変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

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留学編

作戦会議 4

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 女王陛下に呼び出され、自分の結婚観を聞かれてから数日が経過した。
この間、一時帰国している王女殿下達と会うことはなく、レイラ様からお願いされた、小さめのアルマ結晶にアルマエナジーを限界までひたすら貯めるという仕事をこなしていた。
そして自国で報告を終えた王女殿下達は戻って来たものの、休む暇なく今度は具体的なミュータント・1討伐作戦を立案するために、日夜会議室に籠もって話し合いを続けているようだった。
目標のミュータント・1の脅威からか、当初予定していた討伐予定日は若干延長され、その分拠点の建設や物資の調達など、様々な準備の方は整いつつあるような状況だった。
そして、明日に作戦内容の公表を控えた前日の夜、僕は久しぶりに王女殿下達から呼び出しを受け、会議室へと向かったのだった。


「よく来てくれたジール殿!かけてくれ!」
「失礼します」

 会議室に入ると、ジェシカ様が満面の笑みで出迎えてくれ、殿下達の座る円卓に着席するように促してきた。

「久しぶりだね~ジルジル!最近中々会えなくて寂しかったよ~」
「殿下達は今、ミュータント・1の討伐作戦立案に集中されているようでしたから、僕の方から顔を出せず、すみません」

横に座るパピル様が上目遣いに僕を見つめ、寂しそうな表情を浮かべながら話しかけてきた。その様子に、強引に会いに来た方が良かったのかなと、謝罪の言葉を口にした。

「ジール君が謝ることでは無いわ。私達が最近忙しかったせいで会う時間を作れなかったのだし・・・でも、こうしてジール君の顔を見ると癒やされますね」
「僕も皆さんの顔を見れて嬉しいです。ただ、見たところ疲れが溜まっているように見受けられますが、大丈夫ですか?」

キャンベル様の言葉に、僕も笑顔で答えた。ただ、皆さん目の下に薄っすらと隈を作っていらっしゃるようで、ここ最近の激務が伺い知れる顔をしていた。

「心配してくれてありがとう。ようやく具体的な作戦も決まったし、これで少し休めるわ。ジールもかなりの量のアルマ結晶にアルマエナジーを貯めてもらっているし、あなたこそ大丈夫かしら?」
「僕は全然平気です。むしろ、ずっと座ってアルマエナジーを吸収させているだけだったので、身体が鈍っちゃいそうです」

レイラ様は疲れた顔をしているが、僕に心配させまいと笑みを浮かべ、逆に僕の体調を気遣ってくれた。ただ、アルマエナジーを結晶に吸収させる作業については、座っている事が逆に疲れる様なものだったので、苦笑いを浮かべて自分の作業について話した。
そんな何てこと無いただのやり取りだったのだが、円卓を挟んで対面に座るルピス様が怪訝な表情を浮かべ、首を傾げながら僕に問いかけてきた。

「ジールさん?少し雰囲気が変わったですか?」
「えっ、そうですか?」

ルピス様の言葉に、僕はドキッとしながらも、何食わぬ顔で答えた。

「ん~、何というか・・・少し大人びたような雰囲気がするのです」
「自分では良く分かりませんが、僕も来年で18歳。成人ですから・・・」

ちょっとした心境の変化まで察してくるルピス様に、僕は真面目な表情をしながら無難な言葉を返した。そんな僕の様子に疑問符を浮かべているようだったが、先に話すべき事があるようで、レイラ様が咳払いをすると、僕を呼んだことについて説明を始めた。

「ジール、こちらに呼んだ理由は他でもありません。明日公表するミュータント・1討伐作戦について、事前に知らせるべきと考えたからです」
「・・・・・・」

真剣なレイラ様の表情と、それを見守る皆さんの沈痛な面持ちに、僕は息を呑んで続きの言葉を待った。

「大まかな作戦内容ですが、操られている害獣を誘いこむ囮のクルセイダー達に、事前に仕掛けた罠の場所へと誘導してもらいます。そこで待機しているクルセイダーが罠に嵌まって弱った害獣達を各個撃破。それに対してミュータント・1に増援を仕掛けさせます」

レイラ様の語る作戦内容は、言わば相手の知能の高さ、指揮能力の高さを逆手にとった作戦のようだ。ただ、取り巻き達の害獣はそれで良いとしても、肝心のミュータント・1はどうするのと疑問も浮かぶが、そんな僕の疑問を払拭するようにレイラ様は言葉を続けた。

「ある程度の数の害獣を誘き寄せた後、少数の部隊で手薄になったミュータント・1へ一気に接近し、全力を持って討伐するという流れです。その部隊にはわたくし達5人の王女、そしてジールを考えています」
「っ!?僕がですかっ!?」

最終目標の討伐部隊に自分が同行するとは考えていなかった事もあり、驚きに目を見開いた。

「そう、あなたがです」
「その・・・序列1位の方が組み込まれていませんが、大丈夫なのでしょうか?」
「残念ながら、この部隊編成が現状考えられる最良なのです」

僕の疑問の言葉に、レイラ様は少し悔しさを滲ませるような表情を浮かべていた。そして、その編成の内情を説明してくれたのはジェシカ様だった。

「確かに本来なら、序列1位が5人揃ってミュータント・1へ対応する方が良いかもしれんが、そうすると老成体をどうするかって問題になる」
「あっ」

ジェシカ様の指摘に、僕は小さく声を上げた。老成体を討伐するには、最上位のクルセイダー7名程度の戦力が必要だと言われている。今回の作戦では、最低でも8体の老成体と相対する可能性が高い為、理論的に考えれば老成体5体までが対応できる限界数なのだが、既にそれを大幅に上回っている。その状況を考えれば、各国の実力1位を別動部隊にしてしまうのは、危険が過ぎるのだろう。
そうなると必然、老成体に相対できる戦力を残しつつ、ミュータント・1にも討伐可能と思われる戦力を割いて対処しなければならないという難題に直面する。そうして議論した末の部隊編成なのだろうが、僕にはもう一つ疑問があった。

「しかし、この編成では指揮・命令系統はどうされるんですか?今回の指揮官が全員ミュータント・1の方へとなると、操られている害獣の討伐指揮は誰も居なくなってしまいますよ?」
「その点については、指揮系統を完全に分ける事にしましたわ。実力・指揮能力も十分で、かつ経験も豊富な5カ国の序列1位のクルセイダーをわたくし達の副官にそれぞれ任命し、規定時間までの害獣討伐及び足止めに専念してもらいます」
「・・・規定時間ですか?」

レイラ様の説明にある規定時間という言葉に、僕は疑問を投げかけた。

「おそらくこの作戦は時間との勝負だ!囮と罠を使って相手を分断している内に、如何に迅速にミュータント・1を討伐できるかだ。正直言って戦力は十分じゃない!操られている害獣全ての討伐は非現実的だ。そうなれば素早く元凶を断って、奴の害獣を操る能力を解除してやれば、縄張り意識の高い害獣達は自滅していくはずだ!」

ジェシカ様が言うには、今回の作戦に導入されるクルセイダーの人員は、各国とも3分の1程度が限界ということだ。害獣討伐に必要な人員を全て夢幻大地に配置しいてしまうと、別の場所に生息している害獣に国内を蝕まれてしまうからだ。その為、各国ともサポーターを含めた参加人数は約300人~400人の計約2000人前後が今回の作戦に投入出来る人員の限界だったらしい。

「つまり、一時的に邪魔となる害獣を引き付けておいてくれるなら、別部隊との連携は必要ないということですね?」
「必要ないというより、そこまでの余裕が無い、と言った方が正確ね」

僕の確認の言葉に、レイラ様が苦笑いを浮かべながら返答した。それほどまでにギリギリの作戦なのだろう。

「その・・・僕はどう動いたら良いのでしょうか?」
「正直に言えば、ジール殿が切り札なのだ!あの弓での一撃をミュータント・1へ叩き込む!そのための誘導や行動の阻害をオレ達が行うというのが今回の作戦の肝だ!」
「ぼ、僕がですか!?」

自分の役割を確認しようと問い掛けると、ジェシカ様から思いもよらない事を言われ、驚きのあまり口を開いたまま固まってしまった。

「ジルジルに重荷を背負わせるようでパピルはどうかと思ったんだけど~、現状、ジルジルの弓の一撃が、この大陸で最大火力なの。だから、ジルジルに頼らざるを得ないの・・・」
「あっ、パビル殿下!自分だけジールさんを心配しているような表現をしないで欲しいのです!ボクも、ここに居る皆さんも、最後をジールさんに頼ってしまう作戦しか立てられなかった事に、悔しさを感じているのです!」

僕が固まっていると、パピル様とルピス様が、今回の作戦は苦渋の上での決断だったのだと話してくれた。先日、皆さんから僕の実力についての客観的な評価を聞いていた事もあり、その上で頼られる事については嬉しさもあるが、同時に自分が失敗したらという重圧も感じてしまう。そんな僕の不安を察してか、キャンベル様が口を開いた。

「私達にはジール君、あなたが必要なの!一人ぼっちで居場所のなかった学園生活で、あなたは私を救ってくれた。あなたは自分が批難を浴びるかもしれないと分かっていても、私を助けてくれた優しく、心の強い人です。だから私は、ジール君にならこの大陸の命運を任せられる。そう信じているの!」
「キャンベル殿下・・・」

瞳を潤ませながら自分の想いを伝えてくれるキャンベル様に、僕は不思議と高揚した。大陸の命運を僕に託すとまで言われて、それに応えないでは、殿下達の信頼を無下にしてしまうと感じたからだ。

(僕は・・・皆さんの信頼に応えたいと心から感じている・・・皆さんに喜ばれたいから?認められたいから?いや、何だろう・・もっと違う感情のような気がする・・・)

今まて感じたことのない感情の起伏に、僕は少し動揺した。そんな僕の様子を別に捉えたのか、レイラ様が焦った様な表情で口を開いた。

「そんなに重大に考えなくても大丈夫ですわ!例え失敗しても、全責任は作戦を立案した私達が負うことになるから、心配は無用ですわよ?」
「いえ、そうではなくて・・・僕は、皆さんの期待に応えたいんです!この大陸を守り、また皆さんと幸せな生活を送れるように!!」

レイラ様の言葉に、僕は真剣な表情を浮かべて椅子から立ち上がると、皆さんの顔を見渡しながら自分の決意を口にした。そんな僕の言葉に、皆さんは目を丸くしたが、すぐに満面の笑みを浮かべてくれた。
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