悪役女王に転生したので、悪の限りを尽くします。

月並

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断罪されます。前

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「女王ソバナ、お前を断罪する」
 そう言い放ったのはアンスリウムだった。その背後には、武装した人間たちがいる。緑目の衛兵だけじゃない。赤も青も、灰も黒も茶も、一緒くたにそこにいた。みんなしてどやどやと、土足で私の部屋に踏み入る。
 やっとここまでたどり着いた。薄く笑えば、嘲笑されたと勘違いしたのか、アンスリウムの目の中の憎しみの炎が燃え盛った。
「お前は私利私欲のために国民に重税を課し、さらに何の罪もない国民を殺した。我ら赤い目の一族の、今生きていれば15から17歳の女を皆殺しにしたこともそうだ」
「でもあなた、自分の娘だけは助けたじゃない。男と偽ってまで」
 アンスリウムは虚を突かれたような顔をした。
「知っていたのか?」
「私が分からないとでも?」
 本当は半年前に、あの子に聞いたのだけど。そこは隠して、余裕ぶった態度を取る。その態度はますます彼の怒りを煽ることに成功したようだ。
「あれは我らの総意だ! カンナを男として育て、お前と結婚させる。そして初夜で、愛した男が女だと知った絶望の中でお前を殺す。それが我らの立てた作戦だった」
「私を殺すだなんて、白鬼しろおに様から天罰が下ると思わなかったの?」
「白鬼様は我々のことをちゃんと見ている。もしここにかの方がいらっしゃれば、お前のような悪逆非道の女王を放っておくわけがない。だが白鬼様は、金目きんめにつけられた傷がまだ癒えていないのだろう、我々の前に姿を現さない。だから我らが代わりに手を下そうと決意した。だが、カンナのおかげで考えが変わった」
 アンスリウムが私を睨む。
「城に保管されている書庫で、カンナが見つけたのだ。白鬼様が金目に害されてお隠れになったというのは、嘘だ。初代の王が、白鬼様を追放したのだ。自分が王になるために」
 いつの間にか、カンナは証拠を掴んでいたようだ。だけどそれも、予想の範囲内。仮に見つからずとも、彼女は必ず革命につながる何かを見つけたに違いない。それが主人公だから。
「目の色で身分を決めたのは、おそらくそれが都合が良かったからだろう。紫の目を持つ者が生まれるのは稀だ。そして白鬼様と同じ色だ。神秘性がある。白鬼様の代弁者だと偽っても、人々は疑いもしなかっただろう。実際、疑わなかったからこの国はここまでやってこれたのだ。だがそれも限界だ。我々は真実を知ってしまった。紫の目の者が白鬼様の代弁者などというのは、嘘だ。もう目の色で身分を決めることはやめる。カンナの言う通り、実力や才能で決める。そのためにも、お前は邪魔だ!」
 アンスリウムの激昂を合図に、彼の傍に控えていた緑目の人間が、乱暴に私の手に枷をはめた。その痛みと冷たさに、思わず顔が歪む。その枷は、奴隷がつけるものだった。
 手首の枷には、長い鎖が付けられている。緑目の人間に引っ張られて、私は部屋の外に出た。
 廊下にいる様々な目の色の人間たちが、私に憎悪の感情を向けていた。
「よくも我々を苦しめてくれたな!」
「夫を返して!」
 そんな声も聞こえてくる。
 突然、人間の壁が割れた。白い髪に金色の目の、私が名前を剝奪した彼が現れる。
 私の手の枷を見て表情を歪ませたかと思うと、彼は私を引っ張る緑目の男と、後ろをついてくるアンスリウムをにらんだ。
「ソバナ様を解放しろ」
 ひるんだのか、緑目の男が一歩退く。代わりにアンスリウムが前に出た。
「カンナの元に戻りなさい。君はもう、彼女の奴隷ではない」
 アンスリウムがなだめるように言ったけど、彼は動かない。
「何をやってるんだ! ソバナの味方になろうとする奴なんて、一緒に処刑しちまえ!」
 不意に、人間の壁から声が響く。すると皆が、異口同音にミタマを罵り始める。
「そうだぞお前、そんな極悪人を助けようなんて、気でも触れてるのか!?」
「この醜い金目が!」
 罵声と一緒に、物も飛んできた。持っていたらしい石、鉛筆、それから廊下に置いてある花瓶。
「危ない!」
 思わず叫んだ。だけどそれがいけなかった。声に反応して、彼は飛来物の方に顔を向けてしまう。
 花瓶は彼の額に当たった。重たい音と一緒に、彼はその場に倒れてしまう。
 歓声が湧いた。頭に血が上る。彼の元に駆け寄ろうとして、手首の激痛に遮られる。
 枷が邪魔だ。いや、私の手首が邪魔だ。こんなもの、もげてしまえばいいのに。あの子の所に行けないじゃない!
「恨むんなら自分自身を恨むんだな」
 アンスリウムがひどく意地の悪い笑みを浮かべる。この人間は、そんな顔もできたのか。そんなに私の涙が見たかったか。
 深呼吸をして、苛立つ感情を押さえつけた。ぐるりと人間たちを見回して、口角を上げて見せる。
「アンスリウム、よく見なさい。未だに金色の目の人間を卑下している人間は、まだたくさんいるわ。その証拠に、今この子の他に、金色の目の人間がこの場にいるかしら?」
 いないのだ。そのことに今やっと気づいたらしい人間たちは、一様に口をぽかんと空けている。
「無理なのよね。分かるわ。目の色じゃなく、実力や才能で身分を決めるというカンナの考えがすばらしいものだと、頭では分かっているけれど、生まれ持った価値観を急に覆すのは、あなたたちなんかにできるはずがない。仮にできるようになっても、今度は違う人間を、何か理由をつけていじめ始めるわ。私はそんな人間が大嫌い。だから女王という立場から、あなたたちをいじめ続けていたのよ」
 一気に吐き捨てた。周囲は沈黙する。
「それは悪政を強いる理由にはならない!」
 アンスリウムが強く言った。そして足早に先へと進む。さっさと私を処刑したいようだ。
 引っ張られて、非難の目を一斉に浴びながら、私の足は死に向かう。
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