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姉の役割
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数日後にアークウェイン邸の応接室で、レオノーラはリリアナを迎えた。
「レオノーラ、久しぶりだわ」
穏やかな笑みを浮かべるリリアナに、レオノーラも微笑みを返す。
「そうですね、ルシアンナの様子はどうです?」
「ええ、レオノーラのお陰であのこも見違えるように落ち着いたわ。…お父様から…あの子の身の上に遭ったことを聞いて本当に胸がつぶれそうな気持ちになったけれど…。アルバートがルシアンナを受け止めてくれて本当に良かったと思っているの」
そう語るリリアナをレオノーラは黙って見つめた。
「キースもお父様に協力してくれたと…お礼を言っていたと伝えてくれるかしら?」
「ええ、お母様」
レオノーラは微笑んだ。
「幸い…あの事は漏れずに済んだようだし…こうなっては、下手な噂にならないうちに婚約と結婚を…という話になったの」
「出来るならその方がいいでしょうね」
レオノーラはそっと同意した。
時を置いて、どこからかそんな話が漏れないとも限らない。もちろんアルマンは徹底的に後処理をしたであろうが、人とはどこでどう繋がっているかすべてを完璧に処理できるかはわかったものではない。
「ブルーメンタール伯爵家の舞踏会で正式な発表をするわ。貴女ももちろん来てくれるでしょう?」
にっこりとリリアナは微笑んだ。
「もちろん。大事な妹の婚約ですから」
レオノーラも微笑みを返した。
ルシアンナの婚約は喜ばしい事だが、つくづくあんな事がなく、整っていれば心の底から喜べたであろうに…。レオノーラはその事を辛く思った。
「お母様…ルシアンナは…幸せになれると、思いますか?」
「レオノーラ」
リリアナは、真摯な表情になると、
「幸せになれるかどうか…それが分かるのはルシアンナ自身よ。貴女の幸せが貴女だけのものであるように」
「…そうですね」
レオノーラはうなずいた。
「少なくとも、アルバートと婚約できてルシアンナはとても落ち着いたし、明るい表情をしているわ。過去は変えることは出来ないけれど、一生懸命幸せになろうとしているとお母様は思って見ているわ」
「それは、何よりです」
「ルシアンナを守れなかったと…悔やまないで…レオノーラ。ちゃんと、守れたわ。あの子は無事に助けることが出来たの。自分を責めないでね」
リリアナはレオノーラの手をそっと握った。
さすがリリアナはレオノーラの母である。
レオノーラの気持ちを正確に汲み取っていたようだ。
「ルシアンナの事はアルバートにもう任せましょう?」
ひたと、煌めく瞳をリリアナに向けた。
その色はレオノーラと同じ美しい緑。
「貴女がルシアンナの事も、ルナの事も気にかけていたことは分かっているわ。でもね、あの子達ももう小さな女の子ではなくなったの。貴女がキースの妻になったように、それぞれ大切な相手を見つけて歩みだしたの、レオノーラはこれまでより少し離れてあの子達を見守ってやって?」
レオノーラはくすっと笑うと
「それはそれで…寂しくもありますね…お母様」
「そうね、でもこれからはまた違った姉妹関係になるはずよ」
「そうですね…」
リリアナはレオノーラを抱き締めると、
「さ、そろそろ帰るとするわね。私は本当に去年から忙しいのよ!子供たちがそれぞれ婚約やら結婚やら、ね」
クスクスとリリアナは楽しそうに笑った。
レオノーラはリリアナを見送ると、音楽室に向かった。
そして、無心にハープを奏でる。
母の言うとおりだ。
最早、妹たちを一番に護るべき人物はレオノーラの手から離れてそれぞれのパートナーの手に委ねられるべきなのだ。
レオノーラが頼るのが父から、キースに変わったように。
レオノーラ自身の奏でるハープの弦は美しい旋律を生み出して行く、ルシアンナが幸せになるようにと祈りを込めて。そして、その音はレオノーラ自身を慰めていく。
「レオノーラ、久しぶりだわ」
穏やかな笑みを浮かべるリリアナに、レオノーラも微笑みを返す。
「そうですね、ルシアンナの様子はどうです?」
「ええ、レオノーラのお陰であのこも見違えるように落ち着いたわ。…お父様から…あの子の身の上に遭ったことを聞いて本当に胸がつぶれそうな気持ちになったけれど…。アルバートがルシアンナを受け止めてくれて本当に良かったと思っているの」
そう語るリリアナをレオノーラは黙って見つめた。
「キースもお父様に協力してくれたと…お礼を言っていたと伝えてくれるかしら?」
「ええ、お母様」
レオノーラは微笑んだ。
「幸い…あの事は漏れずに済んだようだし…こうなっては、下手な噂にならないうちに婚約と結婚を…という話になったの」
「出来るならその方がいいでしょうね」
レオノーラはそっと同意した。
時を置いて、どこからかそんな話が漏れないとも限らない。もちろんアルマンは徹底的に後処理をしたであろうが、人とはどこでどう繋がっているかすべてを完璧に処理できるかはわかったものではない。
「ブルーメンタール伯爵家の舞踏会で正式な発表をするわ。貴女ももちろん来てくれるでしょう?」
にっこりとリリアナは微笑んだ。
「もちろん。大事な妹の婚約ですから」
レオノーラも微笑みを返した。
ルシアンナの婚約は喜ばしい事だが、つくづくあんな事がなく、整っていれば心の底から喜べたであろうに…。レオノーラはその事を辛く思った。
「お母様…ルシアンナは…幸せになれると、思いますか?」
「レオノーラ」
リリアナは、真摯な表情になると、
「幸せになれるかどうか…それが分かるのはルシアンナ自身よ。貴女の幸せが貴女だけのものであるように」
「…そうですね」
レオノーラはうなずいた。
「少なくとも、アルバートと婚約できてルシアンナはとても落ち着いたし、明るい表情をしているわ。過去は変えることは出来ないけれど、一生懸命幸せになろうとしているとお母様は思って見ているわ」
「それは、何よりです」
「ルシアンナを守れなかったと…悔やまないで…レオノーラ。ちゃんと、守れたわ。あの子は無事に助けることが出来たの。自分を責めないでね」
リリアナはレオノーラの手をそっと握った。
さすがリリアナはレオノーラの母である。
レオノーラの気持ちを正確に汲み取っていたようだ。
「ルシアンナの事はアルバートにもう任せましょう?」
ひたと、煌めく瞳をリリアナに向けた。
その色はレオノーラと同じ美しい緑。
「貴女がルシアンナの事も、ルナの事も気にかけていたことは分かっているわ。でもね、あの子達ももう小さな女の子ではなくなったの。貴女がキースの妻になったように、それぞれ大切な相手を見つけて歩みだしたの、レオノーラはこれまでより少し離れてあの子達を見守ってやって?」
レオノーラはくすっと笑うと
「それはそれで…寂しくもありますね…お母様」
「そうね、でもこれからはまた違った姉妹関係になるはずよ」
「そうですね…」
リリアナはレオノーラを抱き締めると、
「さ、そろそろ帰るとするわね。私は本当に去年から忙しいのよ!子供たちがそれぞれ婚約やら結婚やら、ね」
クスクスとリリアナは楽しそうに笑った。
レオノーラはリリアナを見送ると、音楽室に向かった。
そして、無心にハープを奏でる。
母の言うとおりだ。
最早、妹たちを一番に護るべき人物はレオノーラの手から離れてそれぞれのパートナーの手に委ねられるべきなのだ。
レオノーラが頼るのが父から、キースに変わったように。
レオノーラ自身の奏でるハープの弦は美しい旋律を生み出して行く、ルシアンナが幸せになるようにと祈りを込めて。そして、その音はレオノーラ自身を慰めていく。
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