神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ

文字の大きさ
45 / 91
第2部 『神樹の里』環境整備と不満の解決 第3章 美術館と海族館

45.幻獣たちの像並べ

しおりを挟む
 すべてのエリアに暮らしていた幻獣や精霊、妖精の像を造ってから1日休みをもらい、僕とリンは再び美術館へとやってきました。

 相変わらずニンフやエアリアルもいますが……今日はトルマリンを除いた五大精霊たちも勢揃いですね。

 どういうつながりでしょうか?

『おう、契約者。また派手に動いとるけんの』

「僕が好きで動き回ってるわけではありませんよ、ヴォルケーノボム。それでみんなはなぜ集まっているのですか?」

『儂らはエアリアルに集められた。美術館の3階を整備したいそうじゃ』

「3階。一番上の階ですか」

 確か、あそこはだだっ広い草原地帯でしたね。

 あそこを整備?

『申し訳ありません。この子たちがどうしてもと言って聞かず……』

「僕はかまわないのですが……なにを作るんですか?」

『みんなが暮らしている環境を再現するんです。あとでアルラウネやドライアドも来てくれます』

「ローズマリーにツリーハウスまで」

 どんどん話が大きくなっていっていますが、大丈夫ですかね、これ?

 ともかく、みんな一緒に3階へ移動。

 そこに作られた景色に一同感心していました。

『よくもまあ、これだけのもんを……』

『契約者、大変だったのでは?』

『音楽堂の時のような無理はしておらぬよな?』

「今回はすぐにできましたよ。クリスタルを二重にして、その隙間にニンフが水を張っただけですから」

『ならばよいのじゃが。それでニンフたちよ、我々に何を望む?』

『幻獣や精霊、妖精の暮らしている環境を再現していただきたいのです。具体的にいえば小規模な山や岩山、火山、湖、海などを』

『このスペース内に作ろうとしたら狭くもなるけん』

『構いませんが、なにをどう飾るのでしょう?』

『それはそのあとのお楽しみと言うことで!』

『……とりあえず始めるか』

『そうすっぞ』

『そういたしましょう』

『申し訳ありません。この子たちのわがままに付き合っていただき……』

 ニンフとエアリアルの指示の元、整地作業が始まりました。

 山はそれほど高くせずに広めで、岩山も切り立った崖などは作らず段差をつけるように作っています。

 ヴォルケーノボムが担当している火山は、実際に溶岩は吹き出させずに湯気だけを出してほしいと指示が出ていました。

 ヴォルケーノボムに言わせれば「穴を開けて温泉でも作っとくけんの」となりましたが。

 アクエリアの担当した湖と海は僕たちのくるぶしくらいまでしか深さのない遠浅のものを作ってもらったようで、マインには海のエリアに砂浜も作ってもらっています。

 ……なかなか本格的ですね。

 遅れてやってきたローズマリーとツリーハウスも合流し、森と花畑を作りました。

 ただの草原だった一面が急に豪華になったものです。

『……すごい、豪華な作りになっています』

「テイラーメイド?」

『あ、はい。テイラーメイドです』

 更にテイラーメイドまでやってきましたがなにをするのでしょうか?

『あ、アラクネ様も来てくださいました。これで本格的な作業が始められます』

「本格的な作業?」

『はい。像の配置です。まずは……駆け回るユニコーン様の像から置きましょう。ええと……あちらの草原に置いてください』

「わかりました。このあたりでいいですか?」

『そのあたりです。よろしくお願いします』

「では」

 僕は保管庫にしまってあった駆け回るユニコーンの像を取り出して草原に置きました。

 ただ、この像って立つのですが不安定なんですよね……。

『契約者様、限りなく透明で破壊できないクリスタルって作れませんか?』

「限りなく透明で破壊できないクリスタル……何度か試せばできそうですがなんのために?」

『ユニコーン様の像が倒れないためです。それを支柱として倒れないように支えたいと』

「わかりました。試してみましょうか」

 僕はこの建物などの素材になっているクリスタルを元に更に透明度を増し強固なクリスタルを創造魔法で作りあげていきます。

 ただ、透明度は上がったのですが強度はあまり上がらず、壊れないようにするための強化魔法で代用することにしました。

 そして、そのクリスタルを何本か支柱としてユニコーンの像の下に埋め込み、支えとしてあげればユニコーンの像の設置完了です。

『ふむ、これは面白いのう』

『確かに。よくできたユニコーンの像が走るように再現されておる。創造魔法でもなければここまでの躍動感は出ないであろう』

『ええ。それで、置く像はもっとたくさんありますよね?』

『はい。まずは草原エリアから設置して回りましょうか』

 僕はニンフたちに指示されるままたくさんの像を置いて回ります。

 そのすべてに地面へと支柱を伸ばすようにも指示され、動かないよう固定するのだとか。

 確かに、これなら多少蹴られた程度ならびくともしないでしょう。

『では、空の幻獣様も飾りましょう』

「空の? ペガサスや鳳凰などですか?」

『はい。そのためにアラクネ様に来ていただきました』

「テイラーメイドに?」

『ええと、失礼いたしますね。私は天井に張り付きますので』

 そう言うとテイラーメイドは糸を出して天井に張り付き、移動をして糸を垂らし始めました。

 これって?

『契約者様、これにまずはペガサス様の像を乗せてください』

「構いませんが……テイラーメイドの糸でもいつかは切れてしまうのでは?」

『高さを決めたら、糸の周りを先ほどのクリスタルで天井と固定してください。そうすれば落ちません』

 なるほど、確かにそれなら多少のことでは落ちてこないでしょう。

 テイラーメイドが垂らしてきている糸にシエロの像を乗せると引っ張り上げられ、ある程度の高さで固定。

 そこからは僕の仕事でクリスタルを使った固定になりました。

 同じ要領で空飛ぶ幻獣などを固定していき、空にも像が増えましたね。

『空はこれでいいでしょう。シルフィード様の像も飾ることができましたし』

「だからウィンディの像は飛んでる姿のものだったのですね……」

『はい。ほかのエリアにも像を設置して回りましょう』

 ほかのエリア、森や山、岩山、火山、湖に海にもそれぞれの像を配置していきます。

 マインの像は岩山の頂上に、ヴォルケーノボムの像は火山の麓に、トルマリンの像は山の山頂に、アクエリアの像は湖の中心に飾られることとなりました。

 しかしここで問題がひとつ。

「海のエリア、つまりマーメイドやマーマンを配置する場所ですが遠浅では転がってしまいますよ?」

『像の形に添った穴って開けられませんか? 2階に貫通しないような』

「2階の天井、つまりこの床もかなり厚いので可能です。そのようにして固定します」

 マーメイドとマーマンも配置して海も完成。

 最後に花畑にローズマリーとディーヴァ、ミンストレルの像を置けばこの階は終了のようです。

『にきやかになったのう』

『ああ。だが、大変素晴らしい空間だ』

『本当に。幻獣たちの美術館なんていうからどのようなものを作るのか心配していたのだけれど……』

『五大精霊様に褒められると頑張った甲斐があります』

「像を造ったのは全部僕ですけどね……」

「シントも頑張ったね……」

 3階に飾られなかった像はすべて2階と1階に分けて展示するそうです。

 2階に展示する分だけは今日中に終わらせてしまい、1階の分は翌日の作業となりました。

 気がつけば1階の床で石だったところにはテイラーメイド製の敷物が敷かれていますし、準備万全というところなのでしょう。

 1階の準備が整った翌日には開館するそうですが、どれくらい幻獣や精霊、妖精たちは来るのでしょうね?
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...