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第4章:異界文書
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朝起きると、異様な冷え込みで思わずベッドに潜り込んだ。
なんでこんなに冷えるんだろう?
首を回して窓を見る。厚手のカーテンを、魔力を伸ばしてベッドの中からカーテンを開ける。うーん便利ー。
外は灰色の空から、白い綿のような雪がしんしんと降っていた。
……雪の季節だもんなぁ。とうとう降ったか。
えいやっと起き上がり、ガウンを羽織ってから暖炉に薪をくべ、火勢を足す。
廊下に出て隣の部屋のドアをノックすると、中からパジャマの上にガウンを着たアイリスが顔を出した。
「おはようございます。早いですね」
「いやー寒くて目が覚めちゃったみたい。雪だよ、雪!」
あきれた様子のアイリスが、私を見て気のない声で応える。
「はぁ……見ればわかりますが。
これだと水道管が凍ってるかもしれません。水が出るか、見てきます」
アイリスはパジャマ姿のまま階段を降りて行った。
私もアイリスの後を追い、一階に降りていく。
水道の蛇口をひねっても、一滴も水が出てこない。
「……だめですね。うっかりしてました。凍結対策をしておくべきでした」
この季節、水は蛇口をほんの少し開けて水を出しっぱなしにしておかないと、寒波や雪で凍り付くらしい。
私の家は井戸だったけど、汲み置きしておけば朝の支度には事が足りた。
「汲み置きはしてないの?」
「そちらも忘れてました。随分と急に冷え込んだんですね。雪が降る気配はなかったと思うんですけど」
昨晩は比較的暖かくて、寒波がやってくる雰囲気じゃなかった
でもまぁ、こんな季節もあるのかもしれない。
アイリスが小さく息をついて私に振り向いた。
「どうします? 厨房に行って水をもらってきましょうか」
「えー、重いだろうし、それは最後の手段にしておこうよ」
アイリスがきょとんと首を傾げ、私に応える。
「最後の……? 他の手段があるんですか?」
私はガウンの袖をまくりながら応える。
「まぁ見ておいて――」
水道管に手を触れて、魔力を内部に伝えていく――うーん、結構奥まで凍ってるな。
水の手応えがあるところまで魔力を浸透させたところで、私は水の温度を上げていく。氷の術式の、逆を行うのだ。言うなれば≪沸騰≫の術式だろうか。
水道管全体が水の手応えに変わったところで蛇口をひねると、すぐに水が流れ出した。
「……凄いですね。何をしたんですか?」
「氷を溶かしただけだよ。宿舎内だから、術式を使ってもセーフなはず」
私はニハハと笑いながら「じゃ、朝食の支度は任せるね!」と言って部屋に戻った。
****
朝食を食べながら、アイリスがふぅ、と憂鬱そうに告げる。
「先ほど一階の窓の外を見てみましたが、既に三十センチ以上積もってます。
なんなんですかね、突然こんなに降るなんて」
「え?! そんなに降ってたら、玄関が開かないんじゃない?!」
ここの玄関は外開き。雪で三十センチも埋まってたら、開くわけがない。
「どうやって外に出ようか。建物の外で術式使ってたら怒られちゃうし」
「二階の窓から飛び降りるしかないんじゃないですか? 三十センチも積もってれば、なんとかなりません?」
私は眉をひそめて応える。
「それで平気なのは、小さな子供くらいだよ。いくら私が小柄でもさすがに三十センチじゃ――ああでも、空を飛べばいいか」
「――飛べるんですか?!」
私はきょとんとして応える。
「アイリスだって浮遊型移動書架台は見てるでしょ? あの術式を自分にかけるだけだよ。
自由に空を飛ぶのは難しいけど、ゆっくり降りるくらいはできるはずだし」
「はぁ……魔導って便利なんですね」
「スコップあったよね? ご飯食べ終えたら、外から玄関の雪をなんとかしてくるよ」
朝食を食べ終えた私はスコップ片手に、自分に≪浮遊≫の術式を書けて窓からふわりと飛び降りた。
着地してからスコップで雪をかき分け、玄関に辿り着いてからドアの外の雪もどかしていく。
雪の壁が出来上がって一息ついてから、私は空を眺めた――まだ降るなぁ。どんだけ降るんだろう?
「終わったよー」
玄関から宿舎の中に入り、ブーツの雪を落としてから二階に上がっていく。
凍えた身体を暖炉の前で温めていると、アイリスが少し不安気な声で私に告げる。
「まだ降りやむ様子がないですね。ちょっとおかしくないですか? この雪」
「そうだねぇ……でもまぁ、だから何ができるって訳じゃないし。
アイリスは念のため、宿舎から出ないようにしておいた方がいいね」
頷いたアイリスは静かに部屋に戻っていった。
****
図書館入り口の衛兵たちは、皮鎧で寒そうに凍えていた。
「え?! こんな天気でも外に立つんですか?!」
衛兵が不機嫌そうに頷いて応える。
「それが私たちの仕事だからな」
傍には大型のストーブが置いてあるけど、それでも足元から伝わる冷気は着実に身体を冷やすはずだ。
図書館の入り口は雪かきが終わっているけど、まだまだ降り積もる様子だから、また何時間かしたらかきださないといけないだろう。
「ディララさんは、もう来てるんですか?」
「ああ、もういらっしゃるぞ」
すごいなディララさん。こんな雪の日でも、いつも通りに来てるのか。
私は衛兵たちに「頑張ってくださいね」と声をかけながら、図書館の中に足を踏み入れた。
中に入った途端「暑っ?!」と感じるくらいの熱気を感じた。
いつもと同じ室温のはずだけど、それだけ外が冷え込んでたんだろう。
ケープを脱いで雪を払い落し、ブーツの雪も落としていく。
≪乾燥≫の術式で服を乾かしてから、エントランスの奥に進み司書室のドアを開けた。
「おはようございまーす!」
ソファに座るディララさんが、驚いたようにこちらに振り向いた。
「こんな日でも、この時間に出勤するの?」
「それ、ディララさんが言っちゃいけないと思います」
苦笑交じりで受け答えしながら、私はケープをロッカーに入れてエプロンを身にまとった。
時計を見ると、八時をちょっと過ぎたところだ。
「さすがにみんなは、今日は早朝出勤しないですかね」
「んー、というより、たぶん学院が休校になるわね。
みんなもそのつもりで、今日は来ないんじゃないかしら」
なるほど、大雪の日に貴族子女が通学するとも思えない。そもそも馬車が走らな――あれ?
「ディララさん? どうやって学院まで来たんですか?」
「もちろん馬車で来てるわよ?」
「だって、こんな雪じゃ馬車が走れないんじゃ?」
ディララさんがニコリと微笑んだ。
「私が馬車の中から、雪をかき分けてあげるのよ。
あなたにもそれぐらいはできると思うのだけど」
……なるほど、魔力を馬車の外に伸ばして、それで雪かきをするのか。
「そういう発想はありませんでした。勉強になります」
ディララさんがコロコロと笑いながら応える。
「あなたは生活魔術全般に疎いですものね。
そういったことは、これからゆっくり覚えていけばいいわ」
「でも休校になるなら、ディララさんもお休みすればよかったんじゃ?」
ディララさんが背筋を伸ばし、柔らかい微笑みで告げる。
「私が家を出る時間じゃ、まだ休校になるかはわからなかったわ。
それならば、私は私の務めを果たすだけ。
悪天候なんて、嵐にでもならなければ休む理由にならないわね」
なんという責任感?! でも、それに付き合わされる御者の人とか大変そうだな?!
部屋を見渡しても、いつもいる侍女の人も居ない。彼女は休みなんだろうか。
まぁいいや、私は自分がやることをやるだけだ。
「それじゃ、私は蔵書チェックしてきますね!」
朝の短い時間だけど、それでも何冊かは読める。さーてサクサクいくぞー!
私は身を翻して司書室から飛び出て、目当ての本に真っ直ぐ向かっていった。
****
司書室に戻った私は、驚いて思わず声を出す。
「え?! なんでフランツさんが居るんですか?!」
暖炉の前で寒そうにしているフランツさんが私に振り向き、いつもの爽やかな笑顔を見せた。
「馬車は動かなかったが、歩いて辿り着いたよ。
でもさすがに時間がかかったな」
「いやいやいや! そうじゃなくて! 今日は休校見込みなんでしょう?! 素直にお休みすればいいじゃないですか!」
フランツさんが恥ずかしそうに目を逸らして告げる。
「いやそうなんだが……ヴィルマなら今日も出勤してると思うと、負けてられないと思ってね」
本の適温に保たれているこの図書館で暖炉に火を入れるとか、どんだけ凍えてたんだろう?
「そんなに無理をしなくてもいいじゃないですか」
私の言葉に、ディララさんがクスリと笑った。
「あなたの顔を見たくて、頑張って出勤したフランツを褒めてあげたら?」
フランツさんが真っ赤な顔で、慌ててディララさんに振り向いた。
「――オットー子爵夫人?! 何を仰るんですか?!」
「あら、本当のことじゃない? 今さら照れなくてもいいわよ」
なんだかよくわからないけど、褒めた方が良いの?
「えーと、よく頑張りました、でいいのかな?」
暖炉の前で座り込んでいるフランツさんの頭を撫でると、彼の身体が硬直した。
……相変わらず、女性慣れできてないのか?
なんだかおもしろいので、そのままフランツさんの頭を撫で続けていると、不意に司書室のドアが開く。
「いやはや、酷い雪だね。参ってしまったよ」
その声に振り返ると、ヴォルフガングさんが人の良い笑顔で佇んでいた。
「ヴォルフガングさんも出勤したんですか?!」
「そうだよ? 今日はちょっと、君に用事があってね」
用事? なんだろう?
小首をかしげる私に、ヴォルフガングさんがにこやかに告げる。
「ちょっと一緒に、王宮に登城してもらえるかな?」
「――は?!」
言葉を失う私に、ヴォルフガングさんはニコニコと微笑みを返していた。
なんでこんなに冷えるんだろう?
首を回して窓を見る。厚手のカーテンを、魔力を伸ばしてベッドの中からカーテンを開ける。うーん便利ー。
外は灰色の空から、白い綿のような雪がしんしんと降っていた。
……雪の季節だもんなぁ。とうとう降ったか。
えいやっと起き上がり、ガウンを羽織ってから暖炉に薪をくべ、火勢を足す。
廊下に出て隣の部屋のドアをノックすると、中からパジャマの上にガウンを着たアイリスが顔を出した。
「おはようございます。早いですね」
「いやー寒くて目が覚めちゃったみたい。雪だよ、雪!」
あきれた様子のアイリスが、私を見て気のない声で応える。
「はぁ……見ればわかりますが。
これだと水道管が凍ってるかもしれません。水が出るか、見てきます」
アイリスはパジャマ姿のまま階段を降りて行った。
私もアイリスの後を追い、一階に降りていく。
水道の蛇口をひねっても、一滴も水が出てこない。
「……だめですね。うっかりしてました。凍結対策をしておくべきでした」
この季節、水は蛇口をほんの少し開けて水を出しっぱなしにしておかないと、寒波や雪で凍り付くらしい。
私の家は井戸だったけど、汲み置きしておけば朝の支度には事が足りた。
「汲み置きはしてないの?」
「そちらも忘れてました。随分と急に冷え込んだんですね。雪が降る気配はなかったと思うんですけど」
昨晩は比較的暖かくて、寒波がやってくる雰囲気じゃなかった
でもまぁ、こんな季節もあるのかもしれない。
アイリスが小さく息をついて私に振り向いた。
「どうします? 厨房に行って水をもらってきましょうか」
「えー、重いだろうし、それは最後の手段にしておこうよ」
アイリスがきょとんと首を傾げ、私に応える。
「最後の……? 他の手段があるんですか?」
私はガウンの袖をまくりながら応える。
「まぁ見ておいて――」
水道管に手を触れて、魔力を内部に伝えていく――うーん、結構奥まで凍ってるな。
水の手応えがあるところまで魔力を浸透させたところで、私は水の温度を上げていく。氷の術式の、逆を行うのだ。言うなれば≪沸騰≫の術式だろうか。
水道管全体が水の手応えに変わったところで蛇口をひねると、すぐに水が流れ出した。
「……凄いですね。何をしたんですか?」
「氷を溶かしただけだよ。宿舎内だから、術式を使ってもセーフなはず」
私はニハハと笑いながら「じゃ、朝食の支度は任せるね!」と言って部屋に戻った。
****
朝食を食べながら、アイリスがふぅ、と憂鬱そうに告げる。
「先ほど一階の窓の外を見てみましたが、既に三十センチ以上積もってます。
なんなんですかね、突然こんなに降るなんて」
「え?! そんなに降ってたら、玄関が開かないんじゃない?!」
ここの玄関は外開き。雪で三十センチも埋まってたら、開くわけがない。
「どうやって外に出ようか。建物の外で術式使ってたら怒られちゃうし」
「二階の窓から飛び降りるしかないんじゃないですか? 三十センチも積もってれば、なんとかなりません?」
私は眉をひそめて応える。
「それで平気なのは、小さな子供くらいだよ。いくら私が小柄でもさすがに三十センチじゃ――ああでも、空を飛べばいいか」
「――飛べるんですか?!」
私はきょとんとして応える。
「アイリスだって浮遊型移動書架台は見てるでしょ? あの術式を自分にかけるだけだよ。
自由に空を飛ぶのは難しいけど、ゆっくり降りるくらいはできるはずだし」
「はぁ……魔導って便利なんですね」
「スコップあったよね? ご飯食べ終えたら、外から玄関の雪をなんとかしてくるよ」
朝食を食べ終えた私はスコップ片手に、自分に≪浮遊≫の術式を書けて窓からふわりと飛び降りた。
着地してからスコップで雪をかき分け、玄関に辿り着いてからドアの外の雪もどかしていく。
雪の壁が出来上がって一息ついてから、私は空を眺めた――まだ降るなぁ。どんだけ降るんだろう?
「終わったよー」
玄関から宿舎の中に入り、ブーツの雪を落としてから二階に上がっていく。
凍えた身体を暖炉の前で温めていると、アイリスが少し不安気な声で私に告げる。
「まだ降りやむ様子がないですね。ちょっとおかしくないですか? この雪」
「そうだねぇ……でもまぁ、だから何ができるって訳じゃないし。
アイリスは念のため、宿舎から出ないようにしておいた方がいいね」
頷いたアイリスは静かに部屋に戻っていった。
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図書館入り口の衛兵たちは、皮鎧で寒そうに凍えていた。
「え?! こんな天気でも外に立つんですか?!」
衛兵が不機嫌そうに頷いて応える。
「それが私たちの仕事だからな」
傍には大型のストーブが置いてあるけど、それでも足元から伝わる冷気は着実に身体を冷やすはずだ。
図書館の入り口は雪かきが終わっているけど、まだまだ降り積もる様子だから、また何時間かしたらかきださないといけないだろう。
「ディララさんは、もう来てるんですか?」
「ああ、もういらっしゃるぞ」
すごいなディララさん。こんな雪の日でも、いつも通りに来てるのか。
私は衛兵たちに「頑張ってくださいね」と声をかけながら、図書館の中に足を踏み入れた。
中に入った途端「暑っ?!」と感じるくらいの熱気を感じた。
いつもと同じ室温のはずだけど、それだけ外が冷え込んでたんだろう。
ケープを脱いで雪を払い落し、ブーツの雪も落としていく。
≪乾燥≫の術式で服を乾かしてから、エントランスの奥に進み司書室のドアを開けた。
「おはようございまーす!」
ソファに座るディララさんが、驚いたようにこちらに振り向いた。
「こんな日でも、この時間に出勤するの?」
「それ、ディララさんが言っちゃいけないと思います」
苦笑交じりで受け答えしながら、私はケープをロッカーに入れてエプロンを身にまとった。
時計を見ると、八時をちょっと過ぎたところだ。
「さすがにみんなは、今日は早朝出勤しないですかね」
「んー、というより、たぶん学院が休校になるわね。
みんなもそのつもりで、今日は来ないんじゃないかしら」
なるほど、大雪の日に貴族子女が通学するとも思えない。そもそも馬車が走らな――あれ?
「ディララさん? どうやって学院まで来たんですか?」
「もちろん馬車で来てるわよ?」
「だって、こんな雪じゃ馬車が走れないんじゃ?」
ディララさんがニコリと微笑んだ。
「私が馬車の中から、雪をかき分けてあげるのよ。
あなたにもそれぐらいはできると思うのだけど」
……なるほど、魔力を馬車の外に伸ばして、それで雪かきをするのか。
「そういう発想はありませんでした。勉強になります」
ディララさんがコロコロと笑いながら応える。
「あなたは生活魔術全般に疎いですものね。
そういったことは、これからゆっくり覚えていけばいいわ」
「でも休校になるなら、ディララさんもお休みすればよかったんじゃ?」
ディララさんが背筋を伸ばし、柔らかい微笑みで告げる。
「私が家を出る時間じゃ、まだ休校になるかはわからなかったわ。
それならば、私は私の務めを果たすだけ。
悪天候なんて、嵐にでもならなければ休む理由にならないわね」
なんという責任感?! でも、それに付き合わされる御者の人とか大変そうだな?!
部屋を見渡しても、いつもいる侍女の人も居ない。彼女は休みなんだろうか。
まぁいいや、私は自分がやることをやるだけだ。
「それじゃ、私は蔵書チェックしてきますね!」
朝の短い時間だけど、それでも何冊かは読める。さーてサクサクいくぞー!
私は身を翻して司書室から飛び出て、目当ての本に真っ直ぐ向かっていった。
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司書室に戻った私は、驚いて思わず声を出す。
「え?! なんでフランツさんが居るんですか?!」
暖炉の前で寒そうにしているフランツさんが私に振り向き、いつもの爽やかな笑顔を見せた。
「馬車は動かなかったが、歩いて辿り着いたよ。
でもさすがに時間がかかったな」
「いやいやいや! そうじゃなくて! 今日は休校見込みなんでしょう?! 素直にお休みすればいいじゃないですか!」
フランツさんが恥ずかしそうに目を逸らして告げる。
「いやそうなんだが……ヴィルマなら今日も出勤してると思うと、負けてられないと思ってね」
本の適温に保たれているこの図書館で暖炉に火を入れるとか、どんだけ凍えてたんだろう?
「そんなに無理をしなくてもいいじゃないですか」
私の言葉に、ディララさんがクスリと笑った。
「あなたの顔を見たくて、頑張って出勤したフランツを褒めてあげたら?」
フランツさんが真っ赤な顔で、慌ててディララさんに振り向いた。
「――オットー子爵夫人?! 何を仰るんですか?!」
「あら、本当のことじゃない? 今さら照れなくてもいいわよ」
なんだかよくわからないけど、褒めた方が良いの?
「えーと、よく頑張りました、でいいのかな?」
暖炉の前で座り込んでいるフランツさんの頭を撫でると、彼の身体が硬直した。
……相変わらず、女性慣れできてないのか?
なんだかおもしろいので、そのままフランツさんの頭を撫で続けていると、不意に司書室のドアが開く。
「いやはや、酷い雪だね。参ってしまったよ」
その声に振り返ると、ヴォルフガングさんが人の良い笑顔で佇んでいた。
「ヴォルフガングさんも出勤したんですか?!」
「そうだよ? 今日はちょっと、君に用事があってね」
用事? なんだろう?
小首をかしげる私に、ヴォルフガングさんがにこやかに告げる。
「ちょっと一緒に、王宮に登城してもらえるかな?」
「――は?!」
言葉を失う私に、ヴォルフガングさんはニコニコと微笑みを返していた。
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