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第一章 意思
サバイバル生活 2
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闇魔法では魔獣と契約することで任意に召喚することが出来る。魔獣の強さに応じて必要な階位も上がっていくが、ファング・ボアなら第二位階の闇魔法が使えれば契約できる。契約数には限度があり、下級魔獣で10体、中級で5体、上級で3体、超級で1体契約できる。
契約には贄が必要で、呼び出す魔獣の心臓を使わなければならない。それはすなわち、契約するにはまずその魔獣を討伐する必要があるということだ。より強力な魔獣と契約するには自身もより強くなるか、冒険者協会にお金を払って依頼するかになる。ただ問題は、自分よりも強大な魔獣と契約しようとすると主人と認めてもらえず、逆に呼び出した魔獣に喰われてしまうと師匠が言っていた。そのため自分と契約する魔獣との力関係の見極めが必要なのだ。
「我は契約を求める者なり。贄を受け取り契りを交わせ!〈召喚契約〉!」
ファング・ボアの心臓を取り出し地面に置いて詠唱を行うと、黒い靄が溢れ出てきた。靄は次第に形を成し、ファング・ボアとなった。体長2m程のファング・ボアは僕を見た後に頭を下げるような姿勢をする。これで契約成立だ。呼び出す魔獣には個体差があるがおおよそ贄として捧げた魔獣と同等の強さを持っている。つまりこの子は小さいながらも3m級のファング・ボアと同等の強さということだ。何故僕がこの子と契約したかと言うとーーー
「よし、さっそく果物や木の実、キノコを探してくれ!」
ファング・ボア自体の戦闘力は僕から見れば大した事は無い。ただ、主食としている食べ物を探す能力に長けているので、果物などを探すときには重宝する。サバイバルを行うにあたって肉以外の色々な食材も食べなければ倒れると学んだので、初日に使い魔にすることが出来たのは運が良かった。
夕刻まで使い魔を先導して獣や果物などの食料採取に勤しみ、当面の食料は確保できた。拠点に戻り夕飯を食べた後、身体を休める為にまだ何もない床に横になり、周囲の警戒には索敵能力の高い2匹の使い魔にお願いをして初日は無事に終わりを迎えた。
翌日ーーー
「・・・か、身体が、痛い」
ベッドが無く床で直接寝ていたので、翌朝は身体のあちこちが痛かった。さらに昨日はお風呂に入っていなかったので、なんとなく匂う気がする。
「・・・今日はベットとお風呂を作ろう」
朝食を終えて、昨日切り倒した木で使っていないものを加工してベットを作る。小屋を作ったことを考えれば簡単で、1時間ほどで作ることが出来た。
さらに快適な睡眠のためにふかふかな布団が欲しくなったので、グランド・ワームを探すことにした。
グランド・ワームは土の中に生息する芋虫型の魔獣で、その表皮は10cm程あり、弾力性に優れ敷布団として使うには最適だ。また吐き出す粘液を熱湯と少量の砂で混ぜ合わせて乾燥させると防水材として使えるらしいので、屋根とお風呂に使おうと考えたのだ。
「頼むぞ、グランド・ワームを探してくれ!」
使い魔2匹の頭を撫でながら指示を出す。どちらも鼻が利く種族なので期待が出来る。少しするとファング・ボアが鼻を鳴らしながら走り出したので後をついていく。20分程ついていくと平原の砂地のような場所で立ち止まっていた。
「ここにいるのか?」
そう使い魔に聞くと、蹄を大地に突き立てて間違いないと自己主張しているようだった。そこで第三位階土魔法の〈大地探査大地探査〉を使って地中を探ると、5m程下から反応があった。
「いた!〈大地操作〉!」
〈大地操作〉で魔獣のいる場所を振動させ、驚かせて誘き出す。すると2m程の白い巨大芋虫、グランド・ワームが飛び出してきた。この魔獣には目は無いのだが、僕に気付いたようで上体を起こし攻撃姿勢をとってくる。
「今だ!〈収納〉!」
魔獣の口と思われる場所の前方に空間魔法を展開させて、粘液を採取しようと試みる。すると思惑通りに大量の透明な粘液を吐き出してきたが、全て収納させてもらい粘液を吐き終わったところで止めを刺す。
「〈浸透打〉!」
表皮を傷付けたくなかったので打撃で倒すと口や尻から粘液なのか体液なのか良くわからないものが吹き出してきた。
「うわっ、汚な~。・・・取り敢えず目的は達したし、こいつを川で洗って綺麗にするか」
色々なものが垂れ流しの状態になっている魔獣を収納し、足早に川へと移動する。
収納から取り出し、頭と尻と思われる部分を切り落として、中身を洗えるように切り口を広げて川の水流にしばらく晒して綺麗にした。最後に乾燥させるため拠点へと戻った。
木に引っ掻けて乾燥している間に次の作業へと取り掛かる。適当な大きさの丸太の中をくりぬいて即席の木桶を作ると、中に水魔法と火魔法で熱湯を準備する。そして収納していた粘液を少しずつ溶かし込んでいき、最後に砂を混ぜ合わせてしばらくかき混ぜると、ドロッとした液体になった。
「こんなものかな?」
次に小屋のすぐ隣に〈大地操作〉で深さ1mの穴を作り浴槽にするために余っている木材で隙間が無いように敷き詰めていく。そして、ファング・ボアの尻尾を切り取って刷毛の様に使ってグランド・ワームから作った液体を塗り漏らしが無いように丁寧に塗っていく。浴槽が終わると屋根も雨漏りがないようにしっかり塗って、後は自然乾燥に任せてワームの表皮が乾いたか確認に向かった。
「う~ん、まだ湿っているな・・・仕方ない、魔法を使うか」
第三位階火魔法〈炎の嵐〉を威力を調整して表皮から少し離して発動する。すると5分程ですっかり乾いたので、朝の内に作ったベッドのサイズに合わせて表皮を切り取る。出来上がったベッドに乗ってみると、身体が少し沈み込むような弾力性で十分立派な物が作れた。
ついでに昨日のファング・ボアの皮を鞣して毛布を作っておく。大きさとしては大分余ってしまったので、毛布分を切り取った残りを小屋の入り口に垂れ下げてドアの代わりに見立てた。
一通りの作業が終わった頃には日も暮れてきたので夕飯の準備を始める。調理器具を用意したかったので、岩を〈風の刃〉で薄めに切断してフライパン代わりにして果物を炒めてソースを作る。それを焚火で焼き上げた肉に絡めて、付け合わせにキノコを添えて完成だ。
「いただきます!・・・・・おっ、うまい!」
肉の味に変化も出来た事に満足しつつ、あっという間に平らげてしまった。
お腹を満たして満足したので、お風呂に入るため水魔法を使って浴槽に水を張り、火魔法でお湯にする。手を入れ湯加減を確かめてからお風呂に飛び込んだ。
「ふぅ~・・・取り敢えず生きていくのに最低限の環境は整ったかな・・・」
夜空を見上げながら一人呟く。
「とにかく1年間生き抜かなきゃ・・・明日からも頑張ろう・・・」
お風呂で2日分の汚れと疲れを落とし、今後のやるべき事に想いを馳せていった。
契約には贄が必要で、呼び出す魔獣の心臓を使わなければならない。それはすなわち、契約するにはまずその魔獣を討伐する必要があるということだ。より強力な魔獣と契約するには自身もより強くなるか、冒険者協会にお金を払って依頼するかになる。ただ問題は、自分よりも強大な魔獣と契約しようとすると主人と認めてもらえず、逆に呼び出した魔獣に喰われてしまうと師匠が言っていた。そのため自分と契約する魔獣との力関係の見極めが必要なのだ。
「我は契約を求める者なり。贄を受け取り契りを交わせ!〈召喚契約〉!」
ファング・ボアの心臓を取り出し地面に置いて詠唱を行うと、黒い靄が溢れ出てきた。靄は次第に形を成し、ファング・ボアとなった。体長2m程のファング・ボアは僕を見た後に頭を下げるような姿勢をする。これで契約成立だ。呼び出す魔獣には個体差があるがおおよそ贄として捧げた魔獣と同等の強さを持っている。つまりこの子は小さいながらも3m級のファング・ボアと同等の強さということだ。何故僕がこの子と契約したかと言うとーーー
「よし、さっそく果物や木の実、キノコを探してくれ!」
ファング・ボア自体の戦闘力は僕から見れば大した事は無い。ただ、主食としている食べ物を探す能力に長けているので、果物などを探すときには重宝する。サバイバルを行うにあたって肉以外の色々な食材も食べなければ倒れると学んだので、初日に使い魔にすることが出来たのは運が良かった。
夕刻まで使い魔を先導して獣や果物などの食料採取に勤しみ、当面の食料は確保できた。拠点に戻り夕飯を食べた後、身体を休める為にまだ何もない床に横になり、周囲の警戒には索敵能力の高い2匹の使い魔にお願いをして初日は無事に終わりを迎えた。
翌日ーーー
「・・・か、身体が、痛い」
ベッドが無く床で直接寝ていたので、翌朝は身体のあちこちが痛かった。さらに昨日はお風呂に入っていなかったので、なんとなく匂う気がする。
「・・・今日はベットとお風呂を作ろう」
朝食を終えて、昨日切り倒した木で使っていないものを加工してベットを作る。小屋を作ったことを考えれば簡単で、1時間ほどで作ることが出来た。
さらに快適な睡眠のためにふかふかな布団が欲しくなったので、グランド・ワームを探すことにした。
グランド・ワームは土の中に生息する芋虫型の魔獣で、その表皮は10cm程あり、弾力性に優れ敷布団として使うには最適だ。また吐き出す粘液を熱湯と少量の砂で混ぜ合わせて乾燥させると防水材として使えるらしいので、屋根とお風呂に使おうと考えたのだ。
「頼むぞ、グランド・ワームを探してくれ!」
使い魔2匹の頭を撫でながら指示を出す。どちらも鼻が利く種族なので期待が出来る。少しするとファング・ボアが鼻を鳴らしながら走り出したので後をついていく。20分程ついていくと平原の砂地のような場所で立ち止まっていた。
「ここにいるのか?」
そう使い魔に聞くと、蹄を大地に突き立てて間違いないと自己主張しているようだった。そこで第三位階土魔法の〈大地探査大地探査〉を使って地中を探ると、5m程下から反応があった。
「いた!〈大地操作〉!」
〈大地操作〉で魔獣のいる場所を振動させ、驚かせて誘き出す。すると2m程の白い巨大芋虫、グランド・ワームが飛び出してきた。この魔獣には目は無いのだが、僕に気付いたようで上体を起こし攻撃姿勢をとってくる。
「今だ!〈収納〉!」
魔獣の口と思われる場所の前方に空間魔法を展開させて、粘液を採取しようと試みる。すると思惑通りに大量の透明な粘液を吐き出してきたが、全て収納させてもらい粘液を吐き終わったところで止めを刺す。
「〈浸透打〉!」
表皮を傷付けたくなかったので打撃で倒すと口や尻から粘液なのか体液なのか良くわからないものが吹き出してきた。
「うわっ、汚な~。・・・取り敢えず目的は達したし、こいつを川で洗って綺麗にするか」
色々なものが垂れ流しの状態になっている魔獣を収納し、足早に川へと移動する。
収納から取り出し、頭と尻と思われる部分を切り落として、中身を洗えるように切り口を広げて川の水流にしばらく晒して綺麗にした。最後に乾燥させるため拠点へと戻った。
木に引っ掻けて乾燥している間に次の作業へと取り掛かる。適当な大きさの丸太の中をくりぬいて即席の木桶を作ると、中に水魔法と火魔法で熱湯を準備する。そして収納していた粘液を少しずつ溶かし込んでいき、最後に砂を混ぜ合わせてしばらくかき混ぜると、ドロッとした液体になった。
「こんなものかな?」
次に小屋のすぐ隣に〈大地操作〉で深さ1mの穴を作り浴槽にするために余っている木材で隙間が無いように敷き詰めていく。そして、ファング・ボアの尻尾を切り取って刷毛の様に使ってグランド・ワームから作った液体を塗り漏らしが無いように丁寧に塗っていく。浴槽が終わると屋根も雨漏りがないようにしっかり塗って、後は自然乾燥に任せてワームの表皮が乾いたか確認に向かった。
「う~ん、まだ湿っているな・・・仕方ない、魔法を使うか」
第三位階火魔法〈炎の嵐〉を威力を調整して表皮から少し離して発動する。すると5分程ですっかり乾いたので、朝の内に作ったベッドのサイズに合わせて表皮を切り取る。出来上がったベッドに乗ってみると、身体が少し沈み込むような弾力性で十分立派な物が作れた。
ついでに昨日のファング・ボアの皮を鞣して毛布を作っておく。大きさとしては大分余ってしまったので、毛布分を切り取った残りを小屋の入り口に垂れ下げてドアの代わりに見立てた。
一通りの作業が終わった頃には日も暮れてきたので夕飯の準備を始める。調理器具を用意したかったので、岩を〈風の刃〉で薄めに切断してフライパン代わりにして果物を炒めてソースを作る。それを焚火で焼き上げた肉に絡めて、付け合わせにキノコを添えて完成だ。
「いただきます!・・・・・おっ、うまい!」
肉の味に変化も出来た事に満足しつつ、あっという間に平らげてしまった。
お腹を満たして満足したので、お風呂に入るため水魔法を使って浴槽に水を張り、火魔法でお湯にする。手を入れ湯加減を確かめてからお風呂に飛び込んだ。
「ふぅ~・・・取り敢えず生きていくのに最低限の環境は整ったかな・・・」
夜空を見上げながら一人呟く。
「とにかく1年間生き抜かなきゃ・・・明日からも頑張ろう・・・」
お風呂で2日分の汚れと疲れを落とし、今後のやるべき事に想いを馳せていった。
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