天衣無縫の公爵令嬢・改訂版~月下の瞳~

みつまめ つぼみ

文字の大きさ
13 / 35
第2章 契約

第13話 挑戦状

しおりを挟む
 私が身を縮めて痛みを待っていても、それが襲って来ることはなかった。

 おそるおそる目を開けると――ステファンが前に立ちふさがり、男のナイフを取りつかんでいた。

 『私』は急いで男を魔法のつるで捕縛していく。

 捕縛された男は地面に転がり、身動きができないままベルンハルトに取り押さえられた。

 ……パターンが違う。

 いつもはステファンだけを狙い、失敗したと判断したら痕跡も残さず撤収していた。

 手慣れたプロの手腕だ。

 でも、この男の動きは素人のそれに近い。

 ステファンがぽつりとつぶやく。

「メルフィナを狙っていたな」

 私を? いつも暗殺を防いでる私が邪魔だった?

 考えても分からなかった。この男の取り調べを待つべきだろう。

 男は騎士たちが抱えて連行していった。

「――あ! ステファン、無事?!」

 私をかばって怪我なんて、してないよね?!

 ステファンは微笑ほほえみながら、両手を挙げて手のひらを見せてくれた。

「ああ、問題ない」

 私は安堵あんどのため息をついた。

「よかった……というか! なんで護衛対象が危険に身をさらすのかな?!」

「お前が危ない――そう思ったら体が勝手に動いていた。それだけだ」

 ステファンは悪びれもせず言ってのけた。

「もっと自分の立場を考えて行動してよ?!」

 ステファンがいたずらっ子のようにニヤリと微笑んだ。

「だが、ようやくメルフィナを守ることができた。
 いつも守ってもらってばかりじゃしゃくだからな」

 本当にわかってるのかな……。

 警戒魔法を展開しても、近くに敵意はないみたいだ。

 今度こそ大丈夫だろう。

 大通りだからって油断した……『カリナ』だったらやらないミスだ。

 私は自己嫌悪におちいりながら帰路についた。




****

 屋根の上で、手のひらに炎の魔導術式を展開していたケーニヒが一息ついていた。

 ――まったく、ヒヤヒヤさせる。

 『カリナ』もそうだった。普段は鉄壁の癖に、意外なところでドジを踏む。

 そこが可愛いところでもあると、ケーニヒは感じても居るのだが。

 しかし――。

 ステファン第一王子、あれは『ハインツ』の動きじゃない。奴は記憶がないのか。

 となれば、奴に任せるには不安が大きくなる。

 プランBを検討する必要があるだろう。

 婚約が内定しているという噂はキャッチしていた。

 となれば、婚約披露パーティが必ず開かれる。

 ケーニヒはタイムリミットをそこに設定した。

 ――今度こそ失望させるなよ。

 黒い影は、夕やみの中に姿を消していった。




****

 夜、私はベッドの上で仰向あおむけになって反省していた。

 今まで何度も防いでこれたのに、あんな失敗をするだなんて。

 『カリナ』の相手は魔王軍だったけど、時には人間も相手にしていた。

 彼女だったらこんな失態なんて犯さなかっただろう。

 防ぎ切ったと安心して『カリナ』を引っ込めてしまった。私のミスだ。

 『カリナ』の経験も万能じゃないんだなぁ。

 私だってしっかりしないと。

 ステファンが私を守ってくれた――それ自体は嬉しかった。

 だけど、あの人にそんな役目を負わせちゃいけない。

 私は今、彼を守るためにそばにいるのだから。

 固く決意をして、私は目を閉じた。




****

 放課後の貴賓室きひんしつで、ステファンが書類をテーブルに置いた。

「男の身元が判明した」

 ベルンハルトが書類を確認しながらつぶやく。

「貧民街の薬物中毒者か」

「明らかに今までにないパターンだな」

 そういう人材を暗殺者に仕立てるのは、裏社会のセオリーだそうだ。

 だけどプロ程そういう手口を嫌う。

 成功率が高くないし、何より証拠を残しやすいからだと。

 ステファンが告げる。

「男の言葉は要領を得ないが、『見知らぬ男に頼まれた』という証言は取れた。
 今は相手の人相を確認中だ」

 ベルンハルトがあきれたように告げる。

「随分と雑だな。今までの奴らが好む手口じゃない」

「それにターゲットも違った」

 二人の視線が私に向けられた。

「わ、私は王都に来たばかりだし、誰かに殺されるほど恨まれるようなことなんて――」

 脳裏に『聖女コルネリア』とサラ様の顔がよぎった。

 言葉を失った私に、ステファンがうなずいて告げる。

「ノウマン侯爵家について、現在追加で調査中だ。
 あそこは裏社会とのつながりが薄い。
 ああいう手合いしか、用意できなかったのだろう」

 婚約を突然破棄されたサラ様にとって、私はもう殺してでも排除したい存在なの?

 ……サラ様が『コルネリア』の生まれ変わりなら、同じ気性をしててもおかしくない、か。

 まさか、生まれ変わっても同じ目にうだなんてね

 『カリナ』は人の悪意にうといところがあった。

 たぶん、私もそうなのだろう。

 おの想いにふける私にステファンが告げる。

「油断はするなよ? お前は変な所が抜けているからな」

「――変な所とはなによ?!」

「普段は頼りになる癖に、思わぬところで油断をするだろう?」

 事実だけに、反論できない!

 ステファンがニヤリと微笑ほほえんだ。

「――クレープを食べれば、鼻にクリームが付いていても気づかずに『美味しい』と笑ってるしな」

「ちょっと?! それは今関係ない!」

 私は自分の頭が耳まで赤くなっているのを自覚した。

 あのあと、ステファンに笑いながらクリームを拭き取られてすっごい恥ずかしかった!

 なんでああいうことを、人前で平然とできちゃうかな?!

 ベルンハルトが軽く手を打ち鳴らした。

「はいはい、お楽しみはあとにしてくれ。
 宰相の方はどうなんだ?」

 ステファンがうなずいた。

「わずかだが、動きを補足できた。
 だがまだ足りないな」

「ま、わずかでも収穫があったなら前進だ。
 この調子で宰相を追い詰めていこう」

 ステファンがベルンハルトにうなずいた。

 私は二人の話を聞きながら、顔の火照りを冷ましていた。




****

 放課後の貴賓室きひんしつで、私はステファンに告げる。

「昼間、カタリナが教えに来てくれたんだけど。
 お父様が王都に到着したよ」

 ベルンハルトが口笛を吹いた。

「となると、とうとう二人の婚約か」

「私は! まだ! それを了承した覚えはない!」

 私はベルンハルトの鼻に指を突きつけて声を上げていた。

 ステファンが悲しそうな表情で告げる。

「そんなに嫌なのか?」

 うっ、なんで私が悪者みたいな気分になるんだろう?!

「……まだ、早いと思うんだ」

 目を伏せながら、正直に告げた。

 そのまま私は言葉を続ける。

「私はまだ、ステファンとそれほど時間を積み上げてない。
 だからステファンがどうしてそんなに自信満々なのかもわからない」

 ステファンの声が私に向けられる。

「足りないのは時間だけか?」

「えっ?」

 思わず顔を上げてステファンを見た。

 彼の顔は真剣そのものだ。

「俺とお前の間に足りないのは、時間だけなのかと聞いている」

 私はうつむいて考えてみる。

「……うん、そうだと思う。心を見極める時間が欲しい」

 かれてはいる。それは間違いじゃない。

 でもその自分の気持ちに、確信が持てない。

 これが『尊敬』なのか、『恋愛』なのか、それとも――『カリナの想いの残滓』なのか。

 ステファンが私に告げる。

「ならば俺に時間をくれ。婚約者となってそのチャンスをくれ。
 ――三年間。在学中にお前が納得しなければ、婚約は解消していい。
 それより前に答えが出た場合でも応じる」

 ――破格の条件、でたらめもいいところだ。

「ステファン?! 君は第一王位継承者の婚約者がどういうものか、分かってる?!
 三年間試して『はい駄目でした』なんて話、通用すると思う?!」

「通用させる。そもそも、三年もかけて女一人振り向かせられないようでは一国も背負えない。
 駄目だった場合は王位継承者の資格を返上する」

「何を……言ってるの……」

「弟は二人いる。どちらも王の器に足りると俺は見ている。
 俺が補佐に回れば、十分国家を回していけるだろう。
 もちろん、その後もメルフィナを諦めるつもりはないけどな」

 ――そうか、彼の中で私との婚姻は『決定事項』なんだ。
 『決意したことを覆したことがない』と豪語したことを、ただ実行するつもりだ。

 『ハインツ』もそうだった。

 『魔王を倒す』なんて荒唐無稽な決意をして、実際に達成して見せた。

 『カリナ』は『ハインツ』のそんな力強い生き様に憧れていた。

 私も『そんな人がいれば』と思っていなかったか。

 脱力しつつも、ついつい微笑ほほえんでいた。

 ステファンのそんなところにかれている自分に気が付いていた。

「……わかった。その期間限定の婚約、受けて立ってあげる!
 ただし! 廃嫡はいちゃくについては受け付けないからね!」

 私はステファンに指を突きつけながら叫んだ。

 驚いてるステファンに私は続ける。

貴方あなたには生来のカリスマがある。それは国家を率いる上で必要な力。
 廃嫡はいちゃくして弟の下についても、きっと争いの種になる。
 だから、それだけは絶対にダメ」

 ――本当に考えなしなんだから!

 誰かがそばで軌道修正してあげないと、危なっかしくてみてられない。

 ステファンが感慨深げにつぶやく。

「メルフィナ……」

「あと、これも覚えておいて!
 その婚約期間中、私は王妃教育を受けなきゃいけないんだよ?!
 私にこれだけのことをさせておいて、失望させるなんて許さないからね!」

 ステファンが嬉しそうにうなずいた。

「わかった、肝に銘じる。ありがとう」


 こうして私とステファンは、婚約を結ぶ運びになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係

ayame@アンジェリカ書籍化決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________

処理中です...