ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~

あきさけ

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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第3章 一人前の冒険者を目指して

12. 冒険者登録半月目

「っ!」

「ふむ。砂塵に隠れての攻撃。考え方としては悪くはないな」

 私が冒険者になってから3週間、つまり半月が経った。
 この周辺各国では5日で一週間、6週間で1月と定めているので丁度折り返し。
 サンドロックさんとの訓練も熱を帯びてきたつもりなんだけど、まだまだ甘いみたい。

「まだだめですか……」

「考え方は悪くない。殺気が出過ぎている。気配に敏感な連中にはバレバレだぞ」

「そっちも押さえられるように訓練します」

「そうしろ。それにしても、あの、シラタマだったか。アイツが来てから無茶ができるようになって訓練にも身が入ってきたな」

「あの子、《回復魔法》が使えますからね!」

 はい、シラタマはなんと《回復魔法》スキルを使える子でした!
 これなら普段、魔法を使う必要がないタイミングでも自分に魔法をかけられて魔力を消費できるから、魔力訓練にもぴったり!
 シラタマは戦闘力がかなり低いですけど取っても優秀でいい子です!
 餌がお野菜なので、毎日買い出しに行かなくちゃいけないのは別ですけど。

「訓練中の間、装備は《ストレージ》で盗まれないように工夫もしているし、便利だな、お前」

「あの子たちが一緒にいてくれるおかげです!」

「そうか。大事にしてやれよ」

「もちろんです!」

 もう4匹とも私の仲間ペットではなく家族ですから!
 誰にも譲りません!
 そして、絶対に傷つけさせません!

「そういうや、あのシラタマだったか? あれを助けに行った時にウルフを大量に片付けてくれたんだってな。職員連中が感謝してたぞ」

「そうなんですか?」

「ああ。おかげで未完成のウルフのコロニーが発見できたそうだ。冒険者をある程度の数集め、一網打尽にしたそうだからな。育っていたら街まで攻めてきていたかもしれないってんでお前には感謝しているとよ。コロニー除去まで参加してくれれば、特別報酬とかが出せたんだが、なぜ断った?」

「えーと。私の能力はあまり他人に知られたくないし、お金にもこだわりがなかったし、なにより、団体行動って苦手で……」

 うん、私って団体行動が苦手なんだよね。
 里では散々厄介者扱いされてきたから、あまり誰かと一緒に行動したことなんてないし、狩りに一緒に出ても分け前を奪われるしで嫌な思い出しかない。
 できれば、このままペットたちとだけ一緒に行動したいなぁ。

「まあ、確かにペットの力を知られるのは問題か。お前も独自の販売経路を持っているから、金にこだわっていないことも容易に想像がつく。だが、団体行動には慣れておいた方がいいぞ」

「そうなんですか?」

「いまはまだ早いが、この先護衛任務などを請け負うことがある。そのとき、他の冒険者と衝突しないためにも団体行動と横のつながりあいは持っておいた方がいい。それじゃなくても、新人冒険者どもから見れば、おまえは天気のいい日、毎日小動物を連れて冒険者ギルドの資料室にやってくる変人扱いなんだからな」

「……変人は傷つきます」

「事実だから仕方がない。まあ、新人冒険者どももお前みたいに足元を固めていきながら、地道に実績を積み重ねていけば上位冒険者への道が開けるっていうのにそれをやらねぇんだ。お互い様なんだがな」

 そういえば、冒険者ギルドの資料室って使っている人を見かけたことがないかも。
 そんなに人気がないのかな?
 魔術書だけじゃなくてモンスターの生態系とか簡単な倒し方を載せた本もあったのに。

「本来なら新人こそ資料室でモンスターの生態系を調べなくちゃいけないんだがよ。そういった連中ほど生活がぎりぎりだ。お前が冒険者になるまで宿代と飯代、それに冒険者登録試験代だけでぎりぎりだったようにな」

「あはは……」

「Gランクなんて街の雑用をこなしながらモンスターの知識を蓄えるべきなんだよ。それすらせずにウルフに挑んで返り討ち、なんて冒険者は毎年たくさんいる。お前らステップワンダーはウルフの倒し方に慣れているからウルフ程度なら苦戦はしないだろう。だが、今度はゴブリンに殺される連中が増えてくるな」

 うわ、やっぱり冒険者の世界って過酷なんだ。
 わたし、このままアイリーンの街のウルフ狩り専門冒険者をしていようかな?

「ちなみに、魔物学の本は読んでいるか?」

「はい、読んでいます。ゴブリン程度だったら3匹くらい相手にできますけれど、オークは不意打ちで《魔の鉤爪》を使い1匹倒せればいい方ですね。少なくとも、私のナイフでは致命傷を与えられそうにありません」

「その判断ができているなら十分だ。オークは豚を人型にした魔物だが、見た目通り肉も厚く、楽に致命傷を負わせるには頭部や首を狙うしかない。それ以外の方法になると、相当切れ味のいい剣で切っていかないとオークの肉で阻まれちまう。それだって脂身が多いから長引くと武器が油でギトギトになって切れ味が鈍る。やつらはゴブリン以上の知性もあって冒険者から奪い取った鉄の武器や、やつら自身が木工で作った木の鎧で身を包んでいるから楽じゃねえぞ」

「それも読みました。私には《魔爪》もありますけれど、一発殴られたら終わり。とてもじゃないですが戦えません」

「いい判断だ。臆病と慎重は違う。蛮勇と勇敢もな。ソロで冒険者をやっていくなら臆病なくらいでちょうどいい。さて、休憩はこれくらいで大丈夫か?」

「はい。めまいも治まりました」

「《回復魔法》を覚えたからってそれを使いすぎ、魔力不足を起こすなよ?」

「以後気をつけます……」

「じゃあ、訓練再開だ。とりあえず、魔力はまだ完全に回復していないだろうから、ナイフの接近戦訓練だな」

「はい! よろしくお願いします!」

 このあとも、午前中いっぱいサンドロックさんに指導をつけていただいた。
 やっぱり、サンドロックさんの指導はためになるなぁ。

 そして、訓練終了後、いつもの装備に着替えてから訓練場を出て行くと嫌な連中に出くわした。
 こいつら、アイリーンの街にいたんだ……。

「お? 半端者のシズクじゃねぇか? 冒険者以外は訓練場立ち入り禁止だぞ?」

「私だっていまは冒険者だよ。ほら」

「はっ! Eランクかよ! 俺たちはDランクまで上がったぜ? なあ、みんな」

 そこでドッと湧き上がる嘲笑、こいつらはいつもそうだ。
 面倒くさいことこの上ない。
 里にいたときからずっとこの調子で私のことを馬鹿にしてくるし、私の倒した獲物を横取りしていった。
 さっさと消えてくれないかな?

「んで? 役立たずのシズクはいまなにをしてるんだよ?」

「ウルフ狩りだよ。それが一番街に貢献できるもん」

「はっ! 街に貢献できるのは大物狩りに決まってるだろうが! 俺たちは普段……」

「はいはい、ちょっと退いてくださいね」

 そこでやってきたのはリンネさん。
 あ、ここ、クエストボードの目の前だったんだ。
 お邪魔だったかな?

「リンネさん、定時外のクエスト発注ですか?」

「はい。オークの巣が見つかったそうなので。その駆除をEランク以上の方々にお願いしようかなと」

「Eランク以上の方々ねぇ。シズク、俺たちと競争だ!」

「ああ、シズクさんに受注資格はありませんよ? 最低でも5人以上のパーティが原則ですから」

「だとよ。残念だったな、シズク。この依頼は俺たちがもらっていくぜ」

「わかりました。このクエストはあなた方のパーティが受注ということでよろしいのですね?」

「ああ、構わねえよ。そこの役立たずに世間ってものを見せつけるいい機会だ」

「わかりました。クエスト内容の説明は……」

「そんなもの必要ない。ただ、オークの群れをぶっ殺して魔石と肉を持ち帰るだけだろう? ああ、ポーターも雇ってくぜ」

 ポーター、つまり荷運び役のこと。
 ポーターを雇うっていうことは相当自信があるんだね。
 あれ、でも、こいつらの装備って?

「わかりました。ポーターの手配をして参りますのでしばしお待ちを。それから、これが巣の位置を示した地図です」

「ふむ……片道2日くらいか。楽勝だな、おい!」

 本当に楽勝だと思っているの、こいつら?
 その武器って……。

「ポーターをお連れしました。契約金をお支払いください」

「わかってるって。ほらよ」

「確かに。では、気をつけて行ってらっしゃいませ」

「おう! シズク、お前の才能のなさ、見せつけてやるからよ!」

 また嘲笑をあげながら冒険者ギルドを出ていったステップワンダーの連中。
 私だけじゃなくてギルド内にいる冒険者たちの視線も集めているけれど……その視線は冷ややかだね。
 冒険者の皆さんは、あいつらの装備を確認していたし、仕方がないか。

「リンネさん、あの依頼、あいつらには絶対にこなせませんよね?」

「はい。無理ですね」

「だって、あの武器、青銅製ですものね」

「青銅製でしたね。オークの木の鎧を破壊できても皮を突き破ることすら無理でしょう」

「あと革鎧も……」

「おそらく、ホーンディアあたりの革鎧でしょう。鉄製の武器相手じゃなんの役にも立ちませんよ?」

「厳しすぎません?」

「でも、他の冒険者さんも誰ひとりとして止めなかったじゃないですか。その程度には嫌われている連中なんですよ、彼ら」

「……同郷として恥ずかしいです」

「あと、少なくともここに残っている冒険者の皆さんは、あなたのことを好意的に見ています。サンドロックさんの訓練を毎週欠かさずに来て時間いっぱい受けていく根性と、一年間毎日冒険者登録試験を受けてきたことを知っていますから。天気のいい日は午前中に資料室で勉強をしていることだって知っていますし、冒険者になる前から街の精肉店や毛皮店、錬金術師店に納品していたことも知っています。皆さん、努力する後輩は大好きなんですよ」

「そうなんですね。ありがとうございます!」

 最後はその場にいた冒険者のみんな全員にお礼を言ってみた。
 すると、「頑張れ」とか「あんな連中に負けるな」とか「無理するなよ」とかいろいろな激励の言葉をいただけたよ。
 冒険者の皆さんってこんな暖かい側面もあったんだ。
 資料室での調べ物が終わったら暇なときに訓練をつけてくれるっていう方もいるし、嬉しいね!


********************


「今日はここまでだな」

「ありがとうございました」

「大分余裕が出てきたか。来週からはもう一段階きつくするから気合いを入れろよ」

「はい!」

 サンドロックさんの訓練ってやっぱり楽しいしためになる!
 この間、ばったりゴブリンと遭遇しちゃったけれど落ち着いて対処できたし、自分が強くなっていっているのがわかるってこんなに嬉しいんだ!

「そういや、先週、ゴブリンの魔石を納品したそうだがなにがあった?」

「普段行かない森の方でウルフ狩りをしていたら、ばったりはぐれのゴブリンに出くわしちゃって。一応、出くわしたことと大まかな場所はギルドに報告済みです」

「それならいい。無理にゴブリン狩りなんてしなくていいからな。お前はウルフ狩り専門でも十分だ。街の食糧や革製品、錬金術アイテムの供給に一役買っている。それもまた冒険者のあり方だ」

「わかりました!」

「……まあ、昨日運び込まれたステップワンダーどもは失格だがな」

「運び込まれたステップワンダーども?」

「ああ。ポーターまで雇ってオークの巣を退治に行ったそうだが、1匹も倒せずに返り討ちにあったそうだ。3人は殺されて死体も回収できず、残りのふたりはポーターに回収されて帰ってきたが、冒険者としては生きていけないだろうな」

「そうなんですか?」

「ひとりは片目と片腕を失ってる。ひとりは片腕を失い、片足をグチャグチャに潰されて回復魔法で修復されたが走ることさえできなくなったようだ。そんな連中、ウルフ狩りすらできねぇだろ?」

「確かに、無理ですね」

「あいつらは依頼不達成によるペナルティでEランクにも降格されたし、罰金も支払わされた。片足を潰された方は施術院に大量の借金までしている。装備は全部破壊されたか捨ててきたかだから買い換える金なんて当然無い」

 うわぁ、それは厳しいかも。
 装備がなくなって借金までしているだなんて。

「街中の雑用依頼は冒険者ギルドが信用できる冒険者かどうか試すために発行して受注させるものだ。そんな信頼できない連中に雑用依頼なんて任せられねぇだろうからな。少なくとも、借金がある方は街から出ることすら許されねえし、借金奴隷として売られるしか道はねぇだろ」

「ちなみに、借金ってどれくらいなのか知ってますか?」

「ん? ギルドじゃ有名な話になっているが金貨10枚以上らしいぞ。借金を背負ったのは女のステップワンダーだから行く先は目に見えているな」

「……私も女なので怖い想像をさせないでください」

「はっはっは! お前は借金奴隷に落ちるなよ!」

 うう、借金奴隷になんて絶対にならない!
 そういう場所なんて行きたくないもん!
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