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第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第3章 〝ペットテイマー〟センディアを去る
50. 冒険者ギルドで報告会
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私たちは全員冒険者ギルドのギルドマスタールームに集まり、私がセンディアに行ったときの内容報告をすることとなった。
ほぼ私のグチでしかないと思うんだけど。
「さて、シズクよ。お前さんからみてあの街はどうだった?」
「サンドロックさん。なんでわざわざ私をあの街に行かせたんですか?」
「つーことは、昔となにも変わってねぇってことか」
「昔とどんな違いがあるかは知りません。知りませんが酷い街でした。〝人間至上主義〟とかいう主張がはびこっていて、冒険者ギルドマスターのリーマンダとかいう男は私が渡した依頼書を読まずに破り捨てましたし、その前にも街の衛兵は私を特使と認めずマントと服を置いて帰れと言ってみたり、冒険者ギルドの受付は私が特使の証を見せても追い出そうと実力行使してみたり、最終的には私を暗殺しようと多人数で追いかけ回してきてみたりしました」
「……そこまで落ちたか。センディアは」
ケウナコウ様は溜息をつかれるけれど、酷いなんてものじゃなかったよ、あれは。
「私は昔のセンディアを知りません。ですが、私が見てきた限り、センディアから冒険者を呼んでも役に立たないでしょう。せいぜい人間以外の冒険者を侮蔑し始めて働かないはずです」
「冒険者の質まで落ちてるのか。どうしようもないな」
「それに、〝真理同盟〟とかいう組織があるみたいで、そいつらは人間以外の種族を徹底的に迫害しているみたいです。あと、『天職』がテイマー系になった者は人間であっても」
「人間であっても? どういう意味だ?」
「私が連れてきたこの女の子、ミーベルンですが『天職』は私と同じ〝ペットテイマー〟です。センディアでは5歳の時に『天職』を調べるみたいなんですが、〝ペットテイマー〟であることが判明し、ペットと契約したあとから迫害され始めたそうなんです。それで、3年間くらいまともに生活できていなかったみたいで」
さすがにこの話を聞いたときはケウナコウ様もサンドロックさんも一気に怒りを露わにしたね。
でも、ミーベルンが怯えちゃったから落ち着いてほしいな。
「そういうわけで、家に帰るあてもなかったようなのでミーベルンは私が保護して連れ帰りました。ケウナコウ様、彼女にアイリーンの街の市民権を与えてもらえませんか?」
「わかった。保護監督者はシズクでいいな?」
「はい、大丈夫です」
「では、この報告会が終わったらすぐにでも手配しよう。それで、〝真理同盟〟とはどういう組織なのだ?」
「ええと……」
困った、一度詳細は聞いたけど逃げる算段もしていたから細かいことを覚えていない。
どうしよう……。
『〝人間至上主義〟の中でももっとも過激な集団であり最大派閥。その目的は〝力のない者を襲い、殺すことで位階をあげ楽園へと導かれていく〟というものだ』
「あ、補足ありがとう、ベルン」
「そちらの犬、ベルンと言ったか? 〝力のない者〟とは具体的になにを指し示すのだ?」
『人間以外のヒト族および『天職』がテイマー系の者たちすべてを指し示している。特に力の弱い子供や老人、怪我を負っている者、病を患っている者を殺すほど位階が高まるという話だ。〝この世界では生きていけない弱者を殺し、生きる苦しみから救ってやっている〟という理屈、だった気がする』
「本物の狂信者じゃねぇか」
「そのような者たちがセンディアの主流になりつつあるとは。見分ける方法はないのか?」
『あるにはある。やつらは奇怪なアミュレットを持ち歩いているのだ。輪の中に目玉の刺さった形をしていたはずだな』
「そうか。今日捕らえた騎士どもの所持品にもそれらがないか調べてみるとしよう」
『それがいい。やつらはアミュレットを肌身離さず持っているはずだ。アミュレットから遠ざかれば位階が下がり、アミュレットを紛失したり壊したりすれば位階を失うと信じているらしいからな』
「わかった。参考にさせてもらおう」
「しかし、ベルンだったか。お前詳しいな。どこでそんなことを学んだんだよ?」
『やつらの洗礼を盗み見していただけだ。そこで見聞きしたことを覚えていたに過ぎない』
うわー、ベルンってすごく賢い。
ミネルも賢いけれど、ベルンも同じくらい賢いかも。
私ももっといろいろ勉強しないとなぁ。
『それにしても、やつらのボスは冒険者ギルドマスターだと聞いていたのだが違ったようだな』
「冒険者ギルドマスターだぁ!? リーマンダのやつ、そんなことにまで手を染めていやがったのか!」
『我々が調べた限りではそうだったのだが、シズクの仲間に両腕を切り落とされたあとどこかに逃げていき、その後、あの騎士どもが追って来た。ボスは別にいるのだろう』
「……そうなると限りなく怪しいのはセンディア領主か。あの騎士どもが領主親衛騎士団ともなればことが大きすぎるな」
「どうするんだ、ケウナコウ」
「まずは騎士どもをしっかりと尋問にかける。そこで出てきた証言を元に国王陛下と相談だ。あの街の異常性は知っていたが、このままでは暴徒が支配する街となってしまう。場合によっては領主家をお取り潰しの上、処刑。街の住民たちにも相応の処罰が下されるだろう」
「そうしてください。私がステップワンダーだからって理由で、ケウナコウ様が予約していたホテルも泊まれませんでしたし」
「そうなのか? 昔、私が利用したときは人間族以外の従者も泊まれたのだが」
「いま、あの街の一流ホテルの条件は〝人間族以外を泊まらせないこと〟らしいですよ? 人間至上主義であることこそが一流の条件らしいです。私なんて門の中にすら入れてもらえませんでしたし、特使を追い返したことを高らかに自慢していましたね」
「……頭が痛いな。いまのうちから国と連絡を取り、対策を練り始めるべきか?」
「私はただのステップワンダーで冒険者なのでわかりません。ただ、領主命令の依頼命令書さえ拒んだことだけは事実です」
「……そこまでしたのかよ、リーマンダは」
「しましたよ? 立場が悪くなったらその場にいた冒険者たちに命令し、私を殺そうともしました。武器を抜いた冒険者はミネルの《風魔法》で両腕を切り落としましたし、最終的にはギルドマスター本人も襲いかかってこようと剣を抜いたので同じ処置に。ああ、あちらのギルドマスターに死なれるのは困ると思ったので、シラタマにお願いして傷口だけ塞ぎましたが」
「それでよい。依頼命令書は?」
「血の海に沈んだので受領拒否扱いとしました。文字も読み取れなくなった依頼書に価値はありませんから」
そこまで説明したらケウナコウ様もサンドロックさんも溜息をついて俯いてしまった。
私、ひょっとしてやり過ぎた?
「ええと、問題ですか?」
「ん、ああ、問題はねぇ。だが、正当な理由のある領主命令の依頼命令書も拒否したってことは、センディアの冒険者ギルドとそこに所属している冒険者は国から孤立だな。ケウナコウ、これを理由に王都とつなぎを取ろうぜ」
「そうするか。他に問題はなかったか?」
「うーん、他に問題点はないですね。特使である私を暗殺しようとした連中は、返り討ちにしてゴブリンの巣へ捨ててきました。ミーベルンの処遇も決まりましたし、他に問題事項はありません」
「ここまで問題があふれていりゃ、問題もなくなるか」
「逆に他に問題があったとしてもわからなくなっていそうだ」
問題、問題かぁ。
あ、そういえばひとつだけ問題が。
「センディア周辺にいたキラーブルとフォーホーンブルを、ほぼ狩り尽くしてしまったみたいですけど大丈夫ですよね? なんだか繁殖力とか生息域を広める速度とかが遅いらしいですけど」
「いいんじゃねぇの? お前がされてきた問題に比べれば些細な問題だろうよ」
「それにこの先あの街でキラーブルやフォーホーンブルを討伐しても、どこにも売ることができない。冒険者ギルドが孤立してしまった以上、商人が冒険者を雇っても別の街のギルドで依頼金を精算できないのだからな。あの街にものを売りに行く商人もいなくなって行くだろう。センディアの街は放っておけば緩やかに死んでいくだけだよ」
そうなんだ。
センディアってもう未来がないのか……。
エンディコットさんとその宿って大丈夫かな?
「ん? なにか問題でもあるのか?」
「ああ、いえ。今回お世話になった宿も潰れちゃうのかなって」
「ふむ、シズクが世話になった宿か。アイリーンの街に拠点を移すつもりがあるのなら支援してもいいのだが、難しいだろうな。そういう者は、自分の店に誇りを持っているだろう」
「そうですか……」
「まあ、街が滅びる前に国の手を入れる。悪いようにはならないはずだ」
「そう信じたいです」
そのあともいろいろと打ち合わせをして、私が持ち帰ったオーク肉料理のレシピをもとにしたオーク肉料理も運ばれてきた。
エンディコットさんの宿とはまた違った味付けで、私には大胆というかちょっと味が濃かったけれど、一般的な冒険者向けには味の濃い方が受けるらしい。
今回改善してもらったレシピも受け取ったし、ケウナコウ様はこれらを複製して街にある食堂に配ってくださるって。
あと、私が狩ってきたキラーブルとフォーホーンブルのお肉や皮、頭の骨と角なんかはまだしばらく私預かりにしてほしいみたい。
特に私が倒した特殊変異個体、あれは冒険者ギルドでもどれくらいの買値をつければいいのかわからないそうで、皮と頭と角はアダムさんのところに持っていって全部私のレザーアーマーとかローブとかにすればいいって言われた。
あんな巨大生物の皮一頭分をステップワンダーの私がどう使い切れと……。
ともかく打ち合わせや買い取りなどの交渉ごとは全部終了。
次の街に行くのはしばらく待ってほしい、ケウナコウ様からそう命じられたのでしばらくはウルフ狩りに戻れそう。
ミーベルンの市民権登録も終わったし、あとはメルカトリオ錬金術師店に連れて行ってメイナお姉ちゃんにミーベルンのことをお願いするだけだよね。
お姉ちゃん、元気かな?
「ただいま、メイナお姉ちゃん」
「お帰りなさい、シズクちゃん。お仕事はどうだったの?」
「んー、いろいろとあった。それで、メイナお姉ちゃんにお願いしたいことがあって」
「お願いしたいこと?」
「うん。入ってきていいよ、ミーベルン」
「し、失礼、します」
「うん? シズクちゃん、その女の子は?」
「ええっとね……」
メイナお姉ちゃんにミーベルンの事情を説明してみた。
それで、ミーベルンもメルカトリオ錬金術師店で一緒に暮らせないかってお願いも。
「そう。辛い思いをしてきたのね、ミーベルンちゃん」
「……うん」
「ミーベルンちゃんがこのお家にいたいならいてもいいよ? 私とシズクちゃんも一緒に暮らしているから、あなたのこともきちんとお世話してあげる」
「いいの?」
「大人がいいって言っているのだから子供が遠慮しちゃだめよ。ああ、でも困ったわね。いまの時間からだと家具屋さんに行ってミーベルンちゃんのベッドを買う時間もないわ」
「私、シズクお姉ちゃんと一緒に寝たい」
「いいの、ミーベルン? エンディコットさんの宿みたいに大きなベッドじゃないよ?」
「シズクお姉ちゃんがいいなら一緒に寝たい。だめ?」
「それじゃあ、今日は一緒に寝ようか。明日は家具屋に行ってミーベルンの部屋に置く家具を買い出しだね」
「うん!」
「あらあら。新しい同居人が増えて楽しくなりそう」
この日は奮発してフォーホーンブルのお肉をみんなで食べてみた。
部位によってあっさりしていたりコリコリしていたり、食感だけでも楽しかったな。
もちろん、味も文句なしでおいしかったけど。
フォーホーンブルも数百匹狩ってきたし、私たち3人で食べられるお肉の量なんてちょっとだけだから、時々食べる贅沢品にしようねってことになったよ。
ミーベルンも嬉しそうだったし、この子も幸せにしてあげたいな。
ほぼ私のグチでしかないと思うんだけど。
「さて、シズクよ。お前さんからみてあの街はどうだった?」
「サンドロックさん。なんでわざわざ私をあの街に行かせたんですか?」
「つーことは、昔となにも変わってねぇってことか」
「昔とどんな違いがあるかは知りません。知りませんが酷い街でした。〝人間至上主義〟とかいう主張がはびこっていて、冒険者ギルドマスターのリーマンダとかいう男は私が渡した依頼書を読まずに破り捨てましたし、その前にも街の衛兵は私を特使と認めずマントと服を置いて帰れと言ってみたり、冒険者ギルドの受付は私が特使の証を見せても追い出そうと実力行使してみたり、最終的には私を暗殺しようと多人数で追いかけ回してきてみたりしました」
「……そこまで落ちたか。センディアは」
ケウナコウ様は溜息をつかれるけれど、酷いなんてものじゃなかったよ、あれは。
「私は昔のセンディアを知りません。ですが、私が見てきた限り、センディアから冒険者を呼んでも役に立たないでしょう。せいぜい人間以外の冒険者を侮蔑し始めて働かないはずです」
「冒険者の質まで落ちてるのか。どうしようもないな」
「それに、〝真理同盟〟とかいう組織があるみたいで、そいつらは人間以外の種族を徹底的に迫害しているみたいです。あと、『天職』がテイマー系になった者は人間であっても」
「人間であっても? どういう意味だ?」
「私が連れてきたこの女の子、ミーベルンですが『天職』は私と同じ〝ペットテイマー〟です。センディアでは5歳の時に『天職』を調べるみたいなんですが、〝ペットテイマー〟であることが判明し、ペットと契約したあとから迫害され始めたそうなんです。それで、3年間くらいまともに生活できていなかったみたいで」
さすがにこの話を聞いたときはケウナコウ様もサンドロックさんも一気に怒りを露わにしたね。
でも、ミーベルンが怯えちゃったから落ち着いてほしいな。
「そういうわけで、家に帰るあてもなかったようなのでミーベルンは私が保護して連れ帰りました。ケウナコウ様、彼女にアイリーンの街の市民権を与えてもらえませんか?」
「わかった。保護監督者はシズクでいいな?」
「はい、大丈夫です」
「では、この報告会が終わったらすぐにでも手配しよう。それで、〝真理同盟〟とはどういう組織なのだ?」
「ええと……」
困った、一度詳細は聞いたけど逃げる算段もしていたから細かいことを覚えていない。
どうしよう……。
『〝人間至上主義〟の中でももっとも過激な集団であり最大派閥。その目的は〝力のない者を襲い、殺すことで位階をあげ楽園へと導かれていく〟というものだ』
「あ、補足ありがとう、ベルン」
「そちらの犬、ベルンと言ったか? 〝力のない者〟とは具体的になにを指し示すのだ?」
『人間以外のヒト族および『天職』がテイマー系の者たちすべてを指し示している。特に力の弱い子供や老人、怪我を負っている者、病を患っている者を殺すほど位階が高まるという話だ。〝この世界では生きていけない弱者を殺し、生きる苦しみから救ってやっている〟という理屈、だった気がする』
「本物の狂信者じゃねぇか」
「そのような者たちがセンディアの主流になりつつあるとは。見分ける方法はないのか?」
『あるにはある。やつらは奇怪なアミュレットを持ち歩いているのだ。輪の中に目玉の刺さった形をしていたはずだな』
「そうか。今日捕らえた騎士どもの所持品にもそれらがないか調べてみるとしよう」
『それがいい。やつらはアミュレットを肌身離さず持っているはずだ。アミュレットから遠ざかれば位階が下がり、アミュレットを紛失したり壊したりすれば位階を失うと信じているらしいからな』
「わかった。参考にさせてもらおう」
「しかし、ベルンだったか。お前詳しいな。どこでそんなことを学んだんだよ?」
『やつらの洗礼を盗み見していただけだ。そこで見聞きしたことを覚えていたに過ぎない』
うわー、ベルンってすごく賢い。
ミネルも賢いけれど、ベルンも同じくらい賢いかも。
私ももっといろいろ勉強しないとなぁ。
『それにしても、やつらのボスは冒険者ギルドマスターだと聞いていたのだが違ったようだな』
「冒険者ギルドマスターだぁ!? リーマンダのやつ、そんなことにまで手を染めていやがったのか!」
『我々が調べた限りではそうだったのだが、シズクの仲間に両腕を切り落とされたあとどこかに逃げていき、その後、あの騎士どもが追って来た。ボスは別にいるのだろう』
「……そうなると限りなく怪しいのはセンディア領主か。あの騎士どもが領主親衛騎士団ともなればことが大きすぎるな」
「どうするんだ、ケウナコウ」
「まずは騎士どもをしっかりと尋問にかける。そこで出てきた証言を元に国王陛下と相談だ。あの街の異常性は知っていたが、このままでは暴徒が支配する街となってしまう。場合によっては領主家をお取り潰しの上、処刑。街の住民たちにも相応の処罰が下されるだろう」
「そうしてください。私がステップワンダーだからって理由で、ケウナコウ様が予約していたホテルも泊まれませんでしたし」
「そうなのか? 昔、私が利用したときは人間族以外の従者も泊まれたのだが」
「いま、あの街の一流ホテルの条件は〝人間族以外を泊まらせないこと〟らしいですよ? 人間至上主義であることこそが一流の条件らしいです。私なんて門の中にすら入れてもらえませんでしたし、特使を追い返したことを高らかに自慢していましたね」
「……頭が痛いな。いまのうちから国と連絡を取り、対策を練り始めるべきか?」
「私はただのステップワンダーで冒険者なのでわかりません。ただ、領主命令の依頼命令書さえ拒んだことだけは事実です」
「……そこまでしたのかよ、リーマンダは」
「しましたよ? 立場が悪くなったらその場にいた冒険者たちに命令し、私を殺そうともしました。武器を抜いた冒険者はミネルの《風魔法》で両腕を切り落としましたし、最終的にはギルドマスター本人も襲いかかってこようと剣を抜いたので同じ処置に。ああ、あちらのギルドマスターに死なれるのは困ると思ったので、シラタマにお願いして傷口だけ塞ぎましたが」
「それでよい。依頼命令書は?」
「血の海に沈んだので受領拒否扱いとしました。文字も読み取れなくなった依頼書に価値はありませんから」
そこまで説明したらケウナコウ様もサンドロックさんも溜息をついて俯いてしまった。
私、ひょっとしてやり過ぎた?
「ええと、問題ですか?」
「ん、ああ、問題はねぇ。だが、正当な理由のある領主命令の依頼命令書も拒否したってことは、センディアの冒険者ギルドとそこに所属している冒険者は国から孤立だな。ケウナコウ、これを理由に王都とつなぎを取ろうぜ」
「そうするか。他に問題はなかったか?」
「うーん、他に問題点はないですね。特使である私を暗殺しようとした連中は、返り討ちにしてゴブリンの巣へ捨ててきました。ミーベルンの処遇も決まりましたし、他に問題事項はありません」
「ここまで問題があふれていりゃ、問題もなくなるか」
「逆に他に問題があったとしてもわからなくなっていそうだ」
問題、問題かぁ。
あ、そういえばひとつだけ問題が。
「センディア周辺にいたキラーブルとフォーホーンブルを、ほぼ狩り尽くしてしまったみたいですけど大丈夫ですよね? なんだか繁殖力とか生息域を広める速度とかが遅いらしいですけど」
「いいんじゃねぇの? お前がされてきた問題に比べれば些細な問題だろうよ」
「それにこの先あの街でキラーブルやフォーホーンブルを討伐しても、どこにも売ることができない。冒険者ギルドが孤立してしまった以上、商人が冒険者を雇っても別の街のギルドで依頼金を精算できないのだからな。あの街にものを売りに行く商人もいなくなって行くだろう。センディアの街は放っておけば緩やかに死んでいくだけだよ」
そうなんだ。
センディアってもう未来がないのか……。
エンディコットさんとその宿って大丈夫かな?
「ん? なにか問題でもあるのか?」
「ああ、いえ。今回お世話になった宿も潰れちゃうのかなって」
「ふむ、シズクが世話になった宿か。アイリーンの街に拠点を移すつもりがあるのなら支援してもいいのだが、難しいだろうな。そういう者は、自分の店に誇りを持っているだろう」
「そうですか……」
「まあ、街が滅びる前に国の手を入れる。悪いようにはならないはずだ」
「そう信じたいです」
そのあともいろいろと打ち合わせをして、私が持ち帰ったオーク肉料理のレシピをもとにしたオーク肉料理も運ばれてきた。
エンディコットさんの宿とはまた違った味付けで、私には大胆というかちょっと味が濃かったけれど、一般的な冒険者向けには味の濃い方が受けるらしい。
今回改善してもらったレシピも受け取ったし、ケウナコウ様はこれらを複製して街にある食堂に配ってくださるって。
あと、私が狩ってきたキラーブルとフォーホーンブルのお肉や皮、頭の骨と角なんかはまだしばらく私預かりにしてほしいみたい。
特に私が倒した特殊変異個体、あれは冒険者ギルドでもどれくらいの買値をつければいいのかわからないそうで、皮と頭と角はアダムさんのところに持っていって全部私のレザーアーマーとかローブとかにすればいいって言われた。
あんな巨大生物の皮一頭分をステップワンダーの私がどう使い切れと……。
ともかく打ち合わせや買い取りなどの交渉ごとは全部終了。
次の街に行くのはしばらく待ってほしい、ケウナコウ様からそう命じられたのでしばらくはウルフ狩りに戻れそう。
ミーベルンの市民権登録も終わったし、あとはメルカトリオ錬金術師店に連れて行ってメイナお姉ちゃんにミーベルンのことをお願いするだけだよね。
お姉ちゃん、元気かな?
「ただいま、メイナお姉ちゃん」
「お帰りなさい、シズクちゃん。お仕事はどうだったの?」
「んー、いろいろとあった。それで、メイナお姉ちゃんにお願いしたいことがあって」
「お願いしたいこと?」
「うん。入ってきていいよ、ミーベルン」
「し、失礼、します」
「うん? シズクちゃん、その女の子は?」
「ええっとね……」
メイナお姉ちゃんにミーベルンの事情を説明してみた。
それで、ミーベルンもメルカトリオ錬金術師店で一緒に暮らせないかってお願いも。
「そう。辛い思いをしてきたのね、ミーベルンちゃん」
「……うん」
「ミーベルンちゃんがこのお家にいたいならいてもいいよ? 私とシズクちゃんも一緒に暮らしているから、あなたのこともきちんとお世話してあげる」
「いいの?」
「大人がいいって言っているのだから子供が遠慮しちゃだめよ。ああ、でも困ったわね。いまの時間からだと家具屋さんに行ってミーベルンちゃんのベッドを買う時間もないわ」
「私、シズクお姉ちゃんと一緒に寝たい」
「いいの、ミーベルン? エンディコットさんの宿みたいに大きなベッドじゃないよ?」
「シズクお姉ちゃんがいいなら一緒に寝たい。だめ?」
「それじゃあ、今日は一緒に寝ようか。明日は家具屋に行ってミーベルンの部屋に置く家具を買い出しだね」
「うん!」
「あらあら。新しい同居人が増えて楽しくなりそう」
この日は奮発してフォーホーンブルのお肉をみんなで食べてみた。
部位によってあっさりしていたりコリコリしていたり、食感だけでも楽しかったな。
もちろん、味も文句なしでおいしかったけど。
フォーホーンブルも数百匹狩ってきたし、私たち3人で食べられるお肉の量なんてちょっとだけだから、時々食べる贅沢品にしようねってことになったよ。
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