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強引な王子は好きですか?
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「まずは……僕が見せたい『絶景』があるんだ」
ルカはリネットの手を引くと、隣の家の厩舎へと向かいました。そこには、セバスが城から連れてきたルカの愛馬が、主人の迎えを待っていました。
「頼むぞ……今日は絶対に、失敗したくないんだ」
ルカが馬の鼻先を優しく撫で、決意を込めて囁くと、賢い馬はまるで主人の緊張を理解したように力強く嘶きました。
「さあ、乗って」
ルカはリネットを軽々と、けれど壊れ物を扱うようにエスコートし、自分の前に跨がせました。背中から包み込むような形になり、リネットの背中にルカの胸の鼓動がダイレクトに伝わります。
「……ルカ、心臓の音、すごいうるさいわよ?」
「う、うるさい。僕のせいじゃない、馬の振動のせいだ!」
真っ赤な嘘をつきながら、ルカは手綱を引きました。
城壁を抜け、活気ある門を潜り、二人は風となって疾走します。街の喧騒が遠ざかり、目の前にはどこまでも続く青い空と草原が広がりました。
「……あ、坂道だ」
馬が緩やかな上り坂を駆け上がっていきます。道端には、ポツポツと見たこともない野花が顔を出し始めました。リネットがその花々に目を奪われていると、視界がいきなり、鮮烈な「色」で埋め尽くされました。
「……着いたぞ」
丘の頂上でルカが馬を止めると、そこには見渡す限りのカラフルなお花畑が広がっていました。
「わぁ……!」
リネットは息を呑みました。風が吹くたびに、赤、青、黄色、紫の花々が大きな波のように揺れ、甘い香りが二人を包み込みます。
「綺麗……。私、こんな場所があるなんて知らなかった」
「ここはさ……視察の帰りに偶然見つけたんだ。君がいつもお花を大切に育てているのを見て、いつか、この景色を君に見せてあげたいって……ずっと、ずっと思ってたんだ」
馬から降りたルカは、リネットを抱き上げるようにして地面へと下ろしました。
リネットは夢中になって花畑の中へ歩いていきます。その姿は、まるで花の精霊が自分たちの楽園に戻ってきたかのようで、ルカは思わず目を奪われました。
「ルカ! 見て、これ『月の涙草』じゃない! 自生してるなんて珍しいわ……それに、あっちには……」
リネットがはしゃいで振り返ると、そこには花よりも熱い眼差しで自分を見つめるルカがいました。
「……綺麗だ」
ルカの視線は、一面に咲き誇る花々ではなく、その中心で瞳を輝かせているリネットだけに注がれていました。
「うん! 本当に綺麗ね。連れてきてくれてありがとう、ルカ!」
リネットは花畑の美しさに心を躍らせ、満面の笑みで答えます。けれど、ルカはその言葉を遮るように、一歩踏み出しました。
「違う。……リネット、君が綺麗なんだ」
ルカは一歩歩み寄り、風に揺れる彼女の髪をそっと掬い上げました。
「えっ……」
唐突で、けれど熱の籠もった真っ直ぐな言葉に、リネットの動きが止まります。風に揺れる花々の音だけが響く中、ルカは今にも消えてしまいそうな、自信の無い声で問いかけました。
「リネット……僕は君にとって、まだただの『最高のお隣さん』なのかな?」
その声には、一国の王子としての尊大さも、全属性を操る魔法使いとしての余裕もありませんでした。ただ、一人の不器用な青年が、大好きな女性に選ばれたいと願う切実な響き。
(ああ、この人は……)
リネットはハッとしました。自分が照れ隠しで口にした「お隣さん」という言葉が、どれほど彼を悩ませ、葛藤させていたのか。自信満々に見えて、本当は私の反応ひとつに一喜一憂している。
その不器用で、愛おしすぎる彼の本心に触れた瞬間、リネットの胸の奥から熱い感情が込み上げてきました。
「ルカ、あのね……」
気づけば、リネットは自分から一歩踏み出し、ルカの体に腕を回していました。
「……リ、リネット!?」
驚いて固まるルカを、リネットは力いっぱい抱きしめます。
「ごめんね。変な言い方して。……あんたが『ただのお隣さん』なわけないじゃない。そんな人に、毎日料理を作ってもらったり、こんな素敵な場所に連れてきてもらったりしないわよ」
リネットはルカの胸に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で、けれど確かな熱を持って続けました。
「……私の、一番大切な人よ。ルカ」
ルカはリネットの手を引くと、隣の家の厩舎へと向かいました。そこには、セバスが城から連れてきたルカの愛馬が、主人の迎えを待っていました。
「頼むぞ……今日は絶対に、失敗したくないんだ」
ルカが馬の鼻先を優しく撫で、決意を込めて囁くと、賢い馬はまるで主人の緊張を理解したように力強く嘶きました。
「さあ、乗って」
ルカはリネットを軽々と、けれど壊れ物を扱うようにエスコートし、自分の前に跨がせました。背中から包み込むような形になり、リネットの背中にルカの胸の鼓動がダイレクトに伝わります。
「……ルカ、心臓の音、すごいうるさいわよ?」
「う、うるさい。僕のせいじゃない、馬の振動のせいだ!」
真っ赤な嘘をつきながら、ルカは手綱を引きました。
城壁を抜け、活気ある門を潜り、二人は風となって疾走します。街の喧騒が遠ざかり、目の前にはどこまでも続く青い空と草原が広がりました。
「……あ、坂道だ」
馬が緩やかな上り坂を駆け上がっていきます。道端には、ポツポツと見たこともない野花が顔を出し始めました。リネットがその花々に目を奪われていると、視界がいきなり、鮮烈な「色」で埋め尽くされました。
「……着いたぞ」
丘の頂上でルカが馬を止めると、そこには見渡す限りのカラフルなお花畑が広がっていました。
「わぁ……!」
リネットは息を呑みました。風が吹くたびに、赤、青、黄色、紫の花々が大きな波のように揺れ、甘い香りが二人を包み込みます。
「綺麗……。私、こんな場所があるなんて知らなかった」
「ここはさ……視察の帰りに偶然見つけたんだ。君がいつもお花を大切に育てているのを見て、いつか、この景色を君に見せてあげたいって……ずっと、ずっと思ってたんだ」
馬から降りたルカは、リネットを抱き上げるようにして地面へと下ろしました。
リネットは夢中になって花畑の中へ歩いていきます。その姿は、まるで花の精霊が自分たちの楽園に戻ってきたかのようで、ルカは思わず目を奪われました。
「ルカ! 見て、これ『月の涙草』じゃない! 自生してるなんて珍しいわ……それに、あっちには……」
リネットがはしゃいで振り返ると、そこには花よりも熱い眼差しで自分を見つめるルカがいました。
「……綺麗だ」
ルカの視線は、一面に咲き誇る花々ではなく、その中心で瞳を輝かせているリネットだけに注がれていました。
「うん! 本当に綺麗ね。連れてきてくれてありがとう、ルカ!」
リネットは花畑の美しさに心を躍らせ、満面の笑みで答えます。けれど、ルカはその言葉を遮るように、一歩踏み出しました。
「違う。……リネット、君が綺麗なんだ」
ルカは一歩歩み寄り、風に揺れる彼女の髪をそっと掬い上げました。
「えっ……」
唐突で、けれど熱の籠もった真っ直ぐな言葉に、リネットの動きが止まります。風に揺れる花々の音だけが響く中、ルカは今にも消えてしまいそうな、自信の無い声で問いかけました。
「リネット……僕は君にとって、まだただの『最高のお隣さん』なのかな?」
その声には、一国の王子としての尊大さも、全属性を操る魔法使いとしての余裕もありませんでした。ただ、一人の不器用な青年が、大好きな女性に選ばれたいと願う切実な響き。
(ああ、この人は……)
リネットはハッとしました。自分が照れ隠しで口にした「お隣さん」という言葉が、どれほど彼を悩ませ、葛藤させていたのか。自信満々に見えて、本当は私の反応ひとつに一喜一憂している。
その不器用で、愛おしすぎる彼の本心に触れた瞬間、リネットの胸の奥から熱い感情が込み上げてきました。
「ルカ、あのね……」
気づけば、リネットは自分から一歩踏み出し、ルカの体に腕を回していました。
「……リ、リネット!?」
驚いて固まるルカを、リネットは力いっぱい抱きしめます。
「ごめんね。変な言い方して。……あんたが『ただのお隣さん』なわけないじゃない。そんな人に、毎日料理を作ってもらったり、こんな素敵な場所に連れてきてもらったりしないわよ」
リネットはルカの胸に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で、けれど確かな熱を持って続けました。
「……私の、一番大切な人よ。ルカ」
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