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169.閑話~蒼玉の兄(6)~
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音は外に漏れず、夜の部屋に年頃の男女が二人きり。
窓は先ほど施錠していたし、おそらくドアも施錠されている。
そして目の前には魅惑的な肢体をさらした下着同然の美少女が、無防備にサイモンに微笑んでいた。
サイモンは理性を総動員して自分を律するのがやっとだった。
今にも決壊しそうな自制心で、襲い掛かりたい衝動を必死に抑え込んでいた。
生理現象が収まる気配は、感じられなかった。
サンドラがとても楽しそうに目を細める。
「ほんと、サイモンがこんなに可愛らしい男性だったなんて、今まで気が付かなかったわ。
そうやって我慢している姿に、愛しさすら感じてるわよ?」
――やっぱりこいつ、嗜虐嗜好者確定だ!
サイモンは魅入られたように、サンドラの瞳から目を離せなくなっていた。
そうして目を見つめて居ても、その顔が美しいことを思い知らされるだけだ。
意識を視界の隅に逃がそうとしても、魅惑的な肢体に意識が吸い寄せられていく。
十五歳の青年に、逃げ場などなかった。
窓から逃げるには、サンドラの目の前を通り過ぎなければならない。
彼女の魅惑の眼差しに囚われたまま、男の生理現象を起こしたまま、距離を詰めなければ逃げられないのだ。
それは限界に達しようとしている自制心を、簡単に決壊させてしまうだろう。
だがこのまま距離を維持していても、いずれ自制心が限界を迎える。
もうサイモンには『手を出して醜聞を受け入れる』か、『彼女に屈服して屈辱を受け入れる』かの二択しか残されて居なかった。
いずれにせよ、彼女との婚約は確定される――チェックメイトである。
それでも必死に逃れる道を、サイモンは探し続けた。
秒針が、どれほどの時を刻んだろうか。
「……わかった。お前との婚約を申し込むように、母上に願い出る。
だから頼む。後ろを向いていてくれ」
『せめて醜聞だけは避けたい』――それが、サイモンの出した答えだった。
その双眸の呪縛から逃れることさえできれば、なんとか彼女のそばを通り過ぎて、この場から逃げられるだろう。
サンドラが満足げに微笑んだ。
「そうして頂戴?
あなたなら、すべてにおいて不足はないもの。
それにこのくらい楽しめる人の方が、私も幸せになれると思うの。
――これからもよろしくね? 愛しいサイモン」
椅子から立ち上がったサンドラが、壁とむきあった。
そこに、最後の罠が待ち構えていた。
さらされる無防備な背中、華奢な肩、細いうなじ。
サイモンを『その背中に抱き着いてしまいたい』という激しい衝動が襲った。
それに必死に耐え、サイモンはサンドラの背後を足早に通り抜けた。
慌てて窓を開け、飛び出るように外に抜け出した。
しばらくサイモンは窓の下で、生還できたことに心から安堵していた。
****
一週間後、サイモンとサンドラの婚約が発表された。
それを知らされたマリオンが、驚いて二人に語りかける。
「サニーとサイ兄様が婚約するだなんて、どういうことなの?」
そんな素振りを今まで見せたことはなかった。
突然の婚約を聞かされたマリオンは、ただ困惑するのみだ。
尋ねられたサイモンも、答えに窮した。
まさか『罠にはめられた』などとは、兄の尊厳を賭けても言えなかった。
サンドラはマリオンを抱きしめながら、楽しそうに微笑んでいる。
「サイモンが私を魅力的な異性として認めた。
私もサイモンを魅力的な異性として認めた。
二人が合意して婚約した――とてもシンプルでしょう?」
マリオンは小首をかしげていた。
「そうなの? でもこれでサニーは、私の義姉になるのかしら?」
――サンドラの奴、まさか本当の狙いは、『そっち』じゃないのか?!
今さらである。
婚約は既に締結された。
サンドラは妻として、不足がある相手ではない。
サイモンが妹以外で、初めて価値を見出せた唯一の女性だ。
結局のところ、惚れた女に男として認められ、婚姻するのだ。
サイモンも、それ自体に不満はなかった。
サンドラの満足した声が、マリオンに応える。
「そう、私がマリーの将来の義姉よ。
家系図的に、あなたの隣に私が並ぶの。
あなたの隣が私の居場所。
これからずっと、未来永劫ね?」
窓は先ほど施錠していたし、おそらくドアも施錠されている。
そして目の前には魅惑的な肢体をさらした下着同然の美少女が、無防備にサイモンに微笑んでいた。
サイモンは理性を総動員して自分を律するのがやっとだった。
今にも決壊しそうな自制心で、襲い掛かりたい衝動を必死に抑え込んでいた。
生理現象が収まる気配は、感じられなかった。
サンドラがとても楽しそうに目を細める。
「ほんと、サイモンがこんなに可愛らしい男性だったなんて、今まで気が付かなかったわ。
そうやって我慢している姿に、愛しさすら感じてるわよ?」
――やっぱりこいつ、嗜虐嗜好者確定だ!
サイモンは魅入られたように、サンドラの瞳から目を離せなくなっていた。
そうして目を見つめて居ても、その顔が美しいことを思い知らされるだけだ。
意識を視界の隅に逃がそうとしても、魅惑的な肢体に意識が吸い寄せられていく。
十五歳の青年に、逃げ場などなかった。
窓から逃げるには、サンドラの目の前を通り過ぎなければならない。
彼女の魅惑の眼差しに囚われたまま、男の生理現象を起こしたまま、距離を詰めなければ逃げられないのだ。
それは限界に達しようとしている自制心を、簡単に決壊させてしまうだろう。
だがこのまま距離を維持していても、いずれ自制心が限界を迎える。
もうサイモンには『手を出して醜聞を受け入れる』か、『彼女に屈服して屈辱を受け入れる』かの二択しか残されて居なかった。
いずれにせよ、彼女との婚約は確定される――チェックメイトである。
それでも必死に逃れる道を、サイモンは探し続けた。
秒針が、どれほどの時を刻んだろうか。
「……わかった。お前との婚約を申し込むように、母上に願い出る。
だから頼む。後ろを向いていてくれ」
『せめて醜聞だけは避けたい』――それが、サイモンの出した答えだった。
その双眸の呪縛から逃れることさえできれば、なんとか彼女のそばを通り過ぎて、この場から逃げられるだろう。
サンドラが満足げに微笑んだ。
「そうして頂戴?
あなたなら、すべてにおいて不足はないもの。
それにこのくらい楽しめる人の方が、私も幸せになれると思うの。
――これからもよろしくね? 愛しいサイモン」
椅子から立ち上がったサンドラが、壁とむきあった。
そこに、最後の罠が待ち構えていた。
さらされる無防備な背中、華奢な肩、細いうなじ。
サイモンを『その背中に抱き着いてしまいたい』という激しい衝動が襲った。
それに必死に耐え、サイモンはサンドラの背後を足早に通り抜けた。
慌てて窓を開け、飛び出るように外に抜け出した。
しばらくサイモンは窓の下で、生還できたことに心から安堵していた。
****
一週間後、サイモンとサンドラの婚約が発表された。
それを知らされたマリオンが、驚いて二人に語りかける。
「サニーとサイ兄様が婚約するだなんて、どういうことなの?」
そんな素振りを今まで見せたことはなかった。
突然の婚約を聞かされたマリオンは、ただ困惑するのみだ。
尋ねられたサイモンも、答えに窮した。
まさか『罠にはめられた』などとは、兄の尊厳を賭けても言えなかった。
サンドラはマリオンを抱きしめながら、楽しそうに微笑んでいる。
「サイモンが私を魅力的な異性として認めた。
私もサイモンを魅力的な異性として認めた。
二人が合意して婚約した――とてもシンプルでしょう?」
マリオンは小首をかしげていた。
「そうなの? でもこれでサニーは、私の義姉になるのかしら?」
――サンドラの奴、まさか本当の狙いは、『そっち』じゃないのか?!
今さらである。
婚約は既に締結された。
サンドラは妻として、不足がある相手ではない。
サイモンが妹以外で、初めて価値を見出せた唯一の女性だ。
結局のところ、惚れた女に男として認められ、婚姻するのだ。
サイモンも、それ自体に不満はなかった。
サンドラの満足した声が、マリオンに応える。
「そう、私がマリーの将来の義姉よ。
家系図的に、あなたの隣に私が並ぶの。
あなたの隣が私の居場所。
これからずっと、未来永劫ね?」
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