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第四章
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ほぼ毎夜ごとにライアンは、エレナの元に通い、夜明けごろに帰っていっていた。
そして…社交シーズンが始まる少し前のこと。
その日もライアンはエレナとベッドで睦みあい、ぐったりと眠っていた。
眠りに落ちていた耳に、戸惑うような声と怒ってるような声が聴こえそれはだんだんと二人のいる部屋へ近づいてきた。それに気づいたライアンもエレナも飛び起きた。
「お待ち下さいませ、レディ!そちらは…!」
執事のジェフリーの切羽詰まった声。
エレナの自室が開き、そして寝室の扉が開かれた…!
ライアンはシーツをエレナに被せて、下肢のみズボンを慌てて履いたところだった。
「やっと決定的な証拠を掴んだわよライアン」
かつては美しかったであろう、妙齢のレディ…
「エリザベス…」
ライアンはエレナを後ろに庇い、エリザベスから隠した。
エレナはシーツを握りしめながら、ただ震えていた。
ついに、恐れていた瞬間がきた…と思った。
コツコツとベッドによると、エレナの金の、今は染め直しておらず金色に戻っていた。その長い金髪を掴むと、エレナの顔を確認するかのように覗きこんだ。
「やめるんだエリザベス」
ライアンがエリザベスの手を掴み、エレナから手を離させた。
「触らないで、汚らわしい…!」
エリザベスはライアンを睨み付けた。そして掴まれたライアンの手を振り払った。
「綺麗な女ね…不細工な女が相手じゃなくて安心したわ」
エリザベスは言った。
「とりあえず部屋を出てくれないか、そこで話そう…」
ライアンがエリザベスを押し出そうと手を伸ばした。
「だから触らないでと言っているでしょう?」
伸ばした手を音をたてて払いのける。
「これだけしっかりと、証拠を掴まれたのだから、きっちりと離婚に応じてくれるのでしょうね?ライアン」
「…なんだって?…」
「この状況をみれば誰だって何をしていたか明らかよ。わたくしの望む条件をのんで離婚してちょうだい」
エリザベスの言葉に、ライアンは再び繰り返した。
「話に応じるから、部屋の外へ」
エリザベスはようやく寝室から出ていった。
ライアンは、待っているように言うと、シャツを羽織りエリザベスを追った。
寝室に残されたエレナは震える手で、ベッドから降りて寝室に置いてあった、室内用のドレスを身に付けた。髪の毛を簡単に纏めて、鏡を見ると薄暗い室内でも強ばり青ざめた顔が見えた。
「こんな慌てた貴方の姿を見ることが出来るなんて、わざわざ乗り込んだ甲斐があったというものね」
エリザベスの嘲笑うかのような声がした。
「エリザベス、つまり君は私との離婚を望むと…?」
ライアンが冷静な声で問いかける。
「こんな時でも冷静なのね貴方は」
エリザベスは再び嗤った
「ずっと我慢していたわ。貴方みたいな男と20年以上も…待っていたのよ、貴方が失態をおかすこの瞬間を…これまで、証拠を掴ませなかったのに、気が緩んだの?同じ女と何度も逢瀬を重ねるなんてね、らしくないじゃないの?」
エリザベスはずっと待っていたと言うのだろうか…。
「ずっと拒否していたのに、離婚を言い出さないのだもの」
ライアンはエリザベスを冷淡な目で見ると、
「そちらの条件を言ってくれないか?」
事務的に尋ねる。
「わたくしの望みは、ヨーク・ブリッジの邸よ。それで別れてあげるの。いい条件でしょう?」
エリザベスは微笑みつつ言った。
ヨーク・ブリッジはエリザベスの実家だった。今は男系の血族が絶えてヨーク・ブリッジ伯爵家はエリザベスの祖父が亡くなると断絶されていた。タウンハウスと、領地の事だろう。とライアンは解釈をした。
「…準備をしよう…だが、エリザベス。頼むから、もうしばらくは妻を演じてくれ…子供たちに説明をするまでは…」
ライアンがエリザベスに言う。
「…面倒だけど…いいわ。貴方と別れられるんだから、少し位は我慢してあげる」
エリザベスは機嫌よく立ち上がった。
「忘れないでね、悪いのは貴方の方なのだから!」
心配になり扉から顔を覗かせていたエレナを見つめると、
「大人しやかな顔をして、人の夫をたぶらかしたの?でもわたくしはあえてお礼を言いたいくらいだわ」
クスクスと笑いながら、立ち去っていった。
震えながら立ち尽くすエレナをライアンが素早く抱き締めた。
「すまなかった…」
エレナは首を横に振った。
「結果的には…こちらが望む展開だ…。エリザベスはあくまで浮気だとこちらに離婚の意思はないと思っていたようだが、私も離婚は望む所だ。あとはすべて解決させてくるから、今日はゆっくり休むんだ…」
額にキスを贈ると、ライアンは、身支度を整えて帰っていった。
恐れていた出来事がやって来た…。
しかし、エリザベスが離婚を望んでいたなんて思いもよらなかった。
そして…社交シーズンが始まる少し前のこと。
その日もライアンはエレナとベッドで睦みあい、ぐったりと眠っていた。
眠りに落ちていた耳に、戸惑うような声と怒ってるような声が聴こえそれはだんだんと二人のいる部屋へ近づいてきた。それに気づいたライアンもエレナも飛び起きた。
「お待ち下さいませ、レディ!そちらは…!」
執事のジェフリーの切羽詰まった声。
エレナの自室が開き、そして寝室の扉が開かれた…!
ライアンはシーツをエレナに被せて、下肢のみズボンを慌てて履いたところだった。
「やっと決定的な証拠を掴んだわよライアン」
かつては美しかったであろう、妙齢のレディ…
「エリザベス…」
ライアンはエレナを後ろに庇い、エリザベスから隠した。
エレナはシーツを握りしめながら、ただ震えていた。
ついに、恐れていた瞬間がきた…と思った。
コツコツとベッドによると、エレナの金の、今は染め直しておらず金色に戻っていた。その長い金髪を掴むと、エレナの顔を確認するかのように覗きこんだ。
「やめるんだエリザベス」
ライアンがエリザベスの手を掴み、エレナから手を離させた。
「触らないで、汚らわしい…!」
エリザベスはライアンを睨み付けた。そして掴まれたライアンの手を振り払った。
「綺麗な女ね…不細工な女が相手じゃなくて安心したわ」
エリザベスは言った。
「とりあえず部屋を出てくれないか、そこで話そう…」
ライアンがエリザベスを押し出そうと手を伸ばした。
「だから触らないでと言っているでしょう?」
伸ばした手を音をたてて払いのける。
「これだけしっかりと、証拠を掴まれたのだから、きっちりと離婚に応じてくれるのでしょうね?ライアン」
「…なんだって?…」
「この状況をみれば誰だって何をしていたか明らかよ。わたくしの望む条件をのんで離婚してちょうだい」
エリザベスの言葉に、ライアンは再び繰り返した。
「話に応じるから、部屋の外へ」
エリザベスはようやく寝室から出ていった。
ライアンは、待っているように言うと、シャツを羽織りエリザベスを追った。
寝室に残されたエレナは震える手で、ベッドから降りて寝室に置いてあった、室内用のドレスを身に付けた。髪の毛を簡単に纏めて、鏡を見ると薄暗い室内でも強ばり青ざめた顔が見えた。
「こんな慌てた貴方の姿を見ることが出来るなんて、わざわざ乗り込んだ甲斐があったというものね」
エリザベスの嘲笑うかのような声がした。
「エリザベス、つまり君は私との離婚を望むと…?」
ライアンが冷静な声で問いかける。
「こんな時でも冷静なのね貴方は」
エリザベスは再び嗤った
「ずっと我慢していたわ。貴方みたいな男と20年以上も…待っていたのよ、貴方が失態をおかすこの瞬間を…これまで、証拠を掴ませなかったのに、気が緩んだの?同じ女と何度も逢瀬を重ねるなんてね、らしくないじゃないの?」
エリザベスはずっと待っていたと言うのだろうか…。
「ずっと拒否していたのに、離婚を言い出さないのだもの」
ライアンはエリザベスを冷淡な目で見ると、
「そちらの条件を言ってくれないか?」
事務的に尋ねる。
「わたくしの望みは、ヨーク・ブリッジの邸よ。それで別れてあげるの。いい条件でしょう?」
エリザベスは微笑みつつ言った。
ヨーク・ブリッジはエリザベスの実家だった。今は男系の血族が絶えてヨーク・ブリッジ伯爵家はエリザベスの祖父が亡くなると断絶されていた。タウンハウスと、領地の事だろう。とライアンは解釈をした。
「…準備をしよう…だが、エリザベス。頼むから、もうしばらくは妻を演じてくれ…子供たちに説明をするまでは…」
ライアンがエリザベスに言う。
「…面倒だけど…いいわ。貴方と別れられるんだから、少し位は我慢してあげる」
エリザベスは機嫌よく立ち上がった。
「忘れないでね、悪いのは貴方の方なのだから!」
心配になり扉から顔を覗かせていたエレナを見つめると、
「大人しやかな顔をして、人の夫をたぶらかしたの?でもわたくしはあえてお礼を言いたいくらいだわ」
クスクスと笑いながら、立ち去っていった。
震えながら立ち尽くすエレナをライアンが素早く抱き締めた。
「すまなかった…」
エレナは首を横に振った。
「結果的には…こちらが望む展開だ…。エリザベスはあくまで浮気だとこちらに離婚の意思はないと思っていたようだが、私も離婚は望む所だ。あとはすべて解決させてくるから、今日はゆっくり休むんだ…」
額にキスを贈ると、ライアンは、身支度を整えて帰っていった。
恐れていた出来事がやって来た…。
しかし、エリザベスが離婚を望んでいたなんて思いもよらなかった。
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