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しおりを挟む僕達の部屋に集まったは良いが、空気はお通夜のようになっている
「まず、2人の容態だが…平野さんは足の骨折以外怪我は無いが、検査入院が必要とのことだ。六花は事故の時、平野さんを庇ったようで、頭を打っていてまだ意識は戻っていない。外傷は腕と肋骨の骨折だが意識が戻らないと何とも…」
うちの事務所のスタッフが眉間に皺を寄せ状況を教えてくれる
「そんな……」
昴がぐっと拳を握る
「……流石に公演は中止せざる得ないでしょう。今社長達がこちらに向かっているので、協議しますが…。
舞台は明日もありますし、それに合わせて代役を立てるなんてできません。」
確かに、スタッフさんの言う通りだ
僕の相方役である六花の役は台詞も多いし、いくら前半に出る部分が少なくても、後半の見せ場が結構多い
平野さんなんて主演だし、このカンパニーの紅一点
今直ぐに膨大な台詞を覚えて、昴と呼吸を合わせるなんてできっこない
皆が現実に絶望していた
後3日で大千秋楽だったのに……
公演が中止になれば、絶対あの2人は責任を感じるだろう…
スタッフさんはこれ以上は話し合いはできないと判断したのか、また社長達が着いたら声をかけますと部屋を出ていった
誰も話さず、時間だけが過ぎていった
沈黙を破ったのは叶さんだ
「昴、平野さんが居ない時、代役をやっていた環は舞台で通用するか?」
「……え?」
叶さんが昴をじっと見る
「……通用すると思います。今回キャストには選ばれませんでしたが、もともと実力もありますし、見た目も小柄で声も高いので一緒にやってて違和感は有りませんでしたが………まさか、平野さんの代役を環に?」
昴の言葉に皆驚愕する
確かに、平野さんが他の仕事で練習に来れない時は環さんが代役をやっていた
今回は裏方組が練習の際、休みの人の穴埋めをしてくれていたので、大抵の人が穴埋めしてた役の台詞は覚えているはずだ
けど………
「いや、流石に無理でしょう。主演ですよ?それに環が代役をしても、六花の代役がいませんもん。」
「だよな……六花の代役やってた卓ちゃんは今他の仕事でいないし…」
他のメンバーからも声が上がる
「六花の代役は俺がやる」
叶さんは硬い表情のまま続ける
「俺の役は出番自体は少ないし、舞台上で六花と一緒に立つことがない唯一の役だ。台詞も覚えているし、どう演技していたかも見ている。
一応動きの確認は必要だが、できないことはない。
それにあの2人、公演が中止になったら自分達を責めるぞ。客にもスタッフにも俺達にも申し訳ないって。
確かに、平野さんや六花を見に来ている人達からすれば、代役を立てたからといって観たいとは思わないかもしれない。
その人達にはチケットの返金と、遠征してる人にも保証をするよう、社長達には掛け合う」
確かに叶さんの言う通りなんだけど……上手く行くのかな……
「……わかりました。俺からも社長達に掛け合います。響さんの言う通り、六花も平野さんも自分達を責めるでしょう。特に平野さんはストーカー事件の時も、大分申し訳なさそうにしてましたし、今回公演が中止になれば、平野さんのアンチがまた彼女を攻撃するでしょう。
あの時でさえ酷かったのに、公演が中止になれば、下手したら各方面から2人を傷つけられる可能性があります。
俺達が頑張れば守れるなら2人を守りたいです。」
昴の決意が皆を後押しする
「…確かに、守れるなら守りたいね。」
「うん、仲間が傷つけられる可能性があるのなら回避したいよ」
「俺達は陰で支える事しかできんが、やれること、まずはやってみようぜ」
口々に前向きな意見が出てくる
「じゃあ、昴と裏方の皆は環の説得を頼む。環にしか代役はできないから。」
「わかりました!」
叶さんの指示に昴と裏方組が頷く
「俺達は劇場が使えるようになるまでに、社長達を説得する案を考えよう」
残ったメンバーで、あーでもない、こーでもないと、お客さんにとって納得がいくような案を模索した
夕方前に社長達がホテルに到着した
先に病院へ寄っていたらしい
六花も意識が戻り、平野さんも六花も舞台の事を心配しているらしい
六花は腕の骨折くらいどうとでもなる!とか言ってホテルに戻ろうとするし、平野さんはガチガチに固定して痛み止を服用すれば3日くらいどうにでもできる!と脳筋な事を言って騒いでいるらしい
2人の騒いでいる姿が想像できたのか、皆チベットスナギツネのような表情になる
いや、大人しくしてて………
「早速だが、今後の話をしよう。今回は流石に公演は中止。観客には返金対応をする」
永倉さんがそう言うと、叶さんが待ったをかけた
「その事なんだが、俺達カンパニーは、中止には反対だ。もちろん普通は中止するのが妥当なのはわかっている。だが今回は公演を中止にすれば、ファンの負の感情は平野さんと六花に向く。特に平野さんはストーカーの件があるから、この前の比ではないだろう」
「…確かにそうだろうな。その話は、平野さんの所の社長とも話した。だが公演を続けれる状況じゃないだろ?」
既に向こうの社長さんとは話し合いが行われていたらしく、平野さんをどう守るか話し合いがされているらしい
「それなんだが、六花の代役は俺が。平野さんの代役を環がする。
もちろん六花と平野さんを観る為に来る客には、チケットの返金対応も提示する必要がある。」
「は!?お前が代役って……環…いや、確かに環なら代役も可能だろうけど、公演は明日だぞ!?流石に無理なんじゃ……」
「無理じゃありません」
叶さんと永倉さんの話に割って入ったのは環さんだった
「社長、平野さんの代役、僕にさせてください。聞けば叶さんも自分の役をしながらでも、出番が被っていないので、六花さんの代役をするって。僕は今裏方ですし、平野さんが休みの日は代役をしてたから台詞も入ってるし、動きも分かっています。お願いします。」
環さんの決意みなぎる顔に、僕達は昴達の説得が上手くいったのだと安堵した
「いや…しかし………」
「永倉さん、僕達からの提案なんですが…」
僕は、皆で話し合った案を永倉さんに伝えた
一、チケットの返金対応
二、遠征して来た人には、領収書の提示でその分も返金
三、舞台は観ないが、チケット返金しない場合は今回の舞台DVDと販売予定の写真集セットを送る。
(会場にてチケットの回収+送り先の登録)
お客さんにとってデメリットが少なくなれば、その分批判の声は減るだろう
実際に迷惑がかかるお客さん以外からは好き勝手言われるかもしれないが、正直観に来ていない人が口を出すなと思ってるし、こちらから反論できるように案をまとめた。
事務所的にはデメリットを余計被る事になるが、叶さん曰く「こんな時に所属タレントを守らず、事務所を守る事しか考えないような事務所なら辞めた方がいい」との事
それに永倉さんなら必ず頷いてくれるとも
「わかった。その案を採用しよう。直ぐ事務所のホームページ、チケット販売の会社に連絡を入れる。
舞台の方はお前達にまかせるぞ?衣装とか、大丈夫か?」
永倉さんはタレントをちゃんと守ってくれる社長さんだった
まぁ、僕の件の時にもそうだったけど
あの時は永倉さんの事、まだ信じきれなかったけど、僕にとっては信じれる大人の1人だなって今は思う
「既に衣装合わせはしてある。俺の衣装の丈が短いが、ズボンを替えれば済むから問題ない」
「え?響は六花より背が高いから予想はしてたけど…環、平野さんの衣装入るの?」
「あー…、はい。ピッタリでした。」
環さんが苦笑いで答える
さっき見せて貰ったけど、平野さんの体型に合わせて作られたはずの衣装が、環さんにピッタリサイズだったし、カツラを着けると女の子にしか見えなかったのにも驚いた
「へー…、明日楽しみにしとく」
ニヤニヤ笑いながらそう言うと、永倉さんは手を振って出ていった
きっと各関係先への対応に向かったのだろう
僕と叶さん、昴と環さんの4人は舞台の立ち位置確認の為劇場へ
その前に、六花と平野さんにも話をするため病院へ先に向かった
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