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8 エピローグ~ヒマワリの天啓~
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「違う! 違う違う! こんなんじゃない!」
書き上げた原稿を、ビリビリに引き裂く。どれだけ細かくしても気に食わなくて、でもそれ以上細かく千切れなかったから、机の上からそれらを勢いよく薙ぎ払った。
〈夜の街〉で助けられた白鬼から、彼の身の上話を聞いた後、私は彼に〈陽の街〉まで送ってもらった。
街の人たちは、よそ者である私を優しく迎え入れてくれた。だけど、私には分かっている。その優しさはハリボテだということを。私に火傷の痕が残っていたら、こんなに親切にはしなかっただろう。
真に優しいのは、火傷痕を見ても嫌な顔ひとつしなかった白鬼、ただひとり。そう、彼こそが唯一の”善”なる存在なのだ。
そんな唯一の彼は、〈夜の街〉に戻ってしまった。彼はまだ悔いているのだろう、セツナという女を殺したことを。
それは違う、彼女も救われたのだ、彼の手で。そのことを伝えたくて、私は彼から聞いた話を記すことにした。彼が語ったとおりに。
だけど違う。彼が語ったとおりではダメだ。これでは伝えられない。不死王を打ち倒し、世界に光を取り戻したという彼の偉業を。
ああそうだ、私は彼の偉業を人々に知らせなければならない。彼のみが真に優しく善なる存在であり、彼こそがこの世界で生きるものたち全ての上に立つべき者であることを。きっと私は、そのために生を受けたのだから。
その時、天啓を受けた。
このお話から、セツナを消せばいい。不死王をもっと邪悪に描けばいい。白鬼様は、こんな女のために不死王を倒したのではなく、私たちのために私たちに害を成そうとした不死王を倒してくださったのだと、そういうことにしてしまえばいい。
自然と笑い声が漏れた。これなら白鬼様の素晴らしさを誰もが認める、世界が白鬼様の元にひとつになる日がやってくる。そんな確信があった。
待っていてください、白鬼様。私が、このヒマワリがきっと、あなたを王なんかよりももっと尊い存在、”神”にしますから。
書き上げた原稿を、ビリビリに引き裂く。どれだけ細かくしても気に食わなくて、でもそれ以上細かく千切れなかったから、机の上からそれらを勢いよく薙ぎ払った。
〈夜の街〉で助けられた白鬼から、彼の身の上話を聞いた後、私は彼に〈陽の街〉まで送ってもらった。
街の人たちは、よそ者である私を優しく迎え入れてくれた。だけど、私には分かっている。その優しさはハリボテだということを。私に火傷の痕が残っていたら、こんなに親切にはしなかっただろう。
真に優しいのは、火傷痕を見ても嫌な顔ひとつしなかった白鬼、ただひとり。そう、彼こそが唯一の”善”なる存在なのだ。
そんな唯一の彼は、〈夜の街〉に戻ってしまった。彼はまだ悔いているのだろう、セツナという女を殺したことを。
それは違う、彼女も救われたのだ、彼の手で。そのことを伝えたくて、私は彼から聞いた話を記すことにした。彼が語ったとおりに。
だけど違う。彼が語ったとおりではダメだ。これでは伝えられない。不死王を打ち倒し、世界に光を取り戻したという彼の偉業を。
ああそうだ、私は彼の偉業を人々に知らせなければならない。彼のみが真に優しく善なる存在であり、彼こそがこの世界で生きるものたち全ての上に立つべき者であることを。きっと私は、そのために生を受けたのだから。
その時、天啓を受けた。
このお話から、セツナを消せばいい。不死王をもっと邪悪に描けばいい。白鬼様は、こんな女のために不死王を倒したのではなく、私たちのために私たちに害を成そうとした不死王を倒してくださったのだと、そういうことにしてしまえばいい。
自然と笑い声が漏れた。これなら白鬼様の素晴らしさを誰もが認める、世界が白鬼様の元にひとつになる日がやってくる。そんな確信があった。
待っていてください、白鬼様。私が、このヒマワリがきっと、あなたを王なんかよりももっと尊い存在、”神”にしますから。
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