ありがちな雨の日シチュエーション

雨と公園

「早く離せ…！真に私のなにがわかるんだよ…！
ひこずってる…？そんなに簡単に忘れられるようなことじゃないの…！」
降りしきる雨の中
真は私の腕を掴んだまま淡々と聞いていた。

「あぁ、お前の気持ちはわからないよ。
だから偉そうなことも言えない。
でも、夏帆。お前は大事なことを見失ってる気がするぞ。」
真はそう呟いた。

2人の間に沈黙の時間が流れた。

「傘使え。俺走って帰れるから。」
強引に傘を押し付けて真は走っていった。
「ごめんな、夏帆。」
その一言が雨の音に混じって聞こえた。

厚い雲に覆われた空は私と同じで、泣いていた。




家に帰っても誰もいなかった。

とりあえずお風呂に入って冷え切った体を温めた。
「真のバカ…。」
涙が自然と頬を伝って、落ちていく。
この涙が真に対する怒りの涙なのか、昔の記憶から流れ落ちる涙なのか、到底わかるはずもなかった。

真に言われた「なにか見失ってる」という一言。
その一言は余計に私を混乱させた。
なにを見失っているのか、答えはいくら考えても
出てこなかった。