ありがちな雨の日シチュエーション

あれ？見たことあるな

雨が降っている。
そんなザーザー降りとか、俗に言うバケツをひっくり返したような雨とかそんなんじゃない。


立っていたらある程度濡れるかな？
そんな感じの雨。

私は立ち尽くしていた。
別に悲しいことがあったとか、親に怒られたから
家出したとかそんな子どものようなことはしない。

悲しくはないけど、心は痛んでないはずだけど
何かが私の中で溢れた。

ただただ雨に濡れてたかった。
「雨に濡れたら禿げるよ！」とか
子どもの頃よく言った気がした。

今はそんなことどうでもよかった。

溢れた気持ちは抑えられない。
涙は出したくなくたって勝手に出てくる。

全て誰が悪いのか。
私なのか、はたまた赤の他人なのか。
考えれば考えるほどよく分からなくなってくる。

こんな時に王子様が傘を差し出してくれる。
そんな少女マンガにありがちなシチュエーション。
中学生とか小学生の頃は憧れた。

いつか白馬に乗って王子様が迎えに来てくれる。
そしてかわいいドレスを来て、
豪華な西洋風のお城に住む。
保育園の時とかはありがちだった。
「かぼちゃに魔法をかけたら馬車になってお城まで
連れて行ってくれるの！」
可愛らしい夢の中の世界だ。




そんなこと考えてた時だった気がする。
「おい、お前なにしてんだよ。傘もささずに。」

お！ついに王子様の登場か！
そう思った私がバカだった。

「なんだよ…、お前か…。」
そこに立っていたのは幼馴染の男子
赤坂真あかさかしん

少女漫画の世界だったらこの後告白されて
付き合ってハッピーエンドなシチュエーションだ。

「なー…、俺お前に話があるんだ。」

まさか…、こいつ…。
私に告白するんじゃないだろうな…。

そんな気がした。

「あのさ…。」

どんどん心拍数が上昇している。



「その…、下着透けてるぞ。」

「ドアホ！！」

うん、違うよね。
それにしてもこいつ、いい度胸してるね。

「エロいから、これで隠せ。」

そうやって上着を渡してきた。
馴染みのある香りがした。
きっとお母さんが香りには気を使ってるんだろう。

「いいよ、寒いからきて帰りな。」
「ダメ、お前がきて帰れ。これもやるからじゃあな。」

そう言って上着と傘を渡して走って帰ってった。

昔っから変わってないあいつの走り方。

今日はありがちなシチュエーションにまみれた日だったな。
そう思いながら帰途についた。