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第2章:星の少年と炎の少女
第25話 世界の裏
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テスティアの言葉を聞き、ノヴァが不機嫌なオーラを隠さず告げる。
『……神が人間を管理する社会、か。
なぜだろうな。それを聞いて俺のはらわたが煮えくり返る思いだ。
記憶がないというのに、不思議なものだ。
テスティアルトゲイル、貴様に心当たりはあるか』
テスティアが畏まりながら答える。
『ノヴァ様は“神が人間を管理する社会”を嫌っておいででした。
かつて物質界では古き神々が人間を管理する社会を運営していたのです。
ですがそれを破壊する為、最高神である父君を滅ぼし、古き神々と敵対しました。
そして古き神々を天界に封印し、また天界そのものを世界から隔離しました。
その後、新しく“人間が人間を管理する社会”をこの物質界に作られたのです。
――そのようにノヴァ様から伺っております』
ノヴァが思案した後、テスティアに告げる。
『……しっくりくる。なるほどな。
俺は“神が人間を管理する社会”に反吐が出ている、ということか。
――では聞こう。それを知っていて、俺の右腕を名乗るお前がなぜ、俺が唾棄する社会を作り上げた?』
テスティアが身を縮めながら答える。
『はっ! 二千五百年前、人間は発達した魔導技術を用いた戦争を起こしました。
それがきっかけで大陸から文明が消失し、人類が死滅しかけるほどの事態に陥ったのです。
我々新しき神々は、わずかに残った人類を保護し、導くことで死滅から救いました。
そして長い年月をかけ、文明を復興させたのです。
我々は“人類は高位の存在に管理されなければ自滅する生物”だと結論付けました。
以来、恐れながら私がノヴァ様の代理となり、人間を導いてまいりました。
それが現在の大陸にある文明と人類の姿です』
テスティアが縋るような目でノヴァを見上げた。
『逆にお伺いします。
なぜノヴァ様はあの二千五百年前の戦争を見過ごし、人類が死滅しかかることをお許しになったのですか。
なぜ、あの時に我々にお言葉を頂けなかったのでしょうか』
ノヴァが険悪な表情で答える。
『二千五百年前、か。
ならば俺はこの体に魂を降ろすことを許可し、意識のない頃だな。
アイリーンの父親がこの体に俺の魂を封じた後、間もなく人類は大規模な戦争を起こしたか。
間の悪い話だ』
ノヴァが小さく息をついて言葉を続ける。
『俺は長い年月、リストリットに起こされるまで、自力で目覚めることができなかった。
お前たちに指示を出せなかったのは、そのせいだ。
――だがテスティアルトゲイルよ、人類はそう簡単に死滅することはない。しぶとい生物だ。
仮に死滅するとしても、そのエイドの知的生命体だった――それだけの話だ。
“神が人間を管理する社会”などという下らぬ世界を許す理由にはならん。
俺の右腕で会ったなら、それくらい理解していたはずだ。違うか?』
テスティアがさらに身を縮めながら答える。
『それは重々承知しておりました。
ですが新しき神々でも様々に意見が割れ、私も迷いました。
“ノヴァ様が不在の間に人類を死滅させるわけにはいかない”と、そう合意が取れたのです。
その為には、“神々が人類を管理する社会”以外に方法を思いつかなかったのです。
人類は放置すれば自滅する生命体――それが私たちの結論でした。
古き神々は正しかったのです。
ノヴァ様、どうかお考え直しください』
ノヴァが怒気を孕んだ声で鋭く叫ぶ。
『――くどい! 同じことを言わせるな!
俺は“古き神々の管理する社会”に唾棄し、破壊したのだ!
高位の存在に管理されている間は、人間がより高みに上ることなどできん!
停滞する知的生命体に価値などない!
進化してこそ意味があるのだ!
自滅する可能性など、当然理解している!
それでもなお、自力でそれを乗り越えると信じ、人間の進化を見守る――それが新しき神々の世界だ!
見守り切れずに管理に手を出すなど、我が配下の資格を持たぬと心得よ!
我が右腕、“白き輝き”テスティアルトゲイル! 貴様に我が配下の資格はない!
俺の力が万全なら、今この場で俺の権能に戻しているところだ!』
テスティアはノヴァの言葉に怯え、青褪めた顔で身を縮ませ震えている。
その様子を見かねたアイリーンが、激高するノヴァの肩に触れて告げる。
『ノヴァ、記憶が少し戻ったの? それにちょっと落ち着いて?
貴方が居なかったのだもの、その間に人間を死滅させたくないという使命感が勝ったのよ。
間が悪かったの。その時に貴方が傍に居れば、問題はなかったはず。
間接的に、今の“神が人間を管理する社会”を作り上げてしまった責任は私にあるわ。
私を蘇らせ、孤独にさせない為に貴方がその体に封じられることになっていまった。
そのせいで新しき神々が迷ってしまった。
ここは私に免じて、テスティアさんを許してあげて? お願いよ。
テスティアさんがさっきからとても怯えていて、見ていられないわ』
ノヴァの目が、懇願するアイリーンに向けられた。
アイリーンは悲しい瞳でまっすぐノヴァを見つめている。
その瞳を見て、ノヴァが怒気を収めた。
『お前を悲しませるつもりはなかった。すまない。
いいだろう。アイリーンに免じて新しき神々の罪を不問とする。
テスティアルトゲイルよ、お前は引き続き、我が配下として在るが良い。
貴様らはアイリーンに感謝しろ。
――ブルームスベイルゲイルはどうした? お前たちは二柱で一つの存在。
ならばテスティアルトゲイルの傍には奴が居るのではないのか?』
リストリットが暢気な声で告げる。
「なぁノヴァ、誰なんだ? その、ブルームなんちゃらってのは。初めて聞く名前だ」
ノヴァが機嫌を直したように答える。
『“黒き閃光”ブルームスベイルゲイル。もう一柱の、我が右腕だ。
テスティアルトゲイルもブルームスベイルゲイルも、元は俺の権能――つまり能力だった。
それを俺から分離し、人格を与えた存在がこいつらだ。
俺に対する全ての害意を防ぐテスティアルトゲイル。
俺の敵を全て滅ぼすブルームスベイルゲイル。
こいつらが居なければ、俺の力など半減もいいところだ』
テスティアが顔を上げ、ノヴァを見上げた――その表情は喜びに満ち溢れている。
『ノヴァ様! やはり、お記憶が戻られたのですか?!』
ノヴァは首を横に振って答える。
『いや、まだ全てではない。今、思い出せたのはわずかなことだ。
ゆえに、今使える力は変わらず大したことはない。
俺の記憶と力の大半は星幽界に残してきている。
この体に収まりきらんからな。
人格の全てはなんとかこの体に収めたが、それでほとんど許容量を使い切った。
未だ俺よりも、テスティアルトゲイルの力が強い情況は変わらん』
テスティアが頭を下げながら告げる。
『やはり、やはりノヴァ様ご本人なのですね!
それが分かっただけでも充分です。
私は貴方様の忠実なる配下。力の差が逆転しようと、私はノヴァ様にお仕え続けます。
なんなりとご命令ください』
ノヴァが胡乱気にテスティアを見下ろした。
『ならば今の“神が人間を管理する社会”を即刻廃止せよ』
『……神が人間を管理する社会、か。
なぜだろうな。それを聞いて俺のはらわたが煮えくり返る思いだ。
記憶がないというのに、不思議なものだ。
テスティアルトゲイル、貴様に心当たりはあるか』
テスティアが畏まりながら答える。
『ノヴァ様は“神が人間を管理する社会”を嫌っておいででした。
かつて物質界では古き神々が人間を管理する社会を運営していたのです。
ですがそれを破壊する為、最高神である父君を滅ぼし、古き神々と敵対しました。
そして古き神々を天界に封印し、また天界そのものを世界から隔離しました。
その後、新しく“人間が人間を管理する社会”をこの物質界に作られたのです。
――そのようにノヴァ様から伺っております』
ノヴァが思案した後、テスティアに告げる。
『……しっくりくる。なるほどな。
俺は“神が人間を管理する社会”に反吐が出ている、ということか。
――では聞こう。それを知っていて、俺の右腕を名乗るお前がなぜ、俺が唾棄する社会を作り上げた?』
テスティアが身を縮めながら答える。
『はっ! 二千五百年前、人間は発達した魔導技術を用いた戦争を起こしました。
それがきっかけで大陸から文明が消失し、人類が死滅しかけるほどの事態に陥ったのです。
我々新しき神々は、わずかに残った人類を保護し、導くことで死滅から救いました。
そして長い年月をかけ、文明を復興させたのです。
我々は“人類は高位の存在に管理されなければ自滅する生物”だと結論付けました。
以来、恐れながら私がノヴァ様の代理となり、人間を導いてまいりました。
それが現在の大陸にある文明と人類の姿です』
テスティアが縋るような目でノヴァを見上げた。
『逆にお伺いします。
なぜノヴァ様はあの二千五百年前の戦争を見過ごし、人類が死滅しかかることをお許しになったのですか。
なぜ、あの時に我々にお言葉を頂けなかったのでしょうか』
ノヴァが険悪な表情で答える。
『二千五百年前、か。
ならば俺はこの体に魂を降ろすことを許可し、意識のない頃だな。
アイリーンの父親がこの体に俺の魂を封じた後、間もなく人類は大規模な戦争を起こしたか。
間の悪い話だ』
ノヴァが小さく息をついて言葉を続ける。
『俺は長い年月、リストリットに起こされるまで、自力で目覚めることができなかった。
お前たちに指示を出せなかったのは、そのせいだ。
――だがテスティアルトゲイルよ、人類はそう簡単に死滅することはない。しぶとい生物だ。
仮に死滅するとしても、そのエイドの知的生命体だった――それだけの話だ。
“神が人間を管理する社会”などという下らぬ世界を許す理由にはならん。
俺の右腕で会ったなら、それくらい理解していたはずだ。違うか?』
テスティアがさらに身を縮めながら答える。
『それは重々承知しておりました。
ですが新しき神々でも様々に意見が割れ、私も迷いました。
“ノヴァ様が不在の間に人類を死滅させるわけにはいかない”と、そう合意が取れたのです。
その為には、“神々が人類を管理する社会”以外に方法を思いつかなかったのです。
人類は放置すれば自滅する生命体――それが私たちの結論でした。
古き神々は正しかったのです。
ノヴァ様、どうかお考え直しください』
ノヴァが怒気を孕んだ声で鋭く叫ぶ。
『――くどい! 同じことを言わせるな!
俺は“古き神々の管理する社会”に唾棄し、破壊したのだ!
高位の存在に管理されている間は、人間がより高みに上ることなどできん!
停滞する知的生命体に価値などない!
進化してこそ意味があるのだ!
自滅する可能性など、当然理解している!
それでもなお、自力でそれを乗り越えると信じ、人間の進化を見守る――それが新しき神々の世界だ!
見守り切れずに管理に手を出すなど、我が配下の資格を持たぬと心得よ!
我が右腕、“白き輝き”テスティアルトゲイル! 貴様に我が配下の資格はない!
俺の力が万全なら、今この場で俺の権能に戻しているところだ!』
テスティアはノヴァの言葉に怯え、青褪めた顔で身を縮ませ震えている。
その様子を見かねたアイリーンが、激高するノヴァの肩に触れて告げる。
『ノヴァ、記憶が少し戻ったの? それにちょっと落ち着いて?
貴方が居なかったのだもの、その間に人間を死滅させたくないという使命感が勝ったのよ。
間が悪かったの。その時に貴方が傍に居れば、問題はなかったはず。
間接的に、今の“神が人間を管理する社会”を作り上げてしまった責任は私にあるわ。
私を蘇らせ、孤独にさせない為に貴方がその体に封じられることになっていまった。
そのせいで新しき神々が迷ってしまった。
ここは私に免じて、テスティアさんを許してあげて? お願いよ。
テスティアさんがさっきからとても怯えていて、見ていられないわ』
ノヴァの目が、懇願するアイリーンに向けられた。
アイリーンは悲しい瞳でまっすぐノヴァを見つめている。
その瞳を見て、ノヴァが怒気を収めた。
『お前を悲しませるつもりはなかった。すまない。
いいだろう。アイリーンに免じて新しき神々の罪を不問とする。
テスティアルトゲイルよ、お前は引き続き、我が配下として在るが良い。
貴様らはアイリーンに感謝しろ。
――ブルームスベイルゲイルはどうした? お前たちは二柱で一つの存在。
ならばテスティアルトゲイルの傍には奴が居るのではないのか?』
リストリットが暢気な声で告げる。
「なぁノヴァ、誰なんだ? その、ブルームなんちゃらってのは。初めて聞く名前だ」
ノヴァが機嫌を直したように答える。
『“黒き閃光”ブルームスベイルゲイル。もう一柱の、我が右腕だ。
テスティアルトゲイルもブルームスベイルゲイルも、元は俺の権能――つまり能力だった。
それを俺から分離し、人格を与えた存在がこいつらだ。
俺に対する全ての害意を防ぐテスティアルトゲイル。
俺の敵を全て滅ぼすブルームスベイルゲイル。
こいつらが居なければ、俺の力など半減もいいところだ』
テスティアが顔を上げ、ノヴァを見上げた――その表情は喜びに満ち溢れている。
『ノヴァ様! やはり、お記憶が戻られたのですか?!』
ノヴァは首を横に振って答える。
『いや、まだ全てではない。今、思い出せたのはわずかなことだ。
ゆえに、今使える力は変わらず大したことはない。
俺の記憶と力の大半は星幽界に残してきている。
この体に収まりきらんからな。
人格の全てはなんとかこの体に収めたが、それでほとんど許容量を使い切った。
未だ俺よりも、テスティアルトゲイルの力が強い情況は変わらん』
テスティアが頭を下げながら告げる。
『やはり、やはりノヴァ様ご本人なのですね!
それが分かっただけでも充分です。
私は貴方様の忠実なる配下。力の差が逆転しようと、私はノヴァ様にお仕え続けます。
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