辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ

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第二部 医学の知識と若木の令嬢 第七章 フルートリオンへの帰り道

81. フルートリオンへの道程 二週目

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 フルートリオンへの帰り道も二週間目に入って順調ならもう半分を残すのみになっていたんだけど、私たちは大雨のせいで足止めを食っていた。
 それだけじゃなくて、この先の橋が雨で使えなくなったっていう情報もちらほら聞こえてくる。
 さてどうしようか。

「うーん。やっぱり道を変えるべきでしょうか?」

「俺はそうした方がいいと思う。不確かな情報しかないが、この先の橋があまり頑丈ではなかったのは事実だ。情報の方が間違いだったとしても、橋が壊れかけている可能性はあるぜ」

 アーテルさんはかなり慎重な意見を出してくる。
 オケストリアムに行くときは別の道だったから知らないけれど、こっちの道って橋があまり頑丈じゃないんだね。

「そうですか。アストリートさんたちはどうです?」

 私がアストリート様を呼ぶとき、公爵様のお屋敷にいた頃のように様付けではなくアストリートさんと呼ぶことにしている。
 どこで正体がばれるかわからないからね。
 用心しないと。

「私はよくわかりません。オケストリアムを出ることもなかったので」

「私はアーテル様の意見を支持します。ここは遠回りになっても安全な道で進みましょう」

「私もアーテル殿の意見に賛成だ。アストリート様を危険な目にあわせる必要もないからな」

 アストリートさんは棄権、ローランさんとヘレネさんはアーテルさんの意見を支持と。
 ニケさんは自分もよくわからないからって棄権したね。
 護衛についてくれている冒険者さんたちも安全な道を進みたいということで、遠回りして進むことになった。
 こっちの道行きは、と。

「ふむ。こっちの道の方が宿場町は多いんですね」

「そうだな。こっちの道はオケストリアムに向かうルートでもある。途中、何事もなければ、毎日宿場町で休めるだろう。宿が空いていればの話だが」

「大雨でいろいろな人が足止めされましたからね。私たちは先に宿を取っていたから大丈夫でしたが、あとから来た人たちは宿に泊まれていませんでした」

「そうなる。いざとなったら野宿だが、それでも街の近くでなら安全だろう。ルートはこっちに変える。雨が上がったら出発だ」

「はい。明日には晴れそうですし、そうなったら出発しましょう」

 私の予想通り、三日間降り続いていた雨も翌日には止み、朝から空は晴れ渡っていた。
 でも、道はかなりの水を吸ってしまったため進みにくく、ときどき魔法で道を補修したり他の馬車を魔法で助けたりしながらの旅人なってしまう。
 困ったときはお互い様というより、馬車が障害物となって先に進めないから、道を補修して動ける状態にし、脇に退いてもらう感じかな。
 お互い近い距離同士で進んでいると余計な緊張をしてしまうからね。
 こっちはアーテルさん以外全員女性だし、あまりトラブルの原因になりそうな事は引き込みたくないかな。

 道を変えてから五日後、大きな街にたどり着いた。
 ここでまたフルートリオンを目指して進んでいくんだって。
 ただ、私たちの馬車も悪路を動いてきたせいで傷んでいるかもしれないから、二日間街に泊まって調べてみるそうだ。
 なので、日が高いうちに到着した今日は自由時間、街をシシと一緒に見て歩くことにした。
 念のためということでアーテルさんも一緒に来ているけど、心配性だなぁ。
 私とシシ、アーテルさんの他にアストリートさんとニケさん、護衛としてネリーさんとカルメンさんも同行することになった。

 私たちは街を見て歩いたけど、やっぱりフルートリオンとは違って街全体が賑やか。
 ネリーさんとカルメンさんに言わせれば普通の街だそうだけど、フルートリオンはもっと静かな街だからね。
 私はフルートリオンの方が好きだけど、たまにはこういう街もいいかもしれない。
 そのまま街を歩いていると、商隊や行商の開いている市に出くわした。
 気になったのでその中を見て歩くことにする。
 人気も大分少なくなっているからアストリートさんを連れ込んでも問題ないしね。
 市の中ではいろいろな地域の特産品が売られていた。
 中には見たこともないかたちの食器もあって面白い。
 使い方がわからないから買わないけど。

「おや? ノヴァちゃんじゃないか?」

「え?」

 市の中を歩いていると商人から呼び止められた。
 よく見てみると、毎年フルートリオンの街にやってくる商隊のおじさんだ。

「ノヴァちゃん、どうしてこんな街に? オケストリアムに行っていたんじゃなかったのかい?」

「えっと、オケストリアムからフルートリオンに戻る途中です。雨で橋が渡れなくなってるかもしれないということで、こちらの街まで迂回してきました」

「ああ、なるほど。そういえば、ノヴァちゃんはマジックバッグを持っているんだったか。商隊の中に去年植物の種を頼んでいた商人がいただろう? 彼が依頼された品を渡せなくて残念がっていたよ」

「あ、そういえばそうでした。いまから取りに行けば間に合いますかね?」

「どうだろうね。珍しい植物の種だから売れたかもしれないし、育て方がわからないから売れ残っているかもしれない。聞きにいってみるといいよ」

「はい。ありがとうございます」

「ああ、それと、アーテル君だったか。君も頼んでいたものがあっただろう? それもできているそうだよ」

「本当か!? 二年待たされた甲斐があるといいんだが」

「それは直接確かめておくれ。それじゃ、またね」

 私はその商人さんと別れ、植物の種を頼んでいた商人さんのところに向かった。
 私が頼んでいた珍しい種は売らずに残していてくれたみたい。
 種を見れば育て方がわかるけど、育った植物を見ないとどんな薬効があるかわからないから育てるのがこれから楽しみ!
 あと、アーテルさんは武具商人さんからワイバーンレザーで出来ているという革鎧を受け取っていた。
 細かい調整をしている時間がないから、実際に使うのはフルートリオンに帰ったあとになるそうだけど、いままでの鎧よりもはるかに頑丈になるみたい。
 昔からほしかったそうなんだけど、革の補修をどうするかで悩んでいたらしいんだよね。
 いまなら私がいるから、錬金術で作った革の補修剤でどうとでも出来るし、思い切って頼んであったらしい。
 ネリーさんとカルメンさんに聞いても、金属の全身鎧以上に高い買い物らしいから奮発したんだね。
 冒険者さんたちにとって装備は命綱らしいし大切に扱ってもらえるといいな。
 まあ、アーテルさんなら大丈夫だろうけど。
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