ヘファイストスの灯火 ~森の中で眠り続けている巨大ゴーレムを発見した少女、継承した鍛冶魔法の力を操り剣でもドレスでもどんどん作りあげる~

あきさけ

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第2部 森と花の国『マナストリア聖華国』 第4章 ミラーシア湖の整備

35. アウラ邸、完成!

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 1日かけて設計され直したあたしの屋敷だけど、建築作業は極めて順調だ。
 なにせ、雨が降らないんだもの。
 水龍が面白がってこの地域一帯を降雨範囲から外しているの。
 おかげで山の麓では雨が降っているのに、頂上付近にあるこの一面だけは晴れっていう奇妙な天気もたびたびあった。
 いや、木を切り倒したらその都度木材にしてくれるのはありがたいし、切り株も除去してくれるのは嬉しいけれど、優遇しすぎじゃない?
 建築師の人たちも交代で休みを取りながら毎日毎日建物を建てているし。

 そんな大急ぎの作業もあって10日で家の外観は完成、内装の作業へと移った。
 内装の方はしっかりと丁寧に作っているだけあってちょっと進みが遅い。
 それでも腕利きの職人が30人近く、それ以外にも50人の職人が集まっているんだもの、外観が異様に早かっただけで内装も早い方だよね。
 数日前、様子を見にやってきたエリスに聞いてもこの規模の屋敷は1年以上かけて作るものらしいから。

 そんな建物作りもおよそ1カ月で完了し、いよいよ内覧となった。
 今日はエリスだけではなく女王陛下とユニリス様もやってきている。
 だから建築士の皆さんは内心冷や汗ものだろうね。
 女王陛下自ら内覧に来ているんだもの。

「アウラ、屋敷が完成したようね」

「はい。建築士の皆さんのおかげで、この1カ月程度だけで建ちました」

「それはよかったわ。私も費用を奮発したもの。それにしても、見晴らしのいい場所を見つけたものね」

「ええ、ここが見つかって幸いでした」

「屋敷も広くてエンシェントフレームの駐機スペースも6機分あるのね。ほかにも魔導車用の車庫があるし、本当に使い勝手がよさそう」

「そこは建築士の皆さんとヘファイストスが案を出し合って決めてました。麓までの道も既にできていますし、あとは近隣の街まで道を延ばすだけです」

「それは本当によかった。できれば、ぐるっと回って華都方面まで道を延ばしてもらいたいものね」

「それも考えておきます。水龍との折衝もありますので」

「それもそうね。では、家の中を見ましょうか」

「はい。それではお願いします」

「は、はい! こちらです!」

 建築師の代表者に案内されて家の中に入って行く。
 まずはエントランスホール。
 木製の階段が3階までつながっており、吹き抜けになっている。
 ちなみに、この家全体にあたしがエンチャントをかけて回ってあるので鉄が溶けるレベルの熱を加えても木が燃えないのだ。
 うん、エンチャントって便利。

「きれいなエントランスホールね。あとは調度品を揃えれば問題がないでしょう。次は?」

「はい、食堂へと案内させていただきます」

「結構、行きましょう」

 食堂、食堂か……。
 あんな広い食堂、必要なかったんだけどな。

「うわぁ、広い食堂!」

 ユニリス様が嬉しそうに言うけれど、普段使うのはあたしひとりなんだよ、ここ……。

「はい。17名まで同時に食事を取れるスペースとなっております。いまはテーブルクロスがありませんが、それも発注済みです」

「17名……普段はアウラ様おひとりですよね?」

「そうだね。こんな広い食堂でひとり食事をとるのも空しいよ」

「そう考えて小食堂も作ってあります。あちらは4名までしか使えませんが、身内だけで集まるときなどは使い勝手がいいでしょう」

 なに、小食堂って。
 あたし聞いてないんだけど?

「それならばよろしい。ほかに1階は?」

「屋敷の主人やゲストが使う施設は湯殿だけとなっています。ご覧になりますか?」

「見せてちょうだい。お風呂にはうるさいアウラの設計だもの、どんな湯殿になっているか楽しみね」

「では、ご案内いたします。こちらへどうぞ」

 あたしたちは自慢の湯殿へと向かった。
 湯殿までの道程も湖の景色が見渡せる設計になっているんだよね。
 建築師の皆さん、お疲れ様です。

「こちらが第一浴場です。普段はこちらの浴場を使います」

「あらまあ。アウラ様らしい、気合いの入ったお風呂ですね」

「そう言わないでよ、エリス」

 あたしの作ったお風呂は木造のフロアに壁までつながる浴槽など、全力で趣味に振り切った施設だ。
 ちなみにいまいるのは女性用で少し離れた場所に同じように作られた男性用の湯殿もある。
 そこはゲストのことも考えてわきまえてるよ?

「ふむ、お湯が常に湧き出ているのはどういう仕掛けかしら? あと、独特の匂いがするのだけど」

 女王陛下は常にお湯が湧き出していることが気になったらしい。
 あと、浴場にただよう独特な匂いも。

「これでしたら水龍様がお作りになった『温泉』というものです。地中から温かい湯が噴き出してくるものとなります。匂いは地上に吹き出てくるまでの間に溶け出した鉱物などによるものだそうで」

「そうなの。でも、悪くはない感じね。帰る前に入らせてもらってもいい?」

「構いませんよ。あたしは専用風呂もありますから」

「専用風呂?」

「はい。あたし専用のお風呂として野外露天風呂を作ってあるんです。そちらも見てみますか?」

「え、ええ。見せてちょうだい」

「はい。それじゃあ、こちらになりますね」

 あたしたちは来た道を戻り、一度階段を上がって2階へと出た。
 そしてその奥にあった鍵付きの扉を開けて中に入ると、更衣室の奥にあった扉を抜ける。
 そこにあったのはクリスタルによって光が遮られずに差し込む下り階段。
 そこを下ると、目隠し用の屋根や木々で上と左右を塞いだだけで湖を真っ正面に望む大きなお風呂が待ち構えていた。
 どうよ、あたし自慢の温泉露天風呂は!

「アウラ、あなた外でお風呂に入るの?」

「はい。目隠しなどもバッチリで屋内や外からも見えない設計になっていますし、ルインハンターとして泉で水浴びをしていたことを考えれば、たいした問題ではありません!」

「いえ、そうかもしれないけれど……はしたなくはなくて?」

「そうですか? この開放感と眺めに比べれば些細な問題ですよ」

「そう……なのかしら」

 お風呂の紹介も終わったため、内覧は2階へと移動。
 2階は主にゲストルームとなっており、ゲストルームは格によって部屋の広さなどに差こそあれど、ほとんどの部屋が湖向き。
 湖に面していない部屋は本当に格の低い者向けの部屋らしい。
 貴族の随行員とかの部屋は1階に用意してあるって聞いたからそれとはまた別なんだろうけどね。

 3階は主であるあたしの部屋がメイン。
 あたしの寝室に書斎、リビングなど様々な施設が揃っている。
 ちなみにアウラの寝室なども既に設けてあるのは女王陛下には内緒だ。

 そのような形で母屋の案内は終了。
 あとはヘファイストスが建ててくれた別館だけど、そちらは大きなものが資材置き場、中くらいのものが魔導車用の駐車場、小型のものが警備員の控え室になっている。
 いまはどこもガラガラだけど、これから家具なども作られていくからすぐに埋まるよね。
 引っ越しまで残りわずか、新しい屋敷で暮らせる日を楽しみにしていよう!
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