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第2部 森と花の国『マナストリア聖華国』 第3章 王宮での暮らし
30.王家の新たなるエンシェントフレームをお披露目
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王族全員のエンシェントフレームを造ることになって約1カ月後、移動訓練も終えた彼らはいよいよ新しいエンシェントフレームを国民の前でお披露目することとなった。
もちろん、ユニリス様のシルキーも含めてだ。
「うー、緊張するの」
『大丈夫よ、ユニリス。私が側にいるもの』
「ありがとう、シルキー」
ユニリス様とシルキーの関係は姉妹のような関係に落ち着いたようだ。
シルキーが姉でユニリス様が妹だね。
『エリクシール殿下も大丈夫ですか?』
「私は大丈夫ですよ。心配には及びません、ティターニア」
そう、ティターニアも遂に声が出せるようになったんだ。
発声機関が痛んで声が出なくなっていたらしく、そこを交換したら声が出るようになったみたい。
ヘファイストスはついでに全身のオーバーホールまで行いたかったらしいけど、さすがにそこまでは許可が出なかったみたい。
代わりに、痛んでいた装甲の再設計や損耗の激しかった関節部分の再構築をしていたけどね。
ヘファイストスも物作りは楽しいらしい。
「ふたりとも、準備は済んだかしら?」
「お母様」
「お母さん!」
やってきたのは女王陛下。
女王陛下も自分のエンシェントフレーム『ナルカミ』に乗って現れた。
やっぱりお気に入りらしい。
「女王陛下、ナルカミの調子はいかがでしょう」
「とても快適よ。少々やんちゃな性格になってしまったけど……」
『私の性格はアンブロシア譲りなのだが……』
「黙りなさい。それで、今日の予定なんだけど」
「あたしは騎士団の列に紛れて待機ですよね。わかっています」
「ごめんなさい。あなたがこんな戦力を作れることを知られるのはまずいの」
まあ、マナトレーシングフレームまで作れる技術者、正確には作れるマナトレーシングフレームの所有者がいることが知られるとまずいものね。
そこは理解しているよ。
「申し訳ありませんが、騎士隊の後ろから今日のお披露目を見ていてください」
「わかりました。気を付けてくださいね」
「いただいたドレスと鎧も着ていきます。守りは万全ですよ」
うーん、あまり過信はしてほしくないところだけど、いまは仕方がないか。
何事もないことを祈ろう。
********************
**アンブロシア女王
アウラにあんなことを言った手前、何事もなく終わらせなくちゃいけないわね。
場所は王城の中門内にある広場。
そこには王家の人間が姿を出して民に呼びかけるためのスペースが存在している。
そこまで各自のマナトレーシングフレームの肩に乗って移動。
そのあとは城の方へと移り、マナトレーシングフレームの紹介をして終了の予定だ。
エリスのティターニアはよく知られているけれど、それ以外は初お披露目。
それもいきなり5機ということで否応なしに注目を浴びるだろう。
この機体、私たちの魔力を記録していて他人の魔力では動かないそう。
防犯対策もばっちりね。
「女王陛下、お時間です」
「わかりました。皆も準備はいいですね」
「「「はい」」」
全員の準備が整っていることを確認して城側に続く門が開かれた。
最初に私たちの機体を見た民たちの様子は『新しいエンシェントフレームを見つけたんだな』程度だったんだけど、これから少し驚いてもらうわよ。
「行きましょう、ナルカミ」
『了解』
私たちの声はまだ聞こえていないでしょうが、私を肩の上に乗せたまま歩くエンシェントフレーム。
この時点で非常にバランスが取れており高性能であることが詳しい者には伝わるはず。
そして、ナルカミは私の降りる位置まで来ると、降りやすいようにしゃがんでくれた。
おかげで城側へと飛び移るのも楽だったわ。
そのあとも私の子供たちが同じように続々と続き、広場にはいまは外遊中の夫のものを含め6機のエンシェントフレームが並ぶ。
民衆たちはいつまで経ってもその中からパイロットが降りてこないことを不思議がっているようね。
いまはエリスが使っているティターニアはマナトレーシングフレームとして有名だけど、ほかの5機はまったく見たことがない、新規のエンシェントフレームだもの。
不思議に思って当然よね。
さて、そろそろ答え合わせといきましょうか。
「皆の者、今日は集まっていただき大義である!」
エンシェントフレームから誰も降りないのに始まった私の演説。
いい感じに民は困惑しているわね。
もっと困惑してもらいましょうか。
「本日集まってもらったのは、ほかでもない我が王家に新しく加わったエンシェントフレームを紹介するためだ!」
民たちのざわめきはさらに大きくなる。
それだけのためにこれだけ大々的なお披露目会を開くと発布していたのかとね。
でも、このお披露目会は見る者にとてつもないインパクトを与えるわよ!
「まずは我が乗機、『ナルカミ』から。挨拶せよ、ナルカミ!」
エンシェントフレームに挨拶を求める。
そんなバカなことをしても無駄。
そういう空気が渦巻く中、ナルカミはひとりでに動き出し一礼して言葉を述べた。
『初めまして、皆様。アンブロシア女王陛下の乗機ナルカミと申します。今後、女王陛下がいずこかに外遊に行く際、私がお供いたしますのでご安心を』
民のざわめきはさらに大きなうねりとなって場をかき乱す。
いいわ、その調子よ!
さあ、もっとたたみかけましょう!
「次、我が夫の乗機……」
********************
『初めまして、シルキーです。私は基本的にユニリス様の遊び相手だから表にはいかないけれど、お城の中ではいろいろと歩き回っているわ。よろしくね』
ふう、これで6機全部の自己紹介が終わったか。
ナルカミやシルキーは短く終わらせたが、ほかの者たちはそれなりに長かった。
特に長年この国の民を見てきたティターニアのお説教が長かった。
いままで話せなかった分、今日一気に履き出した感じだな。
「以上が各エンシェントフレーム、いや、マナトレーシングフレームからの挨拶だ。彼らはこれから王宮で私たちとともに暮らすこととなる。基本的には無害だが、王室への攻撃には容赦なく反撃することを忘れるな」
ここまで話すと民は一瞬静まりかえり、次は万雷の拍手と歓声で迎え入れてくれた。
王家がマナトレーシングフレームを持っているのは数カ国だけ、複数機所持はこれで我が国だけとなったのだ。
安易に使うつもりはないが、最後の砦には使えるだろう。
その拍手と完成を鎮めるために一歩前に出ようとした瞬間、私に向けて魔導銃の弾丸が放たれる。
その弾丸は私に届く前に鎧の効果である結界に阻まれて消え去ったのだが、ナルカミの怒りに触れるには十分だったらしい。
ナルカミの暗い金色だった外装が、電気を帯びて金色に光り輝いていた。
『誰だ! いまの攻撃を放った者は!』
『あ、もう捕まえちゃったよナルカミ』
『はええな、シルキー』
『発射位置を音から割り出すのは風の得意分野だから。それよりも、反射速度で勝る雷が結界を張れなかったのは失態だよ?』
『……あ、ああ。すまない、アンブロシア』
「いや、私は気にしていない。それで、シルキー。下手人は?」
『風の檻の中で気絶させて隔離中。誰に渡せばいいのかな?』
「ここまで運んでくることはできるか? 私の親衛隊に取り調べなどを任せたい」
『はーい。お任せあれ』
シルキーがそう言うと民の中からひとりの男が浮かび上がり、携行用ライフルとともにこちらへと運ばれてきた。
まったく、マナトレーシングフレームとは恐ろしい。
『とりあえず、気絶している間に抵抗できないようにした方がいいんじゃないかな? 自決用の毒とかも持っている可能性があるし』
「それもそうだな。すぐにこの男の装備を解除せよ!」
私は衛兵に指示を飛ばし、あらためて民へと向き帰った。
その目には、明らかな畏怖の念が見て取れる。
「マナトレーシングフレームに逆らうということは、こう言うことだ。人ひとりくらい一瞬で制圧される。さすがにあの男の協力者までは見つけることができていないようだが、それでも実行犯などすぐさま摘発できるということだ。これだけの力が我が王家には加わった。侵略するための力としては使わない。だが、国を守るための力としてならば遠慮なく振るわせてもらおう」
ここでまた大きな歓声が巻き起こる。
今回は収まるまで時間がかかったな。
余談だが、あの男の協力者たちもマナトレーシングフレームたちは捕まえていた。
属性ごとの得意分野でそれぞれ追跡した結果判明したらしい。
取り調べの結果、容疑も認めたし、マナトレーシングフレームとは恐ろしいものね。
もちろん、ユニリス様のシルキーも含めてだ。
「うー、緊張するの」
『大丈夫よ、ユニリス。私が側にいるもの』
「ありがとう、シルキー」
ユニリス様とシルキーの関係は姉妹のような関係に落ち着いたようだ。
シルキーが姉でユニリス様が妹だね。
『エリクシール殿下も大丈夫ですか?』
「私は大丈夫ですよ。心配には及びません、ティターニア」
そう、ティターニアも遂に声が出せるようになったんだ。
発声機関が痛んで声が出なくなっていたらしく、そこを交換したら声が出るようになったみたい。
ヘファイストスはついでに全身のオーバーホールまで行いたかったらしいけど、さすがにそこまでは許可が出なかったみたい。
代わりに、痛んでいた装甲の再設計や損耗の激しかった関節部分の再構築をしていたけどね。
ヘファイストスも物作りは楽しいらしい。
「ふたりとも、準備は済んだかしら?」
「お母様」
「お母さん!」
やってきたのは女王陛下。
女王陛下も自分のエンシェントフレーム『ナルカミ』に乗って現れた。
やっぱりお気に入りらしい。
「女王陛下、ナルカミの調子はいかがでしょう」
「とても快適よ。少々やんちゃな性格になってしまったけど……」
『私の性格はアンブロシア譲りなのだが……』
「黙りなさい。それで、今日の予定なんだけど」
「あたしは騎士団の列に紛れて待機ですよね。わかっています」
「ごめんなさい。あなたがこんな戦力を作れることを知られるのはまずいの」
まあ、マナトレーシングフレームまで作れる技術者、正確には作れるマナトレーシングフレームの所有者がいることが知られるとまずいものね。
そこは理解しているよ。
「申し訳ありませんが、騎士隊の後ろから今日のお披露目を見ていてください」
「わかりました。気を付けてくださいね」
「いただいたドレスと鎧も着ていきます。守りは万全ですよ」
うーん、あまり過信はしてほしくないところだけど、いまは仕方がないか。
何事もないことを祈ろう。
********************
**アンブロシア女王
アウラにあんなことを言った手前、何事もなく終わらせなくちゃいけないわね。
場所は王城の中門内にある広場。
そこには王家の人間が姿を出して民に呼びかけるためのスペースが存在している。
そこまで各自のマナトレーシングフレームの肩に乗って移動。
そのあとは城の方へと移り、マナトレーシングフレームの紹介をして終了の予定だ。
エリスのティターニアはよく知られているけれど、それ以外は初お披露目。
それもいきなり5機ということで否応なしに注目を浴びるだろう。
この機体、私たちの魔力を記録していて他人の魔力では動かないそう。
防犯対策もばっちりね。
「女王陛下、お時間です」
「わかりました。皆も準備はいいですね」
「「「はい」」」
全員の準備が整っていることを確認して城側に続く門が開かれた。
最初に私たちの機体を見た民たちの様子は『新しいエンシェントフレームを見つけたんだな』程度だったんだけど、これから少し驚いてもらうわよ。
「行きましょう、ナルカミ」
『了解』
私たちの声はまだ聞こえていないでしょうが、私を肩の上に乗せたまま歩くエンシェントフレーム。
この時点で非常にバランスが取れており高性能であることが詳しい者には伝わるはず。
そして、ナルカミは私の降りる位置まで来ると、降りやすいようにしゃがんでくれた。
おかげで城側へと飛び移るのも楽だったわ。
そのあとも私の子供たちが同じように続々と続き、広場にはいまは外遊中の夫のものを含め6機のエンシェントフレームが並ぶ。
民衆たちはいつまで経ってもその中からパイロットが降りてこないことを不思議がっているようね。
いまはエリスが使っているティターニアはマナトレーシングフレームとして有名だけど、ほかの5機はまったく見たことがない、新規のエンシェントフレームだもの。
不思議に思って当然よね。
さて、そろそろ答え合わせといきましょうか。
「皆の者、今日は集まっていただき大義である!」
エンシェントフレームから誰も降りないのに始まった私の演説。
いい感じに民は困惑しているわね。
もっと困惑してもらいましょうか。
「本日集まってもらったのは、ほかでもない我が王家に新しく加わったエンシェントフレームを紹介するためだ!」
民たちのざわめきはさらに大きくなる。
それだけのためにこれだけ大々的なお披露目会を開くと発布していたのかとね。
でも、このお披露目会は見る者にとてつもないインパクトを与えるわよ!
「まずは我が乗機、『ナルカミ』から。挨拶せよ、ナルカミ!」
エンシェントフレームに挨拶を求める。
そんなバカなことをしても無駄。
そういう空気が渦巻く中、ナルカミはひとりでに動き出し一礼して言葉を述べた。
『初めまして、皆様。アンブロシア女王陛下の乗機ナルカミと申します。今後、女王陛下がいずこかに外遊に行く際、私がお供いたしますのでご安心を』
民のざわめきはさらに大きなうねりとなって場をかき乱す。
いいわ、その調子よ!
さあ、もっとたたみかけましょう!
「次、我が夫の乗機……」
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『初めまして、シルキーです。私は基本的にユニリス様の遊び相手だから表にはいかないけれど、お城の中ではいろいろと歩き回っているわ。よろしくね』
ふう、これで6機全部の自己紹介が終わったか。
ナルカミやシルキーは短く終わらせたが、ほかの者たちはそれなりに長かった。
特に長年この国の民を見てきたティターニアのお説教が長かった。
いままで話せなかった分、今日一気に履き出した感じだな。
「以上が各エンシェントフレーム、いや、マナトレーシングフレームからの挨拶だ。彼らはこれから王宮で私たちとともに暮らすこととなる。基本的には無害だが、王室への攻撃には容赦なく反撃することを忘れるな」
ここまで話すと民は一瞬静まりかえり、次は万雷の拍手と歓声で迎え入れてくれた。
王家がマナトレーシングフレームを持っているのは数カ国だけ、複数機所持はこれで我が国だけとなったのだ。
安易に使うつもりはないが、最後の砦には使えるだろう。
その拍手と完成を鎮めるために一歩前に出ようとした瞬間、私に向けて魔導銃の弾丸が放たれる。
その弾丸は私に届く前に鎧の効果である結界に阻まれて消え去ったのだが、ナルカミの怒りに触れるには十分だったらしい。
ナルカミの暗い金色だった外装が、電気を帯びて金色に光り輝いていた。
『誰だ! いまの攻撃を放った者は!』
『あ、もう捕まえちゃったよナルカミ』
『はええな、シルキー』
『発射位置を音から割り出すのは風の得意分野だから。それよりも、反射速度で勝る雷が結界を張れなかったのは失態だよ?』
『……あ、ああ。すまない、アンブロシア』
「いや、私は気にしていない。それで、シルキー。下手人は?」
『風の檻の中で気絶させて隔離中。誰に渡せばいいのかな?』
「ここまで運んでくることはできるか? 私の親衛隊に取り調べなどを任せたい」
『はーい。お任せあれ』
シルキーがそう言うと民の中からひとりの男が浮かび上がり、携行用ライフルとともにこちらへと運ばれてきた。
まったく、マナトレーシングフレームとは恐ろしい。
『とりあえず、気絶している間に抵抗できないようにした方がいいんじゃないかな? 自決用の毒とかも持っている可能性があるし』
「それもそうだな。すぐにこの男の装備を解除せよ!」
私は衛兵に指示を飛ばし、あらためて民へと向き帰った。
その目には、明らかな畏怖の念が見て取れる。
「マナトレーシングフレームに逆らうということは、こう言うことだ。人ひとりくらい一瞬で制圧される。さすがにあの男の協力者までは見つけることができていないようだが、それでも実行犯などすぐさま摘発できるということだ。これだけの力が我が王家には加わった。侵略するための力としては使わない。だが、国を守るための力としてならば遠慮なく振るわせてもらおう」
ここでまた大きな歓声が巻き起こる。
今回は収まるまで時間がかかったな。
余談だが、あの男の協力者たちもマナトレーシングフレームたちは捕まえていた。
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