ヘファイストスの灯火 ~森の中で眠り続けている巨大ゴーレムを発見した少女、継承した鍛冶魔法の力を操り剣でもドレスでもどんどん作りあげる~

あきさけ

文字の大きさ
23 / 78
第2部 森と花の国『マナストリア聖華国』 第2章 華都マナストリアにて

23. 華都マナストリア

しおりを挟む
 マナストリア聖華国に入ってからおよそ3週間後、華都マナストリアにたどり着いた。
 3週間かかったのは途中途中にあった街すべてで1泊しながら旅をしてきたためだ。
 同行者たちの疲労度を考えたためだけではなく、エリスがマナストリア聖華国へと無事に帰国したことを伝えるためらしいね。
 既にリードアロー王国がエリスたちに暗殺などを仕掛けたことは広まっているみたいで、民の間にも不安が広まっていたみたいだし、必要な時間だったのだろう。
 あたしにはよくわからないけどさ。

「お待たせいたしました、アウラ様。あそこが華都マナストリアになります」

 通信機を通してエリスの軽やかな声が響く。
 そっか、あれが華都マナストリア。
 遠目に見える今の段階でも、色とりどりの花々が咲き乱れていることがわかる。
 あと、大きな木が多いのはなぜだろう?
 ちょっと聞いてみようか。

「エリス。あの巨大な木はなに? あんなのが街の中にたくさん生えていたら困らない?」

「ああ、あれはハウスツリーと申しまして木の中に家ができているんです。耐火性にも優れ遠くから見てもわかるため目印にもなる。そのほかにも役立つことはありますが、それはまた」

「うん、わかった。華都って変わったものが多いのね」

「華都よりも西部に行けばツリーハウスは多くなりますよ。リードアロー王国方面では華都が一番近いと言うだけで」

「そういえば、マナストリア聖華国ってリードアロー王国の北西部だったっけ」

「はい。さて、迎えの者たちも出ているようです。あまり待たせてもいけませんし、進むといたしましょう」

「わかった」

 あたしたちはあらためて行進を開始し、十数分で華都の側までやってきた。
 そこではエリスの言葉通り、エンシェントフレームから人の騎士まで様々な人々がエリスの到着を待っていたみたい。
 実際、エリスの乗るティターニアが前に出ると一斉に敬礼したからね。
 派手な出迎えだけど、一国の王女ともなれば当然なのかな?

『エリクシール殿下、お待ちしておりました』

『ペネン軍務大臣、あなたが直接のお出迎えですか』

 外部音声を拾う限り、あの黄色いエンシェントフレームに乗っているのは軍務大臣なんだ。
 やっぱり、王女が狙われた暗殺事件って大事だよね。

『もちろんですとも。エリクシール殿下の無事は先に帰還した者から聞いております。ですが、その無事を実際に確かめるまでは安心などできません。女王陛下もお待ちです。さあ、早く街に入り皆に無事な姿を見せてください』

『わかりました。警護をお願いいたします。それと、そちらの紅いエンシェントフレーム。マナトレーシングフレームのヘファイストスに乗っているパイロットのアウラ様は私の友人です。誰か人を使い先に王宮へと案内してください』

『承知いたしました。すぐに人を手配します』

 軍務大臣の言葉通り、あたしはすぐに別の人が案内としてつけられて王宮へと連れて行かれた。
 詳しい話を聞くと、エリスの側に見慣れないエンシェントフレームがいると民が不安がるかもしれないからということらしい。
 そういった方面にも頭が回るんだね。

 さて、あたしとヘファイストスが案内されたのは王家のエンシェントフレームが使用するという駐機場。
 あたしたちは普通の駐機場でもよかったんだけど、エリスの友人ということでこちらに通されたみたい。
 なんだか恐縮してしまうな。
 そして、降りようとして駐機姿勢をとってコクピットから出たら、ひとりの女の子が飛んできた。
 いや、勢いよく走ってきたとかじゃなく、本当に飛んできたんだ。
 妖精の羽を使い、パタパタと。

「うわぁ! 見慣れないエンシェントフレーム! 真っ赤な装甲がかっこいい!」

「ええっと、あなたは?」

「私? 私、ユニリス! この国のお姫様なんだよ!」

 この国のお姫様……っていうことはエリスの妹かな。
 若草色の髪に緑色の瞳はエリスを幼くした感じにそっくり。
 羽根の色は水色だけど、そこは妖精族らしい個人差だろう。

「ねえ、お姉ちゃんは誰?」

「あたし? アウラって言うの。このマナトレーシングフレーム、ヘファイストスのパイロットよ」

「マナトレーシングフレーム! エリスお姉ちゃんのティターニアと一緒だ!」

『そうだな。ティターニアと一緒だな』

「喋った! ティターニアは喋れないのに!」

『ティターニアが喋れないのは発声機関の故障だろう。許可さえ出れば我が修復する』

「直せるの!?」

『おそらくは。さて、ユニリスは何をしにきたのだ?』

「窓から見慣れないエンシェントフレームがお城に向かっているのが見えたから来た! あと、ヘファイストスに乗ってみたい!」

 え、ヘファイストスに?
 どうしよう、さすがにそれはまずいんじゃ……。
 ユニリスが「乗りたい、乗りたい」と駄々をこね始めたとき、お城の方から何人かの人々がやってきた。
 この人たち、誰だろう?

「ああ、ユニリス様。やはりここでしたか」

「あ、爺! 見つかっちゃった」

「見つかったではありません。窓から外を見ていたかと思えば、窓を開けて飛び出して行くなど。まったく、もう少しお淑やかにしてくだされ」

「いいの! 私はまだ元気でいたい! それから、このエンシェントフレームにも乗ってみたい!」

「エンシェントフレーム? おや、見慣れない機体ですな。それはお嬢さんの所有物で?」

「はい。あたしのエンシェントフレームでマナトレーシングフレームのヘファイストスと言います」

「マナトレーシングフレーム。ティターニア様と一緒ですね」

 ああ、やっぱりこの国の人たちにとってティターニアって特別な存在なんだ。
 話せるように修理できないかな。

「それにしても立派なエンシェントフレームですな。脚部が少し大きすぎるようにも見えますが」

『脚部は全身の重さを受け止めるため、あえて巨大に設計してある。移動や倒れたときは各部に備え付けてあるバーニアを使っての作業だ』

「おお! 本当に喋られるのですな!」

「ふふーん。すごいでしょ」

「すごいのはわかりましたが、ユニリス様のものではございません」

 このユニリスっていう子、そんなにエンシェントフレームが好きなのかな。
 どうしたものか。

「爺! 私はこのエンシェントフレームに乗ってみたいの。あなたも一緒に頼んで!」

「またユニリス様は極端なことを言う。城にエンシェントフレームを持った客人が来るたびに言っている言葉ですよ?」

「それはそうだけど、今度こそ乗ってみたいの! エリスお姉様の知り合いだって言うしいいでしょう?」

「おや、エリクシール殿下の。本当ですかな?」

「はい。エリクシール殿下に連れられてこの国……というか、このお城まで来ました。まあ、きな臭くなったリードアロー王国から脱出できただけでも儲けものだったのですが……」

「案内してきたのは……お前か。いまの話は事実か?」

「事実です。アウラ様の左耳にはエリクシール殿下のイヤリングも輝いております」

「エリクシール殿下の……おお、これは大変失礼いたしました! 申し訳ありませんが、少しだけ駐機場の中を案内してあげてください。ユニリス様、くれぐれもほかの王族たちのエンシェントフレームがある区域には近づかないように」

「うん!」

 なんだかよくわからないうちにこの子を連れて駐機場を巡り歩くことになった。
 ユリニスが言うにはエリス以外にも王子や王女が5人いてエリスが2番目らしい。
 それから、自分以外は専用のエンシェントフレームを持っているのに自分だけエンシェントフレームがないのは悔しいとも。
 だからヘファイストスに乗りたかったんだね。
 こう言うところは王女もほかの子供と変わらないのかも。
 かわいい、かわいい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...