81 / 99
第二部 医学の知識と若木の令嬢 第七章 フルートリオンへの帰り道
81. フルートリオンへの道程 二週目
しおりを挟む
フルートリオンへの帰り道も二週間目に入って順調ならもう半分を残すのみになっていたんだけど、私たちは大雨のせいで足止めを食っていた。
それだけじゃなくて、この先の橋が雨で使えなくなったっていう情報もちらほら聞こえてくる。
さてどうしようか。
「うーん。やっぱり道を変えるべきでしょうか?」
「俺はそうした方がいいと思う。不確かな情報しかないが、この先の橋があまり頑丈ではなかったのは事実だ。情報の方が間違いだったとしても、橋が壊れかけている可能性はあるぜ」
アーテルさんはかなり慎重な意見を出してくる。
オケストリアムに行くときは別の道だったから知らないけれど、こっちの道って橋があまり頑丈じゃないんだね。
「そうですか。アストリートさんたちはどうです?」
私がアストリート様を呼ぶとき、公爵様のお屋敷にいた頃のように様付けではなくアストリートさんと呼ぶことにしている。
どこで正体がばれるかわからないからね。
用心しないと。
「私はよくわかりません。オケストリアムを出ることもなかったので」
「私はアーテル様の意見を支持します。ここは遠回りになっても安全な道で進みましょう」
「私もアーテル殿の意見に賛成だ。アストリート様を危険な目にあわせる必要もないからな」
アストリートさんは棄権、ローランさんとヘレネさんはアーテルさんの意見を支持と。
ニケさんは自分もよくわからないからって棄権したね。
護衛についてくれている冒険者さんたちも安全な道を進みたいということで、遠回りして進むことになった。
こっちの道行きは、と。
「ふむ。こっちの道の方が宿場町は多いんですね」
「そうだな。こっちの道はオケストリアムに向かうルートでもある。途中、何事もなければ、毎日宿場町で休めるだろう。宿が空いていればの話だが」
「大雨でいろいろな人が足止めされましたからね。私たちは先に宿を取っていたから大丈夫でしたが、あとから来た人たちは宿に泊まれていませんでした」
「そうなる。いざとなったら野宿だが、それでも街の近くでなら安全だろう。ルートはこっちに変える。雨が上がったら出発だ」
「はい。明日には晴れそうですし、そうなったら出発しましょう」
私の予想通り、三日間降り続いていた雨も翌日には止み、朝から空は晴れ渡っていた。
でも、道はかなりの水を吸ってしまったため進みにくく、ときどき魔法で道を補修したり他の馬車を魔法で助けたりしながらの旅人なってしまう。
困ったときはお互い様というより、馬車が障害物となって先に進めないから、道を補修して動ける状態にし、脇に退いてもらう感じかな。
お互い近い距離同士で進んでいると余計な緊張をしてしまうからね。
こっちはアーテルさん以外全員女性だし、あまりトラブルの原因になりそうな事は引き込みたくないかな。
道を変えてから五日後、大きな街にたどり着いた。
ここでまたフルートリオンを目指して進んでいくんだって。
ただ、私たちの馬車も悪路を動いてきたせいで傷んでいるかもしれないから、二日間街に泊まって調べてみるそうだ。
なので、日が高いうちに到着した今日は自由時間、街をシシと一緒に見て歩くことにした。
念のためということでアーテルさんも一緒に来ているけど、心配性だなぁ。
私とシシ、アーテルさんの他にアストリートさんとニケさん、護衛としてネリーさんとカルメンさんも同行することになった。
私たちは街を見て歩いたけど、やっぱりフルートリオンとは違って街全体が賑やか。
ネリーさんとカルメンさんに言わせれば普通の街だそうだけど、フルートリオンはもっと静かな街だからね。
私はフルートリオンの方が好きだけど、たまにはこういう街もいいかもしれない。
そのまま街を歩いていると、商隊や行商の開いている市に出くわした。
気になったのでその中を見て歩くことにする。
人気も大分少なくなっているからアストリートさんを連れ込んでも問題ないしね。
市の中ではいろいろな地域の特産品が売られていた。
中には見たこともないかたちの食器もあって面白い。
使い方がわからないから買わないけど。
「おや? ノヴァちゃんじゃないか?」
「え?」
市の中を歩いていると商人から呼び止められた。
よく見てみると、毎年フルートリオンの街にやってくる商隊のおじさんだ。
「ノヴァちゃん、どうしてこんな街に? オケストリアムに行っていたんじゃなかったのかい?」
「えっと、オケストリアムからフルートリオンに戻る途中です。雨で橋が渡れなくなってるかもしれないということで、こちらの街まで迂回してきました」
「ああ、なるほど。そういえば、ノヴァちゃんはマジックバッグを持っているんだったか。商隊の中に去年植物の種を頼んでいた商人がいただろう? 彼が依頼された品を渡せなくて残念がっていたよ」
「あ、そういえばそうでした。いまから取りに行けば間に合いますかね?」
「どうだろうね。珍しい植物の種だから売れたかもしれないし、育て方がわからないから売れ残っているかもしれない。聞きにいってみるといいよ」
「はい。ありがとうございます」
「ああ、それと、アーテル君だったか。君も頼んでいたものがあっただろう? それもできているそうだよ」
「本当か!? 二年待たされた甲斐があるといいんだが」
「それは直接確かめておくれ。それじゃ、またね」
私はその商人さんと別れ、植物の種を頼んでいた商人さんのところに向かった。
私が頼んでいた珍しい種は売らずに残していてくれたみたい。
種を見れば育て方がわかるけど、育った植物を見ないとどんな薬効があるかわからないから育てるのがこれから楽しみ!
あと、アーテルさんは武具商人さんからワイバーンレザーで出来ているという革鎧を受け取っていた。
細かい調整をしている時間がないから、実際に使うのはフルートリオンに帰ったあとになるそうだけど、いままでの鎧よりもはるかに頑丈になるみたい。
昔からほしかったそうなんだけど、革の補修をどうするかで悩んでいたらしいんだよね。
いまなら私がいるから、錬金術で作った革の補修剤でどうとでも出来るし、思い切って頼んであったらしい。
ネリーさんとカルメンさんに聞いても、金属の全身鎧以上に高い買い物らしいから奮発したんだね。
冒険者さんたちにとって装備は命綱らしいし大切に扱ってもらえるといいな。
まあ、アーテルさんなら大丈夫だろうけど。
それだけじゃなくて、この先の橋が雨で使えなくなったっていう情報もちらほら聞こえてくる。
さてどうしようか。
「うーん。やっぱり道を変えるべきでしょうか?」
「俺はそうした方がいいと思う。不確かな情報しかないが、この先の橋があまり頑丈ではなかったのは事実だ。情報の方が間違いだったとしても、橋が壊れかけている可能性はあるぜ」
アーテルさんはかなり慎重な意見を出してくる。
オケストリアムに行くときは別の道だったから知らないけれど、こっちの道って橋があまり頑丈じゃないんだね。
「そうですか。アストリートさんたちはどうです?」
私がアストリート様を呼ぶとき、公爵様のお屋敷にいた頃のように様付けではなくアストリートさんと呼ぶことにしている。
どこで正体がばれるかわからないからね。
用心しないと。
「私はよくわかりません。オケストリアムを出ることもなかったので」
「私はアーテル様の意見を支持します。ここは遠回りになっても安全な道で進みましょう」
「私もアーテル殿の意見に賛成だ。アストリート様を危険な目にあわせる必要もないからな」
アストリートさんは棄権、ローランさんとヘレネさんはアーテルさんの意見を支持と。
ニケさんは自分もよくわからないからって棄権したね。
護衛についてくれている冒険者さんたちも安全な道を進みたいということで、遠回りして進むことになった。
こっちの道行きは、と。
「ふむ。こっちの道の方が宿場町は多いんですね」
「そうだな。こっちの道はオケストリアムに向かうルートでもある。途中、何事もなければ、毎日宿場町で休めるだろう。宿が空いていればの話だが」
「大雨でいろいろな人が足止めされましたからね。私たちは先に宿を取っていたから大丈夫でしたが、あとから来た人たちは宿に泊まれていませんでした」
「そうなる。いざとなったら野宿だが、それでも街の近くでなら安全だろう。ルートはこっちに変える。雨が上がったら出発だ」
「はい。明日には晴れそうですし、そうなったら出発しましょう」
私の予想通り、三日間降り続いていた雨も翌日には止み、朝から空は晴れ渡っていた。
でも、道はかなりの水を吸ってしまったため進みにくく、ときどき魔法で道を補修したり他の馬車を魔法で助けたりしながらの旅人なってしまう。
困ったときはお互い様というより、馬車が障害物となって先に進めないから、道を補修して動ける状態にし、脇に退いてもらう感じかな。
お互い近い距離同士で進んでいると余計な緊張をしてしまうからね。
こっちはアーテルさん以外全員女性だし、あまりトラブルの原因になりそうな事は引き込みたくないかな。
道を変えてから五日後、大きな街にたどり着いた。
ここでまたフルートリオンを目指して進んでいくんだって。
ただ、私たちの馬車も悪路を動いてきたせいで傷んでいるかもしれないから、二日間街に泊まって調べてみるそうだ。
なので、日が高いうちに到着した今日は自由時間、街をシシと一緒に見て歩くことにした。
念のためということでアーテルさんも一緒に来ているけど、心配性だなぁ。
私とシシ、アーテルさんの他にアストリートさんとニケさん、護衛としてネリーさんとカルメンさんも同行することになった。
私たちは街を見て歩いたけど、やっぱりフルートリオンとは違って街全体が賑やか。
ネリーさんとカルメンさんに言わせれば普通の街だそうだけど、フルートリオンはもっと静かな街だからね。
私はフルートリオンの方が好きだけど、たまにはこういう街もいいかもしれない。
そのまま街を歩いていると、商隊や行商の開いている市に出くわした。
気になったのでその中を見て歩くことにする。
人気も大分少なくなっているからアストリートさんを連れ込んでも問題ないしね。
市の中ではいろいろな地域の特産品が売られていた。
中には見たこともないかたちの食器もあって面白い。
使い方がわからないから買わないけど。
「おや? ノヴァちゃんじゃないか?」
「え?」
市の中を歩いていると商人から呼び止められた。
よく見てみると、毎年フルートリオンの街にやってくる商隊のおじさんだ。
「ノヴァちゃん、どうしてこんな街に? オケストリアムに行っていたんじゃなかったのかい?」
「えっと、オケストリアムからフルートリオンに戻る途中です。雨で橋が渡れなくなってるかもしれないということで、こちらの街まで迂回してきました」
「ああ、なるほど。そういえば、ノヴァちゃんはマジックバッグを持っているんだったか。商隊の中に去年植物の種を頼んでいた商人がいただろう? 彼が依頼された品を渡せなくて残念がっていたよ」
「あ、そういえばそうでした。いまから取りに行けば間に合いますかね?」
「どうだろうね。珍しい植物の種だから売れたかもしれないし、育て方がわからないから売れ残っているかもしれない。聞きにいってみるといいよ」
「はい。ありがとうございます」
「ああ、それと、アーテル君だったか。君も頼んでいたものがあっただろう? それもできているそうだよ」
「本当か!? 二年待たされた甲斐があるといいんだが」
「それは直接確かめておくれ。それじゃ、またね」
私はその商人さんと別れ、植物の種を頼んでいた商人さんのところに向かった。
私が頼んでいた珍しい種は売らずに残していてくれたみたい。
種を見れば育て方がわかるけど、育った植物を見ないとどんな薬効があるかわからないから育てるのがこれから楽しみ!
あと、アーテルさんは武具商人さんからワイバーンレザーで出来ているという革鎧を受け取っていた。
細かい調整をしている時間がないから、実際に使うのはフルートリオンに帰ったあとになるそうだけど、いままでの鎧よりもはるかに頑丈になるみたい。
昔からほしかったそうなんだけど、革の補修をどうするかで悩んでいたらしいんだよね。
いまなら私がいるから、錬金術で作った革の補修剤でどうとでも出来るし、思い切って頼んであったらしい。
ネリーさんとカルメンさんに聞いても、金属の全身鎧以上に高い買い物らしいから奮発したんだね。
冒険者さんたちにとって装備は命綱らしいし大切に扱ってもらえるといいな。
まあ、アーテルさんなら大丈夫だろうけど。
12
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~
わんた
ファンタジー
「今日中に出ていけ! 半年も家賃を滞納してるんだぞ!」
現代日本にダンジョンとスキルが存在する世界。
渋谷で錬金術師として働いていた裕真は、研究に没頭しすぎて店舗の家賃を払えず、ついに追い出されるハメになった。
私物と素材だけが残された彼に残された選択肢は――“現地販売”の行商スタイル!
「マスター、売ればいいんですよ。死にかけの探索者に、定価よりちょっと高めで」
提案したのは、裕真が自作した人工精霊・ユミだ。
家事万能、事務仕事完璧、なのにちょっとだけ辛辣だが、裕真にとっては何物にも代えがたい家族でありパートナーでもある。
裕真はギルドの後ろ盾、そして常識すらないけれど、素材とスキルとユミがいればきっと大丈夫。
錬金術のスキルだけで社会の荒波を乗り切る。
主人公無双×のんびり錬金スローライフ!
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる