8 / 61
7
しおりを挟む
大学との話し合いは志野さんが間に入ってくれた為すんなりと許可も降り、僕は地方ロケに行くことが出来た
学校行事以外では数年ぶりの遠出で、海に面しているロケ地は魚介類が美味しく楽しかった
民宿みたいな所を貸し切って、スタッフさん達と共にご飯を食べたり、普段じゃ考えれない生活を4週間程おくった
そこのロケ地でクランクアップを迎え、その日の夜に今後の活動について志野さんから話があった
まず大学では今からマスクかメガネを着用し変装する事
売り出し中の1年間は恋愛禁止
事務所の人間だろうが、社長と叶響、志野さん以外との外出や食事は禁止(事務所にはキャバクラやクラブ通いが酷い奴が居るらしい)
何かあれば必ず相談する事
などなど、注意事項もあった
まずは所属用のプロフィール写真の撮影や、ファンクラブ用の写真にショートムービーを数個撮影し、仕事が入るまでは大学に通う以外は、事務所のレッスン場にて稽古を毎日受けるらしい
稽古は、皆ライバルなので、事務所の先輩であっても上下関係等は無くしているそうだ
全て実力主義で、例え先に事務所に入っていても、ランクがものを言うそうだ
因みに、入所して1年はランク付けはされない為この期間に『売れる』と判断されれば基本ランクはCかDスタートになるらしい
志野さんは、叶響が来月から海外での仕事で2ヶ月日本を離れるけど、それまで付きっきりで面倒を見てくれるそうだ
この前紹介されたマネージャーさんは、基本送り迎えのみ、後は日々の僕の成長具合を報告する事になっているらしい
最後に叶響から「俺達が戻って来るまでに基礎を叩きこんどけ」と言われた
基礎ができていなければレギュラーなんて夢のまた夢で、ブレイクできても長くは続かないと
それからの日々は、とにかく忙しかった
ダンスレッスン、発声練習、筋トレ、演技レッスン、歌のレッスン
言われた事は全てメモし、自宅でも練習に明け暮れた
映画公開の時期に合わせた、映画のスポンサーのCMからもオファーを貰って、それもこなした
映画の撮影とは違ってカメラ目線が必要で顔を作るのが難しかった
そうこうしている間に叶響と志野さんは海外へ旅立った
志野さんが僕の傍から居なくなると、それまで喋りかけてこなかった所属役者が喋りかけて来るようになった
演技の細かい所を指摘してくれたり、ダンスで分からない所をアドバイスしてくれたりする人もいた
ワークショップをした際に、意見を出して討論する人や、討論している人の意見に賛同するだけの人がいることに気づいた
演技を見てて、演技臭い…わざとらしい演技をする人達が後者だとも気づいた
ここでは誰がどのランクなのかは開示されていない
けど、見ていたら分かる程に、力の差は歴然としていた
そのFランクであろう人達がやたら無駄に絡んでくるのだ
僕が稽古に行くと常に居るから多分Fランクだろう
迷惑この上ない
志野さんの代わりに着いてくれているマネージャーは我関せずで、推定Fの人達はDランク以上の人達が居ない時を見計らって絡んでくる
何度もしつこく遊びに誘われ、何度も断る
それに腹が立ったのか、今度は嫌がらせを受けるようになった
最初は偶然を装い、ぶつかって来たり足を引っ掛けて来て転ばせようとしてきた
僕が彼らからできる限り離れるようにすると、次はロッカーに入れていた物が翌日にはなくなっていた
それからは毎日全ての荷物を持って帰るようになった
それでも私物が無くなることはあった
子供のいじめのようなことが、この1ヶ月半程続いた
何かあれば連絡するようにと言われていたが、芸能界なんて足の引っ張り合いがあるのは当然で、こんな事でいちいち相談するのもな…と相談はしなかった
その間、いじめを受けているのを見ている癖に注意をしようともしないマネージャーが、相手側だった事を理解したのは、事務所主催の舞台のオーディション日が決まった日だった
所属役者には、3日に分けて明日からオーディションが行われると伝えられた。そしていつもの様にマネージャーの車で帰宅していた
しかしいつもと違う道を進んでいる事に気づき「どこに向かっているんですか?」と聞いたが何も答えない
何度も「何処に連れていく気なんですか」「降ろしてください!」と言ってドアを開けようともしたけど、チャイルドロックがかかっていたのかドアは開かなかった
車は高速に乗り、しばらく走ると高速を降りてそのまま山道を入って行った
そして大分登ったところで止まった
無理やり車から降ろされたのは、これ以上車が入っていけない山の中
車のライトがなければ真っ暗で何も見えないだろう
どうしよう...と思う暇もなく、僕の体は宙に浮き、次に大きな衝撃と痛みに見舞われた
突き飛ばされ、山の斜面を転げ落ちたのだと気づいたのは、バシャンと大きな音と水しぶきを立て川に落ちてからだ
「………おいおい、マジかよ…」
慌てて川から出ると全身ずぶ濡れで、一気に寒くなった
「……どうしよう...」
真っ暗で何も見えない
川の水が流れる音だけが聞こえる
カバンは車の中で、そこに携帯も入れてあった
助けを呼ぶこともできない
それに、こんな事普通の人ならしない
何が気に食わないのかは知らないが、マネージャーが山に、所属役者を置き去りにするなんてありえないだろう
助けを呼べたとして誰を呼ぶ?
僕を助けてくれる人なんて…………
ふと頭の中に叶響の笑顔が浮かび上がった
……叶さんなら...
きっと彼なら助けに来てくれるだろうな...
けど叶さんはアメリカにいて、まだまだ帰ってこない
気温も下がっていて大分寒い
転がり落ちた時に怪我をしたのかあちこち痛い……
このまま死んでしまうのだろうか?
僕がここに居る事は、あの細井ってマネージャーだけだ
いや……諦めちゃダメだ……
僕は叶さんの隣に立つって決めてこの世界に入ったんだ
こんな所で死ぬ訳にはいかない……
川があるって事は、これに沿っていけば麓に出れるかもしれない……
とにかく歩かないと……
僕は痛む体を必死に動かしながら歩き出した
学校行事以外では数年ぶりの遠出で、海に面しているロケ地は魚介類が美味しく楽しかった
民宿みたいな所を貸し切って、スタッフさん達と共にご飯を食べたり、普段じゃ考えれない生活を4週間程おくった
そこのロケ地でクランクアップを迎え、その日の夜に今後の活動について志野さんから話があった
まず大学では今からマスクかメガネを着用し変装する事
売り出し中の1年間は恋愛禁止
事務所の人間だろうが、社長と叶響、志野さん以外との外出や食事は禁止(事務所にはキャバクラやクラブ通いが酷い奴が居るらしい)
何かあれば必ず相談する事
などなど、注意事項もあった
まずは所属用のプロフィール写真の撮影や、ファンクラブ用の写真にショートムービーを数個撮影し、仕事が入るまでは大学に通う以外は、事務所のレッスン場にて稽古を毎日受けるらしい
稽古は、皆ライバルなので、事務所の先輩であっても上下関係等は無くしているそうだ
全て実力主義で、例え先に事務所に入っていても、ランクがものを言うそうだ
因みに、入所して1年はランク付けはされない為この期間に『売れる』と判断されれば基本ランクはCかDスタートになるらしい
志野さんは、叶響が来月から海外での仕事で2ヶ月日本を離れるけど、それまで付きっきりで面倒を見てくれるそうだ
この前紹介されたマネージャーさんは、基本送り迎えのみ、後は日々の僕の成長具合を報告する事になっているらしい
最後に叶響から「俺達が戻って来るまでに基礎を叩きこんどけ」と言われた
基礎ができていなければレギュラーなんて夢のまた夢で、ブレイクできても長くは続かないと
それからの日々は、とにかく忙しかった
ダンスレッスン、発声練習、筋トレ、演技レッスン、歌のレッスン
言われた事は全てメモし、自宅でも練習に明け暮れた
映画公開の時期に合わせた、映画のスポンサーのCMからもオファーを貰って、それもこなした
映画の撮影とは違ってカメラ目線が必要で顔を作るのが難しかった
そうこうしている間に叶響と志野さんは海外へ旅立った
志野さんが僕の傍から居なくなると、それまで喋りかけてこなかった所属役者が喋りかけて来るようになった
演技の細かい所を指摘してくれたり、ダンスで分からない所をアドバイスしてくれたりする人もいた
ワークショップをした際に、意見を出して討論する人や、討論している人の意見に賛同するだけの人がいることに気づいた
演技を見てて、演技臭い…わざとらしい演技をする人達が後者だとも気づいた
ここでは誰がどのランクなのかは開示されていない
けど、見ていたら分かる程に、力の差は歴然としていた
そのFランクであろう人達がやたら無駄に絡んでくるのだ
僕が稽古に行くと常に居るから多分Fランクだろう
迷惑この上ない
志野さんの代わりに着いてくれているマネージャーは我関せずで、推定Fの人達はDランク以上の人達が居ない時を見計らって絡んでくる
何度もしつこく遊びに誘われ、何度も断る
それに腹が立ったのか、今度は嫌がらせを受けるようになった
最初は偶然を装い、ぶつかって来たり足を引っ掛けて来て転ばせようとしてきた
僕が彼らからできる限り離れるようにすると、次はロッカーに入れていた物が翌日にはなくなっていた
それからは毎日全ての荷物を持って帰るようになった
それでも私物が無くなることはあった
子供のいじめのようなことが、この1ヶ月半程続いた
何かあれば連絡するようにと言われていたが、芸能界なんて足の引っ張り合いがあるのは当然で、こんな事でいちいち相談するのもな…と相談はしなかった
その間、いじめを受けているのを見ている癖に注意をしようともしないマネージャーが、相手側だった事を理解したのは、事務所主催の舞台のオーディション日が決まった日だった
所属役者には、3日に分けて明日からオーディションが行われると伝えられた。そしていつもの様にマネージャーの車で帰宅していた
しかしいつもと違う道を進んでいる事に気づき「どこに向かっているんですか?」と聞いたが何も答えない
何度も「何処に連れていく気なんですか」「降ろしてください!」と言ってドアを開けようともしたけど、チャイルドロックがかかっていたのかドアは開かなかった
車は高速に乗り、しばらく走ると高速を降りてそのまま山道を入って行った
そして大分登ったところで止まった
無理やり車から降ろされたのは、これ以上車が入っていけない山の中
車のライトがなければ真っ暗で何も見えないだろう
どうしよう...と思う暇もなく、僕の体は宙に浮き、次に大きな衝撃と痛みに見舞われた
突き飛ばされ、山の斜面を転げ落ちたのだと気づいたのは、バシャンと大きな音と水しぶきを立て川に落ちてからだ
「………おいおい、マジかよ…」
慌てて川から出ると全身ずぶ濡れで、一気に寒くなった
「……どうしよう...」
真っ暗で何も見えない
川の水が流れる音だけが聞こえる
カバンは車の中で、そこに携帯も入れてあった
助けを呼ぶこともできない
それに、こんな事普通の人ならしない
何が気に食わないのかは知らないが、マネージャーが山に、所属役者を置き去りにするなんてありえないだろう
助けを呼べたとして誰を呼ぶ?
僕を助けてくれる人なんて…………
ふと頭の中に叶響の笑顔が浮かび上がった
……叶さんなら...
きっと彼なら助けに来てくれるだろうな...
けど叶さんはアメリカにいて、まだまだ帰ってこない
気温も下がっていて大分寒い
転がり落ちた時に怪我をしたのかあちこち痛い……
このまま死んでしまうのだろうか?
僕がここに居る事は、あの細井ってマネージャーだけだ
いや……諦めちゃダメだ……
僕は叶さんの隣に立つって決めてこの世界に入ったんだ
こんな所で死ぬ訳にはいかない……
川があるって事は、これに沿っていけば麓に出れるかもしれない……
とにかく歩かないと……
僕は痛む体を必死に動かしながら歩き出した
90
あなたにおすすめの小説
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される
あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
【完結】幸せしかないオメガバース
回路メグル
BL
オメガバースが当たり前に存在する現代で、
アルファらしいアルファのアキヤさんと、オメガらしいオメガのミチくんが、
「運命の相手」として出会った瞬間に大好きになって、めちゃくちゃハッピーな番になる話です。
お互いがお互いを好きすぎて、ただただずっとハッピーでラブラブなオメガバースです。
※性描写は予告なくちょこちょこ入ります。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる