BloodyHeart

真代 衣織

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朝は不機嫌

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 ブラインドの隙間から朝日が射し込む。
 けたたましいアラーム音が寝室に響き渡る。
 羽月がベッドから気怠く体を起こすと、アラーム音が消えた。
 サイドテーブルにある五センチ四方の立方体から、空中に時刻が浮かび上がっている。回転しながら色が変わり、気象情報が表示された。また色が変わり回転し、気温と湿度が表示される。
 羽月は、サイドテーブルに置いた煙草に火を点けて深く吸い込み、溜息と同時にきついメンソールの煙を吐き出した。
 また回転し色が変わり、表示された時刻を羽月は睨むように見る。
「羽月さん、おはようございます。直ぐに朝食出来ますよ」
 寝室を出ると、制服にエプロンを着け料理をしているリリアがいる。髪を二つに結び、結び目を髪で巻いている。
 満面の笑みを向けて挨拶してきた。
「……おはよう」
 羽月は、不機嫌な顔を向けて挨拶し、洗面室に向かう。
 ソファーの前にあるテーブルの上にも、寝室と同じ時計が置いてある。こちらはペン立てに入っている。
 この時計は、付属の小型加湿器を繋ぎ、水を入れた皿の上で光の乱射を楽しめる。持ち主の中には、ビー玉を置いて楽しむ人も多い。
 だが、羽月にとってはただの置き時計だった。
 リリアは、四枚の皿に次々とパンケーキを置き、生クリームやフルーツを盛付けた。二枚の皿を、リリアはトレーに乗せた。
 トレーを持ち、窓から羽を出さずに飛び、伊吹の住まいに行く。
「ありがとう。すっげー美味そう」
 ベランダに出て来た伊吹が、満面の笑顔で受け取った。
「こちらこそ、喜んでもらえて嬉しいです。好み、お知えて下さいね」
「羽月は甘党。でも激辛以外は食うよ。俺は肉食だけど、志保と一緒で好き嫌いなし。羽月のコーヒーは砂糖を三倍、ミルクはたっぷり入れてやってね」
「分かりました。……あっ、それ捨てて来ますよ」
 リリアは、部屋にあるゴミ袋を指差した。
「助かる。飛べるっていいね」
 振り返り、リビングのゴミ袋を伊吹はベランダに置いた。
 リリアは戻ってキッチンにトレーを置く。エプロンを外し、羽月の部屋にあるゴミ袋と伊吹がベランダに置いたゴミ袋を両手に持ち、羽を出さずに飛んで収集場所に置きに行った。
 
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