コトハジメ

陽紫葵

文字の大きさ
22 / 30

コトハジメ

しおりを挟む
お父さんとお母さんは、2人で帰って行き、私はそのままいた。
「依里さん、ごめんなさい」
「え、何?」
「だって、私、勝手に泰之くんの産みのお母さんの事・・・」
「いいのよ。逆にすっきりした」
「え?」
「私たちもね、施設では、泰之の親のことは詳しくは聞かされていなかったの。あの頃ね、お父さんね、自治会の役員してて、特に福祉の担当で、役所の人と、学校とか施設とか回ってたのね。でね、出かけたある日、いきなり泰之を連れてきてね」
「え、初めて聞いた」
「1歳の子をよ。抱っこしたら、離れなかったって。施設の人が離そうとすると泣くんだって。だから、可愛くて連れてきたって」
「え?」
「なのによ、お母さん抱っこしようとしたら、喜んで来たのよ」
「は?」
「お姉ちゃんにもすぐ懐いたし」
「へぇ」
「でもね、おじいちゃんだけには懐かなくて、反対されて、家を出たの」
「じゃあ、俺が来るまでは、あの家にいたってこと?」
「そうよ。なのにね、泰之には寂しい思いさせちゃってごめんね」
「ううん。わかったから。おじいちゃんは怖かったけど、おばあちゃんは優しかった」
「うん、おばあちゃんはね、ずっと気にかけてくれてたわ。おじいちゃんが亡くなって、ほっとしたように、ね」
「まぁ、俺もさ、心配かけたよな。ごめん」
「ううん、わかってるから」
「でも、こうやって今はさ、橙香にも出会えて、なんてゆうか縁があったんだよな」
「そうね」
「橙香、どうした?」
「泰之くん、赤ちゃんの時、可愛かったんだろうなぁ、って」
「あ、そうだ、泰之がうちに来た日に撮った写真あるけど、見る?」
「うん、見たい」
「え、俺も見たことないよ」
「うん、隠してあったの」
依里さんは自分の部屋に取りに行った。
「はいこれ、1枚目は、来た日」
泰之くんが依里さんに抱かれて写ってた。
「もう1枚は・・・」
「誕生日?」
「そう、1か月後ね」
ケーキを前に、家族4人で写ってた。お父さんや、お姉さんには会ったことはない。でも、すぐにわかる。
「可愛い」
「そうか?」
「うん、可愛かったわ」
「今は?」
「え~」
「冗談だよ」
私は小声で、
「かっこいい」
と言った。
「照れるだろ」
「いいじゃん」
「ホント、仲いいわね」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!

まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。 人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい! そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。 そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。 ☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。 ☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。 ☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。 ☆書き上げています。 その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

処理中です...