変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

文字の大きさ
24 / 92
出会い編

パピル・リーグラント 2

しおりを挟む
「本日よりクルセイダー見習いとして、王都駐屯地に配属になりました、ジール・シュナイザーです!よろしくお願いいたします!!」
『パチ、パチ・・・』

 配属初日、僕は駐屯地の修練場にて、ここに配属されている約50人の正規クルセイダーさん達を前に、壇上に登って配属の挨拶を行った。
クルセイダーの皆さんは、1m程の高さの壇上を前にして綺麗に整列しており、僕の事を伺う多くの視線に晒された。以前、顕在化するための鍛錬として、短い期間場所を使わせてもらったこともあり、中には見知った顔も見られた。
そんな人達は僕の挨拶に対して拍手を送ってくれたのだが、大抵の方々は怪訝な表情を浮かべて、僕がクルセイダー見習いになったことに納得していないような様子だった。

(まぁ、この反応も想定内だけど・・・)

併せて僕は壇上から友人を探そうと視線を巡らせたのだが、どれだけ探しても目当ての人物を見つけ出すことは出来なかった。

(あれ?キャンベル殿下が居ないな・・・クルセイダー見習いは扱いが違うのかな?)

そんな事を考えていると、挨拶を終えた僕の隣に一人のクルセイダーが上がってきた。肩まで伸びる髪を後ろで一纏めにし、整った顔立ちに凛とした表情を浮かべる女性の制服には、10本の刺繍のラインが施されている。
ちなみに僕はクルセイダー見習いなので、基本的なデザインは一緒の制服だが、胸の刺繍のラインは1本しかないものを支給されている。

「というわけで、今日からこのジールが見習いとして配属になる。当分は基礎訓練やクルセイダーとしての在り方、常識、マナーを学んでもらう。色々思うところがあるかもしれんが、彼の力は本物だ。くれぐれも侮ることのないように!以上!解散!!」
「「「はっ!!」」」

僕について簡単に言及し、クルセイダーの方々に指示を出したこの人は、序列7位のシュラム・カークネルさんだ。通常、序列1位から7位までの最上位クルセイダーの方々の勤務は、王城での警護が多いのだが、今日は僕との顔合わせと駐屯地での周知もあって、こちらに顔を出している状況だ。
解散してそれぞれに散っていくクルセイダー達からは、シュラムさんに対しての尊敬の眼差しが感じ取れた。そんな視線を向けられても気にすることなく、シュラムさんは口を開いた。

「挨拶は以上だ。今日はこれから施設の説明と、今後についての予定を伝える。ついてこい!」
「分かりました!」


 駐屯地内の建物に入り、白を基調とした会議室のような場所に案内されると、10人は余裕で座れるような大きなテーブルが置かれていた。
シュラムさんは窓際の方へ移動して着席すると、入り口付近でどうすればいいか迷っていた僕に、対面に座るように促してきた。

「さてと。改めてクルセイダー見習い着任おめでとう。」
「あ、ありがとうございます、シュラムさん」

シュラムさんは比較的僕を認めているような態度で着任を祝福してくれた。そもそも以前、母さんのつてで僕に鍛練の手解きをしてくれていたのは、他ならぬシュラムさんだったからだろう。
当時はシュラムさんの教えで健在化するまでには至らず、その後に龍人族の王女であるレイラ殿下の裏技的手法によって顕在化を成し遂げることが出来た。シュラムさんは自分の教えで顕在化させることが出来なかった事に微妙な顔を浮かべて、ぎこちなく頭を撫でなられながら誉めてくれたことは今でも覚えている。

「今から簡単に君の今後の予定を説明させてもらう。その後、別の者に引き継いでこの施設を案内させる」
「シュラムさんがわざわざ・・・ありがとうございます」
「他の者に任せて、良い事にならないのは目に見えていたからな。君と面識があり、且つ悪感情を持っていないからということで指導役に選ばれたというわけだ」

シュラムさんの口調から、どうやらクルセイダーの中には相当数、僕に対する悪感情を抱いている人達がいるのだろう。僕が目指そうとしている道が、過酷なものだということは覚悟していたつもりだが、僕のせいで他の人が迷惑を被るのはとても申し訳なかった。

「それは・・・ご迷惑をお掛けして申し訳ありません・・・」
「気にするな。君のお母様には、昔世話になったからな。これは私なりのせめてもの恩返しなのだ」

シュラムさんと母さんの間にどんな事があったのかは知らないが、僕としてはありがたい話だった。指導役が僕に悪感情を抱いている人だった場合は、それこそ毎日胃の痛い思いをすることになっただろう。

「その・・・最上位クルセイダーの方は王族の警護が主な仕事だと聞いているのですが、そちらは大丈夫なのですか?」
「問題ない。私がこの駐屯地に派遣されている間は君のお母様、ホリーさんが臨時で護衛をされることになっている」
「っ!母さんが!」
「そうだ。君は気にせずに、ここで自分を鍛えると良い」
「はい!ありがとうございます!」

そんな裏事情を説明された僕は、今後についての話を聞かされた。曰く、1年程はクルセイダー見習いとして、下働き的な役目を課さられるということだ。言ってみればサポーターの様な感じで雑務を行いつつ、クルセイダーとしての礼儀作法や知識までを学んでいくということだった。
そういった説明を一通り受けた僕は、最後に何か質問はないかと確認された時に、キャンベル殿下の姿が見受けられなかった点について聞いてみた。

「キャンベル殿下か?彼女は今、長期遠征に出立したばかりでな、戻ってくるのはかなり先になるだろう」
「長期遠征ですか?」
「そうだ。元々王族である彼女には、礼儀作法や知識の習得よりも、実戦を経験させるべきだと判断されたようだ。今頃は害獣が闊歩する国境付近で討伐の任に就いていることだろう」

シュラムさんの説明に、僕はなるほどと納得した。確かにキャンベル殿下には、今更礼儀や知識を学ぶ必要はないだろう。それよりも実戦形式で学んだ方が、はるかに実力に結びつくというものだ。

「そうだったのですね。教えていただき、ありがとうございます」
「なんだ?君のお目当ては殿下だったのか?」

ニヤニヤした表情で聞いてくるシュラムさんに、僕は意味が分からず首を傾げた。

「いえ、キャンベル殿下とは編入した学園で同じクラスでしたので、挨拶をした方が良いかと考えていたのですが、不在であるのら仕方ないですね」
「・・・そ、そうか(キャンベルの奴も不憫な・・・)」

僕の返答に思うところがあったのか、心配したような表情を浮かべ、小声で何か呟いたようだが、残念ながら僕には何を言っているのか聞こえなかった。


 その後、話も終わってシュラムさんが呼び鈴を鳴らすと、藍色の作業着を着た一人の中年男性がノックして入室してきた。聞けば、この駐屯地の維持・清掃などの管理人をしているリックさんということだ。

「リック、あとの案内は任せた」
「畏まりました。では、ジール様。ご案内しますので、私の後ろに付いてきて下さいませ」
「わ、分かりました。よろしくお願いします」
「私に対してその様な言葉遣いは不要です。ジール様はクルセイダーとして実力を認められたお方。あまり下手に対応されますと、他の者に示しが付きません。ひいてはクルセイダーの皆様全体の品位を下げるかもしれないということです。これからはご自分の言動を見直して頂ますよう、失礼ながらご助言させていただきます」

僕としては、年上の人に気を使っただけのつもりだったのだが、リックさんからは苦言を呈されてしまった。ただ、言われたことは間違いなく正論だったので、見習いとはいえクルセイダーになったのだという事を、もっと意識して行動するようにしなければと考えを改めようと考えた。


 それからの毎日は、とても忙しいものだった。礼儀作法だけでなく、クルセイダーとしての振る舞い方や知識なども詰め込まれるので、それに付いていくだけでも精一杯だ。
加えて、見習いとして様々な雑務をこなしたり、実力を鍛えるための訓練も並行して行わなければならず、目の回るような日常にあっという間に時間が過ぎていった。
懸念していた先輩クルセイダーの皆さんからの対応は、思ったほど直接的な嫌味を受けることはなかった。正直に言えば、僕に構っている暇なんて無いというのが正確なところかもしれない。なにせ国中から害獣討伐要請はひっきりなしに来るのだ。それに対応するために正規クルセイダー達は目まぐるしく仕事をしているのだ。僕が男だからということよりも、仕事の方を優先するのは当然だった。

そんな日々が一年ほど続いた頃。ようやく基礎訓練や勉学の習得が一段落した僕に、他国への害獣討伐遠征の命令が下った。
その国とは、最近ドーラル王国と同盟関係強化を模索しており、更なる友好関係の発展の為にと、異例ではあるが、他国に赴いて合同討伐を行うことが発表された。その国の名はリーグラント王国。妖精族の住まう国だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ
ファンタジー
七つの大陸、それぞれを支配する“七大魔女”── 魔力あふれる世界《アルセ=セフィリア》は、魔女たちによる統治と恐怖に覆われていた。 だが、その支配に終止符を打つべく、一人の男が立ち上がる。 名はルーク・アルヴェイン。伝説の勇者の血を引く名家の出身でありながら、前世はただの社畜。 高い魔力と最強の肉体、そして“魔女の核を斬ることのできる唯一の剣”を手に、彼は世界を平和にするという使命にすべてを捧げていた。 ──しかし、最初に討伐した《闇の魔女・ミレイア》はこう言った。 「あなたの妻になります。魔女の掟ですから」 倒された魔女は魔力を失い、ただの美少女に。 しかもそのまま押しかけ同居!? 正妻宣言!? 風呂場に侵入!? さらには王女や別の魔女まで現れて、なぜか勇者をめぐる恋のバトルロイヤルが始まってしまう!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...