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第三章 『世界樹の村』

47. 闇のヒト族

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「え? 『魔族』をこの村に迎え入れたい?」

 行商から戻ってきたクーオが驚くことを言い出す。
 どうして『魔族』をこの村に?

「バオア、落ち着くにゃ。『魔族』とはいってもさまざまな種族があるにゃ。それに、『魔族』だってヒト族と同じように暮らしているにゃ」

「そうなの?」

「そうにゃ」

 ホーフーンから詳しく話を聞くと、『魔族』とは『闇のヒト族』と呼ばれる種族の人たちらしい。
 今回受け入れを望んでいるのはそんな『闇のヒト族』の一種族である『魔人族』だ。

『魔人族』は光のヒト族でいうところの『人間族』に近く、これといった特徴のない種族なんだそう。
 ただし、『特徴のない』というのは『闇のヒト族』の間でのみの特徴だけで、光のヒト族も加えた話になると、寿命が少し長く体力も魔力も高めな種族ということになる。
 そんな種族が移住を希望しているのか……ちょっと詳しく話を聞いてみよう。

「今回受け入れを希望している魔人族の村は人口60人程度の村ニャ。主な産業は農耕、そこも光のヒト族と一緒ニャ。ただ、闇のヒト族は独特な食文化もあると聞きますニャ。これを見てほしいのニャ」

 クーオが袋から取り出したのは乾燥した白い種のようなもの。
 これってなんだろう?

「これは『米』といいまして闇のヒト族で一般的に食べられる主力穀物ニャ。これは麦と同じように育ち、麦の穂のようにバラバラにしてから実同士をすりあわせて中身を取り出すニャ。これは粉にせずそのまま水から蓋を閉めて煮るのと似たような方法で調理しますのニャ。はっきり言って、小麦粉にしないと食べられない小麦よりも便利ニャ」

 そんなすごい作物を育てていたんだ。
 でも、それも不作になってきているってことだよね。
 どうしてなんだろう?

「不作の原因はよくわかっていませんニャ。ただ、光のヒト族の住む大陸が近い側から不作が顕著になってきていますのニャ。闇のヒト族の国家でも光のヒト族の国々で起きている不作は知っていたので万全の備えで臨んでいましたニャ。それでもだめでしたニャ」

 なるほど。
 もっと詳しく話を聞くと、闇のヒト族の住む大陸は光のヒト族の住む大陸とは離れているらしい。
 それなのに不作が海を越えて進むようになっていると。
 なんだかいろいろ怪しいな。

 どちらにしても闇のヒト族を受け入れるには集会を開いてみんなの意見を聞いてみるべきだし、今ここでは決められない。
 あと、魔人族からの要望として川から近い土地というのもある。
 世界樹の精霊様に小川を作ってもらったけど、それは僕たちの住んでいるところから離れた場所だ。
 そこに住むことになってもいいのか聞かなくちゃいけないね。
 この村もいろいろな種族が暮らしているけど、闇のヒト族まで住むかもしれないとは。
 かなり規模が大きくなっているな、いろいろと。
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