変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

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出会い編

ルピス・エレメント 3

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side ルピス・エレメント


(はぁ~、本当に嫌になるです・・・)

 人狼族の国、エレメント王国女王の5番目の娘としてこの世に生を受けたボクは、今14歳になるです。王族の決まり事として15歳になるまでに、この“夕闇の森”で2泊3日のサバイバル生活を無事生き延びなければならないという通過儀式があるのです。
あまり戦うことが好きではないボクは、去年からお母様に早く行けとせっつかれていたのを、のらりくらりと躱し続けていたのですが、ついに15歳の誕生日があと数ヶ月と迫ったため、強制的にこの森へと送り出されてしまったのです。
持ち物として許されたのは、水筒と下着の着替えだけで、服装なんて動きやすい藍色のキュロットパンツに、上着は黒のTシャツの上から前の部分がチャックになっている白のパーカーを羽織っているだけという、本気の私服姿で放り出されたのです。食料などは現地調達が基本なのですが、森の獣さんを殺してしまうのも可哀想だと考えたボクは、3日間何も食べなくても良いやと考えながら森を散策していると、どうやら道を間違えて害獣の縄張りに足を踏み入れてしまったようだったのです。

(ボクは何もする気はないから、そっちから襲ってこなければ見逃したのに・・・)

どうやらボクの存在を嗅ぎ付け、あっという間に3匹のピッグディザスターが囲んできたのです。体長は10m程の成体で、下顎から突き出る4本の牙が特徴的です。奴らは既にアルマエナジーを纏っており、ボクの事を威嚇してきているので、このまま知らんぷりでやり過ごすことは出来なさそうです。

(しょうがないです。可哀想だけど討伐し・・・あれ?)

小さなため息を吐きながら、アルマエナジーを具現化しようとした時、風向きが変わったこともあってボク以外の人の存在に気づいたです。

(えっ?何でこんな森の深くに男の子が!?)

害獣の向こう側に、こちらの方を心配そうな表情で見つめている一人の男の子の姿が目に入ってきたです。害獣ひしめくこんな森の奥で、ひ弱な男の子がたった一人で居るということに驚きを禁じ得ないですが、もっと驚くべきはその男の子が人族だったことなのです。

(あれ?もしかしてボク、道に迷ったせいで国境を越えちゃったのかな???)

この夕闇の森は、エレメント王国とドーラル王国の国境を分断するように位置しているです。建前上国境は、森の中央部から南北に分けることになっているですが、まさにその中央部の深層には、強大な害獣が多数巣食っていることから、実際にはそこを除いた大まかな分け方という事になっているはずなのです。にもかかわらず人族が居るのは、かなり人族の国の方へ踏み込んでしまった様なのです。
予期せぬ状況に悩んでいると、ボクの出方を伺っていた害獣が、こちらが動かなかったことを好機と見たのか、3匹が一斉に襲い掛かってきたです。

(まったく、考え事くらいゆっくりさせて欲しいです)

襲い来る害獣達を迎え撃とうと、ボクの方を伺っていた男の子から、アルマエナジーを具現化させるために両手に意識を集中させようとしたした瞬間、何を思ったのか男の子が害獣の一体に飛び掛かっていったのです。

(っ!危なーーーえっ?あの子、顕在化してるです?男の子なのに???)

疾風のように害獣に突撃した男の子は、信じられないことに顕在化したアルマエナジーを纏っていたのです。ただその制御は拙く、水色に顕在化したエナジーを、大量かつ勢いよく垂れ流している状態です。きっと今は最大瞬間風速みたいなもので、あっという間に枯渇して昏倒してしまいそうです。
ただ、最も驚くべきは顕在化しているだけであるはずのアルマエナジーが、何となく盾の形状に変化して男の子を守っていた事なのです。疑問は浮かぶですが、今はそれどころではないのです。
ありがたい事に、その男の子の身を呈した体当たりのお陰もあって、3匹の害獣達の意識はまったく動こうとしていなかったボクから、その男の子の方へと移ったのです。

「そこの君!今の内に逃げて!!」
「えっ?」

しかも驚くことにその男の子は、どうやらボクの事を心配して飛び出してくれたようなのです。男の子に心配され、しかも助けようとしてくれるという思ってもみない状況に困惑してしまったのです。

(何だろう・・・こういうのも悪くないですね!)

よく見ればその男の子は可愛らしい顔つきをしていて、人族でなければちょっと良いなと思ってしまう容姿をしているです。耳に掛かるくらいの長さの艶やかな黒髪が風に靡き、幼さの残る整った顔立ちで勇敢に害獣に立ち向かってはいるけど、その表情からは明確な怯えの感情も伺えるという相反する様子が、ボクの感情をとてつもない勢いでくすぐってくるのです。

(あぁ、彼の事を守ってあげたいのです!というか、もうボクのモノにしたいのです!いっそ、このまま持ち帰って幸せにしてあげるのです!)

ボクの中の本能がそう叫ぶです。こんな危険な森の中に彼一人ということは、もしかしたら親に捨てられてさ迷っていた可能性が高いのです。だったら、ボクが拾っても何も問題ないのです。彼は他種族だけど、これは人命救助で致し方ないことなのです。そして、彼を拾ったボクが面倒を見てあげるのは当然の責務なのです。
そう結論付けたボクは、果敢に害獣達を牽制している彼に向かって叫んだのです。

「もう大丈夫なのです!ボクがあなたを守ってあげるのです!!顕現けんげんせよ!!」

彼を安心させようと声を掛けると、ボクは両手にアルマエナジーを具現化させた双剣を握り締め、彼の事を襲おうとしている手近な1匹に向かって突進していったのです。





 咄嗟の行動だった。3匹のピッグディザスターに囲まれていた人狼族の少女に向かって、今まさに襲いかからんと害獣が動き出した瞬間、アルマエナジーを顕在化した身体能力でもって体当たりをしていた。
『ズン!』というお腹に響く衝突音が辺りに轟いたのだが、如何せん体格差が大き過ぎたせいで、大したダメージも与えることが出来なかった。まるで家に体当たりしたような無力さを感じたが、僕のアルマエナジーの強度もあってか、反動というものはほとんど感じられなかった。

「そこの君!今の内に逃げて!!」

きっと害獣に囲まれてしまったために、恐怖のあまり動けなくなっていたのだろう、背後に居る少女に向かって力の限り叫んだ。僕の実力では、害獣達の注意を引き付けることは出来ても、討伐することは叶わないからだ。それでも、僕のアルマエナジーの強度をもってすれば数十分は耐えられるだろうと考え、少女に逃げるよう促した。
しかし、どうしたことか少女は僕の叫ぶ声に、何を思ったのか考え出したかと思うと、急に満面の笑みを僕の方へ向けて口を開いた。

「もう大丈夫なのです!ボクが君を守ってあげるのです!!顕現けんげんせよ!!」
「っ!!」

少女が叫ぶと、その両手に赤褐色をした双剣が姿を現した。その髪の色と同じような双剣を構える少女は、身体を低くして攻撃体制をとった。ただ、あまりにも体格差のある害獣と見比べ、弱点となる首や心臓に届かないのではないかと思ってしまう。

「はぁぁぁ!!!!」
『ブモォォォ!!』

裂帛の気合いと共に、彼女は地面を陥没させるほどの勢いで眼前の害獣に向かって飛び出すと、その動きに合わせるように害獣も頭を振って頭突きで薙ぎ払おうとしていた。

「危ない!!」

このタイミングでは確実に害獣の攻撃を受けてしまうと、警告するように叫ぶ僕に向かって、少女は一瞬口許を吊り上げた。

「シィッ!」
『ブモモモモ・・・』

害獣の薙ぎ払うような頭突きにぶつかる寸前、少女は身体を高速で回転させながら両手の双剣で害獣を削り斬ろうとしていた。それはまるでコマのような動きで、その連続回転斬りに相手の害獣の身に纏うアルマエナジーはみるみる内に削れていった。思わぬ反撃を受けたのだろう、それに何とか耐えているような悲鳴じみた叫び声が害獣の口から漏れていた。

そしてーーー

『ブ・モーーー』

数秒の内に害獣のアルマエナジーを削り斬り、少女は回転した勢いそのままに首を切断して止めを刺してしまった。断末魔の声を漏らすピッグディザスターの最後の表情は、ありえないとでも言いたげなものだった。

「次です!!」

1匹目を討伐した少女は、地面にきれいに着地すると、間髪入れずに次の害獣に飛び掛かっていった。残り2匹の害獣も、小さな少女にまさか仲間が殺られるとは思わなかったように動揺していたが、すぐに正気を取り戻したように大口を開けて、少女を食べようと突進していた。

「遅いです!」

少女は襲い来る害獣の動きに対処するべく、高速移動のまま細かく方向転換を繰り返して相手を翻弄すると、2匹の害獣も少女の動きに付いていけず、頭を右往左往していた。僕の目にも、少女のふわふわとした尻尾の残像が映る程度にしか動きを追えなかった。

「今です!」
『ブモモ・・・モーーー』

2匹目のピッグディザスターも、先程同様にあっという間に身に纏っていたアルマエナジーを削り斬られ、その首を切断されてしまった。そして最後に残った1匹だったのだが、少女に敵わないと思ったのか、何故か僕に向かって大口を開けながら突進してきた。

「くっ!」

最後にせめて僕を食べてからこの場を離れようとでも考えたのかもしれないが、そう簡単に食べられるわけにはいかない。とにかく顕在化を維持して突進に身構えると、少女が焦った表情を浮かべながら駆けつけてくる。

「させないです!ボクのものに手を出すなです!!」
『ブモモモモ・・・ブーーー』
「・・・・・・」

今までよりも一段と強烈な回転斬りの攻撃に曝されたピッグディザスターは、断末魔の叫び声と共に、あっという間にその首を落とされた。一瞬の出来事に呆気にとられてしまったが、人狼族の少女が3匹の害獣の息の根が完全に止まっている事を確認して具現化を解く頃には、僕も正気を取り戻した。
それと同時に、戦闘中に少女が発していた言葉に対して疑問が浮かんできた。

(ん?あの子、僕の事を自分のものって言っていたような・・・)

害獣を討伐し終え、少し返り血を浴びた笑顔を浮かべて近づいてくる少女に対し、内心警戒しながら先ずは相手の出方を伺おうと、緊張感満載で対面することとなった。
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