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第4章 魔導学院の来訪者
第24話 期間留学生
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教壇の前に立っているのは、魔導学院の制服は着ているけど確かにケーニヒ本人だった。
その人間離れした美貌に、教室内がざわざわと騒がしくなっていく。
「ケーニヒ?! なんで君がここに居るの?!」
思わず立ち上がり叫んだ私に、ケーニヒがニヤリと微笑んで答える。
「ようメルフィナ。今日もう美しいな。
期間留学生として、しばらく世話になる」
唖然とする私からクラスメイト達に視線を移し、ケーニヒが明朗に告げる。
「ケーニヒ・ラインハルト・フォン・ヴィシュタットだ。
ヴィシュタット帝国で第一皇子なんてものをやっている。
そこのボンクラと紛らわしいだろうから、『ケーニヒ』と呼んで構わない」
彼は堂々と言い放った。
ボンクラって――まさかステファンのこと?!
手厳しいなぁ、ケーニヒ。
でも確かにどちらも『だいいちおうじ』で『殿下』だ。
名前を省略した時に大変紛らわしい。
ここはステファンの国だから、ケーニヒが譲歩したってところかな。
ふとステファンの顔を覗いてみる――うわぁ、とても面白い顔になってる。
実に形容しがたい。
睨んでいいのか、驚いていいのか、悔しいのか。
ブレンドされて味わい深い表情をしていた。
ケーニヒはそのまま、私の元へ歩いてくる――なんで?
「どうした? 何を驚いている?」
「聞いてないよ?! というか、同い年だったの?!」
「言ってなかったか? 俺は夏で十六になったばかりだ」
「君みたいな十六歳が居てたまるかーっ!」
ジャンプした私の手刀が、ケーニヒの脳天に炸裂していた。
****
ケーニヒの席は、教室の一番後ろに追加されていた。
私の席からはちょっと遠い。
……さっきの光景を見たクラスメイトたちた、ひそひそと噂話をやめない。
ご令嬢たちはチラチラとケーニヒの顔を盗み見ているようだ。
あの人間離れした美貌は、やっぱり刺激が強いよなぁ。
魔族だからかと思っていたけど、まさか人間に生まれ変わっても引き継いでくるとか……。
反則技では?
ステファンはとても機嫌悪そうにしていた。
多分、『自分のアドバンテージがなくなった』とでも思ってるんだろう。
私と長く一緒に居られるのが唯一、ケーニヒを上回るところだったしなぁ。
ケーニヒは普通に授業を受けていた――視線は私に固定されていたけど。
私を見つめながら教科書を読んで見せる技は中々に高度だと思うよ? うん。
額に第三の目でも付いてるのかな?
一見すると二十代前半のように見えるケーニヒが、学院の制服を着て授業を受ける――シュールだ。
私は背中にケーニヒの視線を感じながら、落ち着かない時間を過ごしていった。
****
授業が終わると、ほとんどのご令嬢がケーニヒを取り囲むように質問を浴びせていた。
ケーニヒは飄々と受け答えをしているようだ。
そしてリアンは案の定、私のところにやってきた。
「ねぇメルフィナ! ケーニヒ殿下とお知り合いでして?!」
私は困りながらも微笑んで答える。
「あーうん。古い友人って彼のことなんだ。
この黒い指輪をくれた人だよ」
リアンが察したように口元を手で隠していた。
「まぁ……なるほど。それでステファン殿下の機嫌が悪いのね」
さすがリアン。これだけで全ての関係を把握したらしい。
背後からバリトンの美声が響き渡る。
「失礼、道を開けてくれ」
背後の声に振り向くと、ケーニヒがご令嬢方をかき分けて私のところに歩いてきた。
……なんで私のところに?
ケーニヒは不敵な笑みを浮かべて告げる。
「どうした? 俺の顔に何か付いてるか?」
「期間留学生って、どういうことさ!」
「聞いた通りだが? 期間限定で帝国から留学してきた」
「いつまで?!」
「さぁな。決めていない」
「自分のことだろぉーっ?!」
私の切り上げるような手刀がケーニヒの顎を捕らえた。
ケーニヒは平然と私に告げる。
「なに、目的を達したら帰るさ」
私はジト目でケーニヒを睨みながら尋ねる。
「念のために聞いておくけど、その『目的』ってまさか……」
ケーニヒが不敵な笑みを浮かべて答える。
「ああ。お前を幸福にすることだ、メルフィナ。
『俺はお前だけの味方』だからな」
これを聞いていたご令嬢方の、黄色い歓声が凄まじかった。
教室が割れるかと思ったくらいだ。
私とケーニヒは、耳を押さえて声が収まるのを待っていた。
騒がしすぎて、会話どころじゃない……。
「メルフィナ?! 今の発現はどういうことでして?!」
リアン……この大歓声の中でも声が通るって凄いな。
――あ、そうか。
『私』は≪遮音≫の結界魔法を私とケーニヒの周囲に展開した。
「ふぅ。やっと静かになった……」
「ねえメルフィナってば! 説明してくださらない?!」
いつの間にか傍まで近寄ってきていたリアンが、私に迫ってくる。
彼女も興奮して暴走気味だ。
「えーと、あれはケーニヒの口癖だから、気にしないで……」
「口癖?! いつもあのように言われてらっしゃるの?!」
私は苦笑しながら頬を指で掻きつつ答える。
「あーうん。そう。いつも言われてるよ」
「ステファン殿下というものがありながら、さらに帝国のケーニヒ殿下からも?!
どちらですの?! どちらを選ばれますの?!」
もうリアンの顔が私の顔とくっつきそうな勢いだ。
私はその辺りで限界に達し、リアンの肩を掴んで『回れ右』をさせた。
「あーもう! そういうのは後で説明するよ!」
リアンの背中を結界の外に押し出していく。
リアンは私に振り返りながら「約束ですわよ?!」と言い残して席に戻っていった。
ようやく結界の中が静かになって、私は一息ついた。
外のご令嬢たちは、まだまだ興奮している。
「ふぅ……ケーニヒ?」
ジロリ、とケーニヒを振り返って睨む。
彼はいつもの飄々とした笑みで答える。
「なんだ? メルフィナ」
こんのー?! 涼しい顔しやがってー!
「あんなことを、こんな場所で口にしたら、こうなるのは分かってるだろー?!」
「それがどうした? いつもお前に言っているだろうが」
「君の美貌と美声で『あんなセリフ』を言ったら、お年頃のご令嬢には刺激が強すぎるんだよ!」
「関係ないな、興味がない。
それに、お前だって年頃の令嬢だろうに平気じゃないか」
なんにも分かってないな?!
「私は慣れてるから平気なの!
伊達に君と旅をしてないんだよ!
それに旅の最初は『私』だって大変だったんだぞ?!」
密かに苦労していた『カリナ』の記憶が蘇る。
「おや、『お前』をときめかせることができていたのか。
それは是非、その時に聞いておきたかったな。
惜しいことをした」
「反省の色が見られませんね!」
「反省などしていないからな」
本当にこいつはあああああああああ!!
興奮冷めやらぬ、割れんばかりの黄色い歓声が響き渡る教室。
その中央で私は、ひたすらケーニヒに文句を言っては手刀を叩き込み続けた。
――傍から見ていたら、さぞ滑稽に映ったことだろう。
その人間離れした美貌に、教室内がざわざわと騒がしくなっていく。
「ケーニヒ?! なんで君がここに居るの?!」
思わず立ち上がり叫んだ私に、ケーニヒがニヤリと微笑んで答える。
「ようメルフィナ。今日もう美しいな。
期間留学生として、しばらく世話になる」
唖然とする私からクラスメイト達に視線を移し、ケーニヒが明朗に告げる。
「ケーニヒ・ラインハルト・フォン・ヴィシュタットだ。
ヴィシュタット帝国で第一皇子なんてものをやっている。
そこのボンクラと紛らわしいだろうから、『ケーニヒ』と呼んで構わない」
彼は堂々と言い放った。
ボンクラって――まさかステファンのこと?!
手厳しいなぁ、ケーニヒ。
でも確かにどちらも『だいいちおうじ』で『殿下』だ。
名前を省略した時に大変紛らわしい。
ここはステファンの国だから、ケーニヒが譲歩したってところかな。
ふとステファンの顔を覗いてみる――うわぁ、とても面白い顔になってる。
実に形容しがたい。
睨んでいいのか、驚いていいのか、悔しいのか。
ブレンドされて味わい深い表情をしていた。
ケーニヒはそのまま、私の元へ歩いてくる――なんで?
「どうした? 何を驚いている?」
「聞いてないよ?! というか、同い年だったの?!」
「言ってなかったか? 俺は夏で十六になったばかりだ」
「君みたいな十六歳が居てたまるかーっ!」
ジャンプした私の手刀が、ケーニヒの脳天に炸裂していた。
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ケーニヒの席は、教室の一番後ろに追加されていた。
私の席からはちょっと遠い。
……さっきの光景を見たクラスメイトたちた、ひそひそと噂話をやめない。
ご令嬢たちはチラチラとケーニヒの顔を盗み見ているようだ。
あの人間離れした美貌は、やっぱり刺激が強いよなぁ。
魔族だからかと思っていたけど、まさか人間に生まれ変わっても引き継いでくるとか……。
反則技では?
ステファンはとても機嫌悪そうにしていた。
多分、『自分のアドバンテージがなくなった』とでも思ってるんだろう。
私と長く一緒に居られるのが唯一、ケーニヒを上回るところだったしなぁ。
ケーニヒは普通に授業を受けていた――視線は私に固定されていたけど。
私を見つめながら教科書を読んで見せる技は中々に高度だと思うよ? うん。
額に第三の目でも付いてるのかな?
一見すると二十代前半のように見えるケーニヒが、学院の制服を着て授業を受ける――シュールだ。
私は背中にケーニヒの視線を感じながら、落ち着かない時間を過ごしていった。
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授業が終わると、ほとんどのご令嬢がケーニヒを取り囲むように質問を浴びせていた。
ケーニヒは飄々と受け答えをしているようだ。
そしてリアンは案の定、私のところにやってきた。
「ねぇメルフィナ! ケーニヒ殿下とお知り合いでして?!」
私は困りながらも微笑んで答える。
「あーうん。古い友人って彼のことなんだ。
この黒い指輪をくれた人だよ」
リアンが察したように口元を手で隠していた。
「まぁ……なるほど。それでステファン殿下の機嫌が悪いのね」
さすがリアン。これだけで全ての関係を把握したらしい。
背後からバリトンの美声が響き渡る。
「失礼、道を開けてくれ」
背後の声に振り向くと、ケーニヒがご令嬢方をかき分けて私のところに歩いてきた。
……なんで私のところに?
ケーニヒは不敵な笑みを浮かべて告げる。
「どうした? 俺の顔に何か付いてるか?」
「期間留学生って、どういうことさ!」
「聞いた通りだが? 期間限定で帝国から留学してきた」
「いつまで?!」
「さぁな。決めていない」
「自分のことだろぉーっ?!」
私の切り上げるような手刀がケーニヒの顎を捕らえた。
ケーニヒは平然と私に告げる。
「なに、目的を達したら帰るさ」
私はジト目でケーニヒを睨みながら尋ねる。
「念のために聞いておくけど、その『目的』ってまさか……」
ケーニヒが不敵な笑みを浮かべて答える。
「ああ。お前を幸福にすることだ、メルフィナ。
『俺はお前だけの味方』だからな」
これを聞いていたご令嬢方の、黄色い歓声が凄まじかった。
教室が割れるかと思ったくらいだ。
私とケーニヒは、耳を押さえて声が収まるのを待っていた。
騒がしすぎて、会話どころじゃない……。
「メルフィナ?! 今の発現はどういうことでして?!」
リアン……この大歓声の中でも声が通るって凄いな。
――あ、そうか。
『私』は≪遮音≫の結界魔法を私とケーニヒの周囲に展開した。
「ふぅ。やっと静かになった……」
「ねえメルフィナってば! 説明してくださらない?!」
いつの間にか傍まで近寄ってきていたリアンが、私に迫ってくる。
彼女も興奮して暴走気味だ。
「えーと、あれはケーニヒの口癖だから、気にしないで……」
「口癖?! いつもあのように言われてらっしゃるの?!」
私は苦笑しながら頬を指で掻きつつ答える。
「あーうん。そう。いつも言われてるよ」
「ステファン殿下というものがありながら、さらに帝国のケーニヒ殿下からも?!
どちらですの?! どちらを選ばれますの?!」
もうリアンの顔が私の顔とくっつきそうな勢いだ。
私はその辺りで限界に達し、リアンの肩を掴んで『回れ右』をさせた。
「あーもう! そういうのは後で説明するよ!」
リアンの背中を結界の外に押し出していく。
リアンは私に振り返りながら「約束ですわよ?!」と言い残して席に戻っていった。
ようやく結界の中が静かになって、私は一息ついた。
外のご令嬢たちは、まだまだ興奮している。
「ふぅ……ケーニヒ?」
ジロリ、とケーニヒを振り返って睨む。
彼はいつもの飄々とした笑みで答える。
「なんだ? メルフィナ」
こんのー?! 涼しい顔しやがってー!
「あんなことを、こんな場所で口にしたら、こうなるのは分かってるだろー?!」
「それがどうした? いつもお前に言っているだろうが」
「君の美貌と美声で『あんなセリフ』を言ったら、お年頃のご令嬢には刺激が強すぎるんだよ!」
「関係ないな、興味がない。
それに、お前だって年頃の令嬢だろうに平気じゃないか」
なんにも分かってないな?!
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「おや、『お前』をときめかせることができていたのか。
それは是非、その時に聞いておきたかったな。
惜しいことをした」
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