伯爵家の四姉妹

桜 詩

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公爵令息の独白⑤

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ルナは完璧な相手だ。

窓越しの光に照らされたルナの髪と肌は、幻想的に輪郭を輝かせて、その姿を浮かび上がらせた。
白く透き通る肌に触れて口づけたい欲求をフェリクスにもたらした。

そんなフェリクスの葛藤を、知ってか知らずか恐らくなにも計算なく、フェリクスの手を持って触れされた。
すべらかな肌と早鐘を打つルナの鼓動。そして、そのほどよい弾力。

いったいどれだけの男がこの状況で我慢が出来るというのか…!

唇を合わせ、抱き寄せたルナの体はしっくりとフェリクスに寄り添った。キスをするのにちょうどよい高さにあるルナの唇は、フェリクスの唇をまるでとろけさせるように柔らかで、どんな美食より甘美なものだった。
ルナの体香がフェリクスの鼻腔をくすぐり、フェリクスはその先に進みたくなる。
自制心を働かせて、必死に自分を叱咤して引き剥がした。
他ならぬ、ルナを自分から守るために。
万が一ここで二人きりになっていたことが、他人に知られたなら、男の自分はともかくルナには致命的な傷がついてしまう。

責任をとる覚悟ならもちろんあるが、そういう形でルナと結ばれるのはフェリクスの本意ではない。

ルナが立ち去った後、北の回廊に独り残ったフェリクスは、どさりと力を抜いて、座り込んだ。
礼装が皺になろうがもはやどうでも良かった。

まさかルナの方からあんな風に、愛を伝えられようとは、思いもしなかった。
先制パンチをくらったような気分でもあり、恍惚な気分でもあった。
自分がルナに対して、自制が働かないという自覚はあったというのに、ルナの言葉通り迷うことなくここにきていた。

ルナの言葉のひとつずつが、フェリクスの心を揺さぶり、仕草のひとつずつが身体中の血を熱くさせ、触れたその部分から理性を麻痺させた。
ルナの存在そのものが、フェリクスを捉えて離さない。

なるほど、ルナはブロンテ家の血を引いている。
気をつけろ、と父は言ったが、無理そうな話だ。
最初からずっと振り回され続けている。

ここまでされて、ウジウジしていては男ではない。
ふっとフェリクスは笑った。
まさに清々しく完敗した。彼女は見た目よりそして本人が思っているよりずっと強い。
何よりも、ルナと接すれば大概が彼女を好きになるだろう。

悔しいがライアンの見る目は確かだった。
フェリクスが愛し、そして公爵夫人として並び立つのにふさわしい…。


フェリクスは、まっすぐ広間には戻らずにシガレットルームに向かい煙草に火をつけた。
ふらりと入ってきたライアンが隣に並び同じように火をつけた。

「ルナを邸に招待します、私の紹介で。」
ライアンが微笑む
「父上に言われて、ではない事をこの場ではっきりとお伝えします」
「そうか楽しみにしている」
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