【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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彼方が居なくなってから、既に4日目

細井は警察に、詳しい話を聞かれていた

細井の証言では、駅のロータリーで彼方を降ろしすぐに車を出した為、駅に入って行ったのかそうじゃないのか分からないとの事だった

だが警察はその証言が嘘だと判断した

志野からの要求で、細井の車が監視カメラに映っているか調べた所、ロータリーで降ろしたと言う証言映像が、映っていなかったのだ

警察は彼方がいなくなった経緯を、細井が本当は知っていると判断し、監禁でもしているのかと細井を泳がせ周囲を捜索、捜査した

しかし細井の日々の行動は至って普通で、監禁などしている様子がない

捜査は行き詰まっていた


それから2日後、予定より早く叶響がアメリカから帰ってきた

そして同日、細井が警察の目をかいくぐり姿を消した








「警察が尾行してたんじゃなかったのか?」

イライラを隠すことなく叶響は社長に問いかける

「そう聞いてたよ。だからこちらも、普段通り振る舞うよう言われていたし、それに従った。
彼方を探しに行きたいのに、探しに行く事も出来なかった…」

社長は心労からか1週間弱で痩せたように見える

「……警察は頼りにならないな………当日の細井の車が事務所を出てからの行動は調べてあるのか?」

「…どうだろう…こちらからは要求したけど、その後の状況を聞いても警察は捜査中としか言わず、詳しい事は教えてくれないんだ。」

「大野弁護士を呼んで。警察に行く。」

「は?響は表に出ないで!マスコミに気づかれるでしょ!」

今はまだマスコミにもバレる事無く捜査が進んでいる

しかし叶響自ら動けば、週刊誌の良いネタになってしまうだろう

「ならさっさと警察に口を割らせろよ。細井が彼方をどこかに連れていったのは間違いないだろう。
細井の足取りは警察に任せればいい。
当日の細井の車が何処に行ったのか分かれば彼方の居場所が分かるはずだ。」

バン!!とテーブルを叩く叶響に社長は肩をすくめる

「響、落ち着いて。警察には私から話しますから。」

宥めるように志野が言うと、叶響は深い溜息を吐いた

「……彼方…………」

苦しげな表情をする響に、もう誰も何も言えなかった







その日の深夜、事務所に警察から電話が入った

いつでも連絡が取れるよう社長がずっと事務所に寝泊まりしているのだ

細井の車は当日、駅ではなく高速に乗ったことがわかったらしい

そして高速を降り、向かった方面は有名な山の方面だった

現在、県をまたいでいる事から、向こうの警察署に協力を仰ぎ捜索をするとの事だった

事務所に集まった響達の警察への期待は地に落ちた

まず防犯カメラの映像を追うにしても、市民の協力が必要になる
現在は深夜3時、電話があったのは2時半をまわった時だ
こんな時間まで市民に協力してもらっている何てあり得ない
ならば意図的に、こちらへの情報開示を遅らせたとしか響達には思えてならなかった

1週間も行方不明なうえ、生死も分からない状態で、彼方の居場所を知っているであろう細井が逃げたのにも関わらず、公開捜査もせず、挙句に直ぐに他県の警察と捜索しようとしない警察に、響はキレていた

「……遅すぎる。永、俺はもう彼方を探しに行く。」

「響!!」

「明日から1週間仕事は休みだろう。警察に任せていても、いつ彼方が見つかるかわかったもんじゃない。もう1週間だぞ?無事かさえ分からないんだ。それに永は永で調べることがあるだろう?」

叶響はそれだけ言うと、事務所を出ていった

それと入れ替わりに入ってきたのは髪を真っ赤に染めた背の高い男

「響ブチ切れてんじゃん。昔みたいな顔してたけど、警察から連絡来たの?」

志野の隣にドカッと座るとニヤニヤ笑う

「頼、笑い事じゃないですよ…」

さすがの志野も疲れた顔をする

「いやいや、あいつアメリカの撮影、すっげースピードで終わらせて、速攻日本に戻って来たんだぜ?
あいつが感情をあそこまで顕にさせるなんてさぁ。
『彼方』って奴、それ程響の中で存在がデカいんだなと思うと、面白いじゃん?」

「面白いって…」

「あんな、何にも興味ありませんって性格だったのに久々に会ったら180℃変わってんだもん。面白いよ。」

「確かに…彼方君と出会ってから響は変わりましたね…」

「いいんじゃねーの?機械じみた奴より、今のあいつの方が俺は好きだよ」

赤毛の男はまたニヤニヤ笑った




「頼、頼みたいことがあるんだが……」

疲れきった表情を引き締め社長は姿勢を正した

「いいぜ~、ただし条件として、彼方が戻ってきたら俺をマネージャーにすること。」

「……頼が?」

「そっ、彼方って龍さんが言ってたADだろ?必ず響の隣に立てる俳優に育ててやるよ。そん時は邪魔してやるなよ?永倉の気持ちは分かるけどな。」

「……わかった…無茶はしてやらんでくれよ」

自信満々な頼に溜息を吐きつつ、密談が行われた






    
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