親が今住んでる家だよ。ここに引っ越したみたいだ…」
あの家からここに?
どう見ても最初の家の方が綺麗だし住みやすそうだったが…
一体どうして………
「多分、兄ちゃんが人を殺したから、あの家に住めなくなったんだよ」
私の疑問に答えるかのようにソウが口を開いた
「この国では、犯罪をおこした人の家族も犯罪者扱いされる多いんだ。誹謗中傷があったり、土地から出ていけって近隣住民から嫌がらせを受けたりね。
こんなボロボロのアパートに引っ越したんだ、そんなことがあったんだろうね。」
「なるほど。アパートというのはあの建物か?」
「うん。寮の部屋みたいに、ドアの数だけ部屋になっててそこの1部屋に1家庭住んでるんだ。部屋の広さはだいたいのアパートが騎士団の寮の部屋より小さいよ。」
騎士団の寮より小さいって……
そんな狭い所に何人で住んでるんだ…?
「中…入ってみよう。弟が大きな荷物を持って学校に行っている理由が分かるはずだ…」
「そうだな。」
私達はソウの元同居人が住んでいる部屋へ入った
「……本当にここに?」
「……そのはずなんだけど………」
部屋にあったのは布団が数組と数枚の皿とフォークと服らしきもの
それから書類のような紙が数枚
「…あーなるほどね。」
「何か分かったのか?」
「この紙、催促状だよ」
床に落ちていた書類の紙を指さすソウ
「催促状?何の??」
「借金だよ。赤い屋根の家さ、ローンって言って借金して買ったって聞いたことがあるんだ。金額も物凄かったし…兄さんの事件であの家に住めなくなって、ここに引っ越したのはいいけど、まだあの家が売れてないって事なんだろう。」
「なるほど。だから借金だけ残って払う事も出来ないか…」
ガチャーーーーー
玄関のドアが開きボサボサの髪によれよれの服を着た年老いた女性が入ってきた
「……はぁ…」
女性はため息を吐くと袋から何かの入れ物を取り出し飲み始めた
ソウを見ると目を見開いて固まっている
「ソウ…?彼女を知ってる?」
私の問いに、何とか頷くソウは、相当な衝撃を受けている
この女性は……ソウの母親か…?
「…何なのよ……私が何したって言うのよ……」
ボソボソと呟きだしたその女性は今度はカバンから何かを取りだした
「何で…皆私を悪者にするのよ……何で私を裏切るのよ……」
一点を見つめて、取り出した物をビリビリと破っていく
一体何を破って……よくよく見ると、男の人の精巧な姿絵だ
まるで本人その物の絵に驚きを隠せない
「あれは写真って言って、紙にそのままの姿を写した物なんだ。あの人が破っているのは俺の父親の写真だよ」
写真……そういえば、ソウの父親は浮気をしたと言っていたな
裏切るとはその事だろうか?
「姑も……もっと早く死ねばよかったのに……私は介護要員に結婚したんじゃないわ……どいつもこいつも……」
コンコンコンーーーーーーー
ビクッと肩を震わせた女性は玄関の方を息を殺して扉を見ている
何かに怖れている…??
「望月さーん!警察の者です!!いらっしゃいますよね?」
警察??
チラッとソウを見ると、眉間に皺を寄せている
「警察って言うのは、騎士団みたいなものだよ。兄貴がまだ捕まってないのかも…それなら警察が家族の所に事情聴取しにくるのはわかる…」
ソウの説明になるほど…と思っていると、女性が動いた
ゆっくりと玄関の扉を開けると、若い男が2人立っていた
「息子さんから連絡はありましたか?もしくはここに来たとか…?」
「……いいえ。連絡しようにも私の携帯は解約しましたし、引っ越しもしてますから。頼るとしたら父親の方じゃなんですか?」
「それがねぇ……旦那さん、愛人の方を包丁で刺してしまいまして、今取り調べ中なんですよ」
「………え??」
「女性の方が別れ話を切り出し、逆上した旦那さんが女性を刺しましてね。旦那さんについて行っていた息子さんが通報したんですよ。」
どうやらあの荷物は、住む所がなくなったせいのようだ
「何やってんだコイツら……」
ボソッと呟いたソウは冷たい目で女性を見ている
「……とにかく、私は知りません。もう帰ってください!!」
大きな音を立ててドアを閉めた女性はその場に座り込んで動かなくなった
「レイド、行こう。もう十分だ」
私の服の裾をくいくいっと引っ張るソウに頷いた
「ソウ、もう一度だけソウの住んでいた部屋へ行ってもいい?」
「いいけど…??」
ソウの許可も出たので、私達は最初に降り立ったソウの部屋へ向かった
私の考察が正しければ、あの部屋に今住んでいるのは……
「え??……何で兄貴が……」
やはり思った通りか……
部屋に居たのは殺人を犯し逃げている筈のソウの兄だった
「この部屋を使っていたのはソウのお兄さんだったんだよ。きっと家族の誰からかソウが居ない事を聞いたんだろう。ソウになり代わってここに住んでるんじゃないかと思ったんだ」
「…どうして?」
「以前カインから日本の法律や制度について教えてもらった事があったんだが、この世界には死んだり怪我をすれば『保険』という物からお金を貰えるんだろう?」
「ああ、保険に入ってる人はそうだな」
「基本的に子供の保険は親が入ると聞いた。
もしソウが死んだ事になっていたらその保険代が出るはずだ。
なのに母親はボロボロ、父親は息子と浮気相手の家に上がりこんでいて別れ話で相手を刺した。
もし別れられたら行く所も金もないと考えれば、今誰もソウの保険代を持っていない事になる。」
「あ……そっか……そうだ…失踪の場合、日本では失踪届を出して何年か経たないと死んだ事にならないんだ…」
ここは私達の世界より進んだ文化を持ってはいるが、人と人との繋がりだとか絆はとても薄いようだ
隣に住んでいる者が変わっている事にも気づかない近隣住民
学校も、あんな大荷物を持ってきているのに何もなかったように進む授業…
「レイド……ついてきてくれてありがとう。」
「…いや……」
こんな世界にソウもカインも生きていたのか…
ジッとソウの兄を見ていた私の腕を引っ張るソウに視線を向けると、泣きそうな顔になっている
「ソウ…??」
「違うから……この世界の人が皆、こんな人達ばかりじゃないから…」
「…わかってるよ。」
「本当に…??今すごく怖い顔してた…」
怖い顔…?
「兄貴を殺したいとか…思ってた…?」
「殺したい…とは思てないよ。まぁ…のうのうと生きていないで、さっさとくたばればいいのにとは思ったけど」
素直にそう話せば、ソウは大きな息を吐いて座り込んだ
「ソウ??どうした??」
「よかった……この世界には干渉できないはずだけど、レイドなら兄貴を殺しちゃえるんじゃないかって…」
それはないと思うけど…
試しに近くにあった本の山を崩すように風を起こしてみる
ドサドサドサーーーーーーー
「「…………」」
あー…これ、できちゃうやつだな
もしかしたら、干渉できないわけではないのかもな
ただ私達が力を使いこちらの世界の者にバレたら問題になるからって意味なんだろう
「…だめだよ?」
ソウは私の腕に抱きつき上目使いをしてくる
可愛いなぁ…そんな心配しなくてもこの世界の者を殺めたりはしないさ
「大丈夫、ほら次に行こう?カインの両親の様子も見に行くんだろう?」
「うん、じゃあ行こうか。家の場所はこの前聞いたばかりだからわかるし。この近くなんだ」
ソウに腕に抱きつかれたままカインの実家へと向かった
「…どう言う事?」
ソウはキョロキョロと辺りを見回す
「ここは、やはりソウの部屋か?」
「うん、けどあの日から1年は経過してるってフェラーリが言ってただろ?ならこの部屋があるはずないんだ」
部屋があるはずない??
「それはどういう意味だ?」
「この部屋は俺が借りてた部屋だったから、家賃を払ってなければ借り続ける事なんてできないんだよ」
「つまり、誰かがソウの代わりに家賃を払っているって言う事か」
「うん。でも…誰がそんな事……」
ソウが部屋の中を確認していく
私も部屋を見ていく
あの時見せて貰った部屋の様子と照らし合わせていくと、様子が全く違っている
ソウの部屋は掃除されててとても綺麗だったが、この部屋は散らかっていて物が散乱している
つまり、ソウの代わりに家賃を払ってここに住んでいるという事になる
「……レイン、実家の方に行ってもいいかな?」
「あぁ。ソウの行きたいところについて行くよ」
私達は魂だけの状態の為壁を通り抜けたり、空中に浮いたりできるようだ
手を繋ぎソウについて行く
しばらく空中散歩をしていると、赤い屋根の大きな家が見えた
「あの赤い屋根が俺の実家だよ」
ソウが指さす赤い屋根の家は、周りに雑草が高く伸びゴミが散乱している
どう見ても人が住んでいるようには見えない
「ソウ……」
「きっと誰も住んでないね。親戚はこの近くには住んでないから…弟たちの学校に行ってみるか」
ソウはそう言って次の場所へ向かった
大きな建物が2棟建っていて、大きな訓練場があり、端に水を溜めている大きな池の様なものがある
これがソウの世界の学校か…
見る物全てが新鮮だ
これがソウが育った世界なのか…
「レイド、今から中に入るよ。ここは、何個かの組に分かれて授業を受けるんだ。弟が居ないか確認する。」
「わかった」
中に入ると質素な作りになっている
ソウより少し幼い感じの子供たちが同じ方向を見て勉強している
「……居た」
「居た?」
ソウが見つめる方を見ると、やせ細った男の子が授業を受けていた
ソウとはあまり似ていない
「大分痩せたな…自分で生活してんのかな?」
「それならソウの部屋に住んでるのは弟君の可能性もある……いや…それは無さげだな」
弟君をジッと観察して彼の置かれている状況が少し見えた
「なんで??」
「あの部屋に、ソウの勉強道具以外無かったのが1つ。もう1つは彼の荷物が他の子より多すぎる。ここは大きなカバンを2つ持って来ないと行けないような所なのか?しかし勉強道具が入ってるようには見えないな。
まるで財産を持って家を出ていく者のようだ。」
「財産……レイド俺達の力って魂だから使えないかな?」
力か……こちらの世界のものに干渉はできないだろう
「試してみたらいい。使えなければ何も起きないだろうから。」
「うん」
ソウは目を瞑り集中している
ソウはモアとカインに魔法を習ったらしく、一時期毎日ヘロヘロでカインに連れて帰って来てもらっていた
でも2人のおかげで大分魔法が使いこなせるようになった
「見つけた!」
グワッと目を開いたソウは私の腕を掴み引っ張る
「レイド、移動する!」
「わかった。行こう。」
探し物が見つかったらしいソウに腕を引かれながら次の場所へ向かった
次の場所は最初の家とは違って、宿舎のような建物だった
「…ここは?」
珍しく厳しい顔をしているソウに聞いてみる
「俺の親が今住んでる家だよ。ここに引っ越したみたいだ…」
あの家からここに?
どう見ても最初の家の方が綺麗だし住みやすそうだったが…
一体どうして………
「多分、兄ちゃんが人を殺したから、あの家に住めなくなったんだよ」
私の疑問に答えるかのようにソウが口を開いた
「この国では、犯罪をおこした人の家族も犯罪者扱いされる多いんだ。誹謗中傷があったり、土地から出ていけって近隣住民から嫌がらせを受けたりね。
こんなボロボロのアパートに引っ越したんだ、そんなことがあったんだろうね。」
「なるほど。アパートというのはあの建物か?」
「うん。寮の部屋みたいに、ドアの数だけ部屋になっててそこの1部屋に1家庭住んでるんだ。部屋の広さはだいたいのアパートが騎士団の寮の部屋より小さいよ。」
騎士団の寮より小さいって……
そんな狭い所に何人で住んでるんだ…?
「中…入ってみよう。弟が大きな荷物を持って学校に行っている理由が分かるはずだ…」
「そうだな。」
私達はソウの元同居人が住んでいる部屋へ入った
「……本当にここに?」
「……そのはずなんだけど………」
部屋にあったのは布団が数組と数枚の皿とフォークと服らしきもの
それから書類のような紙が数枚
「…あーなるほどね。」
「何か分かったのか?」
「この紙、催促状だよ」
床に落ちていた書類の紙を指さすソウ
「催促状?何の??」
「借金だよ。赤い屋根の家さ、ローンって言って借金して買ったって聞いたことがあるんだ。金額も物凄かったし…兄さんの事件であの家に住めなくなって、ここに引っ越したのはいいけど、まだあの家が売れてないって事なんだろう。」
「なるほど。だから借金だけ残って払う事も出来ないか…」
ガチャーーーーー
玄関のドアが開きボサボサの髪によれよれの服を着た年老いた女性が入ってきた
「……はぁ…」
女性はため息を吐くと袋から何かの入れ物を取り出し飲み始めた
ソウを見ると目を見開いて固まっている
「ソウ…?彼女を知ってる?」
私の問いに、何とか頷くソウは、相当な衝撃を受けている
この女性は……ソウの母親か…?
「…何なのよ……私が何したって言うのよ……」
ボソボソと呟きだしたその女性は今度はカバンから何かを取りだした
「何で…皆私を悪者にするのよ……何で私を裏切るのよ……」
一点を見つめて、取り出した物をビリビリと破っていく
一体何を破って……よくよく見ると、男の人の精巧な姿絵だ
まるで本人その物の絵に驚きを隠せない
「あれは写真って言って、紙にそのままの姿を写した物なんだ。あの人が破っているのは俺の父親の写真だよ」
写真……そういえば、ソウの父親は浮気をしたと言っていたな
裏切るとはその事だろうか?
「姑も……もっと早く死ねばよかったのに……私は介護要員に結婚したんじゃないわ……どいつもこいつも……」
コンコンコンーーーーーーー
ビクッと肩を震わせた女性は玄関の方を息を殺して扉を見ている
何かに怖れている…??
「望月さーん!警察の者です!!いらっしゃいますよね?」
警察??
チラッとソウを見ると、眉間に皺を寄せている
「警察って言うのは、騎士団みたいなものだよ。兄貴がまだ捕まってないのかも…それなら警察が家族の所に事情聴取しにくるのはわかる…」
ソウの説明になるほど…と思っていると、女性が動いた
ゆっくりと玄関の扉を開けると、若い男が2人立っていた
「息子さんから連絡はありましたか?もしくはここに来たとか…?」
「……いいえ。連絡しようにも私の携帯は解約しましたし、引っ越しもしてますから。頼るとしたら父親の方じゃなんですか?」
「それがねぇ……旦那さん、愛人の方を包丁で刺してしまいまして、今取り調べ中なんですよ」
「………え??」
「女性の方が別れ話を切り出し、逆上した旦那さんが女性を刺しましてね。旦那さんについて行っていた息子さんが通報したんですよ。」
どうやらあの荷物は、住む所がなくなったせいのようだ
「何やってんだコイツら……」
ボソッと呟いたソウは冷たい目で女性を見ている
「……とにかく、私は知りません。もう帰ってください!!」
大きな音を立ててドアを閉めた女性はその場に座り込んで動かなくなった
「レイド、行こう。もう十分だ」
私の服の裾をくいくいっと引っ張るソウに頷いた
「ソウ、もう一度だけソウの住んでいた部屋へ行ってもいい?」
「いいけど…??」
ソウの許可も出たので、私達は最初に降り立ったソウの部屋へ向かった
私の考察が正しければ、あの部屋に今住んでいるのは……
「え??……何で兄貴が……」
やはり思った通りか……
部屋に居たのは殺人を犯し逃げている筈のソウの兄だった
「この部屋を使っていたのはソウのお兄さんだったんだよ。きっと家族の誰からかソウが居ない事を聞いたんだろう。ソウになり代わってここに住んでるんじゃないかと思ったんだ」
「…どうして?」
「以前カインから日本の法律や制度について教えてもらった事があったんだが、この世界には死んだり怪我をすれば『保険』という物からお金を貰えるんだろう?」
「ああ、保険に入ってる人はそうだな」
「基本的に子供の保険は親が入ると聞いた。
もしソウが死んだ事になっていたらその保険代が出るはずだ。
なのに母親はボロボロ、父親は息子と浮気相手の家に上がりこんでいて別れ話で相手を刺した。
もし別れられたら行く所も金もないと考えれば、今誰もソウの保険代を持っていない事になる。」
「あ……そっか……そうだ…失踪の場合、日本では失踪届を出して何年か経たないと死んだ事にならないんだ…」
ここは私達の世界より進んだ文化を持ってはいるが、人と人との繋がりだとか絆はとても薄いようだ
隣に住んでいる者が変わっている事にも気づかない近隣住民
学校も、あんな大荷物を持ってきているのに何もなかったように進む授業…
「レイド……ついてきてくれてありがとう。」
「…いや……」
こんな世界にソウもカインも生きていたのか…
ジッとソウの兄を見ていた私の腕を引っ張るソウに視線を向けると、泣きそうな顔になっている
「ソウ…??」
「違うから……この世界の人が皆、こんな人達ばかりじゃないから…」
「…わかってるよ。」
「本当に…??今すごく怖い顔してた…」
怖い顔…?
「兄貴を殺したいとか…思ってた…?」
「殺したい…とは思てないよ。まぁ…のうのうと生きていないで、さっさとくたばればいいのにとは思ったけど」
素直にそう話せば、ソウは大きな息を吐いて座り込んだ
「ソウ??どうした??」
「よかった……この世界には干渉できないはずだけど、レイドなら兄貴を殺しちゃえるんじゃないかって…」
それはないと思うけど…
試しに近くにあった本の山を崩すように風を起こしてみる
ドサドサドサーーーーーーー
「「…………」」
あー…これ、できちゃうやつだな
もしかしたら、干渉できないわけではないのかもな
ただ私達が力を使いこちらの世界の者にバレたら問題になるからって意味なんだろう
「…だめだよ?」
ソウは私の腕に抱きつき上目使いをしてくる
可愛いなぁ…そんな心配しなくてもこの世界の者を殺めたりはしないさ
「大丈夫、ほら次に行こう?カインの両親の様子も見に行くんだろう?」
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ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
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