神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ

文字の大きさ
51 / 91
第2部 『神樹の里』不満の解決と環境整備 第4章 淡水系にも魚がほしい

51.アクエリアの湖へ

しおりを挟む
 ともかく状況がわからなければどうにもできないのでアクエリアたちの暮らしている湖を見に行くことにしました。

 最初はかなり近場に作っていたはずなんですが、いつの間にかこの湖も距離のある場所になってしまっているんですよね……。

 こんなところでも神樹の里の広がりを実感できます。

『ああ、契約者、守護者。来てくれたのですね』

「ええ、メイヤに頼まれて」

「でも、私たちも水場の環境には疎いよ?」

『それでも構いません。なにか参考になる意見があればと思い……』

「まあ、そういうことでしたら。いろいろお世話にもなっていますし」

「うん。どこまで力になれるかわからないけれど」

『いえ、すぐに解決するだなんて誰も考えておりません。ひとまず私たちの湖へ』

 アクエリアに案内された湖は、なんというか清浄な水がたまっている湖でした。

 それこそ、汚れひとつ浮いていないほどの。

「アクエリア、あなた方が暮らしていた湖ってこんなに綺麗だったのですか?」

『はい。昔住んでいた湖も同じくらい綺麗でしたよ?』

「それでもお魚とかは住んでいたの?」

『ええ、普通に暮らしていました』

 つまり、綺麗すぎて住みつけないのではないのですね。

 弱りました、本当にお手上げです。

『なにかいい手は浮かびませんか?』

「期待されているのはわかるのですが、僕は田舎の村暮らし。湖どころか池にすら行った試しがありません」

「私も逃亡者のエルフだったから泉で身を清める程度にしか使ってなかったしなぁ……」

『そうですよね。普通のヒト族ではそれが普通でしょう。ですが、私たちは豊かな水場の生態系というものも作りあげたいのです』

「うーん、どうする、シント?」

「困りましたね。水に詳しいことで一番詳しいはずのアクエリアから相談を受けている。それだけでもかなりの非常事態なのですが……」

『どうにかなりませんか?』

「うーん……」

 なにがいけないんでしょう?

 海にはあんなにたくさんの生き物が住み着いているのに。

 こうなったらマーメイドさんたちにでも聞いてみますか。

「マーメイドさんたちのところに行ってみましょう。彼女たちならなにか詳しい話を聞けるかもしれません」

『水の五大精霊として水の精霊に頼るなど……しかし、そうも言っていられないのが現状ですね。わかりました。海エリアに行きましょう』

「つまらないプライドなど捨てましょう。本当に困っているのなら」

「そうですよ、アクエリア様。私なんて、森にいる間も追放されてからも食いつなぐのがやっとでしたのに」

『……申し訳ありません。五大精霊だからと傲慢になっておりました。ともかく、マーメイドやマーマンたちに話を伺いへと行きましょう』

「それがいい。行きましょうか」

「うん。行こう」

 そういうわけでして、僕たちは湖エリアから海エリアに移動。

 そこでは……あれ?

 海族館には既に誰もいませんね?

 案内役のマーメイドさんたちものんびりしていますし。

「マーメイドさんたち、海族館を訪れる幻獣などはもういないんですか?」

『あ、契約者様と守護者様。そんなことはないですよ? 私たちの海族館では人数を区切り案内役をつけての行動になります。どうしても人数制限が厳しいんですよ。それに日が傾き始めると魚たちの行動も変化してきますし』

「なるほど。それで、もう誰もいなかったんですね」

『そうなります。申し訳ありませんが、事情を説明してお帰り頂きました。代わりに日時指定の案内予約を取り付けておりますので、その時間帯に来て頂ければ確実に案内させて頂くとも伝えてあります』

 マーメイドさんたちは本当に考えて行動しています。

 ……こう言っては悪いですがアクエリアとは大違いですね。

『それで、契約者様と守護者様はどういったご用件でしょう? また海の中が見たくなりましたでしょうか? 魚たちの行動パターンが変化しているので、どの程度会えるかはわかりませんがそれでもよければご案内いたします』

「いえ、本題はアクエリアからの依頼です。湖にも魚たちを住まわせたいそうなのですが、なかなかうまくいかず困っているとかで」

『ウンディーネ様が。水の最高位精霊様でも苦労なさるのですね』

『……はい、まことに無様なのですが神樹の里が平和になったあと、汚染されていない湖と空間をつなげて何度も魚を呼び寄せてはいるのです。ですが、すぐに逃げ帰ってしまい……』

『……想像以上の難事では?』

「はい。僕たちでは解決できそうもないためマーメイドさんたちの知恵を借りられればと」

『うーん、そう言われましても……私たちも同じような方法でいろいろな場所に転移用の穴を開けて魚を呼び寄せているんです。貝などは私たちが拾ってきて定住させてものもありますが、魚のような生物は自分たちからこの海を選んで定住してくれています』

『……話を聞くだけでうらやましい限りです』

『ウンディーネ様からうらやましがられても……あと、この海って冷たい海域も暖かい海域もいろいろあるじゃないですか。だからそれぞれの海域にしか生息しない生物たちも進んでやってくるんですよ。大半はこの海の豊富な資源を気に入って帰ろうとしませんけど……』

『まったくもってうらやましい限りです』

『ええと……ウンディーネ様も海中散歩に行かれますか?』

『是非に。どれほどの生物たちが生息しているのか見てみたいですし、なにかヒントがつかめるかもしれません』

『ではどうぞ。……あの、契約者様と守護者様も一緒に来てください。ウンディーネ様だけではプレッシャーが』

「ついていきますよ」

「私たちもこの時間の海って気になるものね」

 こうしてアクエリアも伴って行われた海族館での散歩。

 この時間でも様々な生き物が確認することができ、なにかあるごとにアクエリアは「うらやましい」とつぶやいていました。

 アクエリア、案内役のマーメイドさんが怯えているから止めなさい。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...