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第2部 『神樹の里』環境整備と不満の解決 第3章 美術館と海族館

46.美術館オープン日の様子

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 さて、今日は美術館のオープン日でもあるんですが、それ以前にフロレンシオに買い物に行く日でした。

 なので、ベニャトを連れてフロレンシオまで買い物……今回はたくさんの銀と金のアクセサリー販売と果実の種や苗木、畑にまくための小麦の種の確保をしてから帰ります。

 女将の店でも果実の苗木などは取り扱っていないようで別のお店を紹介してくれましたが、そこの店長さんもいい人で助かりました。

 僕たちの買い物は2時間ほどで終わったので、そのまま街を出て空へと飛び出しその場でメイヤの木の実を食べて昼食にします。

「いや、今回もいい商売になったぜ。サンキューな、契約者様、守護者様」

「気にしないでください。僕たちの方こそたくさん果物の種や苗木を買ってもらったんですから」

「そうそう。結構かかったんじゃない?」

「まあ、それなりにな。だが、この程度、半月後に来たときにはまた取り返せるだろう。ヒンメルであの量のアクセサリーが売れていればだが」

「そこはお店の手腕に期待しておきましょう。今後は半月に1回来ることも伝えましたし」

「そうだな。前に仕入れたアクセサリーは全部1週間経たずに売れちまったそうだ。店にも莫大な利益が入ったとか。あのままひん曲がらずに商売を続けてもらいたいもんだ」

「ですね。話は変わりますが、お酒造りはどうなっています?」

「ん? まあ、ぼちぼちだ。やっぱり麦の収穫量が少ないんでエールやビールにできる量もすくねえ。ワインは結構な量ができているから、そっちで気張らししているな」

「ドワーフのみんなってそんなにエールが好きなんだ……」

「おうよ、守護者様! エールは命の水だぜ! まずは大麦の収穫量を増やすための装置を開発中だがな」

 そこまでしたいんですね、ドワーフたちは。

 心の中でしか応援するつもりはないですけど、頑張ってください。

「酵母菌もしっかり育ってるし、ほかの種類もいろいろ育ててきている。契約者様。すまねえが今回買ってきたリンゴの苗木、少し分けてもらえないか?」

「メイヤに頼んでみますが……どうしたんですか?」

「〝シードル〟って酒造りにも挑戦したくなった。一からの手探りだから時間はかかるだろうがものにしてみでるぜ」

「うぅ……」

 リンはお酒で大失態を見せましたからね。

 完成したシードルは飲んでみたいがお酒は飲まないと決めた、そこで葛藤しているのでしょう。

 大いに反省しなさい。

「さて、昼食もそろそろ終わりか?」

「ですね。シエロとシエルのところまで戻りましょう」

「待ちぼうけさせちゃまずいからね」

 僕たちが2匹と別れたあたりの上空まで来ると2匹も森の中から姿を現しやってきました。

 そして、そのまま神樹の里にいるメイヤの元へと飛行します」

 飛行しますが……メイヤがちょっと困り顔ですね?

 なにかあったのでしょうか?

『ああ、シント、リン。ちょうどいいところに帰ってきてくれたわ』

「ちょうどいいところ?」

「なにかございましたか、メイヤ様?」

『ええ。美術館を建てたでしょう? そこで展示されている像を見た者たちが口コミでいろいろ伝播して回って……行列になっているのよ。なんとかできる?』

「なんとかって……順番は守って入って行っているのでしょう? それでは、どうしようもありませんよ」

『でもそうなると、夜までかかってしまいそうで……』

「ああ、夜ですか……そう言えば私たちも夜の3階って見たことがなかったね、シント」

「灯りは最小限ですし、綺麗な星空が水の幕を通じてよく見えるでしょうね」

『そんなことになったら、もっと観客が増えるわよ!』

「そうは言われましても……ねぇ?」

「私たちもできないことはあります。メイヤ様」

『ああ。そうよね。でも、列を途中から区切ることってできない?』

「その程度でしたら、多分」

『それじゃあ、お願いしてもらえる? 半端な量じゃなくなってきているの』

「わかりました。わかりましたが……そんなにですか?」

『そんなによ! 見ればわかるわ』

「はぁ……? 行きましょうか、リン」

「そうだね。よくわからないけれど……」

 リンと一緒によくわからないまま美術館まで行くと……大量の行列ができていました!

 なんですか、この行列は!?

 行列の整理をしているのはニンフとエアリアルのようなので、彼女たちを捕まえて話を聞くことに。

『契約者様! 大変なことになっちゃってる!』

『私たち、もっとゆっくり楽しんでもらえる美術館を目指していたのに!』

「はいはい、落ち着いて。この騒動の発端はなんですか?」

『ええと、朝、ペガサス様がやってきて3階の展示物をご覧になり、いたく感動して帰られて、それで話を広めて回ったらしいのです』

『そのあとからは、引っ切りなしに草原の皆様がやってきて、それを見かけた空の幻獣様方がやってきて、更に森や山、岩山、湖などに話が広まり……』

「ああ。マーマンやマーメイドはここまで来られませんからね」

『はい。それでもこの行列です……』

『助けてください! 契約者様、守護者様!』

 いや、助けてくださいと言われましても……。

「できることなんて列の整備と入場者制限くらいですよ?」

『それだけでも助かります!』

『私たちではそれすらも怪しかったので!』

「わかりました。今日受け入れ可能な人数は?」

『ええと……あそこくらいまでですね』

「思いのほか少ないですが……時間が時間ですし諦めていただきましょう」

 僕は列の途中から今日の入館可能者はここまでと言う看板を立ててみんなに説明して歩きました。

 そうすると明日は何時頃から入館できるのかを聞かれたのでニンフとエアリアルにそれも答えてもらい、みんなには申し訳ありませんが解散してもらうことに。

 逆に、制限ぎりぎりだった方々は喜んでいましたね。

 その方々にも、今日見終わったらしばらくは再度来ないようにお願いして周り、今後は……まあ、落ち着いて行くでしょう。

 ニンフたちにもこの看板は渡していきますし。

 さて、そうなってくると問題は3階から星空をどのように見ることができるかになるのかですが……

 これも五大精霊と一緒に体感してみましたがすごいことすごいこと。

『綺麗じゃけん』

『まったくじゃ』

『これは、皆の前に出せませんね』

『HUKIRTEY』

『申し訳ありません。この子たちの思いつきで……』

「まあ、作ってしまったのはしょうがありません。しばらくは夜の入館は禁止としましょう」

「そうね。でも、いつかはばれるわよ?」

『うぅ……』

『そのときの夜間解放は抽選でしょうか?』

「倍率、ものすごいことになりますよ?」

『やるしかありません……』

 こんな危険物を作ってしまったのはニンフとエアリアルなんですから頑張っていただきましょう。

 これ以上は手を貸せません。
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