聖域の森へ忍び寄る足音

花垣 雷

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第二十章:黄金の朝と、精霊の祝福

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扉の向こう、廊下に残った国王と親族たちは、部屋から漏れ聞こえるアリオスの慟哭を、身を切られるような思いで聞いていました。
それは、騎士の仮面を脱ぎ捨てた一人の少年による、魂の叫びでした。その激しい嗚咽が静まるまで、誰もその場を離れようとはせず、ただ共に深い悲しみの夜に沈んでいきました。

夜が更けても、セレーナが目を開けることはありませんでした。
アリオスは、彼女の細い手を両手で包み込んだまま、祈るように椅子に腰掛けていました。やがて極限の疲労と安堵、そして消えない痛みが彼を微睡(まどろ)みへと誘い、彼はセレーナのベッドに突っ伏したまま、深い眠りに落ちていきました。

「……チュンチュン……チチチ……」

耳元で、懐かしいさえずりが聞こえました。
アリオスは、頬をなでる柔らかな陽光を感じながら、ゆっくりと意識を浮上させました。

(ああ……僕は、寝てしまったのか……)

目覚めると同時に、背中に心地よい重みと温かさを感じました。驚いて振り返ると、そこには上質な毛布が掛けられていました。

(これは……陛下が? それとも、王妃様だろうか……)

誰が掛けたにせよ、そこに込められた静かな慈しみが、アリオスの凍えた心を少しだけ温めました。
ぼんやりとさえずりの主を探していると、不意に窓ガラスを激しく叩く音が聞こえました。

「コン、コン、コン!」

窓の外に目をやると、そこにはあの日、自分をあの小屋へと導いた金色の小鳥が羽ばたいていました。
しかし、今日はそれだけではありませんでした。
小鳥の周囲が、見たこともないほどの輝きに満ち溢れているのです。

「なんだ……この光は……?」

アリオスの目には、無数の小さな光の玉が、意思を持っているかのように宙を舞っているのが見えました。森に住まう精霊たちが、小鳥に連れられて、かつての友を救うために王宮の奥深くへと集まってきたのです。
アリオスは痛む体を引きずりながら、窓辺へと急ぎました。重い窓枠を押し上げると、待っていたかのように、金色の光が濁流となって室内へとなだれ込みました。

光の粒は、キラキラと空中で踊りながら、ベッドに横たわるセレーナを包み込んでいきました。それは、かつて彼女を蝕んでいた黒い暴走の影を、優しく、、丁寧に拭い去っていくような、清らかな再生の光でした。

「……セレーナ……」

光の渦の中心で、銀色の髪が眩しく輝きました。
精霊たちの歌声のような微かな羽音に包まれて、セレーナの指先が、再び命の熱を帯びて動き始めました。
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