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水曜 拘束してください
ぷにぷに手錠
しおりを挟む引き出しからピンクの手錠を取り出してみる。金属の手錠ではなく、シリコン製のようで全体的に柔らかい素材で留め具だけが金属だ。
「うわ~手錠があるなんてラブホって感じ」
カテゴリーとしては大人のおもちゃという卑猥なものではあるものの、ぷにぷにした感触が気持ち良くて可愛い手錠だ。
水川にも渡すと良い手触りだと感心している。ひとしきり手錠の手触りを遊んだところで、水川がはっ!と体を軽く跳び上げた。
「…もしかして手錠を付けたら温泉になるのかも…?」
「!!!」
にこにこ笑った水川が「温子さん?両手出してくださいよ」と迫ってくる。逃げ惑うがあっけなく捕まり、「温子さんが来たいっていうから3日連続でラブホに来ているんですよ?」と言われると、両手をおずおずと差し出すしかなかった。
◆◆◆◆
「痛くないですか?」
「うん、大丈夫」
ピンクの手錠が両手を拘束した。留め具とチェーン部分だけが金属で、肌に当たる部分はシリコン製で痛くない。ほんの少し体の自由が奪われる感覚が非日常で楽しめる。
お風呂の様子はどうかと見に行くと、ただの水のまま。
しばらく待ってみようと言っていると……
ピンポーンッ
とドアのところから呼び鈴が鳴る。あ、ルームサービスが来たんだ。
手錠をしてしまった私は行けないから水川が素早くドアへと歩く。ドアの所には小さなボックスがあり、そのボックスで外と物のやり取りを人と顔を合わさずにできるようだ。
ボックスの扉を開けるとトレーの上に注文した料理。水川が取り出し、テーブルへと運んでくれた。
「美味しそうだね!」
オムライスやナポリタンというスタンダードなメニューだが、盛り付けが凝られていて食欲をそそる。
「じゃあ食べましょう」
「うん!あ、これ外してくれる?」
食べるために手錠を外すよう両手を差し出す。
「あ、そうですね」
じゃあ…と水川が手錠に触ろうとしたが、ぴたりと動きが止まった。そしてにこりと微笑む。
「やっぱり付けたままが良いんじゃないですか?ある程度の時間付けておかないとお湯に変わらないのかも」
「へ?でも食べれないから…」
「僕が食べさせてあげますよ」
ええ~~~~~!
◆◆◆◆
「はい、あ~ん」
「う~~、はぐっ」
もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ
オムライスが口に運ばれ、老舗の洋食レストランで食べれるような美味しいオムライスで舌鼓を打つ。
手錠をされたままで人に食べさせてもらうのは変な感じ。
「次はナポリタンも一口どうぞ」
「んぐ、まだ、んぐん」
次から次へと口に運んでくるから早く飲み込む。
「あーん」
「ん」
大きく口を開けてナポリタンを食べる。あ、ケチャップが口の端に付いたかも。
「すみません、付いちゃいましたね」
私が舌で舐める前に水川の顔がぐいっと近づき、ぺろりと唇の端に舌を這わせる。
ひゃあっ、舐められた!
「ちょっ」
美味しいですと言う水川はちゅぷちゅぷと唇の端を食む。普通のキスでも緊張するが、また違う感触にかぁぁぁぁと顔が熱くなる。
その後も更にナポリタンを何口か貰い、またオムライス。水川は自分でも食べつつ、甲斐甲斐しく私にも食事を運ぶ。
オムライスでもケチャップが口の端に付き、また舐められる。というかわざとじゃないか、スプーンが故意にブレたように思う。
「もうっ」
ちゅぷり、ぺろ、じゅうっ
「美味しい」
「ぁんっ」
ケチャップはもう舐めとったはずだが、口付けは止まらない。息が上がってくる。
ちゅっ、ちゅうっ、じゅぅっ、ぷちゅり
自由の効かない両手で水川の胸を押すが、びくともしない。そして深い口づけに惚けていき、手に力が入らなくなってきた。しばらくしたところでやっと水川が離れた。
「んはっ、すみません、止まらなくて」
「っはぁ、っはぁ、も、はげしすぎ、っはぁ、っはぁあ」
息をゆっくりと整えていく。
「水、飲みますか?」
「うん」
水の入ったコップに手を伸ばす。手錠はされていても何とかコップを掴めそう。なのに、ぱっとコップを取り上げられてしまった。
「飲みにくいでしょう?僕にやらせて下さい」
自分でも飲めることは飲めるが、ここは年下の恋人に甘えてみよう。
「ん、お願い」
コップが口元に寄せられ口を付ける。水が口内にちょろちょろと流し込まれる。
「ン、、、」
意外と喉が渇いていたのかもっともっととゴクゴク飲んでいく。自分で飲むよりも上を向いて飲んでいるせいか、喉の動きをいつもより強く感じる。
「ごく、、んはぁっ、もっと…」
コップの角度が大きくなっていき、口に含められなかった水が、つーーと口の端から溢れる。
「んぅ」
こぼれたことは気にせずそのまま与えられる。うまく飲めなかった水が口の端から顎、そして首筋を流れ落ちる。服も濡れているだろう。
「温子さん…」
コップが離され、すぐさまキスが降ってくる。
くちゅ、ちゅぅ、、ちゅっ、じゅくり
「ぁふ、ふぁっ、ちゅっ」
情熱的な口づけがそれまでくすぶっていた劣情に火を点す。もっとという意味を込めて水川の背中に手を回そうとする……が、手錠のせいで回せない。その代わりに両手の平を水川の胸にくっつけた。シャツ越しに体温を感じる。
すると水川の片手が私の手を取り、ぎゅ、と繋いだ。五指が絡まり合い、そこから全身に甘い電流が走る。
「ちゅっ、ふ、ベッド行きますか?」
水川が耳元で誘う。
うん、と
うなずこうとしたその時……
がちゃり!!
急に手錠が外れ床に勢いよく落ちた。
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