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第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第九章 森と魔物の異変
44. 魔物の大発生
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わたしたちが森から帰ったあと、フルートリオンはにわかに慌ただしくなってきた。
今回の報告を聞いた衛兵さんと冒険者さんたちが調査を行い、森がおかしいことを確かめたんだって。
具体的にどうおかしかったのかは教えてもらえなかったけど、とにかく森の様子がおかしかったらしい。
衛兵さんたちは様子がおかしいのがわたしたちの行った森だけなのか調べるため、冒険者さんたちに依頼を出したって噂だし、わたしのお薬も用心して買いに来る人が増えている。
とにかく、街の様子が明らかに騒がしいんだよね。
わたしも裏庭に行く以外は極力店から出ないように指示されちゃったし。
一体、何が起こっているんだろう?
「ねえ、スピカさん。街の人たちは一体何に怯えているんですか?」
「おや、ノヴァちゃん。街の人たちが怯えているとわかるのかい?」
「はい。明らかに浮き足立って怯えていますよね? 一体どうしたんでしょう」
「じゃあ、説明しておこうか。スピカちゃんがこの間行った森で、魔物の大発生した痕跡が見つかったんだよ。魔物はもうどこかに行ったあとだったみたいだけど、動物や植物たちが食い荒らされたあとが残されていたらしい」
「魔物の大発生……」
「だから、街の衛兵は守りをしっかり固めているんだよ。子供たちも家の外には出ないように注意してあるし、大人だってなるべく出歩かないようにしている。どんな魔物が大発生してどこに行ったのか、さっぱりわからないからね」
なるほど、そんなことがあったんだ。
命の気配がしなかったのは、魔物に襲われて死んじゃったか、怯えて閉じこもっているかだからだったんだね。
でも、そんなたくさんの魔物どこから出現したんだろう?
それもスピカさんに聞いてみたんだけど、どうやら魔物ってときどき大発生することがあるらしい。
一種族の魔物が大量に生まれることもあれば、たくさんの種類がまとめて生まれることもあるとか。
今回は残されていた特徴から、いろんな種類の魔物が生まれた可能性があるらしい。
だからこそ、みんな警戒レベルが高いんだって。
一種族の魔物だけだったら対抗するのも簡単なんだけど、たくさんの種類が集まっていると対応するのも大変らしいから。
去年くらいにヴェルクさんが言っていたけど、スライムみたいな魔物は剣だと倒しにくい。
でも、剣じゃないと倒しにくい魔物だっているらしいし、それに対応するためには武器もたくさんの種類を集めなくちゃいけない。
でも、集められる武器の数にだって限りがあるから、どんな魔物がどれくらい発生したかを早めに調べるのが大切なんだって。
うーん、わたしには難しい話だなぁ。
わたしやシシにかかれば魔法でドカーンと倒してしまえるからね。
あ、でも、魔法が効かない魔物もいるかもしれないのか。
そういう魔物に出くわしたら危険かも。
わたしも武器の使い方を覚えるべきかなぁ?
「そういうわけだから、ノヴァちゃんもあまり外には行かないようにね。空を飛ぶ魔物だっているのだから」
「はーい。それにしても、魔物の大発生なんて現象があるんですね。初めて知りました」
「そりゃあ小さな村が巻き込まれれば、村人全員が魔物に殺されるような災害だからねぇ。私が若い頃にもフルートリオンで一回大発生があったものだよ」
「スピカさんが若い頃にですか? その時ってどうなりました?」
「大勢の冒険者や衛兵が死んだねぇ。幸い、空を飛ぶ魔物がいなかったから大事には至らなかったけど、空を飛ぶ魔物までいたらフルートリオンの街がなくなっていたかも」
そっか、そんなに大変なんだ。
わたしも注意しないと。
あと、冒険者さんたちにもお薬をたくさん作ってあげないとね。
怪我をして死んじゃったら悲しいもん。
薬草の種類がもう少し増えれば、いまの傷薬よりももう一段階強い傷薬が作れるんだけど、探しに行くことも出来ないよね。
残念。
街が息を潜めるように静かになってしばらく経つと雪が降り始めた。
どうやら今年は早めに冬がやってきたらしい。
魔物もこれでいなくなってくれるとありがたかったんだけど、そうじゃないみたい。
街の外で警戒をしているはずのアーテルさんがやってきてお薬の依頼をしだしたもの。
「なあ、ノヴァ。しばらくの間、体が冷えなくなるような薬って作れないか?」
「どうしたんですか、アーテルさん。急に」
「いや、魔物捜しをしていた連中の一組が、暖を取っている間に魔物に襲われたそうでな。もし、錬金術でしばらくの間体が冷えなくなるような道具を作れるのなら作ってもらえないかと相談に来たわけだ」
「しばらくの間冷えないお薬……お薬じゃなくて飲み物になりますけど、作れるかも」
「本当か!? それなら頼む!」
「構いませんよ。でも、飲み物ってこのお店で売ってないんだよなぁ」
「うん? 素材に飲み物が必要なのか?」
「はい。わたしが思いついた作り方だと、何か飲み物が必要になります。普通のお水じゃダメです」
「水じゃダメか。わかった。俺が街中の商店でワインを買ってこよう。それを素材に出来るか?」
「多分、大丈夫です。わたしも一緒に行きますか?」
「お前はダメだ。いくらシシがついているとは言っても、まだ子供。外を出歩かせるわけにはいかない」
「むぅ。わたしだって一人前の錬金術士です!」
「一人前だろうと子供は子供だ。ともかく、ワインは買ってくるから体が冷えない飲み物を使ってくれ」
「わかりました。準備をしておきますので、早く買ってきてください」
「助かる。じゃあ、行ってくるわ」
アーテルさんがワインを買って帰ってきたあと、それを素材にして体の温まるワインを完成させた。
アーテルさんの話だと酔っ払う成分っていうのが抜けて飲みやすくなっているし、飲むとすぐに体が温まってきて助かるそうだ。
急ごしらえで効果がどの程度続くかの検証もしていないけど、急いで必要ということで、アーテルさんの買ってきたワインはすべて錬金術で体の温まるワインに変えた。
アーテルさんは錬金術の手数料をわたしに手渡すと、それらのワインを抱えて外へ駆け出していってしまった。
そんなに忙しいんだね、いまの冒険者さんって。
翌日には追加のワインも届いたし、わたしもできる範囲で街に貢献しなくっちゃ!
今回の報告を聞いた衛兵さんと冒険者さんたちが調査を行い、森がおかしいことを確かめたんだって。
具体的にどうおかしかったのかは教えてもらえなかったけど、とにかく森の様子がおかしかったらしい。
衛兵さんたちは様子がおかしいのがわたしたちの行った森だけなのか調べるため、冒険者さんたちに依頼を出したって噂だし、わたしのお薬も用心して買いに来る人が増えている。
とにかく、街の様子が明らかに騒がしいんだよね。
わたしも裏庭に行く以外は極力店から出ないように指示されちゃったし。
一体、何が起こっているんだろう?
「ねえ、スピカさん。街の人たちは一体何に怯えているんですか?」
「おや、ノヴァちゃん。街の人たちが怯えているとわかるのかい?」
「はい。明らかに浮き足立って怯えていますよね? 一体どうしたんでしょう」
「じゃあ、説明しておこうか。スピカちゃんがこの間行った森で、魔物の大発生した痕跡が見つかったんだよ。魔物はもうどこかに行ったあとだったみたいだけど、動物や植物たちが食い荒らされたあとが残されていたらしい」
「魔物の大発生……」
「だから、街の衛兵は守りをしっかり固めているんだよ。子供たちも家の外には出ないように注意してあるし、大人だってなるべく出歩かないようにしている。どんな魔物が大発生してどこに行ったのか、さっぱりわからないからね」
なるほど、そんなことがあったんだ。
命の気配がしなかったのは、魔物に襲われて死んじゃったか、怯えて閉じこもっているかだからだったんだね。
でも、そんなたくさんの魔物どこから出現したんだろう?
それもスピカさんに聞いてみたんだけど、どうやら魔物ってときどき大発生することがあるらしい。
一種族の魔物が大量に生まれることもあれば、たくさんの種類がまとめて生まれることもあるとか。
今回は残されていた特徴から、いろんな種類の魔物が生まれた可能性があるらしい。
だからこそ、みんな警戒レベルが高いんだって。
一種族の魔物だけだったら対抗するのも簡単なんだけど、たくさんの種類が集まっていると対応するのも大変らしいから。
去年くらいにヴェルクさんが言っていたけど、スライムみたいな魔物は剣だと倒しにくい。
でも、剣じゃないと倒しにくい魔物だっているらしいし、それに対応するためには武器もたくさんの種類を集めなくちゃいけない。
でも、集められる武器の数にだって限りがあるから、どんな魔物がどれくらい発生したかを早めに調べるのが大切なんだって。
うーん、わたしには難しい話だなぁ。
わたしやシシにかかれば魔法でドカーンと倒してしまえるからね。
あ、でも、魔法が効かない魔物もいるかもしれないのか。
そういう魔物に出くわしたら危険かも。
わたしも武器の使い方を覚えるべきかなぁ?
「そういうわけだから、ノヴァちゃんもあまり外には行かないようにね。空を飛ぶ魔物だっているのだから」
「はーい。それにしても、魔物の大発生なんて現象があるんですね。初めて知りました」
「そりゃあ小さな村が巻き込まれれば、村人全員が魔物に殺されるような災害だからねぇ。私が若い頃にもフルートリオンで一回大発生があったものだよ」
「スピカさんが若い頃にですか? その時ってどうなりました?」
「大勢の冒険者や衛兵が死んだねぇ。幸い、空を飛ぶ魔物がいなかったから大事には至らなかったけど、空を飛ぶ魔物までいたらフルートリオンの街がなくなっていたかも」
そっか、そんなに大変なんだ。
わたしも注意しないと。
あと、冒険者さんたちにもお薬をたくさん作ってあげないとね。
怪我をして死んじゃったら悲しいもん。
薬草の種類がもう少し増えれば、いまの傷薬よりももう一段階強い傷薬が作れるんだけど、探しに行くことも出来ないよね。
残念。
街が息を潜めるように静かになってしばらく経つと雪が降り始めた。
どうやら今年は早めに冬がやってきたらしい。
魔物もこれでいなくなってくれるとありがたかったんだけど、そうじゃないみたい。
街の外で警戒をしているはずのアーテルさんがやってきてお薬の依頼をしだしたもの。
「なあ、ノヴァ。しばらくの間、体が冷えなくなるような薬って作れないか?」
「どうしたんですか、アーテルさん。急に」
「いや、魔物捜しをしていた連中の一組が、暖を取っている間に魔物に襲われたそうでな。もし、錬金術でしばらくの間体が冷えなくなるような道具を作れるのなら作ってもらえないかと相談に来たわけだ」
「しばらくの間冷えないお薬……お薬じゃなくて飲み物になりますけど、作れるかも」
「本当か!? それなら頼む!」
「構いませんよ。でも、飲み物ってこのお店で売ってないんだよなぁ」
「うん? 素材に飲み物が必要なのか?」
「はい。わたしが思いついた作り方だと、何か飲み物が必要になります。普通のお水じゃダメです」
「水じゃダメか。わかった。俺が街中の商店でワインを買ってこよう。それを素材に出来るか?」
「多分、大丈夫です。わたしも一緒に行きますか?」
「お前はダメだ。いくらシシがついているとは言っても、まだ子供。外を出歩かせるわけにはいかない」
「むぅ。わたしだって一人前の錬金術士です!」
「一人前だろうと子供は子供だ。ともかく、ワインは買ってくるから体が冷えない飲み物を使ってくれ」
「わかりました。準備をしておきますので、早く買ってきてください」
「助かる。じゃあ、行ってくるわ」
アーテルさんがワインを買って帰ってきたあと、それを素材にして体の温まるワインを完成させた。
アーテルさんの話だと酔っ払う成分っていうのが抜けて飲みやすくなっているし、飲むとすぐに体が温まってきて助かるそうだ。
急ごしらえで効果がどの程度続くかの検証もしていないけど、急いで必要ということで、アーテルさんの買ってきたワインはすべて錬金術で体の温まるワインに変えた。
アーテルさんは錬金術の手数料をわたしに手渡すと、それらのワインを抱えて外へ駆け出していってしまった。
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