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沈む夕陽を見てた
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少し遅れて私が入り、
「ごめんな」
「私の方こそ、あの」
「ちょっと待ってて」
タツジはコーヒーを入れてくれて、
「俺さ、デビュー前に付き合ってた彼女がいた。地元のね。その後も俺は付き合ってるつもりだったけど、会う頻度も減ってたし、彼女には寂しい思いさせてたよな。こんな仕事だから、ってのもあるし。遊んでないとも言い切れないし。その彼女も、結婚したんだ。事後報告だった。それがさ、意外に落ち込んじゃってさ。で、自棄になってた。ほんと、遊ぶつもりだった。サキを見た時、意外に普通の子で、ホッとしたような感じもあった。俺、あんまり触られるの苦手で、」
「だから、私が脱がそうとした時、嫌がったの?」
「そうだね。なのに、あんな事ってな」
「あのさぁ、最初から、一人に決めるつもりだったの?」
「わかんない。取り敢えず、遊びたいって思った。でも、あんなだからな。悪いけど、サキなら言うこと聞いてくれそう、って思った。それで、次の約束もして。触れ合っているうちにさ、嫌じゃなくて、逆に心地よくて、ずっと一緒に居たいって思うようになってた。いつの間にか、気が付くと、サキのこと考えてて、俺の心を癒してくれたんだよ」
「信じられない」
「信じて欲しい」
「私は、言えなかった。自分がこんなことしてるなんて、勇翔には知られたくなかったから」
「勇翔じゃなく、タツジとして、割り切って会ってたんだね?」
「割り切ろうとしてた」
「1年ちょっと前になるかな?手紙に、しばらくライブに行けないって書いてたね」
「うん、あの前に、付き合ってた彼氏の借金負う事になってしまって。危ない店に売られそうにもなったとこを、勤めていた店長に助けてもらって。まぁ、やることはいいとは言えないけど、ちゃんと対応してくれたから、何とか続けてきて、借金も終わって、辞めるところだった」
「そっか」
「あの日、借金返済終わるまで行かないって決めて、ライブ行って、手紙渡したのよね」
「サキも辛い思いしたんだな」
「それでも、あんなとこで働くとか、嫌でしょ?ファンが、とか」
「ファンが、かぁ。確かにね」
「じゃあ、彼女だったら?」
「そりゃあ、嫌だよね」
「だよね」
「あ、でも、もう、知ってしまったからさ。俺も、同罪だし」
「同罪って?」
「俺も遊んだ。嫌だろ?もし、知らないで勇翔がそうゆうことしてるって聞いたら」
「うん、まぁ」
「彼氏だったら?」
「うん、嫌かも」
「だから、同罪だよ」
「でも、」
「もう、何も言うな」
そう言って、抱きしめられ、
「サキとずっと一緒に居たい」
「本当に私でいいの?」
「でじゃない。サキがいいの」
もっと強く抱きしめられ、私も委ねた。
「ごめんな」
「私の方こそ、あの」
「ちょっと待ってて」
タツジはコーヒーを入れてくれて、
「俺さ、デビュー前に付き合ってた彼女がいた。地元のね。その後も俺は付き合ってるつもりだったけど、会う頻度も減ってたし、彼女には寂しい思いさせてたよな。こんな仕事だから、ってのもあるし。遊んでないとも言い切れないし。その彼女も、結婚したんだ。事後報告だった。それがさ、意外に落ち込んじゃってさ。で、自棄になってた。ほんと、遊ぶつもりだった。サキを見た時、意外に普通の子で、ホッとしたような感じもあった。俺、あんまり触られるの苦手で、」
「だから、私が脱がそうとした時、嫌がったの?」
「そうだね。なのに、あんな事ってな」
「あのさぁ、最初から、一人に決めるつもりだったの?」
「わかんない。取り敢えず、遊びたいって思った。でも、あんなだからな。悪いけど、サキなら言うこと聞いてくれそう、って思った。それで、次の約束もして。触れ合っているうちにさ、嫌じゃなくて、逆に心地よくて、ずっと一緒に居たいって思うようになってた。いつの間にか、気が付くと、サキのこと考えてて、俺の心を癒してくれたんだよ」
「信じられない」
「信じて欲しい」
「私は、言えなかった。自分がこんなことしてるなんて、勇翔には知られたくなかったから」
「勇翔じゃなく、タツジとして、割り切って会ってたんだね?」
「割り切ろうとしてた」
「1年ちょっと前になるかな?手紙に、しばらくライブに行けないって書いてたね」
「うん、あの前に、付き合ってた彼氏の借金負う事になってしまって。危ない店に売られそうにもなったとこを、勤めていた店長に助けてもらって。まぁ、やることはいいとは言えないけど、ちゃんと対応してくれたから、何とか続けてきて、借金も終わって、辞めるところだった」
「そっか」
「あの日、借金返済終わるまで行かないって決めて、ライブ行って、手紙渡したのよね」
「サキも辛い思いしたんだな」
「それでも、あんなとこで働くとか、嫌でしょ?ファンが、とか」
「ファンが、かぁ。確かにね」
「じゃあ、彼女だったら?」
「そりゃあ、嫌だよね」
「だよね」
「あ、でも、もう、知ってしまったからさ。俺も、同罪だし」
「同罪って?」
「俺も遊んだ。嫌だろ?もし、知らないで勇翔がそうゆうことしてるって聞いたら」
「うん、まぁ」
「彼氏だったら?」
「うん、嫌かも」
「だから、同罪だよ」
「でも、」
「もう、何も言うな」
そう言って、抱きしめられ、
「サキとずっと一緒に居たい」
「本当に私でいいの?」
「でじゃない。サキがいいの」
もっと強く抱きしめられ、私も委ねた。
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